エアリアル
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エアリアル(Aerial)は、空中演技を競うスキーのフリースタイル競技の1つ。長さ160cm程度のスキー板をはいて空中に飛び上がり、宙返りをして着地するまでの短い競技である。
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[編集] コース
スキージャンプのジャンプ台を小さくしたようなコースの踏み切り位置に、キッカーと呼ばれる人工のジャンプ台を置いている。キッカーは3回転用のビッグキッカー、2回転用のミディアムキッカー、1回転用のスモールキッカーが用意されるが、国際試合では難易度の低い1回転ジャンプを飛ぶ選手がいない場合スモールキッカーが用意されない場合もある。逆に日本国内の試合では難易度の高い3回転ジャンプを跳ぶ選手が少なかったり、エアリアルサイトの広さの関係でビックキッカーが用意されない場合もある。国際試合では、通常ビッグキッカーやミディアムキッカーは微妙に飛び出し角度のことなる複数のキッカーが用意される。これらはカナダ、アメリカ等の有力国のキッカー作成監督者シェーパー(多くの場合コーチが兼任する)がスコップを使って飛び出し角度の微調整を行っており、シェーパーに応じて「カナダ台」「アメリカ台」等と呼ばれる。
着地はスキージャンプと異なりキッカーのすぐ後ろになるため、キッカーの奥は急斜面のランディングバーンとなっている。さらに着地の衝撃を和らげるため、ランディングバーンは人手でスコップによって深さ50cm程度掘り返されて柔らかい状態にされる。この掘り返し作業をチョッピングと呼ぶ。
なお、エアリアルはその特性上何の練習もなしに飛ぶことは極めて危険である。そのため日本では、練習には全日本スキー連盟のスキー認定で2級程度の技術がなければならない。また、技術を持っている場合でも、白馬や猪苗代・北海道にあるウォータージャンプ台で夏場に練習してエアリアルの技術認定をもらわなければ実際に雪上を滑ることはできない。
[編集] 技
- フロントフリップ
- 前方宙返り。「フロント」と省略し以下の姿勢および捻りの種別と組み合わせて技の名称とする。
- ex.「フロントタック」は前方一回抱え込み転宙返り。
- バックフリップ
- 後方宙返り。「バック」と省略し以下の姿勢および捻りの種別と組み合わせて技の名称とする。しかし、通常は全ての技がバックフリップで行われるため、エアリアルの実況等では「バック」も略すことが多い。
- ex.「バックレイフルフル」は1回転目が捻り無しの伸身宙返り、2,3回転目が1回捻り宙返りの後方3回転2回捻り宙返り。「フルダブルフルフル」は1,3回転目が1回捻り、2回転目が2回捻り宙返りの後方3回転4回捻り宙返り。
[編集] 姿勢
- タック
- 抱え込み姿勢。
- パイク
- えび型姿勢。
- レイアウト
- 伸身姿勢。2回転以上では「レイ」と省略する。
[編集] 捻り
- ハーフツイスト
- 半回ひねり宙返り。2回転以上では「ハーフ」と省略する。
- フルツイスト
- 1回ひねり宙返り。2回転以上では「フル」と省略する。
- ダブルフルツイスト
- 2回ひねり宙返り。2回転以上では「ダブルフル」と省略する。
- ルーディ
- 2回半ひねり宙返り。1回転で行われることはなく、2回転以上で「ハーフ」とまたは「ルーディ」と組み合わせて用いられる。
- トリプルフルツイスト
- 3回ひねり宙返り。2回転以上では「トリプルフル」と省略する。
- ランディ
- 3回半ひねり宙返り。
[編集] 採点方法
演技前に自己申告し、その演技に難易点がつく。 ジャンプの高さ・空中姿勢を5人のジャッジが採点し、最高点と最低点を除いた3人のジャッジの採点に技の難易点をかけた点数と、2人のジャッジが採点する着地点を合計して1本の試技の得点とする。
2006年のトリノオリンピックの時点では、男子選手のトップレベルでは3回転4回捻り(フル・ダブルフル・フルまたはダブルフル・フル・フル)、女子選手のトップレベルでは2回転3回捻り(フル・ダブルフルまたはダブルフル・フル)が行われている。また、極少数の男子選手が3回転5回捻り(ダブルフル・ダブルフル・フルまたはフル・トリプルフル・フル)、女子選手が3回転ジャンプ(フル・フル・フル等)を行うようになっている。
[編集] 歴史
[編集] オリンピック
- アルベールヴィルオリンピック公開競技エアリアル
順位 | 国 | 男子選手 | 国 | 女子選手 |
---|---|---|---|---|
金 | カナダ | Philippe Laroche | スイス | Colette Brand |
銀 | カナダ | Nicolas Fontaine | スウェーデン | Marie Lindgren |
銅 | フランス | Didier Meda | 西ドイツ | Elfie Simchen |
順位 | 国 | 男子選手 | 国 | 女子選手 |
---|---|---|---|---|
金 | スイス | Andreas SchÖnbÄchler | ウズベキスタン | Lina Cheryazova |
銀 | カナダ | Philippe Laroche | スウェーデン | Marie Lindgren |
銅 | カナダ | Lloyd Langlois | ノルウェー | Hilde Synnove Lid |
順位 | 国 | 男子選手 | 国 | 女子選手 |
---|---|---|---|---|
金 | アメリカ合衆国 | Eric Bergoust | アメリカ合衆国 | Nikki Stone |
銀 | フランス | Sebastien Foucras | 中国 | Nannan Xu |
銅 | ベラルーシ | Dmitri Dashinski | スイス | Colette Brand |
順位 | 国 | 男子選手 | 国 | 女子選手 |
---|---|---|---|---|
金 | チェコ | Ales Valenta | オーストラリア | Alisa Camplin |
銀 | アメリカ合衆国 | Joe Pack | カナダ | Veronica Brenner |
銅 | ベラルーシ | Alexei Grichin | カナダ | Deidra Dionne |
順位 | 国 | 男子選手 | スコア | 国 | 女子選手 | スコア |
---|---|---|---|---|---|---|
金 | 中国 | Han Xiaopeng | 250.77 | スイス | Evelyne Leu | 202.55 |
銀 | ベラルーシ | Dmitri Dashinski | 248.67 | 中国 | Li Nina | 197.39 |
銅 | ロシア | Vladimir Lebedev | 246.76 | オーストラリア | Alisa Camplin | 191.39 |
[編集] ワールドカップ
[編集] 選手
[編集] 日本選手
- 逸見佳代(トリノオリンピック21位、ソルトレイクシティオリンピック棄権、長野オリンピック辞退)
- 水野剣(トリノオリンピック25位、日本選手で初めてフルダブルフルフルを雪上で成功)
- 工藤哲史(カルガリーオリンピック11位)
- 角皆優人
- 中野銀次郎
- 岩渕千代子(兄岩渕隆二モーグル)
- 待井寛(リレハンメルオリンピック20位)
- 安藤和明(長野オリンピック23位)
- 中西拓(ソルトレイクシティオリンピック20位)