ブラウン管
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ブラウン管(ブラウンかん)はドイツのカール・フェルディナント・ブラウンが発明した表示器で、多くのコンピュータディスプレイ、テレビ受像器やオシロスコープなどで用いられる。工学的には英語直訳の陰極線管(CRT、Cathode Ray Tube)や、受像管と呼ばれる。
陰極線とは真空管の陰極(カソード)を熱すると発生する熱電子の高速な流れのことである。
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[編集] 原理
ブラウン管内で、電子は一本の電子線に集束され、磁界により偏向されて蛍光物質を塗布した表示面(陽極、アノード)を走査する。電子が蛍光物質に衝突すると光が放出される。
陽極に高電圧を印加することにより、陰極から放出された電子はさらに加速される。カラーブラウン管のアノード電圧は普通20から26kVであり、白黒ブラウン管ではこれよりも低い。電子ビームを輝度変調するためにコントロールグリッドを備えるため、簡単なブラウン管は真空管の三極管に分類される。さらに多くの電極を持つ複雑な管もある。
ブラウン管で用いられるガラス管は形が漏斗に似ている事から、ファンネルと呼ばれる。
コンピュータの草創期には、蛍光面が高電圧で帯電されることを利用して、主記憶装置のデバイスとして使用されたことがある。
[編集] 種類
テレビ受像機では管面全体を走査線(ラスタ)とよぶ固定パターンでスキャンしつつ、映像信号の輝度成分に従って電子ビームの強さを変調する。このように、画面上の任意の点の明るさを制御することにより画像を作り上げている。この方式をラスタスキャンと呼ぶ。
初期のレーダー表示装置では、パラボラアンテナの向きと同期して放射線状に電子線を走査し表示を行う。この方式をラジアルスキャンと呼ぶ。
オシロスコープでは、電子ビームの強さは一定の設定値に保ち、ビームを任意の軌跡にそって動かして描画する。通常、水平偏向は時間に比例させ、垂直偏向は入力信号の振幅に比例するように走査する。オシロスコープ用のブラウン管はテレビのものより細長く、電界により偏向させる。これは、電界偏向のほうが磁界偏向よりも、高い周波数で走査を行えるからである。
レーザー光線を用いて大気中の微粒子をスクリーンとし、文字や図形を表示する手法があるが、それと同様、電子ビームの方向を自由に制御し、文字、図形を直接一筆書きのように表示する表示方法を、ベクトルスキャンと呼ぶ。
[編集] 多色表示と市場規模
カラーブラウン管では各々赤・緑・青(光の三原色)に発光する3色の異なる蛍光物質を使い、直線状(アパーチャーグリル管)または方形や円状(シャドウマスク管)に密集して配置する。電子銃が各色に対応して3組あり、各電子銃は対応する1色のドット(蛍光体)にのみ電子線を届くよう、発光面直前にある、アパーチャーグリルまたはシャドウマスクが他のドットに誤って向かう電子を吸収する。シャドウマスクは、三角形ないし六角形状に穴が開いているが、アパーチャーグリルは垂直方向に細いスリット状になっているため、水平方向に支えの線(ワイヤーダンパー)が入っている。アパーチャーグリルのブラウン管をよく見るとその線(ワイヤーダンパー)が見える(“故障ではないか”と問い合わせがよくあると言う)。アパーチャーグリルを使うブラウン管の代表的なものとしては、ソニーのトリニトロン管や三菱電機のダイヤモンドトロン管がある。なおシャドーマスクは電子ビームが通過する穴を小さく・密集させる程に同一面積で電子ビームが遮られるマスク面が広く成りがちで画面が暗くなる(技術的限界)事から高解像度とし難いため、一般のテレビ(アナログ放送)では兎も角、ハイビジョンやパソコン用ディスプレイではアパーチャーグリルを採用した物が広く使われている。
外回りはガラス製なので、蛍光体で発生した光はモニタ外から見えるが、特にカラーブラウン管において、高エネルギー電子線の衝突により発生する危険なX線を遮る必要がある。このため、ブラウン管用のガラスは鉛ガラスが用いられる。これ以外に遮蔽板やアノード電圧が上がり過ぎないような保護回路があるので、最近のブラウン管からのX線放射は安全基準値を十分下回る。
ブラウン管は三極管の特性をもつため、顕著なガンマ特性(ビーム電流と発光強度の間の非直線性)をもつ。初期のテレビ受像機では、画面のガンマ特性は表示コントラストを抑えるように働くため好都合であった。今日でもあらゆるデジタルビデオシステムにおいて固有のガンマ特性が存在する。しかしデスクトップ・パブリッシングなど直線性が要求される分野ではガンマ補正技術が用いられる。
社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の発表(外部リンクの項参照)によれば、2002年の世界市場および日本市場における市場規模および成長率と2005年の市場予測は次の通りである。日本ではすでに逆転しており、PC向けでは2007年には0.3万台にまで落ち込むと推測されている[1]。 液晶ディスプレイ(LCD)の14V型は価格下落に伴って3万円程度での購入も可能になってきた。しかし、ブラウン管14型は1~3万円程度(平面ではない球面タイプでは1万円以下)の安さで気軽に買えるメリット、またPCでの3D作品制作や、テレビゲームなどでは動体表示する際、表示される動体に残存がわずかにでも残る液晶モニターよりもブラウン管モニターの方が快適に作業やゲームプレイを行えるなどといった長所があり、それらの分野での需要があるため、ブラウン管ディスプレイの需要はまだあるとされている。また、中華人民共和国やロシアの農村部では平面ではないタイプのブラウン管テレビの需要があり、品薄状態が続いている。
ディスプレイ種別 | 2002年市場規模(万台) | 前年比(%) | 2005年市場規模予測(万台) |
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CRT | 7,803 | 80% | 4,709 |
LCD | 3,039 | 198 | 9,524 |
ディスプレイ種別 | 2002年市場規模(万台) | 前年比(%) | 2005年市場規模予測(万台) |
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CRT | 173 | 48 | 57 |
LCD | 463 | 136 | 616 |
[編集] 磁石の影響
陰極線管に磁石を近接させておくと、管を構成する金属部品が永久的に帯磁して内部の電子ビームに歪みが起こり、正しく動作しなくなる場合がある。これらブラウン管使用機器の側にスピーカーやモーターといった磁気を発する物を設置するのは避けるべきである。ただし防磁機能を持つものは、影響が無視できるほどに小さい。これは特に鉄製のアパーチャーグリルやシャドウマスクを採用している物でも、これらマスクが磁化すると色ズレを起こしやすい。色ズレの影響が目立ちやすいコンピュータ用ディスプレイでは消磁機能を備えるものが多いほか、テレビなどの消磁用に用いる専用の消磁器(高速で相互に磁場を反転させ、磁束をばらばらに戻す)もある。
消磁器は作動させたら、画面上で円を描くようにしながら次第に遠ざける事で磁気の影響を気に成らない程度に軽減させることができる。一般には奨められない、熟練を要する方法だが、永久磁石でも上手に一定速度で画面上を動かしながら遠ざける事で消磁することも可能である。失敗のリスクがあるので自己責任で実行してほしい。
[編集] 注意
ブラウン管は非常に高い電圧(数~数十KV)で動作する。この高電圧はブラウン管を内蔵する機器の電源を切ったあとでも数日間は残るため、このような機器を分解することは技術的な訓練を受け、適切な事故予防処置をとらない限り行うべきではない。安易に高電圧部分に触れると感電するおそれがあるため、ブラウン管を内蔵した機器本体及びそれに付属するマニュアルなどで警告するなどの措置がとられている。
[編集] ブラウン管の歴史
- 1897年 ブラウン、陰極線管を発明(ブラウン管と命名)
- 1907年 ロシアのロージングがブラウン管を使った受像装置を発案
- 1927年 日本の高柳健次郎が撮影からブラウン管を使った受像装置までの開発を成功(世界で最初にブラウン管に写った文字は日本語の「イ」)
- 1937年 イギリスでテレビ放送が開始(世界最初のテレビ局はBBC)
[編集] 関連項目
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静止 | ニキシー管 | 電子ペーパー | エレクトロルミネセンス | LED | |||
ビデオ出力 | VFD | CRT | PDP | OLED | レーザーTV | LCD | DLP | LCoS | SED | FED | NED 映写機 | 自由空間映像 |
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3D | ステレオスコープ | ホログラフィー |
[編集] 出典
- ↑ PC向けCRT、2007年に“日本の絶滅危惧種”に, ITmediaニュース ,
[編集] 外部リンク
- 「ブラウン管が足りない!」、北京松下、中国やロシアの需要でフル生産
- 2002年情報端末関連機器の世界・日本市場規模および需要予測 (社団法人 電子情報技術産業協会 2003.3.6)