梅毒
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梅毒(ばいどく)は、スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマ (Treponema Pallidum) によって発生する感染症、性病。昔は「黴毒」と表記した。
クリストファー・コロンブスが新大陸発見後ヨーロッパに持ち帰り、以後世界に蔓延したといわれる(異論もある)。日本では1512年に記録上に初めて登場している。抗生物質のない時代は確実な治療法はなく、多くの死者を出した。慢性化して障害をかかえたまま苦しむ者も多かったが、現在ではペニシリンなどの抗生物質が発見され、早期に治療すれば全快する。罹患患者も減少しているが、根絶された訳ではない。菌自体に抗生物質に対する耐性が出来、長期的な辛抱強い治療が求められる場合もある。治療を途中で止めないことが必要である。
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[編集] 感染経路
主に性行為・オーラルセックスにより感染、皮膚や粘膜の微細な傷口から侵入し、進行によって血液内に進む。これ以外にも母子感染、血液を媒介とする感染もある。母子感染の場合、子供は先天梅毒となる。
[編集] 症状
感染後約3週間で発症する。治療しない限り体内に残り、最終的には死亡する。現代においては抗生物質の発達により、第3期、第4期に到達することはほとんどなく、死亡にまで至るケースは稀。
[編集] 第1期
感染後3週間~3ヶ月の状態。菌が侵入した部位に固まり(無痛性の硬結で膿を出すようになり、これを硬性下疳と言う。)を生じる。固まりはすぐ消えるが、稀に潰瘍となる。また、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れ、これを横痃(おうげん)という。6週間を超えると梅毒検査で陽性反応が出るようになる。
[編集] 第2期
感染後3ヶ月~3年の状態。全身のリンパ節が腫れる他に、発熱、倦怠感、関節痛などの症状がでる場合がある。 バラ疹と呼ばれる特徴的な全身性発疹が現れることがある。赤い目立つ発疹が手足の裏から全身に広がり、顔面にも現れる。治療しなくても1ヶ月で消失するが、抗生物質で治療しない限り原因菌は体内に残っている。
[編集] 第3期
感染後3年~10年の状態。ゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生する。
[編集] 第4期
感染後10年以降の状態。多くの臓器に腫瘍が発生したり、脳、脊髄、神経を侵され麻痺性痴呆、脊髄瘻を起こし(脳梅)、死亡する。
[編集] 治療
男性の場合は泌尿器科・性病科、女性の場合は産婦人科・性病科を受診。ペニシリン系の抗生物質の投与で治癒する。治癒に要する期間は2~8週間。 なお、感染してから1年以内の梅毒を治療した場合、初日だけ38度台の高熱が出ることがある。菌が一気に死滅するための反応熱であり、治療はそのまま続けてよい。
[編集] マラリア療法について
梅毒トレポネーマは高熱に弱いため、梅毒患者を意図的にマラリアに感染させて高熱を出させ、体内の梅毒トレポネーマの死滅を確認した後キニーネを投与してマラリア原虫を死滅させるという荒っぽい療法がかつて行なわれていた。ただし、この療法は危険度が大きいため抗生物質が普及した現在では行なわれていない。
[編集] 予防
[編集] 参考文献
- クロード・ケテル著『梅毒の歴史』(LE MAL DE NAPLES)藤原書店。ISBN 4894340453