州
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州は、地域行政区分など、多様な意味に用いられる漢語。洲の漢字の置き換えとしても用いられる。
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[編集] 中国における「州」
原義においては川の中州のことであるが、まもなく地域単位として用いられるようになり、一般に全土(天下)を九等分して九州と呼んだ。九州の名は異説が多いが、『書経』によれば、冀州・兗州・青州・徐州・豫州・荊州・揚州・雍州・梁州である(詳しくは「九州 (中国)」を参照)。漢はこれを行政区分として取り入れ、後漢は全国を13州に分けて各州に刺史を置いた。その後、行政区分の整理が行われ、州はそれまでの郡(州の下で県の上の行政単位)と同じような存在となった。最大の行政単位は道(唐)・路(宋)などと変遷し、その下の行政区分として州は存続した。
中華人民共和国の現行制度下では、州は、地区、地級市、アイマク(盟)とともに、第一級行政区画(省、自治区、直轄市)の下位に位置する地級行政単位の一種に位置づけられている。地級市は中国の全省および全自治区に設置されているのに対し、地区、州、アイマク(盟)は、分布に偏りがある。すなわちアイマク(盟)は内モンゴル自治区において、地区は黒龍江、貴州、甘粛、青海の諸省およびチベット自治区において、州は、新疆ウイグル自治区と、内地各省の少数民族地方に設置されているのである。すなわち、中国の現行制度のもとでは、州と名のつく地方行政単位は、例外なく、すべていずれかの少数民族の「自治州」となっているのである。現在設置されている州の詳細は民族区域自治を参照。
[編集] その他の漢字圏における「州」
行政単位としての州は朝鮮でも新羅時代に導入された。現在の韓国、北朝鮮で「州」のつく地名(慶州、光州、新義州など)がみられるのは、この名残である。
また、台湾では日本統治時代、行政単位として州の名が用いられた。
日本でも令制国を中国風に通称して州と呼ぶことがあった。例えば武蔵国を「武州」、甲斐国を「甲州」と呼ぶといった具合である。「国」に代えて「州」という語を使うこともあり、長野県歌「信濃の国」の歌い出し「信濃の国は十州に」の「十州」とは、信濃国に隣接する10国(越後、越中、上野、武蔵、甲斐、駿河、遠江、三河、美濃、飛騨)のことであり、また「九州」の呼称も9国(豊前、豊後、筑前、筑後、肥前、肥後、日向、大隅、薩摩)からなっていたことに由来する。
[編集] 漢字圏以外での「州」
東アジアにおける地方行政単位としての州の用例から転じて、ある国家の中で、広範な領域を持っていたり、高度な自治権を持っていたりする行政単位のことを、「県」ではなく「州」と訳す場合がある。特に、アメリカ合衆国やオーストラリアのステイト (State) 、カナダのプロヴィンス (province) 、ドイツのラント (Land) 、スイスのカントン (Canton/Kanton) のように一定の主権を持ち、連邦を構成する地域単位はほとんどの場合「州」と訳され、「県」と区別されることが多いが、スイスのカントンは、制度上は県の扱いである。
州(洲)は、中州の意味から転じて、仏教の世界観において須弥山を取り巻いて存在する四つの陸地(島)を、漢訳して四洲と呼んだ。ここから州は大陸を指す語となり、アジア大陸を亜細亜洲と呼んだり、世界を六大州に分けて大陸を中心にその周辺の島嶼や海域を含む地域を州と呼ぶ。