助数詞
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助数詞(じょすうし)は、数を表す語の後ろに付けてどのような事物の数量であるかを表す語。数詞を作る接尾語の一つ。
日本語のほか、中国語など東アジアの多くの言語、またアメリカ大陸先住民の言語などにある。中国語などでは、例えば「个」は数の後につけて「一个人」(ひとりの人)とするほか、「那个人」(あの人)のように指示代名詞を伴ったり、単独で名詞と結び付いたりする場合も用いるので、類別詞あるいは量詞とも呼ばれる。
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[編集] 日本語の助数詞
日本語ではこの種類の語が非常に発達しており約500種類もの数が存在するが、今日では意識される事が少なくなりつつあり、「個」、「匹」(動物)、「本」(細長いもの)、「枚」(平たいもの)等の多数の語に充てられる助数詞を使う事が多くなっている。
一般に音読みの助数詞の前の数字は「いち」、「に」、「さん」と読まれ、訓読みの前では「ひと」、「ふた」、「み」の様に読まれる。音便化や連濁する事も多く、しばしば前の語の音によって読み方が変わる事がある。(例: 一匹=いっぴき、二匹=にひき、三匹=さんびき)しかし、「三回」(さんかい)と「三階」(さんがい)の例のように、現代音だけで考えると、どういう場合に連濁するか、音便化するかという法則を知るのは難しい。
助数詞が修飾する語は名詞と思われがちであるが、例えば「発」、「回」のように「殴る」、「打つ」、「やる」など、動詞を数えるのに用いるものや、「回」が「おいしい」、「楽しい」などの形容詞を、「倍」が形容詞の「明るい」や形容動詞の「きれいだ」などを修飾できるなど、他の品詞を修飾できるものもある。
以下に名詞に対応する助数詞の一覧を示す(漢字表記は助数詞に「一」を付けたものとし、読みは括弧内に標準的な助数詞の読みのみを記す。必ずしも「一」を付けた時の読みとは一致しない)。なお、外来語が起源の助数詞(単位)には、一般的に算用数字を用いて表記する。(例:1バイト)
[編集] 一覧
- 家 - 一戸(こ)、一軒(けん)、一棟(むね)
- イカ - 食品の場合は一杯(はい)、生物の場合は一匹(ひき)
- 囲碁 - 一局(きょく)
- 遺骨 - 一体(たい)、一柱(はしら)
- 椅子 - 一脚(きゃく)
- 井戸 - 一本(ほん)、一基(き)
- (ネットワーク上で1秒間に起こる)イベント - 一ボー
- 衣類 - 一着(ちゃく)
- 印籠 - 一具(ぐ)
- 鏡 - 一面(めん)
- 掛け軸- 一幅(ふく)
- 株式 - 一株(かぶ)
- 乾麺 - 一把(わ)
- 蚕 - 一頭(とう)
- 神 - 一柱(はしら)、一人(にん・たり)
- (特定の場所に祀られている)神 - 一座(ざ)
- 蚊帳- 一帳り(はり)
- 銀行 - 一行(こう)
- 薬 - 一錠(じょう)、一カプセル、一包(ほう)
- 米俵 - 一俵(ひょう)/一輿(こし)・神輿/一基(き)
- ご飯 - 一膳(ぜん)/一杯(はい)
- 川柳 - 一句(く)
- 算盤 - 一面、一丁(ちょう)
- 刀剣 - 一振(ふり)、一腰(こし)、一口(くち)
- 塔婆 - 一基(き)
- 投票用紙 - 一票(ひょう)
- 豆腐 - 一丁(ちょう)
- 灯籠・燈籠 - 一基(き)
- トランジスタ - 一石(ラジオなどに使われているトランジスタの数)
- 真空管 - 一球
- 俳句 - 一句(く)
- 箸 - 一膳(ぜん)
- 花 - 一輪(りん)
- パン - 一斤(きん)
- 屏風 - 一台(だい) 一双(そう)
- 拍子 - 一拍(はく)
- 鰭 - 一基(き)
- 人 - 一人(にん・たり)、一名(めい)
- 車 - 一台(だい/自動車)、一両(りょう/鉄道車両など、ただし公営交通事業ではバス (交通機関)も路面電車などを運用していた、または今も運用している時に用いる)
- 墓石 - 一基(き)
- 墓所 - 一区画(くかく)
- 本 - 一冊(さつ)
- 矢 - 一手(て)(矢二本で一手)
- 和歌 - 一首(しゅ)
[編集] 中国語の助数詞
中国語では「量詞 リヤンツー liàngcí」というのが普通である。甲骨文字に記された古代漢語に、すでに容器を用いて量をいう表現がみられるが、容器を用いない助数詞が普通にみられるようになるのは秦代からである。
現代の中国語(普通話)では、量詞は200種前後が用いられており、量詞に近い使い方をする単位も含めると350種以上になる。
最も常用される代表的なものは「個(个)」である。日本語と共通する漢字を用いるものでも、使える対象が異なる場合がある。例えば、「匹」はもっぱらウマ、ロバ、ラクダに用いる他、反物(この場合「疋」とも書く)にも用いるが、他の動物は「隻(只)」や「頭」を用いるなどの違いがある。
また、中国語でも、方言では対応する量詞が異なったり、使用範囲が違ったりする。例えば、椅子は、北京語や普通話では「把」を用いるが、広東語では「張」を用いる。この例では、椅子のどの部分(背もたれか座る部分か)に着目するかという違いによっているが、一般的に、標準的な形状や大きさに地域差があるものなどは、量詞にも違いが出やすい。
名詞の後に量詞を付けて、総体を指すのに使う用法もある。例えば、名詞の「人」を数えるのに用いるのは「個」や「口」であるが、「人口」というと人をまとめてその数を指す。名詞の「馬」と量詞の「匹」を合わせて「馬匹」というとさまざまな馬の総体を指す。なお、この「馬匹」という語は、日本語にもある(馬匹輸送業など)。
中国語の場合、「個」、「張」などのように、名詞を修飾するものは「名量詞」、「回」、「頓」などのように、動詞を修飾するものは「動量詞」と呼んでいる。
また、広東語や潮州語などでは、名詞の前に数詞を伴わない量詞を付けて、英語の定冠詞のように、全体の中のひとつを指す、特定化に用いる例もある。例えば、「一架車」は英語の「a car」のように、ある1台の車というイメージであるが、「架車」とすると英語の「the car」のように、話者が特定の1台の車を指していう言い方に変わる。
広東語や潮州語では形容詞の後に量詞を付けて、性状と形状を同時にいう例もある。
[編集] 関連項目
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[編集] 関連書籍
- 数え方の辞典 :ISBN 4-09-505201-5