D軌道
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d軌道(ディーきどう)とは、原子を構成している電子軌道の1種である。方位量子数は2であり、dxy軌道、dyz軌道、dzx軌道、dx2-y2軌道、dz2軌道という5つの異なる配位の軌道が存在する。
d軌道にどのように電子が配置されるかが銅や鉄などのDブロック元素の物性を決定している(周期表参照)。 特にマンガンやコバルトといった強磁性体の性質、遷移金属酸化物に代表される 強相関電子系の性質、そして高温超伝導体の物性、にはd軌道の電子が重要な役割を果している。
通常、d軌道は5重に縮退しているが、遷移金属錯体で見られるように、O2-やOH-など6個の配位子が遷移金属イオンの周りに正八面体状に配位すると、配位子による静電場の影響でd軌道の縮退が解け、3重に縮退したt2g軌道と、2重に縮退したeg軌道に分裂する。これを配位子場分裂とよぶ。配位子の方向に電子の存在確率が高い dx2-y2軌道、dz2軌道は配位子による静電反発のため、軌道のエネルギーが押し上げられ、 2重に縮退したeg軌道になる。また、配位子の方向に電子の存在確率が低いdxy軌道、 dyz軌道、dzx軌道はエネルギーが低く、3重に縮退したt2g軌道になる。
eg軌道に空きがある場合、分裂幅に応じた光を吸収することにより、t2g軌道の電子はeg軌道に遷移し、人間の目には吸収される光の波長の補色にあたる色が見える。このため、一般に遷移金属錯体は色を持つものが多い。吸収される光の波長は中心の遷移金属や配位子の種類によって異なる。例えば、塩化コバルト(II)(Co(H2O)6Cl)は鮮やかなピンク色をしている。(詳しくは配位子場理論を参照せよ)