インジウム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
|
|||||||||||||||||||
一般特性 | |||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称, 記号, 番号 | インジウム, In, 49 | ||||||||||||||||||
分類 | 卑金属 | ||||||||||||||||||
族, 周期, ブロック | 13 (IIIB), 5 , p | ||||||||||||||||||
密度, 硬度 | 7310 kg/m3, 1.2 | ||||||||||||||||||
色 | 光沢ある銀色系灰色 |
||||||||||||||||||
原子特性 | |||||||||||||||||||
原子量 | 114.818 amu | ||||||||||||||||||
原子半径 (計測値) | 155 (156) pm | ||||||||||||||||||
共有結合半径 | 144 pm | ||||||||||||||||||
VDW半径 | 193 pm | ||||||||||||||||||
電子配置 | [Kr]4d10 5s2 5p1 | ||||||||||||||||||
電子殻 | 2, 8, 18, 18, 3 | ||||||||||||||||||
酸化数(酸化物) | 3(両性酸化物) | ||||||||||||||||||
結晶構造 | 正方晶 | ||||||||||||||||||
物理特性 | |||||||||||||||||||
相 | 固体 | ||||||||||||||||||
融点 | 429.75 K (156.60 ℃) | ||||||||||||||||||
沸点 | 2345 K (2072 ℃) | ||||||||||||||||||
モル体積 | 15.76 ×10-3 m3/mol | ||||||||||||||||||
気化熱 | 231.5 kJ/mol | ||||||||||||||||||
融解熱 | 3.263 kJ/mol | ||||||||||||||||||
蒸気圧 | 1.42 E-17 Pa (429 K) | ||||||||||||||||||
音の伝わる速さ | 1215 m/s (293.15 K) | ||||||||||||||||||
その他 | |||||||||||||||||||
クラーク数 | 0.00001 % | ||||||||||||||||||
電気陰性度 | 1.78 (ポーリング) | ||||||||||||||||||
比熱容量 | 233 J/(kg*K) | ||||||||||||||||||
導電率 | 11.6 106/m Ω | ||||||||||||||||||
熱伝導率 | 81.6 W/(m*K) | ||||||||||||||||||
第1イオン化エネルギー | 558.3 kJ/mol | ||||||||||||||||||
第2イオン化エネルギー | 1820.7 kJ/mol | ||||||||||||||||||
第3イオン化エネルギー | 2704 kJ/mol | ||||||||||||||||||
第4イオン化エネルギー | 5210 kJ/mol | ||||||||||||||||||
(比較的)安定同位体 | |||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||
注記がない限り国際単位系使用及び標準状態下。 |
インジウム(Indium):原子番号 49 の元素。元素記号はIn。III族元素の一つ。銀白色の柔らかい金属。常温で安定な結晶構造は、正方晶。比重 7.3、融点は摂氏 156.4℃と低い。常温では空気中で安定である。酸には溶けるが、アルカリや水とは反応しない。
目次 |
[編集] 用途
シリコン、ゲルマニウムに添加(ドープ)してp型半導体を形成する。融点が低いので、低融点合金であるはんだなどに利用される。またインジウムの化合物では、InPなどの化合物半導体が注目を集めている。
そのほか、酸化インジウムは伝導性があるのに透明であることから液晶ディスプレイに使われている。
[編集] 歴史
リヒター(H.T.Richter)とライヒ(F.Reich)によって、1836年に存在が発見。名前は発光スペクトルが濃い藍色(indigo)であったことが由来。
[編集] インジウムの化合物
- 酸化インジウム(In2O3)
- リン化インジウム(InP)
- ヒ化インジウム(InAs)
- アンチモンインジウム(InSb)
[編集] インジウムの採掘
インジウムを産出している世界最大の鉱山は札幌市の豊羽鉱山であったが、採算の悪化や資源枯渇を理由に2006年3月31日をもって採掘を停止。インジウムは現在、液晶ディスプレーや発光ダイオードなどのハイテク製品の原材料として広く用いられているため、近い将来、一時的に需給の逼迫が生じると考えられている。
[編集] インジウムの珍しい性質
右側の表の通り、自然界には質量数113のインジウムと質量数115のインジウムの2種が存在し、95%以上が質量数115のものである。この同位体は天然放射性同位体である。1つ以上の安定同位体を持つ元素の中で、天然放射性同位体が安定同位体より多く存在しているのはインジウムとレニウムだけである。
このインジウム115は天然放射性同位体といえど半減期が441兆年と極端に長く、限りなく安定同位体に近い。現在インジウムは半導体やレーザの技術で需要が高まっているが、そのほとんどが放射性同位体であっても、これほどにも半減期が長いため、現在の用途では放射性同位体であることを無視してよい。将来、原子1個レベルでの信頼性が問われるような製品が出た場合でも問題になることは稀だと考えられている。
インジウム115以上に極端に長い半減期を持つ天然放射性同位体として、
が知られている。これらはインジウム115とは異なり、いずれも同位体の構成比で過半数に満たない。これらに対して、
は極端に長い半減期を持ち、前者が31.687%(テルルの天然同位体存在比で2位)、後者が33.799%(同1位)と、両方合わせば約65.5%と、高い存在比を示している。 なおビスマス209は(1.9±0.2) ×10E19 年という非常に極端に長い半減期を持つ天然放射性同位体である。