フィアット・パンダ
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パンダ (Panda) はイタリアの自動車メーカー・フィアット社が製造、販売するコンパクトカー。1980年デビュー。初代モデルはVWゴルフなどと並んで、実用ハッチバック車のベンチマークのひとつに数えられる。
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[編集] 初代 (1980 - 1999)
オイルショックに伴い、燃費面で有利なコンパクトカーの開発が各社で行われていた1970年代、ゼロ と呼ばれるフィアット社内のプロジェクトを元にフィアット・126の後継車として誕生したのが初代パンダである。このモデルは、当時経営状態の芳しくなかったこともあり、フィアット史上初めて開発を全面的に外部委託した車となった。その開発を担当したのはジョルジェット・ジュジャーロ率いるイタリアのカロッツェリア・イタルデザインである。直線と平面とを基調としたデザイン(結果的にコスト削減にもつながるというおまけまでついた。例えば全てのガラスは曲面を持たない"板ガラス"形状で、加工が簡単だった)はジュジャーロの最高傑作と評されており、自身も「今までにした中で最高の仕事」と断言している。
1980年発売当初のラインナップはパンダ30(652cc、縦置き2気筒OHVエンジン、イタリア国内専用モデル)とパンダ45(903cc、横置き4気筒OHVエンジン)の2種が用意された。いずれもガソリンエンジンであった。モデル名につく数字は、当時のフィアットでの命名規則にしたがって搭載されるエンジンの馬力をあらわしている。いずれも、鉄板グリル と呼ばれる左右非対称形状のフロントグリルを備え、室内では、パイプ製の構造に布を張ったハンモックシート を採用していた。ボディは左右2ドア + ハッチバックの3ドアを基本とし、ハッチバックの代わりに観音開きドアを採用したバンタイプも用意された。
1982年には843cc 4気筒エンジンを積むパンダ34と、45をベースとしたスーパーの2モデルが新たに設定された。このうちスーパーは45の豪華版という位置付けで、特徴的な鉄板グリルに代わり樹脂製の柵状グリルを採用されたほか、シートも一般的なものに換装された。
エンジン横置き前輪駆動車をベースとした市販車としては世界初となる四輪駆動モデル4x4(フォー・バイ・フォー)を1983年に追加。このパートタイム式の四駆システムはオーストリアのシュタイア・プフ社との共同開発によるものである。
1986年には、エンジンがそれまでの3種に代わり、769ccと999ccの4気筒SOHCエンジン (FIRE:Fully Integrated Robotized Engine) 、および1301ccディーゼルエンジンが採用され、また、スーパーで先立って採用されたシート、樹脂製フロントグリルを全グレードに拡大するなど、大規模な仕様変更がなされた。ほかにも、従来のリーフリジッド式リアサスペンションは、4x4を除いて独特な半独立式(Ωアーム・トレーリングリンク)のものに変更され、メーター類の大型化や三角窓の廃止がなされた。この仕様変更に伴って、グレード名もそれまでの馬力由来の表記から、排気量由来の表記(パンダ750/1000)に改められた。
1991年に無段変速機(CVT)を備えたセレクタと名づけられたグレードが登場。セレクタに採用されたベルト式CVTは、富士重工業が開発したもので、スバル・ジャスティのものを元にしている。
[編集] 2代目 (2003 - )
2代目パンダの元となるコンセプトカーはジンゴ (Gingo) の名で発表された。当時経営状況の良くなかったフィアットとしては心機一転、この新しい名前でデビューさせる予定であった。しかし、ルノー社からルノー・トゥインゴ (Twingo) との商標の類似を指摘され、ルノー側が提訴する構えをも見せたため、ジンゴの名は使われずパンダの名を引き継ぐこととなった。波乱含みで2003年にデビューした2代目は、この年度のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。先代同様、四輪駆動の4x4も設定される。
ジンゴがそもそもSUV的なコンセプトで発表されたこともあって、2代目は若干背の高いフォルムとなった。前輪駆動モデルでもグレードによってはルーフレールが装備される点もSUV的である。全長/全幅は依然としてVWルポやシトロエン・C2などと同等であるが、これら3ドアのライバルと違いパンダは5ドアハッチバックとなる。