トビウオ
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トビウオ | ||||||||||||||
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トビウオ(飛魚、鰩、英名 flyingfish)、トビウオ類は、ダツ目トビウオ科の魚。
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[編集] 特徴
太平洋、インド洋、大西洋の亜熱帯から温帯の海に生息する海水魚で、世界で50種ほど、日本近海でも30種弱ほどが知られる。トビウオの名前の由来は、水上に飛び出し、胸ビレを広げて滑空することから。日本近海で獲られる代表種は、トビウオ(ホントビウオ)、ハマトビウオ、ツクシトビウオ、ホソトビウオなど。九州や日本海側では別名アゴと呼ばれる。島根県の県の魚に指定されている。
[編集] 味
特に九州など西日本で親しまれている。旬は初夏から夏。小骨の多い魚だが、脂肪分が少なく淡白な味で、塩焼き、フライなどにして食べる。鮮度の落ちやすい魚だが、新鮮なものは刺身がうまい。トビウオを原料とした竹輪は「あごちくわ」(アゴ野焼き)と呼ばれ、鳥取県、兵庫県、島根県の特産。八丈島ではくさやに加工される。
また西日本の各地では天日や機械で乾燥処理した「アゴ干し」が作られる。「アゴ干し」自体やそれを破砕した「トビ節」、炭火やガスコンロなどで焦がした「焼きアゴ」がみそ汁や料理のダシをとるために使われることが多い。消費者のニーズも高く、長崎や福岡の醤油メーカーは「あごだし」を商品名に冠した粉末だし、めんつゆ、出汁パックを商品化している。
例えば長崎県新上五島町や五島市でつくられる郷土料理「五島うどん」では、五島産の麺を使い、トビウオからとったスープで作ったうどんである。近年、マスコミによるPRで全国的に有名になり、麺のみ五島産を使い、ダシにカツオや昆布を使った「五島うどん」が出されることもあるという。アゴの味に親しんでいる地元の人が出張などで食した場合、「ものたりない」と感じることがあるという。北部九州において、アゴだしが根付いていることを示す一例といえよう。また、九州北部ではアゴだしによるラーメンもある。
[編集] 特徴・生態
一般に陸地に程近い沿岸部に多い。海の表層近くに生息し、動物プランクトンなどを食べる。水上に飛び出して、海面すれすれを猛スピードで滑空する。これは主に、マグロやシイラなどの捕食者から逃げるためといわれる。滑空時の高さは3m、1回の飛距離は300m にもおよぶという。勢い余って漁船などに自ら飛び込むこともある。
細い筒状の逆三角形の断面を持つ体をしており、最大の種でも、全長は約30~40cm。背は藍色で腹は白色。胸ビレが発達して著しく大きく、尾ビレは上端と下端が長く伸びたV字状で、特に下端が長く水面から飛び立つ推進力を効率よく伝えられるようになっている。滑空時には胸ビレを広げるので、これがグライダーの翼のような役割をする。腹ビレも大きい種もおり、この場合には翼が4枚あるように見える。
[編集] 日本近海のトビウオと漁業
トビウオ漁は、刺網と定置網が水揚げ量の大部分を占める。
カツオ、サンマなどと同様、季節回遊をする魚で、春先から夏にかけて日本付近まで北上してきて産卵し、秋に南下する。日本で漁獲量が多いトビウオには、ハマトビウオ、ホソトビウオ、ツクシトビウオ、トビウオ(ホントビウオ)などがある。種類により、漁の時期、分布が異なり、また味や用途も違う。漁業の対象となっているこれらの種類は、いずれもハマトビウオ属に含まれる種類である。種ごとの特徴の詳細は分類の項を参照。
3月、4月に春先に最初に関東などの市場に出回るトビウオは、八丈島などからのハマトビウオである。最も大型のトビウオで味もよく、クサヤの材料にも使われる。ハマトビウオは、九州南部では晩秋に回遊してくるのを獲る。
それに続いて、初夏にはツクシトビウオ、ホソトビウオなどが北上してくる。これらの種は、太平洋側とともに、日本海側にも北上し、九州北部、山陰、北陸地方などでは、ホソトビウオ、ツクシトビウオが主に獲られる。トビウオ(ホントビウオ)、アカトビウオ、オオメナツトビウオ、ホソアオトビなどもこの時期から夏にかけての種類である。
これらのトビウオの種類は、市場によって様々な通称で呼ばれる。関東では、春に出回るハマトビウオなどを春トビ、その後の夏に出回る種類を夏トビ(あるいは本トビ)と呼ぶことがある。各地で獲れるホソトビウオは頭部、体つきが丸いことから丸トビ(西日本・日本海側では丸アゴ)と呼ばれ、それに対して頭部が角ばっている種類を角トビ(角アゴ)と呼ぶ。ホソトビウオとツクシトビウオが主なトビウオである日本海側ではツクシトビウオを角トビと呼ぶが、太平洋側ではハマトビウオも角トビと呼ぶ場合がある。
[編集] 分類
トビウオ科には世界で50種ほどが知られている。
- ハマトビウオ属 Cypselurus
- ホソトビウオ C. hiraii
- アヤトビウオ C. poecilopterus
- アリアケトビウオ C.starksi
- ヒメアカトビ C.angusticeps
- ハマトビウオ* C. pinnatibarbatus japonicus
- トビウオ(ホントビウオ)* C. agoo agoo
- ツクシトビウオ* C. heterurus doederleini
- アカトビ* C. atrisignis
- オオメナツトビ* C.unicolor
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- * 別属の Cheilopogon 属に分類されることがある種
- ニノジトビウオ属 Hirundichthys
- ホソアオトビ H. oxycephalus
- サヨリトビウオ属 Oxyporhamphus
- サヨリトビウオ O. micropterus
- ツマリトビウオ属 Parexocoetus
- バショウトビウオ P. mento
- イダテントビウオ属 Exocoetus
- イダテントビウオ E. volitans
[編集] 関連項目
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