PIAT

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PIAT (Projector, Infantry, Anti Tank)は、第二次世界大戦当時、イギリス軍が装備した対戦車擲弾筒である。

[編集] 構造

一言で言うと強力なバネを用いた迫撃砲である。

バズーカ（米）やパンツァーシュレック、パンツァーファウスト（独）等といった同時代の対戦車擲弾筒が、言ってみればパイプに弾体を押し込み、ロケット弾の噴流を後方に逃がす仕組みになっているのに対し、PIATでは後方が閉鎖され、そこに撃針のついた底板とバネが配置されている。

発射筒外部には肩当て、トリガー、照準、一脚が付いている。PIATの材質にはそれほど上質のものは使われなかったが、各部は頑丈に出来ていた。

PIATの射撃手順は以下の通りである。まず、90kgものテンションがあるバネを発射位置にコッキングする。小柄な兵士だとコッキングに失敗した際、バネにより飛び出した発射筒で顔を打つ恐れがあったため、軍でも「身長の低い兵士は注意するように」と注意を促していた

次に、照準器を引き起こす。照準器は70ヤード（約64m）、100ヤード（約91m）のどちらか望む方に設定できた。

照準の設定が終わったところで、弾体を装填する。写真を見れば分かるように、PIATは発射筒前方上方が開放されているので、ここから発射薬、そしてグレネードを装填する。これで、発射準備は完了する。

そして敵戦車を照準設定距離まで引き付け、引き金を引く。そうすると、予め縮められたバネが撃針のついた底板を押し上げ、弾体底部のごく少量の発射薬を発火させ、弾体を飛翔させる。このとき、設計上では火薬の圧力でバネは再び縮められ発射位置まで後退する。しかし、大概後退に失敗し、再装填の前に手動で撃針のついた底板を後退させなければならなかったと言われている（しかも敵前で）。

この独特の構造により、バズーカや パンツァーシュレック、パンツァーファウストと異なり閉鎖空間や後方に空きが無い個所からの安全な発射が可能となっている（他は後方噴流があるため、後方が開けている場所でないと発射できないという制約がある）。

対戦車戦闘時の射程距離は約100m、建築物などに対する曲射の場合は約350mで、使用される成形炸薬弾は100mmの装甲板を貫徹する能力を持っていた。

英軍兵士の間では装填時の苦労や射程の短さ、また砲身と呼べるものが事実上存在せず、それゆえの命中率の悪さもあって、PIATの評判は芳しくない。ただ、歩兵が携行でき、しかも敵戦車に効果のある唯一の兵器として広く使用された。ただ、後継にバズーカが配備されると次第に置き換えられていき、1950年に退役した。

＜兵器データ＞

• 口径：76mm
• 全長：99.04cm
• 重量：14.4kg
• 砲身長：86.4cm
• 弾体長：38.1cm
• 弾体重量：1.35kg
• 対戦車有効射程：90m
• 最大射程：685m
• 使用弾種：対戦車成型炸薬弾、破片榴弾、煙幕弾など