医官
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医官(いかん)とは、医師の資格を有する幹部自衛官のこと。軍医に相当する。なお、歯科医師の資格を有する者は「医官」とは別の制度である「歯科医官」となる。
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[編集] 採用
防衛庁の医官になるには、防衛庁所管の防衛医科大学校を卒業するか、医師の免許を持つ者が防衛庁の公募する医科歯科幹部採用試験に合格することが必要となる。
防衛医大卒業生は、卒業と同時に陸海空のそれぞれの幹部候補生となり、「曹長」の階級が与えられる。幹部候補生学校は6週間で、ごく通り一遍の幹部自衛官としての教育を受けるが、体験入隊に毛の生えた程度の域を出ない。
[編集] 医官としての勤務
幹部候補生学校の卒業と同時に、2等陸・海・空尉に任官して、研修医官となる。旧軍でも医科大学卒の者の軍医としての振り出しは軍医中尉からであったが、これは医師という特別な技能を有する者について、兵科将校とは別に尊重する必要があるためである。
昔は、ほとんどが防衛医大の研修医になったが、今は自衛隊中央病院と半々である。1外科・1内科・2外科・2内科などといったメジャーな科は3カ月ほど、それ以外の、救急・麻酔科・耳鼻科・眼科などのマイナー科は六週間ほどローテートする。あまりにも目まぐるしいので、ローテーターはほとんど医局の戦力にはならないのが現状である。
どこの病院の研修医でも事情は同じだが、防衛医大の研修医官の勤務時間は、週平均90時間ほどで、非常に過酷な仕事を強いられている。
自分の専門とする科は半年ほど研修する。2年の実務研修が終わると、1カ月ほど各部隊で健康診断を実習し、それぞれの部隊に配属される。近頃は配置場所が足りなくなり、地方の駐屯地の医務室にも配属される。配属直後、陸自衛生学校でBOC(幹部初級課程)に入校が命じられる。海では横須賀病院教育部・空では岐阜病院教育部に似たような基礎教育課程があり、それぞれ1カ月ほどの教育である。
部隊によりけりだが、最大週2日の部外通修が認められるので、その間に研鑽を積む者が多い。部隊の患者だけでは、医師としてあまりにも症例が不足するからである。部隊勤務1年半を経過した1月に、全員が1尉に昇進。それから半年後に、専門研修医官になる。その間、海では潜水医学実験隊の潜水医官課程、海か空では航空医学実験隊の航空医官課程に入校する者もいる。それぞれ、課程を終了すると潜水医官バッジ、航空医官バッジが付与される。
概ね2年間の部隊勤務が終わると、専門研修が命ぜられる。ほとんどの者は防衛医大に帰るが、部外の大学や病院を希望する者も増えてきた。専門研修医官(専修医)は、常に人手不足に悩む防衛医大の各医局にとって、貴重な実戦力である。専修医は2年。これを終了すると、陸では衛生学校のAOC(幹部上級課程)に入校する。海と空では、それに相当するような教育課程は無い。
専修医を終わっても、学位は授与されない。それ以上の医学を研鑽したい者は防衛医大研究科を受験する。受験科目は英語と専攻科である。研究科は大学院に相当し、4年間在籍して「博士(医学)」の学位が与えられる。それぞれの科にもよるが、採用人員は年に1~2名程度と少ない。
研究科を終了した者のうちで、研究者・教育者に向いていると判断された者は、しばしばUC転官を勧められ、ユニフォームを脱いで、文官(シビリアン)たる防衛医大助手(防衛庁教官)となり、防衛医大を支える。
[編集] 昇進
防衛医科大学校卒業生は、全員が医官として自衛隊で勤務することになるが、もし卒業後9年以内に退官する場合は、教育に要した経費(約5000万円程度)を国庫に償還することになっている。しかし、近年は自衛隊病院にいては臨床経験を積むことが困難(受診者が頑健な自衛官及びその家族に限定されており、様々な症例に接したり、手術等の経験を積むことが困難といわれる)であり、医師としてのスキルアップに不安がある等の理由から、3分の1の者が9年の年限を待たずに退官している[1]。
自衛隊の高級幹部ポスト(将補以上)に占める医官の割合はわずか6.7%である。換言すれば、医官として任官しても将補以上に昇進できるのはごく一部であり、このことが後述する医官の早期退職の一因になっていると指摘する声もある。
自衛官が出世を狙えば、幹部学校指揮幕僚課程(CGS、海空ではCS)に入校したいが、医官で入校した者は過去に数名しかいない。CGS卒業者の3割は将官への栄達が約束される。1佐なら間違いない。
陸上自衛隊の場合、衛生学校のFOCも出世コースだが、入校した医官はいない。事実上、防衛医大研究科が出世コースになっているようである。最近では防衛医大卒業生が増えたために、研究科を卒業して学位を持たない者は、方面総監部、師団司令部、旅団司令部の医務官(旧陸軍の軍医部長に相当する。)には補職されない。
[編集] その他
「指揮代理に関する訓令」(平成12年6月27日防衛庁訓令第80号)により、自衛隊では医官であっても部隊等指揮権を承継しうる。
なお、厚生労働省をはじめとする行政官庁に採用された医師・歯科医師である官僚のことは医官とは呼ばず、専ら「医系技官」と呼ばれる。
[編集] 注釈
- ↑ 平成18年4月14日の衆議院厚生労働委員会における防衛庁の答弁。
[編集] 関連項目
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