長谷川裕一
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長谷川 裕一(はせがわ ゆういち、1961年4月25日 - )は、日本の千葉県佐原市(現・香取市)出身の漫画家・特撮評論家。少数ながら、長谷川 裕二(はせがわ ゆうじ)名義での活動もあり(作品リストを参照)。
主な作品に『マップス』『逆襲のギガンティス』『轟世剣ダイ・ソード』『機動戦士クロスボーン・ガンダム』『飛べ!イサミ』『クロノアイズ』などの漫画作品や、東映特撮作品のSF考証本『すごい科学で守ります!』がある。また、アニメ脚本家・ライトノベル作家・スーツアクターの長谷川勝己は実弟であり、兄のデビュー当初の頃にアシスタントを務めていたことがある。
目次 |
[編集] 略歴
千葉県立千葉東高等学校在学中に自主制作アニメ『スタージャッジ』を制作(ただし完成したのは高校卒業後である)。高校卒業後に松田一輝に師事した後、秋田書店の「月刊少年チャンピオン」1983年11月号掲載の『魔夏の戦士』で商業誌にデビュー。同誌などで数本の読みきり作品を発表した後、1985年に学習研究社が「アニメディア」増刊として刊行した「SFアニメディア(後の「月刊コミックNORA」)」創刊号で『マップス』を発表。当初読みきりのつもりで描いた(ちなみに編集の連絡ミスが原因)同作の連載で知られるようになり、以来現在にいたるまで主に月刊少年誌(あるいはマニア誌やメディアミックス誌などと分類されることもある)で活動している。
デビューに前後して、人づてでテレビアニメ作品『超時空騎団サザンクロス』のデザイン(主に主人公達が着る甲冑、アーミング・ダブレットの足跡)を手伝っていたことや、タイムボカンシリーズの復活企画(この企画は結局実現しなかった)用の主人公メカのデザインを手がけたことがある。同じ頃、小学館の依頼で『ドラえもん』の道具の内部図解をアルバイトで担当し、今ではそれがそのまま公式設定とされている。一番苦労したのはタイムふろしきの内部図解であったと後に述懐している(参考)。また、横山光輝の『元禄御畳奉行の日記』という作品のバックを手伝ったこともある。ちなみに長谷川裕一が横山光輝に会ったことがあるのはそのときの1度だけで、後に手がけることになる『鉄人28号 ~皇帝の紋章~』の連載中に横山光輝が死去してしまったため再度会うことはかなわなかった。
[編集] 受賞歴
星雲賞を2度受賞している。
- 第32回(2001年) ノンフィクション部門 『もっとすごい科学で守ります!』
- 第34回(2003年) コミック部門 『クロノアイズ』
また、受賞にはいたらなかったが1995年(第26回)に『マップス』、1998年(第29回)に『機動戦士クロスボーン・ガンダム』、2004年(第35回)に『クロノアイズ・グランサー』がそれぞれコミック部門の参考候補作に挙げられていた。ちなみに、2000年には第10回暗黒星雲賞の企画部門とゲスト部門を受賞している。
[編集] 作風
[編集] 漫画作品
SF的ギミックを用いた正統派の冒険活劇ものを得意とし、他に例を見ないそのスケールの桁違いな大きさと荒唐無稽な世界観、にもかかわらずその大風呂敷をしっかりと畳みきれる構成の巧みさに定評のあるストーリーテラーである。同業者・関連業界関係者のファンも多い。また、オリジナル作品・原作つき作品のどちらであっても時に「長谷川節」とも呼ばれる独特な雰囲気を出すことに成功している。『逆襲のギガンティス』『ビクトリーファイブ』等に見られるように、クロスオーバー作品における違和感のなさも特徴である。
一方で、絵柄の好き嫌いが読者によってはっきりと分かれるという特徴もある。ネームやコマ割りの構成力はかなりあるが、どちらかといえば古風に位置する画風である(作者自身もこの点は認めている)。活動している分野の性格(「緻密な絵」や「萌え絵」が多いが没個性に陥りやすい)を考えると逆に目立っているともとれるが、それ以前に作品の中身で十分カバーできるだけの実力があるのである。
また、この特徴が幸いして「脱がし」を多用する割にはエロ系には程遠く(若干それに近い作品として『堕天使伝童羅』があるがあくまで例外的)、女性キャラが多い割にはいわゆるハーレムアニメ的な方向には展開しない。CGは単行本の表紙で極まれに使う程度である。いずれの特徴も初期から現在にいたるまでほとんど変わっていない。
- 筆はかなり速いほうで、過去には連載2本に加えて1ヶ月で単行本1冊まるまる描きおろすということをやってのけた時期もある(詳しくは『飛べ!イサミ』の項を参照のこと)。
- 漫画家の岡昌平[1]からは「宮崎駿、藤子・F・不二雄に次いで日本で3番目にスケベな漫画家」と評された。また、岡田斗司夫は「日本で2番目にオタクの心が分かっている漫画家」と評した。
[編集] 特撮評論
近年では特撮評論家としての活動も行っており、テレビ東京系列番組「TVチャンピオン」2000年2月10日放送分「悪役怪獣・怪人王選手権」において優勝の栄冠を勝ち取っている。その活動の関連著作としてスーパー戦隊シリーズをはじめとした東映特撮作品のSF考証をテーマとした『すごい科学で守ります!(通称「すごかが」)』シリーズがある。漫画作品におけるそれ同様、クロスオーバーに成功している。1997年から毎年日本SF大会(長谷川裕一は常連参加者の一人である)で開かれる同名のトーク企画はいまや名物企画の1つである。
[編集] 作品リスト
[編集] 漫画作品
- 1990年 機動戦士VS伝説巨神 逆襲のギガンティス
- 1991年 童羅
- 1998年 堕天使伝童羅
- ※2005年に続きが同人誌で発表されている。
- 1992年 メデューサ・ブレード
- 1993年 ダイ・ソード
- 1994年 轟世剣ダイ・ソード
- 1994年 サン・ド・ホリー西へ
- 1994年 機動戦士Vガンダム外伝
- 1994年 機動戦士クロスボーン・ガンダム
- 2003年 機動戦士クロスボーン・ガンダム スカルハート
- 2006年 機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人
- ※原作・富野由悠季。富野本人が初めて原作を務めた漫画作品でもある(本編のみ)。
- 1995年 飛べ!イサミ
- 1997年 飛べ!イサミ ダッシュ
- 1997年 忍闘炎伝
- 1997年 超獣機神ダンクーガBURN
- 1999年 聖忍者伝
- 1999年 クロノアイズ - 星雲賞受賞作
- 2002年 クロノアイズ・グランサー
- 2001年 スーパーロボット大戦α THE STORY 竜が滅ぶ日
- 2001年 超電磁大戦ビクトリーファイブ
- 2003年 鉄人28号 ~皇帝の紋章~
- 2004年 無人惑星サヴァイヴ
- ※長谷川裕一自身は構成を担当。作画はアシスタントの大庭園。
- 2005年 マーメイド・ヘヴン
- 2005年 機動戦士Ζガンダム1/2 UC0088 アナザーストーリー
- 2006年 MSV戦記 ジョニー・ライデン
[編集] 『すごい科学で守ります!』シリーズ
いずれもNHK出版刊。詳しくはすごい科学で守ります!の項を参照のこと。
- すごい科学で守ります!(1998年3月1日初版・ISBN 4-14-080364-9)
- もっとすごい科学で守ります!(2000年8月5日初版・ISBN 4-14-080503-X)
- さらにすごい科学でまもります!(2005年11月30日初版・ISBN 4-14-080801-2)
[編集] アニメ関係
- EXPER ZENON(エクスパーゼノン)
- 日本ビクターから1991年9月27日に発売されたOVA。もりやまゆうじと共同で原作を担当。またこれに先駆けてマンガ版(原作・ネーム長谷川裕一、執筆もりやまゆうじ)が「月刊アニメV」に連載されたが、単行本化はされていない。
- 風は翼に乗る 翼は風に乗る
- 『マップス』のKSS版OVA(1994年)の主題歌。長谷川裕二名義で作詞を担当。
- 1997年7月1日発売。「まんが天狗」役で声優として出演している。
[編集] ゲームソフト関係
- タイトーのPS2用RPG。プレイヤーが描いたラクガキで対戦するゲームで、開発スタッフの知人であった長谷川裕一がこの作品の最初のテストプレイヤーであった。また、本作およびシリーズ作品『天才ビットくん グラモンバトル』の本編中で対戦するラクガキも作成している。
- 公式サイト内のデモ 関連記事(Impress Watch)[2][3](ファミ通.com)[4][5](電撃オンライン)[6]
- スーパーロボット大戦シリーズ(『α外伝』『第2次α』他数作)
- 1990年に発表された『機動戦士VS伝説巨神 逆襲のギガンティス』は「ガンダム対イデオン」という一見するとイロモノ的な(担当編集者も企画を聞いた当初はギャグものだと思っていた)内容を大真面目に描いた、当時としては画期的な作品であり、後のスーパーロボット大戦シリーズを予見するような作品である。事実、同シリーズのチーフプロデューサーである寺田貴信はこの作品を見て企画に確信を持ったという。
- 長谷川裕一自身も同シリーズのファンであり、関連のアンソロジーコミックでもいくつかの作品を発表しているが、『スーパーロボット大戦α』の前日談として設定だけが存在した恐竜帝国(ゲッターロボの敵役)との戦いを描いた『スーパーロボット大戦α THE STORY 竜が滅ぶ日』のストーリーは、その後制作された『スーパーロボット大戦α外伝』の公式設定として取り入れられることとなった(DC版の『α』にはこれに関連したPS版からの変更が若干存在する)。また、『機動戦士クロスボーン・ガンダム』は(個別の人物・機体レベルではこれ以前にも例があるものの)漫画作品としては初めてスーパーロボット大戦シリーズに登場した作品(登場作品は2003年の『第2次スーパーロボット大戦α』)であり、以後の同シリーズの新規参戦作品の多様化のきっかけとなった作品しても知られる。
- ちなみに、自作品のクロスオーバーのみでスーパーロボット大戦風のストーリーを構築するという手法を用いた『長谷川裕一ひとりスーパーロボット大戦 大外伝』という同人作品も発表している。
[編集] イラスト・コラム等
- 超銀河的美少女幽霊(ミルキー・ゴースト) (1993年9月25日初版・富士見ファンタジア文庫・ISBN 4-8291-2515-2)
- 一億光年の魔界
- 斉藤英一郎のライトノベル。イラストを担当している。
- 猿飛佐助
- 「SFオンライン」40号
- 『未来戦隊タイムレンジャー』のレビュー[7]
- 総統のブランチ
- 長谷川裕一のSEEDを一刀両断
- 『機動戦士ガンダムSEEDオフィシャルファイル メカ編(講談社)』シリーズに連載されたイラストコラム。続編に『長谷川裕一のSEED DESTINYを一刀両断』がある。
- こんなにヘンだぞ!『空想科学読本』
- ジャケットイラストを1枚担当。
- イラスト描き下ろし。
- HAND MAID メイ プロジェクト・ファイル
- 描き下ろしコラム。
- コミックキラリティー創刊号
- イラスト描き下ろし。
[編集] 同人関連
- 同人活動自体は松田一輝の元に行く前(この頃ともなると漫画同人の黎明期である)から行っている。自主制作アニメ『スタージャッジ』もその1つである。
- 1980年代末頃には「スタジオSAGA」というサークルに参加していた。『鋼鉄の狩人』は同サークルによるシェアード・ワールドを元にした作品である。[8] [9]
- 2000年以降「スタジオ秘密基地」というサークル名でコミックマーケットに参加している。主な作品に『長谷川裕一ひとりスーパーロボット大戦 大外伝』『ドウラ 魔界編』など。
[編集] その他
[編集] テレビ・ラジオ・イベント等への出演
- 飛べ!イサミ スペシャル(1996年1月2日放送)
- 『飛べ!イサミ』本放送時に放送された正月特番。この中で作画中の風景が取材されている。
- 1997年以降『すごい科学で守ります!』トークショーを毎年講演。
- TVチャンピオン 悪役怪獣・怪人王選手権(2000年2月10日放送)
- タモリのジャングルTV(2001年5月1日放送)
- 開運!なんでも鑑定団(2001年7月10日放送)
- アニメエキスポ東京(2004年1月18日パネル講演)
- 仁美と有佳のどらごんデンタルクリニック(2005年4月6日放送)
[編集] 関連書籍
- オタクの遺伝子 長谷川裕一・SFまんがの世界 (2005年3月3日初版・太田出版・ISBN 4-87233-869-3) 太田出版による紹介文
- 稲葉振一郎による長谷川裕一の漫画をテーマにしたSF評論本。長谷川裕一へのインタビューと筆者による分析によって長谷川漫画の持つSF性について考察している。
[編集] 補足事項
- ※参考 Googleで「長谷川祐一」を検索 - Googleもしかしてがはたらき「長谷川裕一」と訂正される。
- あまり知られていないが名前の「裕一」を「ゆういち」と読ませるのは実はペンネームである。本名は同じく「裕一」と書いて「ひろかず」と読ませる。
- 自画像は『マップス』連載終盤頃から同作に登場するニュウ・エイブが使われている(知人に似ていると言われたらしい)。
- 宇宙作家クラブの会員である。
- 21世紀のコミック作家の著作権を考える会に参加している。
- 「悪役怪獣・怪人王選手権」に出場した際、アシスタントに自らを総統と呼ばせていた。公式ブログのスタッフコメントを見る限り、現在でも同様のようである。
- 『ベルセルク』の作者三浦建太郎は長谷川裕一作品のファンとしても知られており、アイデアの素晴らしさに中学時代から影響を受けていると同人誌のインタビューに答えたこともある。
- 『機動新世紀ガンダムX』にカトキハジメとともに「設定協力」としてクレジットされているが、これは同作のタイトルが当時連載中だった『機動戦士クロスボーン・ガンダム』とイメージ的にかぶるため、制作側が配慮したものである。したがって実際には同作には参加していない。
[編集] 関連項目
- 松田一輝 - 師匠、漫画家
- 長谷川勝己 - 実弟・元アシスタント、アニメ脚本家・ライトノベル作家・スーツアクター
- 宮崎真一 - 元アシスタント、メカニックデザイナー
- 栗原一実 - アシスタント経験あり、漫画家・イラストレーター
- SF漫画
- ファンタジー漫画
- SF考証
- 特撮評論
- クロスオーバー作品
[編集] 外部リンク
- スタジオ秘密基地 - 公式ブログ