RPG-7
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RPG-7 (ロシア語:РПГ-7エールペーゲー・スィェーミ)は、ソ連の開発した歩兵携行用対戦車擲弾(ロケット弾)発射器。
名称は、ロシア語で「手持ち式対戦車擲弾発射筒を意味する「ручной противотанковый гранатомётルチュノーイ・プラチヴァタンコーヴィイ・グラナタミョート」の頭文字をとった略称から作られた。英語でRocket-Propelled Grenade(ロケット推進擲弾)と綴られる通り、対戦車擲弾が砲身から射出後に弾体の固体ロケットに点火し飛翔するため、厳密な意味でのロケット砲ではない。
イスラエルのメルカバ主力戦車やイギリスのチャレンジャー主力戦車などの、対成形炸薬弾防御に特化した戦車以外がRPG-7の成形炸薬弾を側面から食らうと行動不能になる程の威力がある。
日本においては、九州南西海域工作船事件において北朝鮮工作船乗組員がこれを使用したため有名になった。
また、発射時の後方噴射(バックブラスト)が激しく、射手の位置が判明しやすいため、別名スーサイドウェポン(suicide weapon,自殺兵器)と呼ばれる。 これにより射手は反撃を避けるため発射後速やかに移動することが必要である。
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[編集] 開発史
RPG-7は、構造が単純で手軽に使用でき安価に製作できるわりになかなかの威力を発揮するため、発展途上国の軍隊やゲリラなどにより幅広く使用されている。少なくとも40カ国が正規に採用しており、様々なモデルが9カ国以上で生産されている。特にこの兵器によってゲリラやテロリストが容易に戦車をも破壊しうる火力を持つ様になった事が、いわゆる低強度紛争(LIC)の活性化の要因の一つとなっている。
第二次世界大戦末期にドイツ軍が開発したパンツァーファウスト250を発展させ、大量生産されたRPG-2対戦車無反動砲を更に発展させ、ロケット推進機能を追加して射程の延長と、弾道の直進化により命中率の向上を狙った改良型がRPG-7である。1961年にソ連軍に最初のRPG-7が渡され、小隊向けの対戦車兵器として普及していった。RPG-2と入れ替わるように普及し、以後の携行用対戦車兵器は、RPG-7と1970年採用の空挺部隊用の改良型RPG-16が主力となった。1973年の第四次中東戦争においては、エジプト軍が大規模に実戦投入し、イスラエル軍の戦車を多数撃破し、威力を認められ逆にイスラエル軍でも採用されている。その他、冷戦期および以降においては、アフガニスタンやアフリカ・中東を初めとする世界各地の紛争で実戦使用された。
また、防衛庁でも少数を「研究用」に購入し、自衛隊の装備品に対する各種のテストに使用している。
現在のロシアで生産されているモデルは、3種類の弾頭が使用できるRPG-7V1である。
[編集] 設計
発射器は、単純に加工された鋼鉄の筒であり、直径40mm、全長953mm、重量7kgである。中央部分は木材に覆われており、兵士を発射時の熱から守るようになっている。尾部はラッパ状に広がっており、発射の際のバックブラストから操作している兵士を守り、反動を相殺させる役割を持っている。一般的に光学照準器が用いられるが、これは開発当時のNATOの戦車の車高を2.7mに仮定して測遠、横方向への移動目標を狙うことができるように照準目盛が設定されており、これに当てはまらない目標に対してはあまり役にたたず、移動目標に対する偏差照準も面倒であるため、本体に固定装備された簡易なアイアン・サイトを使って300m以内から射撃することが好まれる。他、受光型赤外線照準装置や暗視装置も提供されている。また中国製などでは軽機関銃のようにバイポッド(二脚)やキャリングハンドルが追加され、実用性を増している。
重量は2.5kgから4.5kg、長さが70mmから85mmという大型の弾頭本体に誘導装置は無く、移動目標に命中させるには熟練を要する。引き金を引くと、無反動砲式に撃ち出された弾頭は115メートル毎秒の速度に加速、10mの距離で固体ロケットに点火し、500mの距離まで最大295メートル毎秒に加速し、その後は慣性によって飛翔する。前方の小型の安定翼が弾頭の飛翔を安定させるためゆったりした回転を与え、後方の大型の安定翼が弾頭の直進を助ける。確実な命中を求めるためには可能な限り近距離で射撃することが重要である。熟練した兵士なら150m以上、条件次第では300mの距離で命中させることができる。アフガニスタンの兵士は80m以内に接近して射撃することで確実に標的を撃破した。最大射程は時限信管により決定され、900mから1100mの間であるが、一般的には920mである。この機能は中国製では省略されており、自爆せずに失速するまで飛び続ける。ヘリコプターのような目標に対して弾幕を張るために、時限信管を短く設定して発射することもできる。
[編集] 弾頭
弾頭には2種類用意されており、非装甲車両や人員といった軟目標には通常の榴弾を使用し、装甲車両やトーチカには成形炸薬弾を使用して破壊する。
またそれ以外にも照明弾やスモーク弾、非致死性毒ガス弾、さらに焼夷弾といった様々な特殊弾頭が用意されている。ロシアや旧ワルシャワ条約機構所属の国家、さらに中国ではサーモバリック(熱圧)弾頭も開発されている。サーモバリック弾頭とは、トンネルや家屋に有効な爆発時の圧力で攻撃する弾頭である。近年では一般的になった複合装甲を貫通するため、成形炸薬弾を2個搭載したタンデム弾頭も開発されている。
[編集] 設計
以下の数字は、RPG-7の販売元、ロソボロンエクスポールト社(Rosoboronexport)による。
発射器
- 口径:40mm
- 重量:7kg
- 全長:950mm
弾頭
- PG-7VL-汎用弾頭
- 弾頭:成形炸薬弾
- 重量:2.6kg
- 直径:93mm
- 貫通能力:600mmのRHA(Rolled Homogeneous Armour、圧延均質甲鈑)を貫通
- PG-7VR-重装甲用弾頭
- 弾頭:タンデム成形炸薬弾
- 重量:4.5kg
- 直径:105mm
- 貫通能力:爆発反応装甲を貫通後、RHAを750mm貫通
- TBG-7V-対歩兵用、市街戦用弾頭
- 弾頭:サーモバリック弾頭
- 重量:4.5kg
- 直径:105mm
- 殺傷能力:半径8m
[編集] 登場作品
ゲーム
- メタルギアソリッド3
- メタルスラッグ
- セイギノヒーロー
- ひぐらしのなく頃に解
- America's army
- バトルフィールド2(PC版では拡張パックの『スペシャルフォース』で使用可能)
- バイオハザード4(ゲーム中に名称は登場しない)
- 紅蓮に染まる銀のロザリオ
映画
- 宣戦布告
- ブラックホーク・ダウン
- レッド・アフガン
- レッド・ストーム
- ランボー2
- ターミネーター3
アニメ
- BLACK LAGOON
- リーンの翼(ただし、発射された弾頭にロケット推進剤の入ったチューブと安定翼が装着されていない描写のミスがある)
- 機動警察パトレイバー 2 the Movie(ただし、台詞では「RPG」とされているが作中での描かれ方はどう見ても対戦車ミサイルのそれである)
コミック
- GUNSMITH CATS BURST