スノーボード
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スノーボード (snowboard) とは、一枚の板で雪山やスキー場を滑るスポーツ、またその板(ビンディングを含む場合もある)。
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[編集] スノーボードの歴史
1800年代にすでに一枚の板で雪山を滑っていたとも言われているが、一般には1965年にアメリカ合衆国で生まれた「snurfer(スナーファー:snowとsurferの造語)」と呼ばれる雪上サーフィンの玩具などが起原とされている。これは、非常に小さな合板の板に紐をつけバランスを取り真直ぐに斜面を滑り降りるだけの乗り物で、その形状ゆえに主にスキー場・ゲレンデ等で楽しまれていた。
その後派生する初期のスノーボードは、板の面積が大きく、降雪後に山に登り新雪をサーフィン感覚で滑り降りるもので、スノーサーフィンと呼ばれた。滑走面から飛び出したフィンが付いており、圧雪されたゲレンデでは上手く滑ることができなかった。1970年代初め、ユタ州ソルトレイクでドミトリエ・ミロビッチによって設立されたウインタースティック社のカタログには「30cm以上の深雪が必要」と記されている。スノーサーフィンは、その後派生する多くのスノーボードメーカーにも大きな影響を与える。1977年にはジェイク・バートン・カーペンターが、「バートン・スノーボード」社を設立し、1980年代中頃ゲレンデを滑る事が出来る道具を開発すると同時に、大量生産の体制を築く。
1990年代に入り、当時若者に人気があったスケートボードのイメージと重なり、爆発的ブームとなって産業として育ってゆく。現在はロシニョール、サロモンなどのスキーメーカーも多くスノーボード業界に参入している。
1998年の長野冬季オリンピックより、アルペンスタイルのパラレル大回転、フリースタイルのハーフパイプが正式種目となる。
2006年のトリノ冬季オリンピックより、スノーボードクロス(ボーダークロス)が正式種目となる。トリノでは、予選は1人ずつ2本滑り、早いタイムを取るタイムトライアル方式、上位32名が残る決勝ラウンドは4人が一度にスタートし、上位2名が次に進める形式である。
このほか、ワールドカップでは大きなジャンプ台を用いて空中での複雑なトリックを競うビッグエアーがあり、日本ではトヨタ・ビッグエアーやエクストレイル・ジャムが代表的な大会として毎年開催されている。またハーフパイプはワールドカップ競技になっているが、ほかのスポーツのワールドカップが世界最高レベルなのとは異なり、アメリカ合衆国で行われる賞金レースXゲームズの方が競技レベルが高いと言われる。また「国のために大会に出るのではない」とする意識から、オリンピックのハーフパイプ競技は競技者から嫌忌されることがある。
また、現在スノーボードと呼ばれるものとは別に1970年代まで、同じく「スノーボード」という名称の雪上を滑るボブスレーのような競技が存在していたが、一般には普及しなかった。
[編集] スノーボードのタイプ(志向)
現在、大きく分けて5つのタイプがある。
- フリーライディング
- 用具はアルペンスタイル、フリースタイルどちらでもかまわない。通常のゲレンデで滑走するスタイル。「グランド・トリック」を含ませる場合もある。
- バックカントリー
- 用具は主にフリースタイルを使用する。板を担いで冬山登山のように自力で雪山を登ったり、リフトやヘリコプターを利用して斜面の上方へ向かい、スキー場のエリア外の自然の雪山を滑るスタイル。スキー場のように管理されておらず、スキーパトロールの範囲外での滑走となるため、滑走技術だけでなく、雪崩のリスクマネジメントなど、安全に関わる知識を学ぶ必要がある。なお、エクストリームというジャンルは欧米では死語になりつつあり、アラスカなど大規模で急峻な斜面を滑るスタイルは、最近ではビッグマウンテンと呼ばれる。
- フリースタイル
- 用具は主にフリースタイルの用具を使用する。キッカーを用いたワンメイク・ジャンプ、ハーフパイプ、ハンドレールなど、主に設備を利用するのが特徴。例外的に施設を使用しない、「グランド・トリック」と呼ばれる滑走技術も一般にはこの中に入る。
- スノーボードクロス(SBX)
- 用具はアルペンスタイル、フリースタイルどちらでもかまわない。人為的に作られたキッカーやウエーブのあるコースを滑走し、タイムを競う。大会では、複数名が同時に同コースを滑走する。競技者同士の接触、転倒がよくあるため、ヘルメットなどのプロテクターを着用する場合が多い。
- アルペンスタイル
- 用具は主にアルペンスタイルの用具を使用する。ここではフリーライディングと特に分けて、スラロームや大回転競技などの旗門競技。大会の滑走時には一般に空気抵抗の少ない服と、特にスラロームでは旗門接触時の衝撃を和らげるために、前足にプロテクターを着用する。
[編集] 日本でのスノーボード
日本では、1970年代後半からいくつかの小規模なメーカーが興されたが、田沼進三によって設立された「MOSSスノースティック」は「MOSSスノーボード」として、現存する世界的古参メーカーとして知られている。
1980年代初頭から各種スノーボードが輸入されはじめたが、スキー場は相継いでスノーボードを滑走禁止にしてしまう。ターン孤の大きさや性質が違うスノーボードとスキーでの接触事故が多くみられたという理由や、初級者の多く、装着場所などのルールやマナーが整理されていなかったスノーボードが、スキーヤーにとっては危険で邪魔だったからという理由が大きい。
スノーボード禁止としたスキー場でも、スキー場が実施するテストを受検し、ライセンスを取得すれば滑走できるようにする所も増えていった。その後、スノーボーダーの技術向上などによりライセンス制を廃止するスキー場が増えた。バブル期にはスキーが大流行し、週末になると一台のリフトを数時間待つという時代は変わり、ゲレンデに足を運ぶ観光客の減少と年々増加するスノーボード比率も受け入れなくてはならないという、スキー場の経営的側面も影響している。長野県の老舗スキー場などでは、事故が多いスノーボード解禁には消極的だったが、現在はスノーボードを全面滑走禁止にしているゲレンデはほとんどない。近年では、パークと呼ばれるキッカーやレール、ハーフパイプといったスノーボード向けの施設を導入するスキー場も多くなり、多くのスノーボーダーの人気を集めている。
現在のスノーボード事情で特徴的なことは、世界的にも、フリースタイルがアルペンスタイルより多く一般的であること。また日本は、北米、欧州と比較して用具の普及率が突出して高い。自前の用具を用意する人とレンタルを利用する比率は8:2と言われ、これは北米、欧州の全く逆。このため、レンタルスノーボードにおいては後進国といわれている。
スノーボードの略称である「スノボ」「スノボー」は、メディアが広め、一般化されたと考えられている。そのため、上級者ほど使用を嫌忌する傾向があり、特にローカルと呼ばれるスキー場付近に住むスノーボーダーからは、初心者や初級者が使う言葉として認識される。ローカルなどが省略する場合は単に「ボード」と呼び、「スノボ」の略称を使う者を揶揄して「スノボちゃん」と呼ぶことがある。
また、日本では競技団体が日本スノーボード協会(JSBA)と全日本スキー連盟(SAJ)に分かれており、長年にわたって対立している。
[編集] 道具としてのスノーボード
現在の普及しているスノーボードで、滑走する際に雪と接する面を滑走面(ソール)と呼ぶ。滑走面の両サイドにある金属部分をエッジ、進行方向に当たる先端をトップまたはノーズ、反対側をテールと呼ぶ。ツインチップ・ボードにも厳密にはトップとテールは存在するが、外見上はほとんど違いがない。スノーボードはビンディング(バインディング)という器具によってブーツとつながっている。用具には大きく分けて2種類存在している。
[編集] フリースタイル
アルペンタイプに比べると、幅広で長さも短めのものが多い。
ビンディングは、操作性の高く比較的軽量なストラップタイプのものと、スキーのように踏み込んで履く、ステップインタイプがある。ステップインタイプは登場当時は話題を集めたが、一般的なストラップタイプより滑走時のレスポンスが悪い、雪が詰まる、などの問題点が未だ完全に解決されているとは言えず、爆発的には普及していない。
ブーツは、紐で編み上げたり、ダイヤルを回して金属ワイヤーで締め上げる、アルペンタイプより柔らかいソフトブーツを使用する。素材は、昔は革を使用したものが多かったが、最近では剛性や耐久性の点から、化学繊維が多く用いられるようになった。
フリースタイルという名の通り、ハーフパイプやレール、キッカーなどを利用して、数々のトリック(技)を習得する人も多い。冬季オリンピック、スノーボードハーフパイプ競技で用いられる。
[編集] アルペン
アルペンボードは、フリースタイルに比べてスリムな形状で、トップは半円形状、テールは板に対して垂直にカットされているため、一般に外見ですぐに前後が認識できる。元々は旗門競技用に開発されたため、滑走安定性が高く、正確で高速なターンを得意としている。
ビンディングは従来の手で締めるタイプと、踏み込むだけのステップインタイプがある。スキーブーツと同様の樹脂で成型されたハードブーツを使用する。
スノーボードは一般的にスキー板と同じ技術によって世界のいくつかの工場で大量生産されている。現在のスノーボードの製造方法は、80年代後半よりスキー工場での製造技術を取り入れ技術的に急激に成長するが、多くがスノーボードを一事業としているために投資が進まず、海外メーカーの技術的優位は続いている。日本ではヨネックスが独自のカーボン技術をもち、オガサカスキー工場では多くの国産メーカーのモデルが生産されているが、海外のメーカーが量的主流であることに変わりはない。世界的にスキー・スノーボード製造工場が数社に集約されており、多くのメーカーがそれらの工場に生産を委託しているためである。スノーボードの生産技術は各工場が独自の技術でしのぎをけずっているが、それはスキーにおける各工場とメーカーの技術提携に見られるものと同じである。
一般に流通するボードにはほとんど性能の差はなく、乗り心地の好みによるところが大きい。一方、昔ながらの職人的技術で個性的な上級者向けのボードも少量生産を続けているメーカーも存在する。製造技術は独自のものを持っている場合もあるが、多くは職人の手工業的スキー製造技術で生産している。大量生産製品と違い、細かな改良が出来るといった小回りが得意なため、大手メーカにはない独自な形状や性能を持ったボードが生産され、マニアを中心に比較的高価な価格で流通している。
[編集] スノーボードの技術用語
- グーフィー(goofy stance)
- グーフィー・スタンス。レギュラー・スタンスが利き足である右足を後ろして滑るのに対し、利き足の左足を後ろして滑るスタンス。利き足は、利き手とは必ずしも一致しない。(不意に前方から押されたとき、とっさに下げる足が利き足だと言われる)
- ドリフト・ターン(drift turn)
- 板をずらすことで減速しながら行うターン。
- カービング・ターン(carving turn)
- 板のサイド・カーブを利用した、ずれと減速の少ないターン。
- オーリー(ollie)
- 板のテール部分を弾いて飛び上がるスケートボードから応用された技術。ノーズ部分を使う場合は「ノーリー」と呼ぶ。
- スイッチ(switch stance)
- スイッチ・スタンス。通常利き足を後ろにして滑走するが、利き足と反対の足を後ろにして滑る技術。「フェイキー・スタンス」とも呼ぶ。
- グラブ(grab)
- ジャンプトリック中に板をつかむ技術。つかむ部位、つかむ手によって、インディーグラブ、ミュートグラブなど名称が変わる。
- スピン・トリック(spin trick)
- 回転水平に回転する角度によって、半回転は180(ワン・エイティー)、一回転は360(スリー・シックスティー、スリー・シックス、サブ・ロク)と変化する。回転方向によってオープン(まず体が正面を向く回転方向、つまり前方の足と同じ方向に回転。フロントサイドとも呼ぶ)、ブラインド(まず体が背面を向く回転方向、つまり後方の足と同じ方向に回転。バックサイドとも呼ぶ)スピンと呼ぶ。縦方向の回転は、前方回転はフロント・フリップ、後方回転はバック・フリップと呼び、2回転する場合はダブルを付加する。 例:ダブル・バック・フリップ
- キャブ(CAB)
- スピントリックにおいてスイッチ・スタンスでアプローチし、オープンサイドに一回転するトリック。スケートボードのキャバレリアル・トリックに由来する。半回転をハーフ・キャブと呼んだり、この回転を経て行ったトリックの頭に付けることがある。 例:CAB9(キャブ・ナイン。スイッチでジャンプし、オープンサイドに二回転半回転する技。スイッチ・オープン・ナインと同じ意味。)
- ジブ(jib)
[編集] スノーボーダー
- 國母和弘
- 中井孝治
- 成田童夢
- 今井メロ
- ライオ・田原
- 鈴木伯
- 布施忠
- 西田崇
- 千村格
- 山岡聡子
- クレイグ・ケリー
- ショーン・パーマーPALMER SNOWBOADS
- テリエ・ハーコンセン
- ジェイミー・リン
- ピーター・ライン
- ロス・パワーズ
- ショーン・ホワイト
- J. P. ウォーカー
- ヨナス・エメリー
- アンディ・フィンチ
- スティーブ・フィッシャー
- シモン・チェンバレン
[編集] スノーボード全面滑走禁止のスキー場
[編集] 北海道
- 藻岩山スキー場
[編集] 山形県
- 蔵王猿倉スキー場
[編集] 新潟県
- NASPAスキーガーデン
[編集] 長野県
- 志賀高原熊の湯スキー場
- 志賀高原横手山スキー場
- ヘブンス園原スキー場
- 木曽福島スキー場