鈴置洋孝
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
鈴置 洋孝(すずおき ひろたか、1950年3月6日 - 2006年8月6日)は日本の男性声優、俳優。愛知県名古屋市生まれ、東京経済大学卒業。
主な出演作品に『機動戦士ガンダム』(ブライト・ノア艦長役)、『キャプテン翼(昭和版)』(日向小次郎役)、『聖闘士星矢』(ドラゴン紫龍役)、『ドラゴンボール』(天津飯役)、『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』(スタースクリーム役)、『らんま1/2』(九能帯刀役)、『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(斎藤一役)、『無敵鋼人ダイターン3』(主人公・破嵐万丈役)などがある。
目次 |
[編集] 特色・経歴
甘く凛々しい声が特徴。賢プロダクションに所属し、アニメを始め外画の吹き替えなどの活動も多かった。
1973年、野沢那智が代表を務めた「劇団薔薇座」にて役者デビューを果たし、1978年に『無敵鋼人ダイターン3』の主人公・破嵐万丈役で本格声優デビュー(番組レギュラーは『超電磁マシーンボルテスV』か『闘将ダイモス』の頃から参加していたといわれる)。
声優活動のみならず舞台作品への挑戦で、アニメファンや声優ファン以外にも印象を与えた。また1984年には声優バンド「スラップスティック」に、三ツ矢雄二の後釜として加入。解散するまで音楽活動も行っていた。
1997年には「鈴置洋孝プロデュース」を旗揚げし、自身でも演劇のプロデュースを開始。『煙が目にしみる』等の舞台作品を多数発表した。
2006年7月に肺がんと診断され入院・療養に当たっていたが、8月6日の朝に容態が急変し逝去した。56歳。
[編集] 人物像・逸話
仲の良い声優の1人に古谷徹がいた。ガンダム劇場版作成時には、後述するギャラ問題と同時に、鈴置を中心としたメインキャストが一丸となって「主演の古谷を断固としてトップクレジットに掲載する」よう交渉したという。
『銀河英雄伝説』では、イワン・コーネフとルパート・ケッセルリンクの二役を担当。同一声優による重複配役(兼役)を極力避ける方針で知られた(それゆえに、銀河声優伝説とも呼ばれる)同作品においては、珍しく主要キャラクターを2人演じた。
『電磁戦隊メガレンジャー』で共演した出演者たちは、「アフレコに不慣れで大変だった際(特撮作品は他のドラマと異なり、台詞がすべてアフレコとなる)、鈴置さんが親切に色々教えてくれた」と語っている。
声優業界屈指のアルコール好きとしても知られていたが、酒の飲みすぎに合わせ、通例の夜通しカラオケで体調を崩すことも多く、声優仲間やファンから心配する意見も多数聞かれていた。1990年には急病で倒れ、『ドラゴンボールZ』の天津飯役、『らんま1/2 熱闘編』の九能帯刀役などが代演となったこともある。
スラップスティック加入当時、キーボードを指一本で弾いていた。
[編集] 性格
快活で冗談好きな性格として知られていた。
- 『ドラゴンボール』に登場するキャラクターのうち自分に似たものとしては、作品の持ち役であり硬派とされる天津飯ではなく、やや軟派なイメージを持たれているヤムチャを挙げていた。
- 後述する入院の際に、『ドラゴンボールZ』で共演していた堀川亮と古谷徹が心配してそれぞれ見舞いに来た。しかし、鈴置は「ここの看護婦さんは良い(かわいい)」と開口一番で発するなど、普段通りのテンションの高さを見せつけ、堀川も古谷も苦笑することになった。
- 山寺宏一のラジオ番組『KBS京都はいぱぁナイト』の最終回に『それいけ!アンパンマン』の主要声優陣と共に半ば乱入出演した際には、泥酔状態で「(「遊びに来た」と言うニュアンスで)番組に出ているとは思っていない」「かつて京都市左京区下鴨に思いを寄せている人がいた」などと発言し、番組内のネタコーナーでも上機嫌で反応していた。
- 『聖闘士星矢』のDVDが発売された時には、インタビューで「自分も相当年を喰ったから、今後は老師役がやりたい」と冗談で言っていた。
[編集] 怠け者
自称『怠け者』。書類に判を押すだけで一生食っていけると聞いて、一時期本気で税理士になろうとしたという(実際には、税理士はそんな楽な仕事ではない)。
アフレコでもリハーサル中はメモをとらずマーカーもひかず、台本はいつも真っ白だった。林原めぐみは、「手ぶらでディレクターの指示を聞いているのを見かねてペンを貸そうとしたところ、『一度聞けば覚えるだろう』といって断り、そのあとの本番ではまったくNGがなかった」というエピソードを語っている。
[編集] 声優業のギャラ・アルバイト
インタビュー記事の中で『ダイターン3』の頃を振り返り「スタジオでの収録が終わったらすぐに移動してキャバレーの呼び込みのアルバイトを行っていたが、そっちの方が収入がよかった」と語ったことがあり、当時の声優の待遇の悪さがうかがえるエピソードとなっている。
また、声優業だけで食べていけるようになったのは『ガンダム』でブライト役を演じた辺りだったと語っている。それ以外にも英語の勉強のため、帝国ホテルでボーイをしていたことがあったという。
『ガンダム』ヒットによる劇場版作成に当たっては、永井一郎らとともに中心となり、声優陣が一致団結しギャラの値上げを交渉、結果的に当時としては破格のギャラが支払われた。「それだけの仕事をしたと思うし、それに値する作品だと自分達も思ったから」と鈴置は語っていた。
[編集] 薔薇座時代
薔薇座入団のきっかけは、後に妻となる当時の恋人が入団オーディションを受ける際、付き添いとして遊び半分でオーディションを受けたことによる。結果的に住所が同じ隣の部屋だったことが注目されたためか、「おまけ」で合格になってしまったという。
薔薇座のことを指導の厳しさから「ナチ収容所」と称したり、野沢那智本人にも直接苦言を申し出ていたという。自らの回顧において「劇団なのか収容所なのか良く判らない凄いところだった」と語っている。同時に「あそこを経験していたから自分は本当に精神的に鍛えられた。現場で辛いと思ったこともなかった」とも発言している。
鈴置の入団によって(元歌手の戸田恵子が入団した影響も大きいとされる)薔薇座はミュージカル路線に大きく変動するほど影響を受けた。また野沢とは、晩年まで同じプロダクションに所属していたこともあり、親交も深かった。
薔薇座時代のメンバーによる印象は、「とにかくモテる奴だった」と一貫している。
[編集] 死後
死去に際してMXテレビによる調査では、訃報前後の一週間にインターネット上の掲示板やブログで上がった話題で「鈴置洋孝」が2位にランクインした。また富野由悠季、池田秀一、古谷徹らガンダムの制作関係者・共演者が、ガンダム関連の雑誌に弔辞を寄せ、他にも古川登志夫、神谷明など複数の声優が自身のHPやファンサイトで哀悼の意を示した。
師にあたる野沢那智は「芝居は教えたが、命を失ってまで芝居を守れとは教えたくなかった。本当にかわいい弟子だった」とコメントを残した。
[編集] 後任
鈴置の死後、その持ち役を引き継いだ人物は以下の通り。
- 三宅健太(『ポケットモンスター ダイヤモンド&パール』以降:サカキ役)
[編集] 出演作品
[編集] テレビアニメ
- アイドル天使ようこそようこ(山下)
- アキハバラ電脳組(クリスチャン・ローゼンクロイツ)
- 亜空大作戦スラングル(スーパースター)
- あしたのジョー2(白木葉子の秘書:松木)
- あんみつ姫(ペッパー、ジェームス・ボンボン)※第24話、第37話
- EAT-MAN'98(ハード)
- 宇宙戦艦ヤマトIII(太田健二郎)
- 宇宙の騎士テッカマンブレード(フリーマン、ナレーション)
- VIRUS(レイヴェン)
- うる星やつら(運命製造管理局・因幡)
- エスパー魔美(有原成宏)
- NG騎士ラムネ&40(ペーキング)
- F(聖)
- 美味しんぼ(三谷直吉)
- Only・You ビバ!キャバクラ(小金井武史)
- キディグレイド(デクステラ)
- 逆転イッパツマン(ナレーター、スパイ000)
- キャプテン翼(昭和版)(日向小次郎)
- キャッ党忍伝てやんでえ(黒い武将)
- 機甲創世記モスピーダ(イエロー・ベルモント / 男声)
- 機動警察パトレイバー(内海)
- 機動戦士ガンダム,Z,ZZ(ブライト・ノア)
- 銀装騎攻オーディアン(ベルチオ)
- 金田一少年の事件簿(李波児)
- 巷説百物語(笹山)
- 鋼鉄天使くるみ(綾小路博士)
- こてんこてんこ(ヤック/第29-30話)※アニメでは遺作
- 魁!!男塾(伊達臣人)
- 三国志(曹仁)
- スーパービックリマン(アスタラネモ)
- 星界の紋章、星界の戦旗(ドゥビュース)
- 星銃士ビスマルク(ペリオス)
- 聖闘士星矢(ドラゴン紫龍)
- 戦国魔神ゴーショーグン(北条真吾)
- それいけ!アンパンマン(びいだまん)
- タイムパトロール隊オタスケマン(プレトマイオス)
- 太陽の牙ダグラム(ガボール・ザナ)
- 戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー(スタースクリーム、パワーグライド、スリング、デフコン)
- 超攻速ガルビオン(麻矢)
- 超時空騎団サザンクロス(デス、デラ、デミ、ナレーション)
- 超時空世紀オーガス(オルソン)
- 超時空要塞マクロス(リン・カイフン)
- 超獣機神ダンクーガ(ゴンザレス)
- 超力ロボ ガラット(カミル・カシミール・Jr)
- 天空戦記シュラト(雷帝インドラ)
- ときめきトゥナイト(アロン)
- 特装機兵ドルバック(スタンレー・ヒルトン)
- ドラゴンボール(天津飯)
- ドラゴンボールZ(天津飯、セルジュニア、天下一武道会アナウンサーほか)
- ドラゴンボールGT(ドルタッキー、五星龍)
- ドラゴンクエスト(バハラタ)
- トライガン(チャペル・ザ・エバーグリーン)
- バトルファイターズ 餓狼伝説2(ヴォルフガング・クラウザー)
- 陽あたり良好!(関)
- 北斗の拳(シャチ)
- ポケットモンスターシリーズ(サカキ(初代))
- まじかるカナン(フェンネル)
- まじかる☆タルるートくん(座剣邪寧蔵)
- 魔法の天使クリィミーマミ(兵藤新ノ介)
- まんが 水戸黄門(助三郎)
- ミスター味っ子(小西和也)
- ムーの白鯨(白風信)
- 無敵鋼人ダイターン3(破嵐万丈)※デビュー作
- 横山光輝 三国志(陳宮)
- らんま1/2/らんま1/2 熱闘編(九能帯刀)
- ルパン三世 ハリマオの財宝を追え!!(ラッセル)
- るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-(斎藤一/藤田五郎)
- 六神合体ゴッドマーズ(伊集院ナオト)
[編集] OVA
- うる星やつら 夢の仕掛人、因幡くん登場!ラムの未来はどうなるっちゃ!?(因幡)
- SD戦国伝(武者百士貴)
- 機動戦士SDガンダム 運び屋 リ・ガズィの奇跡(リ・ガズィ)
- 新・キャプテン翼(日向小次郎)
- 究極超人あ~る(鰯水等)
- 強殖装甲ガイバー(村上征樹)
- 銀河英雄伝説(イワン・コーネフ、ルパート・ケッセルリンク)
- 県立地球防衛軍(カーミ・サンチン)
- THE 八犬伝 (網干左母二郎)
- 沙羅曼蛇シリーズ(ロード・ブリティッシュ)
- ジョジョの奇妙な冒険(花京院典明)
- 聖闘士星矢 冥王ハーデス十二宮編(ドラゴン紫龍)
- 電影少女 -VIDEO GIRL AI-(ローレック)
- アーシアン(宮城)
- 冥王計画ゼオライマー(耐爬)
- 紺碧の艦隊(フリードリッヒ・フォン・ゴットシャルク大佐)
- らんま1/2 各作品(九能帯刀)
[編集] 劇場版アニメ
- アイ・シティ(ケイ)
- アリオン(アポロン)
- うる星やつら 完結篇(因幡)
- 王立宇宙軍 オネアミスの翼(ドムロット)
- 劇場版機動戦士ガンダム三部作(ブライト・ノア)
- 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(ブライト・ノア)
- 劇場版機動戦士Ζガンダム三部作(ブライト・ノア)
- 劇場版 NARUTO -ナルト- 大活劇!雪姫忍法帖だってばよ!!(狼牙ナダレ)
- 11人いる!(アマゾン)
- スラムダンク(小田竜政)
- 聖闘士星矢 各作品(ドラゴン紫龍)
- 超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか(リン・カイフン)
- トランスフォーマー ザ・ムービー(航空参謀スタースクリーム)
- 名探偵コナン 14番目の標的(仁科稔)
- 名探偵コナン 迷宮の十字路(西条大河)
- 幽☆遊☆白書 冥界死闘篇 炎の絆(耶雲)
- らんま1/2 各作品(九能帯刀)
- るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 維新志士への鎮魂歌(斎藤一)
- 千年女優(大滝)
[編集] ゲーム
- ガンダムシリーズのゲーム作品でブライト・ノア役として多数出演。
- イースIV -The Dawn of Ys-(レファンス)
- キャプテン翼(PS2)(日向小次郎)
- グローランサーIII(ビクトル・ロイド)
- 攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL(トグサ)
- スーパーロボット大戦シリーズ(ブライト・ノア、破嵐万丈、アコース、北条真吾)
- 聖闘士星矢 聖域十二宮編(ドラゴン紫龍)
- 天下人(明智光秀)
- ファンタスティックフォーチュン(レオニス・クレベール)
- マグナカルタ(アスタル)
- メルティランサー Re-inforce(ヤン・シャオピン)
- 龍が如く(囚人番号1356)
- るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 各作品(斎藤一)
- ロックマンX6(シグナス、シールドナー・シェルダン)
- ロックマンX7(シグナス、スプラッシュ・ウオフライ)
[編集] 吹き替え
- トム・クルーズ
- 「ミッションインポッシブル1、2」「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」「遥かなる大地へ」「デイズ・オブ・サンダーTBS版」「ア・フュー・グッドメン」
- メル・ギブソン
- ジョン・トラボルタ
- 「パルプ・フィクション」DVD版
- 「アライバル 侵略者」:ロン・シルヴァー(1998年3月1日(日)テレビ朝日「日曜洋画劇場」)
- 「ゴースト~NYの幻~」
- 「コップランド」:レイ・リオッタ(日本テレビ「金曜ロードショー」)
- 「スピード2」(2000年10月14日(土)フジテレビ「ゴールデン洋画劇場」)
- 「チャイルド・プレイ」:チャッキー(チャールズ・リー・レイ)
- 「ニキータ」:マイケル
- 「バッドボーイズ2バッド」:ジョニー・タビア(ジョルディ・モリャ)
- 「フォレスト・ガンプ/一期一会」:ゲイリー・シニーズ(2000年3月11日(土)フジテレビ「ゴールデン洋画劇場」)
- 「フランケンシュタイン」:ケネス・ブラナー(1996年10月27日(日)テレビ朝日「日曜洋画劇場」)
- 「007 リビング・デイライツ」:ティモシー・ダルトン(テレビ東京「木曜洋画劇場」)
- 「ヤングライダーズ」:ジミー
- 「ロボフォース 鉄甲無敵マリア」:ウイスキー(ツイ・ハーク)
- 「ゾロ」(新総督ミゲル)
[編集] 特撮
- 地球防衛軍テラホークス(ホークアイ中尉)
- 電磁戦隊メガレンジャー(ユガンデ)
[編集] 実写
- 東京シティメルヘン(虎雄ママ)
[編集] テレビ
- ショウビズトゥデイ
(テレビ朝日系列)95年の番組終了時には、 本人が登場した。
[編集] レコード・CD
[編集] CDドラマ
- お金じゃ買えないっ(お金がないっシリーズ)(許斐清貴)
- 鬼哭街 反魂剣鬼(劉 豪軍)
- トーキョーN◎VA The Revolution ナイフエッジ(和泉藤嵩)
- 南国少年パプワくん(ハーレム)
- CD THEATER DRAGON QUEST V Vol.1 (ゲマ)
[編集] カセットブック
- アルスラーン戦記(ダリューン)
[編集] 舞台
- ハロルドとモード - 2004年、構成・演出:堤泰之
鈴置洋孝プロデュース ※鈴置洋孝自身がプロデュースした舞台(発表順)
- 雷電支度部屋
- 雷電披露宴