二輪駆動
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二輪駆動(にりんくどう)とは、自動車、オートバイ、自転車などの駆動方法の一種。四輪車の場合は前後いずれかの二輪を、二輪車の場合は前後両方の車輪を駆動させる方式。英語のtwo-wheel driveの略で2WDとも呼ばれる。エンジン配置と駆動輪の違いにより、FF、FR、MR、RRがあり、2WDよりもこちらで呼ばれることが多い。
目次 |
[編集] 概要
四輪車の場合、四輪駆動と比べると、機構が比較的単純である為、コスト低下や重量軽減を行うことが出来る。一方で、四輪のうち二輪を駆動することから、駆動輪にかかる力が大きくなる為、スリップを起こしやすく、スタックや脱輪等で駆動力が地面に伝わらなくなる場合がある。
また、二輪車の場合は、一般的な前・後輪駆動と比べると、1つのタイヤ接地面にかかる力を抑えることができ、悪路走行性や高速性能を高めることが出来る反面、機構が複雑になる為、コスト上昇、燃費悪化、重量増といった欠点があり、四輪車で言うところの四輪駆動と同じような特徴を持つ。
[編集] 歴史
[編集] 駆動方式
[編集] FF(フロントエンジン・フロントドライブ方式)
FFとは車体前部(キャビンより前方)にエンジンを配置し、現代の乗用車のスタンダードな駆動方式となっている。いわゆる、前輪駆動である。
FF方式の長所
- 荷重が前輪に多くかかるため直進時の安定性が良く、雨や雪などの悪天候下でも、走行安定性が高い。RR方式の次にトラクションが得やすい(重積載時や登坂ではFR方式に劣る)。(トラクション・直進性)
- 床下のプロペラシャフトやデフを廃し低床・平床化が図れる。(静粛性・居住性・コスト)
- 横置きエンジンの場合はパワートレインの省スペース化により、車体長の短縮と車室の拡大が容易。(居住性・コスト)
- パワートレインのモジュール化が可能で、組み立て時間の短縮や、車種を超えた流用も容易。(コスト)
- リアサスペンションの構造を簡素化でき、それに費やす実験も短縮できる。(コスト)
- モジュール化によって、多くの自動車に採用されるようになり、それにより多くの実験結果が得られ、開発期間を短縮できる。
- 駆動力の伝達距離が短い事から省燃費走行にも向くとされ、エコカー等にも積極的に採用される。
FF方式の短所
- 重心の位置と駆動輪荷重(軸重配分)のジレンマ(RRや横置きMRとは傾向が異なる)。(設計自由度・運動性・操縦安定性)
- 駆動力と旋廻力を同時に前輪が負担するため、旋回時の癖、いわゆるアンダーステア特性やタックインが避けられない(その後サスペンションとタイヤの改良により、現在では、ほぼ、問題のない操縦性を得ているが、他の方式に比べると劣る)。(運動性・操縦安定性)
- 同様の理由で高出力・大車重に向かない。
- 操舵中、角度のついた自在継ぎ手に力が加わることによるトルクステア(現在ではほぼ解消)。(ハンドリング)
- 駆動力の着力点と装舵の着力点のずれによるワンダリングが発生しやすい(設計により解消できるが、サスペンションのジオメトリーやホイールオフセットを改造・変更した場合などは発生する)。(操縦安定性)
- 低級振動が出やすい(高級車に採用しにくい)。特に横置きの場合、車体の曲げ方向に働く振動(エンジンによるバイブレーションやスナッチ)を抑えることが難しい。(静粛性・居住性)
- 縦置き、横置きにかかわらず、自在継ぎ手を用いる構造から、前輪の切れ角が大きくとれず、旋回半径が他の方式と比べて大きくなりがち。(取り回し)
- 横置きエンジンの場合、パワートレインの横幅が増すことによる前輪切れ角の減少(左右の切れ角が同じにならない場合もある トランスミッションの配置により差がある)。(ハンドリング)
- 横置きエンジンの場合、左右のドライブシャフトの長さが均一でないことが多いため、急発進時に左右の歪み率の違いによるトルクステアが起こりやすい。(操縦安定性・直進性)
[編集] FR(フロントエンジン・リヤドライブ方式)
FRとは車体前部(基本的にキャビンより前方、キャブオーバー車ではフロントシート下など)にエンジンを配置し、プロペラシャフトを介して後輪を回転させる方式である。乗用車では比較的大型のエンジンを積むセダンや、一部のスポーツカーに採用される場合が多い。また、トラックは貨物自体を粘着重量に利用することからFFにするメリットがないため、原則的にFR駆動となっている。
キャブオーバー車などフロントシート下にエンジンを搭載している車種の駆動方式については、自動車情報誌や自動車情報サイトによって「FR」「MR」「フロントMR」などと表記が異なる場合がある。
FR方式の長所
- 前輪は操舵、後輪は駆動のみに徹する事が出来、前後輪で役割を分担できる。そのためタイヤ性能に余裕が生まれ、より大型で高出力のエンジンを積む事ができる。
- 前後で役割を分担しているために、タイヤのローテーションの必要がFFに比べて薄い。
- 後輪に荷重がかかる発進・加速時のエネルギーのロスが少ない。
- 前輪の切れ角が大きく取れるため、最小回転半径が他の方式に比べて小さい。
- FFに比べてハンドリングが素直であると言われる(しかしこれは車自体の素性やセッティング、ドライバーの感覚による差が大きいため、絶対的ではない)。
- クラッチ蹴りなどにより比較的楽にドリフトやパワースライドが行える(しかし後輪を滑らせるという行為自体は楽に行えるが、速く走るためにはLSDが不可欠であると言われており、相当の練習も必要である)。→詳しくはドリフト走行の項を参照
FR方式の短所
- FF方式と共有できる部品が少なく、部品点数も多くなるためコスト高になる。
- トラクション性能、高エネルギー時(高速レーンチェンジや高G旋回)のスロットルのオン、オフ両方での高いスタビリティー、居住性(主に乗り心地)を高い次元で満たすサスペンションの設計が難しく、車種ごとのシミュレーションや実験に時間がかかる。
- 同様の理由でサスペンションのスプリングは金属ばねでは制御が難しくなっており、空気ばね(エアスプリング)を使う必要があり、さらなるコスト増となる。
- リア・サスペンションに大きなスペースが必要なうえ、デフ、プロペラシャフトも加わり、有効スペースが少なくなる。
- FFより離対気流の影響を受けやすくなることや、併せて相対重量の重い車体前部を相対重量の軽い=接地荷重の少ない後輪が押し進める構造のためスリップしやすく、雨や雪などの悪天候下、荒れた路面では走行安定性が低下するなどの欠点もある。
- ハイブリッド車の場合、減速時にはフロントに荷重がかかるため、FRでは回生ブレーキによる発電効率が悪い。
[編集] MR(ミッドシップエンジン・リヤドライブ方式)
MRとは車体後部のうち後輪車軸より前方にエンジンを配置し、後輪を駆動させる方式である。
- エンジンを車軸間に配置することで重量バランスが極めて安定し、かつ前輪を操縦用に専用できる為スポーツ走行に極めて有利で、F1などのフォーミュラカーで主流である。
- 構造上、定員が限られる為市販車における採用は一部のスポーツカーのみである(日本国内ではホンダのNSXとビート、トヨタのMR2およびMR-S、マツダのAZ-1、スズキのキャラ(AZ-1のOEM)等)。ただし軽自動車の場合は、エンジンが小型であるがゆえに後部座席シート下やハッチバック車のラゲッジスペース下にエンジンを納めることが可能な例もあり、ホンダ・アクティ、ホンダ・Zや三菱・iがMRを採用している。
[編集] RR(リヤエンジン・リヤドライブ方式)
RRとは車体後部(後輪車軸より後方)にエンジンを配置し、後輪を駆動させる方式である。
- 駆動輪に掛かる荷重が大きく発進時のトラクションに非常に優れる。また、ブレーキ時にも4輪に荷重がバランスよく掛かるため大変安定した性能を発揮する。ポルシェのブレーキ性能が世界的評価を受けている理由は、その品質もさることながらRRであることの素性の良さも関係している。
- 前輪の操縦性を確保しつつキャビンを広く取れるのが特徴だが、高速走行時の安定性は悪い。また車体前部の相対重量が軽くなるため、セダンやスポーツカー等においては離対気流の影響を最も受けやすいとされる。このため現在では乗用車としてはポルシェなど一部でしか採用されていない。
- 居室面積を広く取れるため軽自動車のような小型自動車では長らくこのレイアウトを採用していたが、整備性や冷却性の悪さ、その特殊な運転特性から次第に採用されなくなっている。
- 背の高い構造物であるエンジンを後方に設置することから、運転席を高く上げずとも床面積を稼げる方式である為、バスでは主流となっている。スバル・サンバーは軽ワンボックス・トラックとしては珍しいRRレイアウトである。かつてはサンバーの排気量を1000cc(後に1200cc)、定員7名に拡大したスバル・ドミンゴも存在した。フォルクスワーゲン・ビートルはRRを方式を採用していたが、現行車のニュービートルはFFになっている。
[編集] 関連項目
- 4WD(四輪駆動方式)
- FF layout(英語)
- FR layout(英語)
- RR layout(英語)
- FM layout(英語)
- MR layout(英語)
- Front wheel drive(英語)
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