モーグル
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モーグルは、急でコブ(凹凸)の深い斜面を滑り降り、ターン技術、エア演技、スピードを競うスキーのフリースタイル競技の1つ。語源はノルウェー語のMogul(雪のコブ)である。
基本的に1人で滑り降り、ターン点、エア点、タイム点の合計点数を競うが、ワールドカップなどでは2人で同時に滑るトーナメント方式のデュアル競技もある。 用具において一般のゲレンデスキー(アルペンスキー)と違う点はストックがかなり短いこと、ブーツや板のフレックスが柔らかいこと、スキーをずらしやすくするためサイドカーブがあまりないこと、コブをすべる際に前後のバランスがシビアなためスキーがやや長い点などである。
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[編集] コース
全日本スキー連盟の仕様では以下のようになっている。
- 国内A級:コース長 235m±35m、平均斜度 28°±4°、最大斜度 37°、最低斜度 20°
- 国内B級:コース長 210m±30m、平均斜度 23°±3°、最大斜度 28°、最低斜度 15°
- ジュニア:コース長 175m±25m、平均斜度 22°±3°、最大斜度 28°、最低斜度 15°
- デュアル:コース長 200m±50m、平均斜度 25°±5°、最大斜度 37°、最低斜度 15°
(2001年、全日本スキー連盟スキー競技規則より)
[編集] エアの技
選手は上記のコースを滑り降りる間に2回のジャンプを行い、空中で規定の技をいくつか組み合わせた演技を行う。前後のエアは同じ組み合わせであってはいけない。近年のルール改正では新たにオフアクシスやフリップ系の技が認められ、よりアクロバティックになった。難易度が高くなり見る面白さは増えたが、現実離れした技が増え、一般スキーヤーから敬遠される傾向を指摘する声もあり、実際に競技者人口が減っている現実もある。
- 技の種類
- アップライト(立ち技)
- ツイスター:上半身と下半身を逆方向にひねる (T)
- ズートニック:足を揃えたまま、身体を前に折り曲げる (Z)
- スプレッドイーグル(スプレッド):手足を大きく広げる (S)
- バックスクラッチャー:身体を後ろに反らせる (B)
- アイアンクロス:足を後ろに曲げて、スキー板を90度に交差させる
- ミュールキック:バックスクラッチャーの姿勢から、両足を揃えたまま横から前に出す (M)
- コザック:足を左右に広げて、身体を前に折り曲げる (K)
- ダーフィー:両手両足を、歩こうとするかのように前後に出す (D)
- ループ(サイドフリップ):前を向いたままの側転 (l)
- インバート
- フロントフリップ:前転 (f)
- バックフリップ:後転 (b)
- ストレートローテーション(ヘリコプター):水平回転 (3)
- オフアクシス:軸をずらして回転する技。技名の後ろには回転数に応じた角度がついている。 (o)
- コークスクリュー:体を斜めに傾けた状態で横向きに回転する。 (7o)
- 複合技
- フルツイスト:フリップしながら身体を360度ひねる (bF)
- スイッチ:後ろ向きでの踏み切り、または着地 (-)
- ポジション:回転中にアップライトの技を行う (p)
- グラブ:スキー板を掴む (g)
- 技の回数
- アップライト(立ち技)
- シングル
- ダブル
- トリプル
- クオード
- クイント
- アップライトのみの場合、女子はダブル~トリプル、男子はトリプル~クオードが普通である。
[編集] 採点方法
基本的に5人のジャッジがターン点、2人のジャッジがエア点を採点。タイム点と合わせ30点満点で競う。
- ターン 15
- エア 7.5
- タイム 7.5
[編集] 歴史
モーグルの起源は、1960年代のアメリカで、コブだらけの斜面を誰が一番早く滑り降りることができるか競争しようという遊びから始まったといわれている。当初はホットドッグスキーなどとも言われていた。
カルガリーオリンピックで公開種目となり、アルベールビルオリンピックで正式種目となる。初代オリンピック王者はエドガー・グロスピロン(フランス)。日本人代表は山崎修。
日本では、1981年に第1回全日本フリースタイルスキー選手権大会が開催され、高橋富幸、坂倉かをりが初代王者になる。リレハンメルオリンピックで、里谷多英が予選通過する。男子代表は山崎修。長野オリンピックの際に、上村愛子がIBMのCMに出演し、里谷が金メダルを獲得。ソルトレークシティオリンピックでも里谷が銅メダルを獲得し、注目を集める。
[編集] オリンピック・メダリスト
- カルガリーオリンピック (公開競技)
順位 | 国 | 男子選手 | 国 | 女子選手 |
---|---|---|---|---|
金 | スウェーデン | ハカン・ハンソン Hakan Hansson |
西ドイツ | タチャーナ・ミッターマイヤー Tatjana Mittermayer |
銀 | ノルウェー | ハンス・エイド Hans Englesen Eide |
フランス | ラファエル・モノ Raphaëlle Monod |
銅 | フランス | エドガー・グロスピロン Edgar Grospiron |
スイス | コニー・キスリング Conny Kissling |
順位 | 国 | 男子選手 | 国 | 女子選手 |
---|---|---|---|---|
金 | フランス | エドガー・グロスピロン Edgar Grospiron |
アメリカ合衆国 | ドナ・ワインブレヒト Donna Weinbrecht |
銀 | フランス | オリビエ・アラマン Olivier Allamand |
ロシア | エリザベーテ・コジェブニコヴァ Yelizaveta Kozhevnikova |
銅 | アメリカ合衆国 | ネルソン・カーマイケル Nelson Carmichael |
ノルウェー | リサ=ステン・ハッテスタット Lise-Stine Hattestad |
順位 | 国 | 男子選手 | 国 | 女子選手 |
---|---|---|---|---|
金 | カナダ | ジャン=リュック・ブラッサール Jean-Luc Brassard |
ノルウェー | リサ=ステン・ハッテスタット Lise-Stine Hattestad |
銀 | ロシア | セルゲイ・シュプレツォフ Sergei Shupletsov |
アメリカ合衆国 | エリザベス・マッキンタイヤー Elizabeth Mcintyre |
銅 | フランス | エドガー・グロスピロン Edgar Grospiron |
ロシア | エリザベーテ・コジェブニコヴァ Yelizaveta Kozhevnikova |
順位 | 国 | 男子選手 | 国 | 女子選手 |
---|---|---|---|---|
金 | アメリカ合衆国 | ジョニー・モズレー Jonny Moseley |
日本 | 里谷多英 Tae Satoya |
銀 | フィンランド | ヤンネ・ラハテラ Janne Lahtela |
西ドイツ | タチアナ・ミッターマイヤー Tatjana Mittermayer |
銅 | フィンランド | サミ・ムストネン Sami Mustonen |
ノルウェー | カーリー・トロー Kari Traa |
順位 | 国 | 男子選手 | 国 | 女子選手 |
---|---|---|---|---|
金 | フィンランド | ヤンネ・ラハテラ Janne Lahtela |
ノルウェー | カーリー・トロー Kari Traa |
銀 | アメリカ合衆国 | トラビス・マイヤー Travis Mayer |
アメリカ合衆国 | シャノン・バーク Shannon Bahrke |
銅 | フランス | リチャード・ゲイ Richard Gay |
日本 | 里谷多英 Tae Satoya |
順位 | 国 | 男子選手 | 国 | 女子選手 |
---|---|---|---|---|
金 | オーストラリア | デール・ベッグスミス Dale Begg-Smith |
カナダ | ジェニファー・ハイル Jennifer Heil |
銀 | フィンランド | ミッコ・ロンカイネン Mikko Ronkainen |
ノルウェー | カーリー・トロー Kari Traa |
銅 | アメリカ合衆国 | トビー・ドーソン Doby Dawson |
フランス | サンドラ・ラウラ Sandra Laoura |
[編集] 過去のオリンピック日本代表選手の成績
- 出場選手なし
- 男子:山崎修40位予選敗退
- 男子:三浦豪太27位予選敗退
- 女子:里谷多英11位
- 男子:三浦豪太13位(23.06)、原大虎15位(12.13)、附田雄剛18位(23.81)予選敗退、坂本豪大30位(8.68)予選敗退
- 女子:里谷多英1位(25.06,予11位)、上村愛子7位(23.79,予13位)
- 男子:附田雄剛16位(15.81)、下山研朗20位(23.39)予選敗退、中元勝也26位(20.56)予選敗退、野田鉄平30位(0.30)予選敗退
- 女子:里谷多英3位(24.85)、上村愛子6位(24.66)、畑中みゆき20位(21.36)予選敗退
- 男子:上野修20位(予15位)、尾崎快30位、附田雄剛32位
- 女子:上村愛子5位(予5位)、里谷多英15位(予9位)、伊藤みき20位(予15位)、畑中みゆき27位予選敗退
[編集] ワールドカップ
男子では坂本豪大、附田雄剛の2名が優勝している。
坂本は1996年マイリンゲン大会でW杯初出場初優勝という快挙を成し遂げた。
同大会で女子の上村も初出場し、同じく3位入賞という快挙を達成している。
2005年ボス(ノルウェー)大会で上村愛子が優勝している。 2006年猪苗代大会で尾崎快(24.87点)2位。上村愛子(25.56点)3位入賞。
[編集] 選手
[編集] 現役日本選手
男子
- 附田雄剛(姉附田麻美、トリノ五輪32位、ソルトレーク五輪、長野五輪)
- 下山研朗(ソルトレーク五輪代表)
- 益川雄(姉益川美喜)
- 上野修(トリノ五輪20位)
- 尾崎快(トリノ五輪30位)
- 野々垣宏記
女子
- 里谷多英(トリノ五輪15位、ソルトレーク五輪銅メダリスト、長野五輪金メダリスト、リレハンメル五輪11位)
- 上村愛子(トリノ五輪5位、ソルトレーク五輪6位、長野五輪7位)
- 畑中みゆき(トリノ五輪27位、ソルトレーク五輪)
- 伊藤3姉妹
- 伊藤あづさ
- 伊藤みき(トリノ五輪20位)
- 伊藤さつき
[編集] 元日本選手
- 坂本豪大(長野五輪代表)
- 木内浩
- 伊藤篤
- 原大虎(長野五輪代表)
- 本間篤史
- 角皆優人
- 坂倉かをり
- 中野銀次郎
- 五十嵐和哉
- 喜田一彦
- 蟹沢正美
- 芳沢秀雄
- 山崎修(アルベールビル五輪代表)
- 三浦豪太(父三浦雄一郎、祖父三浦敬三)
- 岩渕隆二(妹岩渕千代子エアリアル、スノーボード)
- 野田鉄平
[編集] 現役外国人選手
- サミー・ムストネン(Sami Mustonen -フィンランド)
- ジェレミー・ブルーム(Jeremy Bloom -アメリカ)
- トビー・ドーソン(Toby Dawson -アメリカ)
- ミッコ・ロンカイネン(Mikko Ronkainen -フィンランド)
- ヤンネ・ラハテラ(Janne Lahtela -フィンランド)
- アン・バテル(Ann Battelle -アメリカ)
- カーリー・トロー(Kari Traa -ノルウェー)
- ジェニファー・ハイル(Jennifer Heil -カナダ)
- マルガリータ・マーブラー(Margarita Marbler -オーストリア)
- ミッシェル・ローク(Michelle Roark -カナダ)
[編集] 元外国人選手
- エドガー・グロスピロン(Edgar Grospiron -フランス)
- ジャン=リュック・ブラッサール(Jean-Luc Brassard -カナダ)
- セルゲイ・シュプレツォフ(Sergei Shupletsov - ロシア)