フューチュラマ (アニメ)
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フューチュラマ(Futurama)は、31世紀の地球を舞台にしたアメリカ合衆国のテレビアニメーションシリーズ。人気アニメ『ザ・シンプソンズ』を製作し好評を得た漫画家マット・グレイニング(マット・グローニング Matt Groening)と脚本家デイヴィッド・X・コーエン David X. Cohenが、より大人向けのアニメを作ろうと構想を練り、FOXテレビで1999年3月28日から2003年8月10日までテレビ放送された。製作はキュリオシティ・カンパニー The Curiosity Company。
合計5シーズンが放送されたが、FOXテレビが第6シーズンの購入を見送ったため中断した(公式には終了していない)。2006年、ケーブルテレビ専門局コメディ・セントラルが新規に13本のエピソードを発注したため、2008年には第6シーズンが始まる予定である。また、世界各国でも繰り返し放送され人気を博している(日本では放送されていない)。
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[編集] 概要
主人公はニューヨークに住む25歳の冴えないピザ配達人フィリップ・J・フライである。1999年12月31日にピザを配達に行った先の研究所で誤って凍結保存されてしまい、解凍されて目覚めたときには千年後の2999年12月31日であった。物語は、フライが仕事を得た先の惑星間運送会社プラネットエクスプレス社の欠点だらけな社員たちとのドタバタや強い絆と、千年後の未来の社会問題や惑星間関係などをブラックユーモアを交えて描いている。
「フューチュラマ」とは、1939年のニューヨーク万博でゼネラル・モーターズ(GM)が出展した伝説のパビリオン、「フューチュラマ」に由来する。GMの社内研究をもとにノーマン・ベル・ゲディーズ(Norman Bel Geddes)がデザインした、20年後(1959年)のアメリカの都市や郊外を再現したジオラマは、アメリカ大衆の輝かしい未来観やSFの未来描写に多大な影響を与えた。アニメ『フューチュラマ』は、フューチュラマをはじめとした、今となっては懐かしくすらあるレトロフューチャーな未来都市やガジェットをパロディにしている。
[編集] キャラクター
- フィリップ・J・フライ(Philip J. Fry)
- 1974年生まれの25歳。小さい頃の将来の夢は宇宙飛行士になること。子供時代から兄のヤンシーとは喧嘩ばかり、高校時代には一週間に百本のコーラを飲んで3回心臓発作を起こす。コニーアイランド大学を中退後、ピザ配達の仕事に就くが、1999年の大晦日、ピザの配達中に誤って冷凍装置に入り、2999年の大晦日に目が覚める。現在、彼の遠い未来の親戚にあたるファーンズワース教授の経営する惑星間運送会社プラネットエクスプレス社で配達人として働く。ルームメイトで親友のベンダーと暇があればテレビを見たりビールを飲んだりしている。
- トゥランガ・リーラ(リーラ)(Turanga Leela)
- 年齢不詳。地球でただ一人の一つ目女性異星人。孤児院で育ち、一つ目のため周りからよくいじめられたため、キックボクシングや他のよく似たスポーツに没頭して青春時代を過ごす。fate assignment officerとして働いたが、フライたちと出会ったことがきっかけで仕事を辞めプラネット・エクスプレス社の貨物宇宙船船長を務める。異性間でのトラブルが絶えない。
- ベンダー・ベンディング・ロドリゲス(Bender Bending Rodríguez)
- 頭部1057歳、胴体4歳。もともと鉄の桁を曲げる(bend)ために作られたのでベンダーという。(母親ロボットの)1729番目の子供ロボットとして生まれる。ベンディング州大学でベンディング(曲げること)とロボットアメリカ学を専攻する。フライに出会う前は鉄製の桁を曲げる仕事をしていたが、現在は宇宙船のコックを務める。仕事以外の時間をテレビを見たり、葉巻を吸ったり、人のもの盗んだりして過ごす。人間のようにアルコールを口にするが、そうしていないと体のコントロールが出来なくなる。フライの親友でありルームメイトだが、基本的に人間を嫌っているため、時々同僚だけでなくフライにも冷たく当たる。一流の料理人になることを夢見るが彼に味覚を感じる機能はない。
- ヒューバート・J・ファーンズワース教授(Professor Hubert Farnsworth)
- 2841年生まれの160歳。単にプロフェッサーともいう。主人公フライの(遠いX30回)甥で、マッド・サイエンティストじみた実験や発明の資金を稼ぐためにプラネット・エクスプレス社を設立。また火星大学で教鞭をとる。年のせいか、物忘れが激しい。
- ジョン・ゾイドバーグ先生(Dr. John Zoidberg)
- 年齢不詳。デカポッド10番惑星から来たヒューマノイド型異星人。顔や手足が部分的にロブスターに似た種族。金持ちの医者を夢見て地球にやってくるが、現在はプラネット・エクスプレス社の腕が怪しげな医者を務める。イディッシュ訛りでしゃべり、プラネット・エクスプレスの同輩からは面白がられ嘲られて見られている。映画スターやスタンドアップコメディアンとして有名になることを切望している。
- ハーミーズ・コンラッド(Hermes Conrad)
- 現在25歳。プラネット・エクスプレス社の経営者で妻子持ちのジャマイカ系の男性。妻の名はラバーバラ、息子の名はドワイト。官僚的で、それを誇りにしているふしがある。何事も規則どおりにしないと気が済まず、特に書類とファイリングにはうるさい。オリンピックの陸上競技のリンボー走の選手(リンボーダンスとハードル走を足したようなもので、バーの上でなく下をくぐる)で金メダルを取ったことがある。
- エイミー・ウォン(Amy Wong)
- 年齢不詳。火星大学の学生でインターン社員としてプラネット・エクスプレス社で働く。火星の半分を所有する大富豪のお嬢様なので本当は働く必要はない。両親は牧場主のようでカウボーイのような格好でよく登場する。子どもの頃はポニーをたくさん持っていた(ポニーを持つことはアメリカ人の女の子の夢らしい。リサ・シンプソンズもたびたびホーマーとマージにお願いしている)。両親の英語にアクセントがあることからエイミーは2世だと思われる。中国系で、よく広東語や31世紀のスラングで人に悪態をついている。抜群のスタイルでよく男性を魅了してはリーラから反感を買う。
[編集] 世界観
『フューチュラマ』の舞台は31世紀初頭、ニューヨークの廃墟の上に建てられたニューニューヨーク市であるが、その実際は21世紀初頭のアメリカを誇張表現したものといえる。
21世紀初頭の世界にあった地球温暖化、官僚主義、薬物依存などの社会問題はより極端かつ深刻になっており、笑いのネタとされている。また2000年代の日常生活のおかしな部分も同じく極端になってしまっており、視聴者を混乱させるところもある。21世紀の人種隔離に対し、31世紀ではミュータントに対する人類の偏見がひどく、地下の下水道施設などに追いやられている。
31世紀までに宇宙開発など様々な技術革新が進んでいるが、中には人間の頭をビンに入れたまま生かしておく技術というものもあり、この結果かつての政治家や有名人などがまだ生きながらえている(これは脚本家がハリウッドなどで活躍する有名人を茶化したり、彼らに声の出演をさせたりするためのガジェットである)。インターネットも未だ存在し、人間の精神や感覚を没入させられるほどの仮想世界(トロンやマトリックスそっくりのもの)を構築しているが、接続速度が遅いことやコンテンツのほとんどがポルノであることは相変わらずであり、子供向けの検閲も相変わらず存在する。テレビは超高精細化が進んだが、31世紀でも娯楽の主流となっている。アルコールで稼動するロボットは日常的存在となり、自由意志を持ち人間と変わらないような思考をしている。車輪は過去のものとなり、車はエアカーと化している。書類などの搬送用の気送管をほうふつとさせる、人間が吸い込まれながら移動するためのチューブも縦横に走っている。
[編集] 銀河政治
地球は、ワシントンD.C.を首都とし「地球大統領」が元首を務める「地球合衆国」に統一されている。地球国旗はアメリカ合衆国の国旗の50個の星を地球の絵に変えただけの代物にすぎない。地球住民は「アースリカン(Earthicans)」と呼ばれている。火星はテラフォーミングされ密林と化している。
31世紀までに数多くの銀河系が地球人と接触し、あるいは地球の植民地支配を受けている。地球のある銀河系の大半は地球合衆国の勢力圏にある。第二次銀河大戦が終結した2945年、二度と戦争を起こさないよう地球ほか様々な惑星が集まって「諸惑星民主主義秩序体」(Democratic Order Of Planets、略称D.O.O.P.、ドゥープ)という、国際連合やスタートレック世界の惑星連邦を思わせる国際機関を形成したが、地球合衆国はしばしばD.O.O.P.の決議に基づかず単独行動を行っている。地球から1000光年離れたペルセウス座オミクロン星の第8惑星はしばしばD.O.O.P.や地球と紛争を起こす(原因は、オミクロン星系で31世紀現在視聴できる1000年前の地球のテレビ放送など、馬鹿馬鹿しいものばかりである)。
[編集] 言語
31世紀までの間に言語学上でもいくらか変化があったようである。その顕著な例は2種類(実際には3種類ある)の「エイリアン・アルファベット」で、しばしば登場人物の背後などに書かれている文字である。どちらも実は英語のアルファベットをもとにした暗号になっており、解読すれば視聴者向けの内輪ジョークが書かれている。第一アルファベットは、英語のアルファベットと一対一対応する、単純な換字式暗号である。[1] 第二アルファベットは古代に宇宙を支配した異星人のものとされているが、これもアルファベットによるやや複雑な暗号である。[2] これらエイリアン・アルファベットを除くと、作中に出てくる標記はほとんどが英語であり、ほとんどの異星人も英語を話す。一方、フランス語は完全に死滅したようであり、ほとんどの作中人物はフランス語を全く理解できず紀元3000年を祝うパリ市民は英語でカウントダウンを行っている。(フランスで放送されているフランス語版では、死滅したのはドイツ語に変わっている。)
[編集] トリビア
- リーラ(トゥランガ・リーラ)の名前の元ネタはオリヴィエ・メシアンのトゥランガリーラ交響曲であり、かつてSF映画やテレビドラマで多用された電子楽器、オンド・マルトノを大々的に使う曲として有名。
- リーラのオフィスコードは「1B-DI(One Beady Eye ビーズのような一つ目)」となっており、第一話でリーラが応援を呼ぶ際のリストバンドで確認することができる。
- ベンダーの名前は映画ブレックファスト・クラブでジャド・ネルソン演じたジョン・ベンダーから取って付けられた。
- ベンダーのアパートの番号「00100100」はアスキーコードの「$(ドルマーク)」と同じである。
- 「フューチュラマ」以外に「Doomsville」と「Aloha Mars」という案が挙がっていた。
- 第3シーズン第一話"The Honking"で訪れた屋敷の壁に0と1の数字が現れベンダーを震え上がらせるシーンがあるが、最初に見た数字は特に意味を持たないが、鏡に映った文字を10進法に当てはめると「666」という数になる。(ちなみにこのシーンは映画「シャイニング」のパロディである。)
- ペルセウス座オミクロン星の第8惑星は実際に地球から1000光年離れた惑星として存在している。
[編集] 賞
アニー賞、エミー賞の多数の賞を受賞。また、アニー賞、エミー賞をはじめネビュラ賞などにもノミネートされている。
[編集] DVDリリース、その他商品
各シーズンごとのDVDボックス、および4エピソードを集めたベスト盤がRegion 1、Region 2、Region 4で発売されている。またコミックス、ゲームソフト、フィギュアやブリキ人形など各種関連商品が発売されている。
[編集] 外部リンク
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