ニュースキャスター
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ニュースキャスターとは、一般的にテレビ・ラジオのニュース番組の司会者のこと。
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[編集] 概要
ニュースの原稿を読むだけでなく、物事を咀嚼して視聴者・聴取者に理解し易い様に伝える力も必要とされるのが、アナウンサーと違う点である。ニュースキャスターによって構成される番組はニュースショー、キャスターニュースなどと呼ばれ、アナウンサーのニュースの読み上げのみによるニュース番組と区別する事が出来る。
又、スポーツニュース専門のニュースキャスターはスポーツキャスターと呼ばれ、天気予報専門のニュースキャスターはお天気キャスターまたは気象キャスターと呼ばれ、主に気象予報士がつとめることが多い。
「ニュースキャスター」という言葉は和製英語とされているが、イギリスでは1950年から「ニュースキャスター」という名称が使われている。英語圏の国では同様のポジションのことを「アンカー」「アンカーパーソン」(主にアメリカ合衆国)または「プレゼンター」(主にイギリス)と呼んでいる。
TBSの『筑紫哲也 NEWS23』やフジテレビの『ニュースJAPAN』においては、キャスターとしての能力以外に番組の構成等もまかせられるためキャスター編集長と呼ばれている。因みに、海外ではキャスターが番組構成を行う編集長を兼務している事が多い。
海外のキャスターは、番組の編集長を兼務しているケースが多いため、主に記者経験の長い報道記者が務めていることが特徴として挙げられる。就任年齢は、ブラジルGloboの『Jornal Nacional』のウィリアム・ボネーや韓国MBCの『MBCニュースデスク』のオム・ギヨンのように30代後半のものもいれば、アメリカABCの『ABC World News』のチャールズ・ギブソンのように60代前半のものもいるなど局によってまちまちである。
[編集] 日本でのキャスター
- 日本では、ジャーナリスト、アナウンサー、フリーアナウンサーもキャスターと言われ、キャスターという言葉自体曖昧に使用されている。「日経エンタテインメント!2006年12月号」の「テレビ証券」で、「アメリカのアンカーパーソンで考えれば、日本の女性キャスターでこれに該当する人は、安藤優子、田丸美寿々と数えるほどしかいない。」と、指摘されている。
- 日本の場合、他国と違って記者出身のキャスターが少ないことも特徴として挙げられる。これは、ニュース番組の創成期に新聞社・通信社の論説委員や記者などを中心に外部からキャスターを起用し、自前でキャスターを育ててこなかったことや主要民放局の大株主である新聞社の影響力が、非常に強かったことが背景として挙げられている。実際、筑紫哲也は朝日新聞記者時代に、朝日からの「社命で」テレビ朝日でキャスターを務めるハメになったと自著「ニュースキャスター」で明らかにしている程である。
[編集] アメリカでのキャスター
- アメリカでいうキャスターは、アンカーパーソンにあたる。
- アメリカの場合、ローカル局の記者からスタートし実力をつけてから本社で記者を務め、40代~50代でキャスターになるのが定番となっている。新人キャスター、アナウンサーが全国区のニュースを読む事はない。
- 2006年9月にウォルター・クロンカイトやダン・ラザーなどの大物キャスターを輩出した『CBSイブニングニュース』のキャスターに就任したケイティ・コーリックのように近年では女性の活躍も目立ってきている。
[編集] イギリスでのキャスター
- イギリスでいうキャスターは、プレゼンターにあたる。
- イギリスの場合、アメリカと同様に、取材経験を積んだ記者が40代~50代でキャスターを務めるのが定番となっている。
- イギリスでは、キャスターの引き抜きや移籍が多いのも特徴として挙げられる。例えば、BBCにいた記者がITVに移籍したり、ITVのキャスターがBBCに移籍したりしている。
- また、同じ英語圏からか元アメリカ国務省報道官のジェームス・ルービンのようにアメリカ人がキャスターを務めるケースもある。
[編集] フランスでのキャスター
- フランスでいうキャスターは、ニューズリーダーにあたる。
- フランスの場合、アメリカと同様に、取材経験を積んだ記者がキャスターを務めるのが定番となっていたが、近年では、M6でキャスターを務めるメリッサ・テュリオのように、入社3年でキャスターを務めるケースも出ている。
[編集] ブラジルでのキャスター
- ブラジルでいうキャスターは、Apresentadores(プレゼンターの意味)にあたる。
- ブラジルの主要ニュース番組のキャスターの殆どが、Globoのキャスター経験者である。
[編集] 韓国でのキャスター
- 韓国でいうキャスターは、アンカーにあたる。
- 韓国の場合、取材経験を積んだ報道次長、若しくは報道部長クラスの記者が、キャスターを務めるのが定番となっている。
- 嘗ては、アメリカ同様男性が、単独でキャスターを務めていたが近年では女性キャスターと2人で番組を進行している。
- 韓国でのキャスターは、あくまでニュースを読むことに徹していなければならず、日本のようにキャスターがふざけたり長々と私見を述べたりすれば視聴者から苦情が殺到すると言われている。
[編集] キャスターの歴史
- 日本でのニュースキャスター第1号は、1962年10月1日にスタートした『JNNニュースコープ』(TBS)の田英夫と戸川猪佐武とされる。
- NHKでは1974年4月、磯村尚徳による『ニュースセンター9時』が放送開始。それまでの『NHKニュース』とは違い、喋り言葉を積極的に使い、政治→経済→社会というNHKでは当たり前だった放送順序の慣例を意識的に排除するなどの変化を見せた。
- 1984年10月1日にスタートした『FNNスーパータイム』(フジテレビ)においては、今までに無い視聴者の目線を意識したニュースレポートや特集などを組み、メインキャスターの逸見政孝や安藤優子はそれを象徴する存在となった。
- 1985年10月にスタートした久米宏による『ニュースステーション』(テレビ朝日)は、それまでのニュース番組を変えた番組と認識されている。インタビュー取材でよく久米は「役回りはニュースキャスターでなく司会者」と発言している。
- 1989年10月、筑紫哲也による『筑紫哲也NEWS23』の放送がスタート。平日のニュース番組でキャスターの名前が番組名に記載されたのは初めて。
- 2006年4月、NHKの『ニュースウオッチ9』が放送開始。キャスターの柳澤秀夫と伊東敏恵はニュースの紹介に徹し、原稿やプロンプターを一切使わずに放送する試みを行う。
[編集] 日本初の女性キャスター
- それまで男性のキャスターが、ニュース番組の進行を務める事が多かったが、1980年代に各局が女性キャスターを起用し始める。その先駆けとなったのが、「きょうの出来事」(日本テレビ)を担当した櫻井よしこである。だが実際は、1978年に田丸美寿々が「ニュースレポート」を担当し、同氏が既にキャスターの位置付けをとっており、田丸を日本初の女性キャスターだとする意見もある。様々意見は分かれるが、「テレビ証券」においては「田丸さんは、日本でいうキャスターの先駆けで、ジャーナリストからアンカーを務める米国流で言えば、櫻井さんが日本初のアンカーパーソン。」と、両者ともにキャスターの先駆けである事に違いはない、と言われている。
[編集] キャスターとアナウンサーの違い
- 明確な境界は存在しないが、あえて指摘するとすれば、アナウンサーは私情を挟まず原稿を読むだけで、キャスターはニュースを自分の言葉に変えて伝えるということが挙げられる。
[編集] キャスターと私見
キャスターが私見(主義・主張)を述べて良いか否かという論点がある。CBSを例に挙げると、ニュースの最後に自論のコラムを放送していたのはエドワード・R・マロー(平日夜のラジオニュースなどで)。あくまで放送で私見は控えるべきだという考えはウォルター・クロンカイトがその代表例。マローもクロンカイトもだが、放送判断などの編集権を担っているキャスターの場合、放送で発言しなくても「放送内容」で主張を表すことができる。
『JNNニュースコープ』で17年間キャスターを務めた古谷綱正はあくまでストレートにニュースを伝えることに徹し「日本のウォルター・クロンカイト」と評された。当時古谷は「キャスターがいい気になって意見を言うのは、反感を呼び不信感を煽るでしょう。大切なのはニュースに対する『姿勢』というものです」とあくまで客観的にニュースを伝えることこそが重要だとした。
フジテレビ『FNNニュースレポート23:00』のキャスターを務めた俵孝太郎は「ニュースは鉄仮面のごとく読むべきだ」と述べ、『JNN報道特集』で長年キャスターを務めた堀宏は『サイゾー』のインタビューで、「(放送法の規定を挙げた上で)ニュース番組は新聞のように評論をすべきではない」と発言している。
『きょうの出来事』(日本テレビ)で長年アンカーパーソンを務めた櫻井よしこは「アンカーパーソンは言葉で批判するのではなく、データの選定で批判するべき。」と、データの上でのキャスターである為、キャスターは私的なコメントで判断を下してはいけないと語っている。
現在、多くの報道番組はキャスターが自分の思想・意見を積極的に述べ、取り上げるニュースにもそれが反映されるという形態が多い。こうしたキャスターの傾向に対しては、雑誌等の一部活字メディアでは、こうしたキャスターを「電波芸者」と揶揄している。FOX News Channelのビル・オライリーに代表されるようにキャスター(ホスト)がトークラジオのように進行する番組が人気を博している。評論家や識者が集まってトークする番組も人気である。