ゴム
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ゴム、あるいはガム(gum)とは、元来は植物体を傷つけるなどして得られる無定形かつ軟質の高分子物質を指す。だが現在では、後述の天然ゴムや合成ゴムのような有機高分子を主成分とする一連の弾性材料を指すことが多い。これらの材料はある温度範囲で、ゴム弾性を持つゴム状態となる。漢字では「護謨」と書き、この字はゴム関連の会社名などに使われることが多い。
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[編集] 由来
古代や中世においては、今日の英語でgum、フランス語でgomme、ドイツ語でGummiなどと一群の欧州言語で表記される物質は、アルコールには不溶だが、水を含ませると著しく膨潤してゲル状になり、種類によってはさらに水を加えると粘質のコロイド溶液となる植物由来の物質を指しており、主として多糖類から構成されている。逆に、水には不溶だがアルコールには溶ける植物由来の無定形の樹脂はレジン(rejin)と呼ばれる。こうしたゴムの代表がアラビアゴムであり、また似たものにトラガカントゴムやグアーガムがある。近代の発酵工業によって新たに登場した類似物質として、キサンタンガムが知られる。これらは食品の粘度を調整したり(増粘多糖類)、接着剤、あるいは水彩絵の具の基質として用いられてきた。
16世紀になってヨーロッパ人が中南米の文化や自然産物と接触するようになってから、彼らが古来から知っていたゴム(ガム)に似ているが、それらにはない新しい性質を持った植物由来の物質がヨーロッパ社会に知られるようになり、また導入され、古来から知られていたゴム(ガム)と同じ範疇の物質としてゴム(ガム)と呼ばれた。これらは植物体に含まれる乳液(ラテックス)を採取し、凝固させることによって得られるものであった。その中のひとつはチクルの幹から得られ、人間の体温程度の温度で軟化するもので、噛む嗜好品として用いられていた。このゴム(ガム)に関しては、チューインガムを参照されたい。
もうひとつ、パラゴムノキの幹から採取されるラテックスを凝固させたものは著しい弾性を持ち、後世ヨーロッパで産業用の新素材として近代工業に欠かせない素材として受容され、発展することとなった。そのため、パラゴムノキ以外の植物からの同様の性質のゴムが探索され、また同様の性質を持つ高分子化合物の化学合成も模索されることとなった。この一群のゴムを弾性ゴムと呼び、イギリスの科学者ジョゼフ・プリーストリーが鉛筆の字をこすって(rub)消すのに適することを報告したこと(消しゴムの発祥)から、英語ではこするものを意味するrubberとも呼ばれることとなった。以下、弾性ゴムについて詳述する。
[編集] 弾性ゴム
ゴムとは、伸縮性に優れた高分子材料であり、ゴムノキの樹液(ラテックス)によって作られる天然ゴムと、人工的に合成される合成ゴムが存在する。天然ゴムがクリストファー・コロンブスによって西欧に伝えられ、グッドイヤーやダンロップなどの研究開発がゴム工業を発展させた。
[編集] ゴムの弾性
ゴムの弾性は、本来規則構造を持たない分子の配列が、外部からの力により規則性になり、これが元の不規則な配列に戻ろうとするときの力によるものである。熱力学的には応力によるエントロピーの低下(ギブス自由エネルギーの増加)が元に戻ろうとする力による弾性であるから、これをエントロピー弾性と呼ぶ。
[編集] 天然ゴム
天然ゴムはゴムノキの樹液に含まれるcis-ポリイソプレン[(C5H8)n]を主成分とする物質であり、生体内での付加重合で生成したものである。樹液中では水溶液に有機成分が分散したラテックスとして存在し、これを集めて精製し凝固乾燥させたものを生ゴムという。生ゴムも弾性材料として消しゴムなどに使われるが、硫黄による加硫により架橋させると広い温度範囲で軟化しにくい弾性材料となる。この加硫法による弾性改良はチャールズ・グッドイヤーにより1839年に発見された。硫黄の他に炭素粉末を加えて加硫すると特性が非常に改善され、その含有量によって硬さが変化する。多くの硬質ゴム製品はこの炭素のために黒色をしている。
なおイソプレンを化学的に重合させたポリイソプレンは合成ゴムの一種であるが、天然ゴムのポリイソプレンとはいくらかの構造的違いがある。まず合成ポリイソプレンでは現在のところ100%シス体を得ることはできず、少量のトランス体が含まれている。また天然ゴムはポリイソプレンの他に微量のタンパク質や脂肪酸を含むが、合成ポリイソプレンにはそのような不純物はない。
天然ゴムに含まれる微量のタンパク質や脂肪酸はポリイソプレン鎖の末端に結合していると考えられている。このタンパク質はアレルゲンとなることがある。(外部リンクの長岡技術科学大学化学系の天然ゴム研究を参照)。
日本では天然ゴムをマレーシアなどから輸入している。
[編集] 合成ゴム
合成ゴムには、ポリブタジエン系、ブタジエン・アクリロニトリル系、クロロプレン系などがある。いずれも付加重合または共重合によって得られる。
[編集] ゴムの加工
ゴムの加工工程は、素練り → 混練り → 成形 → 加硫 である。