トヨタ・ヴィッツ
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ヴィッツ(Vitz)はトヨタ自動車の1000-1500ccクラスのハッチバック型自動車。
スターレットの後継車で、欧州などでも生産・販売される国際戦略車の一面をもつ。
日産・マーチ、ホンダ・フィットとともに、日本のコンパクトカー御三家といわれる。
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[編集] 概要
1999年に、トヨタの世界戦略車として初代モデルが発売された。それまで日本ではコンパクトカーは積極的に消費者から選択される商品とは言い難く、価格の安さのみに価値が置かれる傾向が強かった。しかし、ヴィッツはギリシャ人デザイナーのソティリス・コヴォスによる洗練されたデザインや品質、環境性能の高さなど、それまでの日本のコンパクトカーとは一線を画する存在感を有し、爆発的なヒットを記録した。
1996年発売のマツダ・デミオから火がつき始めていたコンパクトカーブームに拍車をかけ、他社もホンダのフィットや日産マーチ(3代目:K12型)、三菱コルト等の対抗車種を投入することになり、それまで安さだけが取り柄とも言えた日本のコンパクトカー市場に大きな影響を与えた。その意味でも、「日本の小型車を変えた存在」として現在でも評価が高い。
TRDの手により欧州向けモデルのディーゼルターボ用ユニットと中近東向けモデルの大容量ラジエーターを流用し「RS」に装着したモデル「ヴィッツRSターボ Powered by TRD」も発売されている。
また、ヴィッツ限定のワンメイクレース「ヴィッツレース」、同じくワンメイクラリー「ヴィッツラリー」が開催され初心者に対するモータースポーツの門戸を広げる重要な車の一つであると言える。
2005年2月にはモデルチェンジして2代目に移行。生産はトヨタグループの豊田自動織機が行っている。
[編集] 歴史
[編集] 初代(1999年-2005年)SCP10/NCP10系
- 1999年1月、初代ヴィッツ発売。当初のラインナップは1SZ-FE型1000cc4気筒DOHC16バルブ(70ps)のモデルのみ。1999-2000日本カー・オブ・ザ・イヤーをプラッツ、ファンカーゴと共に受賞(トヨタとしては初の3連覇となった)。
- 1999年8月、1300ccの(2NZ-FE型)4WDモデルが追加される。
- 1999年10月、インターネット限定で「ユーロスポーツエディション」を発売。欧州仕様の「ヤリス」のサスペンションを流用し、日本仕様には省かれていたスタビライザーを装備。
- 2000年5月、外装色ペールローズメタリックオパールが、第2回 オートカラーアウォード2000、グランプリ&オートデザイナーズ賞を受賞。
- 2000年10月、1500cc 4気筒DOHC16バルブ1NZ-FE型(110ps)を搭載したスポーツグレード、「RS」が発売される。なお、2NZ-FE型1300cc4気筒DOHC16バルブ(87ps)の「RS」も存在する。
- 2001年3月 マイナーチェンジ。
- 2003年8月20日、フェイスリフトを含む初めての大きなマイナーチェンジを実施。
- 2004年2月3日、アイドルストップ機構付の「ヴィッツ U "インテリジェントパッケージ"」が省エネ大賞受賞。エンジンは1300cc4気筒DOHC16バルブの2SZ-FE型。トランスミッションはCVT。
- 2004年5月 特別仕様車NEO EDITION追加。
- ちなみに発売当初トヨタは、万が一売れなかったことを考えて従来車種のスターレットもしばらくの間併売していた。
[編集] 2代目(2005年-)KSP90/SCP90系
2005年2月1日、初のフルモデルチェンジをし、2代目ヴィッツを発売。2005年2月の販売台数で4年半ぶりに1位になった。キャッチフレーズは、「水と空気とヴィッツ」、「本日の人生に、ヴィッツ」である。
プラットフォームを刷新し、ボディサイズが一回り大きくなったほか、衝突安全性が大きく強化され、衝突試験速度を従来の50km/hから衝突時のエネルギーがおよそ2割増える55km/hに引き上げている。トヨタ自動車では今後他の乗用車でも同様の衝突安全基準を採用するとしている。 エンブレムには"N"をかたどった物を採用。これは以降ネッツ店で専売となる車種にも採用されている。 また、日本向け仕様では3ドアモデルが廃止となった(ライバル車のマーチも同年8月のマイナーチェンジで3ドアモデルが廃止された)。欧州・北米向け仕様には引き続き設定される。
エンジンはダイハツ製の1KR-FE型1000cc直列3気筒DOHC12バルブエンジン、2SZ-FE型直列4気筒1300ccDOHC16バルブエンジン、4WD用の2NZ-FE型直列4気筒1300ccDOHC16バルブエンジン、1NZ-FE型直列4気筒1500ccローラー・ロッカーアーム式DOHC16バルブエンジンとなり、トランスミッションはCVTを基本にスポーティグレードの「RS」には5速MTも用意、四輪駆動車は4速ATのみとなる。
メータ添え付けのデジタル時計はプリウスなどと同様に電波時計を採用している。
メーカーオプション(一部グレードには標準装備)で「スマートエントリー&スタートシステム」を用意する。これはスマートキーを携帯することにより、ドアハンドルやスイッチで施錠・開錠ができるスマートエントリーと、プッシュボタン式エンジンスイッチのスマートスタートをサポートする。
なお、欧州では2代目ヤリスとして発売されたが、今回のモデルからは米国にも3ドア車が輸出されることが決まっている(カナダでは3ドア、5ドアとも初代から取り扱っている)。
- 2005年4月、F/B "Intelligent Package" 発売。
- 旧モデルにもある、自動でアイドルストップを行うシステムを搭載。ベース車にエアスパッツを装着することにより空気抵抗を低減させている他、エンジン停止時の空調のためにオートエアコンを搭載している。なおエンジン再始動時には通常の鉛バッテリーではなく、搭載しているリチウムイオンバッテリーを使用するため、オーディオ等の電装類も通常通り使用可能である。
- 2005年8月23日、特別仕様車 F"クリームコレクション"発売。
- F1.0 2WD車及びF1.3 4WD車をベースに、特別仕様として外装色に旧モデルで人気の高かったピンク系色(ローズメタリックオパール)をラインナップし、内装色をベージュ系色(グレージュ)とした他、スマートエントリー&スタートシステムの標準装備、オーディオレス化を行い、価格はベース車と同じとした。当初の予想より女性ユーザの比率が低かったため、人気のカラー追加となった(旧モデルでの近似カラー名は「ペールローズメタリックオパール」)。
- 2005年12月19日、部分改修及び新グレード"I'll"を追加。
- I'll(アイル)
- 部分改修
- ディスチャージヘッドランプがRS以外のグレードでもメーカーオプションで装備可能に、ヘッドライトのマニュアルレベライザー(ディスチャージヘッドランプ搭載車はオートレベリング機能)が追加、1.5Xグレードの標準装備の充実化、等。
- 外装色の廃止及び追加。外装色のグリーンマイカメタリック及びペールオレンジマイカメタリックが廃色となり、ライトグリーンメタリック、ダークブルーマイカメタリック、ブルーマイカメタリック(RS専用色)及び、F"クリームコレクション"の特別仕様色であったローズメタリックオパールが追加された。また内装色にグレージュが追加された(ただしグレードや外装色により内装色は固定)。
- 蛇足ながら、タカラトミー社製ミニチュアカーのトミカではグリーンマイカメタリックが標準色となっているため、こちらは現在でも新品で入手可能である。
- 2006年6月5日、特別仕様車F"Advanced Edition"を発売。
- ディスチャージヘッドランプ、カーテンシールド及びサイドエアバッグを標準装備とし、安全運転・乗員保護に配慮した。
[編集] CM
[編集] 初代
[編集] キャッチコピー
- 「21世紀 My Car」(前期)
- 「Vitz, Beautiful」.(中期)
- 「Very Vitz!」(後期)
- 「ヴィッツ、愛しちゃった。」(後期)
[編集] CMソング
- ジリオラ・チンクエッティ - 『雨』
[編集] 2代目
[編集] キャッチコピー
- 「水と、空気と、ヴィッツ。」
- 「本日の人生に、ヴィッツ。」
[編集] CMソング
- ランディ・ヴァンウォーマー - 『アメリカン・モーニング』
- マルーン5 - 『サンデイ・モーニング』
- ジェイムス・ブラント - 『ユア・ビューティフル』
[編集] 出演
[編集] 車名の由来
- VITZ ドイツ語の「WITZ」才気、機知からの造語。
- 海外では「YARIS」(ヤリス)の名称で販売される。なお、初代はカナダ、オーストラリア、中国で「ECHO」(エコー)を名乗っていたが、新型では日本を除いて全てヤリスに統一される。
[編集] 派生車種
[編集] 初代
- プラッツ(コンパクトセダン。2005年にベルタへ)
- ファンカーゴ(背高コンパクト。2005年にラクティスへ)
- bB(北米名サイオンxB。2代目はパッソ/ダイハツ・ブーンの派生車種に変更)
- ist(同サイオンxA)
- シエンタ(3列シートを持つスモールミニバン)
- WiLL Vi(2001年末生産終了)
- WiLL CYPHA(2005年生産終了)
- プロボックス(商用車)
- サクシード(商用車)
- ポルテ
- ラウム(2代目)
- ヴィオス(アジア市場向けエントリーセダン)