ホンダ・CR-X
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CR-Xは、本田技研工業の小型車である。発売にあたり同社は、「FFライトウエイトスポーツ」という新ジャンルであると説明。これ以降この言葉は、同クラスの車種を分類する場合に一般的に使用されることになる。
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[編集] 概要
CR-Xの初代モデルは、同社の小型車シビックの姉妹車であるバラードの派生車種として、シビックのフルモデルチェンジに先立って市場に投入された。これには、3代目シビック(ワンダーシビック)のパイロットモデルもしくは「露払い」としての役目もあったといわれている。なお、"CR-"はバラードのモデル表記であり、「カー・ルネサンス」の意味でも、またシティ・ラナバウトの意味でもあるという(「クルージング」の意味であるとも言われている)。
CR-Xの販売チャネルは、プレリュードやインテグラを扱う「ベルノ店」で、CR-Xがよりスポーティな車種として設定されたのは、このチャネルの性格付けと考えることもできる。
初代と2代目のCR-Xは後部座席も装備されていたが(北米輸出用には装備されていなかった)、大人が二人座るにはとても無理なシートであった。このため、ホンダとしても非常用の「ワンマイルシート(1マイル用のシート)としてカタログなどでは表現された。また、この2代にわたるモデルの特徴として「アウタースライドサンルーフ」があげられる。これは、室内にスライド型サンルーフが格納できないため、ボディの外に電動スライドさせるという、ホンダらしい発想の転換でスライド型サンルーフを実現していた。
尚、輸出向けはCRXとハイフンが入らないが、日本で販売時既にCRXが商標登録されていたためCR-Xとなった。 余談ではあるが、同ホンダのNSXは市販前はNS-Xを名乗っていた。
[編集] 歴史
[編集] 初代(1983-1987年)
1983年7月発売。この時の正式名称は「BALLADE SPORTS CR-X」である。CMでは「デュエット・クルーザー」とのキャッチコピーが使われていた。尚、海外ではCIVIC CRX("-"は付かない)の名前で売られていた。 「BALLADE」は元々は低燃費志向の車であり、セミ・リトラクタブル・ヘッドライトを特徴とする2ドアハッチバックのCR-Xと4ドアセダンのCR-Mとが存在した。
ABS樹脂とポリカーボネートをベースとした複合材料「H・P・ALLOY」(エイチ・ピー・アロイ)をフロントフェンダーとドア外装板に採用してボディの軽量化を図り車両重量800Kg台を達成した。1500cc型ではファイナルギア比4.4というローギアードを採用し、軽量化とあいまって抜群の加速性能を実現した。さらに、超ショートホイールベース2200mmを特徴としたクイックなハンドリングをも実現していた。
エンジンは、PGM-FI付き12バルブSOHCの1500ccと、12バルブSOHCの1300ccが用意された。1500cc型では、アウタースライドサンルーフ、ドライブコンピュータ+デジタルメータ、ルーフヴェンチレータなどが選択できた。
1984年11月に16バルブDOHCのエンジン「ZC型」を搭載する「Si」グレードが追加され、ウレタン製のリアスポイラーが標準装備となり、よりスポーティなイメージを高めることになる。エンジンの高出力化に伴い、前輪駆動のトルクステアーを防ぐため等長ドライブシャフトが新たに採用された。 しかしながら、前輪:ベンチレーテッド・ディスク/後輪:リーディングトレーリングのブレーキ構成は変更されず、パワーとのバランスを欠いたモデルとなった。 また、このグレードのボンネットはS800以来のパワーバルジ付になっている。1985年9月にマイナーチェンジを実施し、ヘッドライトがセミ・リトラクタブル・ヘッドライトから、輸出仕様のCIVIC CRXと同じ、固定式の異形タイプに変更になり、Siグレードでは前後のバンパーも大型化されツートーンカラーが廃止された。よって、このモデルではヘッドライトやパンパーの形状で前期型と後期型を区別できる。 競合車両は、姉妹車ともいえるシビック、トヨタのカローラレビン/スプリンタートレノ、MR-2、日産のサニーRZ-1などであった。 また、ホンダ車のアフターパーツメーカとして知られる「無限」が、ブリスター形状の前後フェンダー、フロントマスク、リアスポイラーなどをリリースし、これらを装備した無限CR-X PROは鈴鹿サーキットのマーシャルカーとして用いられた。
[編集] 2代目(1987-1992年)
1987年9月発売。2代目では独立した車種となり、「バラードスポーツ」を冠しなくなった。なお、CM等では、人とクルマのサイボーグの如き一体化を表現する「サイバースポーツ」のキャッチコピーが使われた。
このモデルは初代モデルのボディデザインを踏襲しつつ、各部のフラッシュサーフェス化や、ワイド&ローフォルムのデザインを施された、ティアドロップ・シェイプと呼ばれる流麗なボディーワークが特徴である。ボディ後部のハッチドア下部には「エクストラ・ウィンドウ」(スモークガラスの一種)が採用され、バラードでは難のあった後方視界をしっかりと確保した。このエクストラ・ウィンドウは、外観デザインにおいても二代目CR-Xのアイデンティティとも言うべきアイテムとなっている。
発売当初は、1500ccの「D15B」型SOHC/ハイパー16バルブエンジン(NET値105ps)を搭載した「1.5X」と、1600ccの「ZC」型DOHC/16バルブエンジン(NET値130ps)を搭載した「Si」の、2つのグレードが用意された。前者の「1.5X」は、SOHC4気筒ながら1気筒あたり4バルブ(吸気側・排気側それぞれ2バルブ)を駆動する「ハイパー16バルブエンジン」が話題となった。後者の「Si」は、バラードCR-Xから引き続きDOHCエンジンを搭載。そのボンネットには「Si」の証として「パワー・バルジ」と呼ばれる意匠が施され、「1.5X」と差別化された。
また、グラストップと呼ばれるUVカットガラス製の屋根を装着する新オプションも特徴のひとつとなった。
1989年9月のマイナーチェンジ時、「V計画、核心へ。」のキャッチフレーズのもと、可変バルブタイミング&リフト機構VTECを搭載した16バルブDOHC 1600ccエンジン「B16A型」を搭載した「SiR」が発表された。VTECは、カムシャフトにプロファイルの異なる二種のカムを持たせ、エンジン回転数約6000rpm(EF型のB16Aは5000rpm)を境に、それ以下の回転数では低回転型カムを使用し、それ以上の回転数では高回転型カムへ切り替えを行い、バルブを駆動するという制御をもつ機構である。このモデルの最高出力はネット値で160馬力。リットル(排気量1000cc)あたり100馬力という驚異的な出力を実現していた。
後期型ではボディ前部の形状変更と、ヘッドライト形状の変更といった若干のフェイスリフトが行われ、全長が前期型の3775mmから3800mmとなった。また、前期型では凹型断面をもつボンネット形状が、後期型では凸型に変更され、前期型EF7型での特徴であったボンネットのパワー・バルジは廃止された。
尚、欧州向け仕様では前期型・後期型とも日本国内仕様の外観とほぼ同じだが、北米向け仕様は、前期・後期を問わず日本国内仕様の前期型とほぼ同じデザインのようである。
[編集] 3代目(1992-1997年)
1992年3月発売。CR-X delSolとしてモデルチェンジされた。(欧州向けはCRX、北米向けはCivic delSolを名乗った)
このモデルでは、電動で屋根がトランクルームの専用ホルダに収納できる機能を搭載し、クーペ形状とオープンカーの形状を選択できた(いわゆるクーペカブリオレ)。ホンダではこの機構を「電動オープンルーフ『トランストップ』」と呼んでいる。後方のピラー周りはそのまま残るところからタルガトップの車としても分類できる。なお、ルーフを手動で取り外すマニュアルトップもある。この場合、トランストップではスチール製のルーフが、人が持てるようにアルミ製となっている。
前モデルと同じく「SiR」が設定されており、このモデルの最高出力は170馬力と更に強力になっている。他にも走りに拘らないユーザー向けに、前期型には1500cc SOHCのVXi、後期型には1600cc SOHCのVGiが用意された。
前期型はヘッドライト内側に丸いアクセサリライトを埋め込んだ4灯、後期型はアクセサリライトを廃し2灯のシンプルな顔立ちになっている。このモデルを最後にCR-Xは生産終了となった。
一部のファンの間では、オープン状態のdelSolにルーフをうまく使って飛び乗ることを「茶留乗り」といっている。
del Solはスペイン語で「太陽の」を意味する。