赤嶺旋風

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赤嶺旋風（あかみねせんぷう）は1947年の暮れに当時の中部日本ドラゴンズの球団代表・赤嶺昌志が辞任した際11人の選手を連れて球団を去った事をきっかけに1952年まで続いた戦後まもなく～2リーグ制移行後初期のプロ野球を代表する事件である。

目次 1 赤嶺による中日球団の運営 2 赤嶺代表解任と中日集団退団 3 大映への加入と赤嶺の永久追放 4 大映の内紛と球界再編による赤嶺復帰・松竹への集団移籍 5 松竹の合併と広島への移籍失敗 6 赤嶺旋風の影響

[編集] 赤嶺による中日球団の運営

中日球団は1936年に大日本野球連盟名古屋協会(通称名古屋軍)として創立しているが、1937年からは親会社新愛知新聞社のライバル名古屋新聞社が興した名古屋金鯱軍（1941年に翼軍と合併し消滅。）の創立に参画していた赤嶺を呼び球団経営にあたらせた。その際赤嶺はチーム編成にもかかわり、ほかの球団が鼻にもかけなかった東都大学野球連盟に着目しそこから新人選手を発掘したり、阪急軍と門司鉄道局の野球部の選手引き抜き合戦をして大量の選手を獲得したりと手腕を発揮した。そして1942年に親会社とかつての所属会社がいわゆる戦時中の新聞統制令により合併して中部日本新聞となり直接経営が禁じられると、初代オーナー大島一郎の個人的資金援助を頼りに一人で球団を切り盛りし1944年には理研工業に選手を預けるというアイデアでチームを解散の危機から救っている。戦後も大島オーナーの個人的資金援助でチームを切り盛りするがこの辺りから赤嶺の立場が軽んじられるようになる。赤嶺が戦後プロ野球再開時の連盟登録申請の際に「中部日本」と書いたことを材料に、中日本社は球団経営に直接的に口をはさむようになった（※　これは大和球士の著作から、大和は連盟登録の際に休止時の球団名「産業軍」もしくは「名古屋軍」と表記しておれば流転の人生を送らずに済んでいたと分析しているがこれについては生前赤嶺本人も口にしていて「一生一代の不覚だった」と後悔していたほど）。加えてまだ新人選手だった杉浦清を選手兼任で監督にすえるなど人事にも介入、赤嶺がチームを作りチームの危機を救う防波堤になったのにたった4行で介入したとあっては選手は納得しなかった。とりわけ主力は赤嶺が直にスカウトした選手ばかりで親同然に慕っていたから杉浦監督に反目、内紛は日常茶飯事にさえなった。

[編集] 赤嶺代表解任と中日集団退団

中日球団は1946年に8位（最下位）、翌1947年には2位でシーズンを終えているが首位の大阪タイガースとは12.5ゲーム差でお世辞にも優勝争いに絡んだといえなかった。これを期に本社はシーズンオフの11月1日に赤嶺を球団代表から解任、本社から中村三五郎を招請し球団代表に据える。内紛の全責任を赤嶺におっかぶせてチームの再建に着手する肚だったが、赤嶺の後を追って12人の選手が集団で退団。彼らは中日球団の主力だっただけに、この集団離脱は中日球団はもとより日本野球連盟に混乱を巻き起こす。

[編集] 大映への加入と赤嶺の永久追放

中日を集団で退団した12人のうち前年巨人から移籍していた藤本英雄は、この年総監督として復帰した三原脩によって巨人に呼び戻される。残り11人の選手を連れて行動を共にする事にした赤嶺はプロ野球経営に意欲を燃やす「ラッパ」こと大映社長の永田雅一が興した新球団「大映球団」に10人の選手（※　11人のうち松尾幸造が引退）を預け日本野球連盟に加入しようとした。しかし連盟は九州で結成記念興行を行ったことを問題とし却下。それでもめげない赤嶺は当時本社東京急行電鉄オーナーの五島慶太が公職追放された影響から経営が不安定になっていた東急フライヤーズと対等合併させ「東急大映（急映）フライヤーズ」として腰を落ち着けさせるが却下される。しかも東急との合併交渉の間に国民野球連盟の大塚アスレチックスと行動を共にしていた事が問題とされ、赤嶺は「球界を混乱に陥れた」事を理由に永久追放処分を食らってしまう。球界首脳は永久追放にした事で混乱が収束すると思っていた節があるらしかった。

[編集] 大映の内紛と球界再編による赤嶺復帰・松竹への集団移籍

東急と共同で初のプロ野球経営に参画した大映は1948年のオフオーナーに東急の大川博常務が就任したのを機に経営から離れる。（このため急映は東急に戻る）そして大東京軍→ライオン軍→朝日軍の選手で作った球団ゴールドスターを起点とする球団金星スターズに目をつけて買収。大映スターズとし初めて単独のチームを持ち、同時に赤嶺派の選手10人のうち9人が移籍してきた（※　10人のうち藤原鉄之助が巨人に移籍し離脱）。しかし「ラッパは嫌だ!」「赤嶺の息のかかっているものとプレーするのは嫌だ!」と拒否反応を示す選手も少なくなく、内藤幸三（阪急ブレーブスへ移籍。）・坪内道則・西沢道夫(両者とも中日に移籍)など退団者が続出する。

そして、1949年のオフに将来の懸案であった二リーグ制移行について議論した際当時の8球団が方法をめぐって対立。結果喧嘩別れという形で日本野球連盟が解散しセントラル・リーグ・パシフィック・リーグに分裂する。この際、セ・リーグは赤嶺を連盟総務として呼び戻す。これはパ・リーグへ参画した大映スターズ内にいた赤嶺派の選手を引き抜くためであり、結局これが功を奏し赤嶺派の選手9人はセ・リーグに参画した松竹ロビンスに移籍する。

[編集] 松竹の合併と広島への移籍失敗

赤嶺派9人の加入により松竹ロビンズはセ・リーグ初代覇者となるが、日本シリーズ中に真田重蔵と赤嶺派の一人だった小鶴誠の対立から内紛が勃発。これが遠因となって小西得郎が監督辞任した1951年以降にチームが弱体化する。結局松竹球団は、1952年当時7球団制であったセ・リーグが6球団制移行のための特別ルール「勝率3割の最下位のチームは他球団と合併して消滅する」のために大洋ホエールズ（当時は下関市が本拠地）と合併、「大洋松竹（洋松）ロビンス」となり消滅する。これを機に赤嶺は赤嶺派の選手と共に広島移籍を画策するが、赤嶺の球団代表就任が中国新聞のスクープですっぱ抜かれると頓挫。結果として選手が移籍しただけで終わり、赤嶺は連盟総務として残ることとなった。以後赤嶺はプロ野球の規約を和訳するなどルール作りに残りの人生を捧げることとなった。

[編集] 赤嶺旋風の影響

• 赤嶺に主力選手を引き抜かれた中日にとっては、結果として今日の球団の基礎を築く苦い経験となった。赤嶺派の集団退団が結果として今までのチームが赤嶺の個人商店であったことに気づかされることになり、中日本社が本格的に球団経営に関与するきっかけとなった。杉浦監督が選手一本（名目上は助監督兼任）で再出発すると技術顧問の天知俊一を監督として招聘。赤嶺派との対立から大映を退団した西沢・坪内を入団させ、更に杉下茂を加入させて土台を固め1950年にはAクラス2位の成果を残す。1951年に名古屋鉄道との共同参画により「名古屋ドラゴンズ」となりさらに監督が坪内道則に交代し杉浦が移籍と一時混乱するが1954年に名古屋鉄道が撤退し旧に復しさらに天知俊一が復帰するとチームがまとまりついに球団史上初のリーグ優勝・（今のところ唯一の）日本一を手にする。
• 杉浦は1963年に専任として監督復帰した際も人脈でミソをつけている。前任の濃人渉監督が常に優勝争いを演じていたのに中日本社が「東京六大学野球連盟所属の大学出身の人気監督がほしい」と解任したため、濃人に連なる主力の江藤愼一・森徹・高木守道が反目。1963年こそ巨人と優勝争いを演じたものの、翌1964年には開幕戦で躓いてチームが空中分解。杉浦はシーズン途中で休養の後解任され、チームは移行後初の最下位に沈んだ。
• 赤嶺旋風の素地となったのはとにもかくにも選手間の引き抜きに関する規約が無かったことであり、当時は選手の獲得をめぐって二重三重の契約も横行していた。この異常な状況はGHQでも問題になり、これを契機にセ・パ両リーグ共通の選手契約統一契約書が規定。トレードにまつわるルール作りという点で影響を及ぼした。また、1951年からは第3者による中立機関であるコミッショナー事務局が作られ適正なプロ野球運営が図られるようになった。