オープンカー
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オープンカー (open car) とは、屋根を持たない、あるいは、折り畳み式 又は 着脱式の屋根を持つ自動車をいう。開放的な走りを楽しむ趣味的な車としてのほか、各種のパレードや、式典などにもしばしば用いられる。ちなみにオープンカーという用語は和製英語であり、韓国を除く日本国外ではほとんど通じない。
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[編集] 概要
海外におけるオープンカーに相当する用語は国や車の性質により、「バルケッタ(barchetta)」「ロードスター(roadster)」「スパイダー(spider)」「カブリオレ(cabriolet)」「コンバーチブル(convertible)」などがある。言葉の違いがある理由は、「バルケッタ」「ロードスター」「スパイダー」 は「屋根を閉められる車」、「カブリオレ」「コンバーチブル」 は「屋根を開けられる車」という車造りの方向性の違いから来ている。つまり、前者は幌(屋根)を下ろしている姿が本来の姿で、後者はその逆ということになる。
また、最近では「クーペカブリオレ」と呼ばれる電動格納式ハードトップも登場している。以前はフェートンと呼ばれるタイプのものもあったが、上記のものがほとんどすべて2ドアなのに対し、こちらは4ドアを指すことが多く、現在ではモデルが一部の式典用を除き消滅した為ほとんど使われなくなった。(※ちなみに式典用のものは単にオープン・モデルなどと呼ばれることが多い。)
近年ではアウディなど一部のメーカーは、スポーツカーの派生モデルでニ座のものには「ロードスター」、セダン派生の2ドア・四座のものには「カブリオレ」の名称を用い、区別している。「ロードスター」は車体の大部分がそれ専用の部品から成り立っている場合があるが、「カブリオレ」は他の既存の車輌を利用・流用し 改造を施し、製品として出来上がっている場合が殆どである。モノコック構造が主流である現行の)自動車の構造としての屋根を持たないために強度・剛性などに弱点があり、そこを嫌ってルーフ部分だけが脱着可能でその他の部分を残したタルガトップなどもある。強度・剛性不足を補うため屋根付きのベース車両に比べて部品点数が多く(屋根がない分、その開口部分の突っ張りを補うべく床下や側面などを補強していることがほとんど)、コストがかかる。屋根がないのに普通のグレードより重くて価格が高いのはこのためである。
最近では各タイプの差異は以前より曖昧になってきているが、屋根やその動作部分を収納するために座席やトランクスペースが犠牲となっているなど、いずれにしても趣味性の高い自動車である。
[編集] オープンカーの別名
- 「バルケッタ(barchetta)」
- 「ロードスター(roadster)」
- 「スパイダー(spider)」
- 「カブリオレ(cabriolet)」
- 「コンバーチブル(convertible)」
- 「クーペカブリオレ」
- 「フェートン」
- 「タルガトップ」
- 「ドロップヘッドクーペ」
- 「幌車」or「幌型」 - 日本の車検証では「幌型」と表記される。
- 「Tバールーフ」- 日本の車検証では「箱型」
[編集] オープンカーの安全性
オープンカーの安全面で問題となるのが、転覆や横転した場合の乗員に対する重大な危険性である。欧米ではTバールーフやタルガトップ、または横転時に瞬時に突出して頭部を保護する干渉装置等の安全機構の装備が義務付けられている国もあるが、日本ではメーカー側も危険性をイメージさせるスタイルの採用を避ける傾向があり、また法的(保安基準)にも、この義務化はされていないのが現状である。このことは、過去においてシートベルトの必要性が議論されていながら、シートベルトが自動車の危険性を消費者にイメージさせるとして、日本のメーカーが採用を見送り続けた(このとき欧州のメーカーは積極的に採用に踏み切っている)事実が髣髴とされ、今後議論を喚起すると考えられる。
なお歴史的には初期のレーシングカーは基本的にオープンカーである。このことはミッレミリアを走るビンテージのレーシングカーを見ることによって確認することができる。(雨風を凌ぐために幌ではなく重い鉄の屋根を使うのは重量的に見合わないという思想があるためと思われる。(日本やアメリカのアニメに登場する未来型レーシングカーには大抵屋根かキャノピーがあることに注意)またライトウエイトスポーツカーの全盛期にはその多くがオープンカーの仕様であった。
現在でも、自動車レースの最高峰といわれるF1カーをはじめとするフォーミュラカーはすべて屋根がない。
[編集] オープンカーが用いられる場面
- VIPの公式行事
- 政治的な要人や王室、皇室の式典においてオープンカーが用いられる。但しジョン・F・ケネディ大統領がパレードでオープンカーに乗っていて狙撃されているように警備上の問題が懸念されており、それ以降、米国大統領は選挙キャンペーンにおいてオープンカーを使用することは極力避けている。ローマ教皇は、暗殺未遂事件以降、防弾ガラスを廻らしたオープンカーを使用している。
- 祝い事やイベント
- プロ野球や大相撲などで優勝したときの凱旋パレードにおいてもオープンカーが用いられる。セ・リーグ最終日に決定した中日ドラゴンズの優勝時にはオープンカーの手配がつかなかったという。福岡ダイエーホークスや横浜ベイスターズの優勝時には路線バスを改造したオープンバスがパレードに登場、2006年の北海道日本ハムファイターズ優勝パレード時には二階建てバスの二階部分がオープンになっている日の丸自動車興業のスカイバス東京(ネオプラン・スカイライナー)をジェイアール北海道バスに貸し出した。
- 警察署のイベントのひとつ、有名人の一日署長でも見られるほか、ユニークな例ではツインリンクもてぎのホテルにおける挙式プランがあり、新郎新婦にホンダ・S2000を貸し出してサーキットを一周できるアトラクションが用意されている。
- 映画やテレビドラマ、雑誌のグラビアなど
- 撮影上の問題、特にクローズドボディでは俳優の顔がよく映らないことからオープンカーが使われる場合がある。映画「007は二度死ぬ」ではトヨタ・2000GTのオープンカーが特別に造られている。
- またキャラクターの設定上オープンカーに乗せることもあり、若大将シリーズでは毎回車種は異なるが田中邦衛扮する青大将がオープンカーに乗っている。
[編集] 日本における用途
![電動格納ハードトップ式トップを持つルノー・メガーヌ・グラスルーフカブリオレ](../../../upload/shared/thumb/6/69/Renault_Megane_Cabrio_silver_vl_2005.jpg/240px-Renault_Megane_Cabrio_silver_vl_2005.jpg)
日本の場合、気候区分において大部分が温暖湿潤であり、雨(雪)が多く、多湿、高温、低温で季節的に屋根を開放して快適な走行が出来る時期が限られている。屋根を閉鎖したときでも、雨の当たる音が大きかったり、炎天下で頭上が焼かれる感じがしたり、さらには雪が多く降ると屋根が潰れてしまうなど、実使用上の問題が多い。
また、オープン・カーが高所得者のセカンドカー的なイメージがあり、やっかみから、布製の屋根を傷つけられこともあり、ガムテープで修復してある車はよく街で見かけられる。夜間(特に女性同伴の場合)、暴走族からの格好の攻撃標的にされてしまうこともある。
さらに盗難の対象になりやすく、人気のない路上やファミリーレストランの駐車場に駐車されている場合、真っ先に悪戯や盗難の標的になり易い。最近ではそういったセキュリティ上の問題もあって、電動格納ハードトップ式のオープンカー(クーペカブリオレ)が人気を集めている。
このような制約からメーカー側も国内向けにはオープンカーの販売は消極的であり、消費者も開放感を求めるためには、サンルーフなどのオプションを選択する場合が多い。
[編集] オープンにした状態と季節
- 春 快適に乗れる
- 夏 関東以南では6月を過ぎたころから9月始めはきつい。直射日光は危険。逆に北海道では快適に乗れる時期が多い。
- 秋 快適に乗れる
- 冬 気温や陽射しにより快適に乗れることもあり (ただし非積雪地の場合)
日本においてオープンカーに最適な季節は春、秋、冬の一時期である。18度から25度程度の気温がエアコンなどを用いずに快適に乗れる目安である。冬場はエアコンやシートヒーターを使うと顔だけが寒いだけで意外に気持ちよかったりする。また冬の昼間は陽射しがあれば快適に乗れることもある。夏場はエアコンをつけても汗が流れ快適な環境で乗ることは不可能であるが、かろうじて夜間は気持ちよく乗れる場合もある。オープンカーの基本として気持ちのいいドライブが可能かどうかが開閉のポイントである。
なお、オープンカーの本場ドイツでは、厳冬期に万全の防寒対策をしてオープンで走るのが「通」とされておりよく見かける。
[編集] オープンカーの車種またはオープンカーのグレードがある車種
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[編集] 関連項目
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