軍服 (ドイツ)
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ドイツの軍服(どいつのぐんふく)は、1871年から現在に至るドイツ(ドイツ帝国、ヴァイマル共和国、第三帝国、ドイツ連邦共和国、ドイツ民主共和国)における軍服の変遷、および各国への影響について述べる。
目次 |
[編集] ドイツ帝国の軍服
「ピッケルハウベ」とよばれる特徴的な槍つきヘルメットを着用したオットー・フォン・ビスマルク |
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第一次大戦期のドイツ陸軍将校用勤務服の着用例(マンフレート・フォン・リヒトホーフェン) |
第一次世界大戦時のドイツ陸軍兵士の標準的な装備、1916年 |
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塹壕で待機するドイツ軍兵士、1915年ごろ。迷彩カバーをかけたピッケルハウベをかぶり、毒ガス対策用のマスクを着用している。 |
ドイツ帝国海軍将校服の着用例(ティルピッツ) |
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[編集] 陸軍
[編集] 海軍
[編集] 帝国下の領邦(プロイセン以外)の軍服
[編集] ヴァイマル共和国時代の軍服
ヴァイマル共和国時代のギュンター・フォン・クルーゲ陸軍少将(1933年)、軍服と軍帽に主権紋章の鷲章が付けられていない点に注目。1935年の鷲章導入前の撮影 |
[編集] 陸軍
[編集] 海軍
[編集] 準軍事組織・政治団体の制服
[編集] 義勇軍
[編集] ナチス突撃隊
[編集] ナチス親衛隊
[編集] 第三帝国時代の軍服
ドイツ陸軍元帥の軍服(Dienstanzug)の着用例(1)(降伏文書に署名するヴィルヘルム・カイテル元帥、1945年。) |
ドイツ陸軍元帥の軍服(Dienstanzug)の着用例(2)(ゲルト・フォン・ルントシュテット元帥)襟章が着用例(1)と異なる。名誉連隊長の佐官位のそれを着用する。 |
ナチ親衛隊(Allgemeine SS)の制服 |
ハインリヒ・ヒムラー(左)とチィーアアイス親衛隊少佐(マウトハウゼン強制収容所々長)、カルテンブルナー親衛隊中将(右) |
ドイツ陸軍士官候補生の蒋緯国、1938年頃 |
ドイツ陸軍士官候補生の蒋緯国、1938年頃 |
アフリカ戦線におけるエルヴィン・ロンメル装甲兵大将、1941年。 |
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マーケット・ガーデン作戦時にアルンヘム郊外で英軍の捕虜になった迷彩服の武装親衛隊兵士たち、1944年。 |
[編集] 国防軍
[編集] 陸軍
[編集] 海軍
[編集] 空軍
[編集] ナチス党の軍事組織
[編集] 親衛隊
[編集] 突撃隊
[編集] 第二次世界大戦後の軍服
ドイツ連邦軍・陸軍の帽章 |
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ドイツ連邦軍(陸軍)の将官用勤務服 |
イタリア・ローマでのパレードに参加したドイツ連邦軍兵士、2006年 |
ポーランドにおける合同演習のドイツ連邦軍の迷彩服着用例(手前2人) |
訓練を行うドイツの消防士(ヘルメットの形に注目) |
ドレスデンの軍事博物館に展示されている国家人民軍の軍服(手前から4つ目) |
東ベルリン(当時)ウンター・デン・リンデンを行進する国家人民軍の儀仗兵(Ehrenwache) |
[編集] 概観
第二次大戦後のドイツでは、ドイツ連邦共和国(西ドイツ及び(1990年統一後のドイツ)のドイツ連邦軍の勤務服は立折襟を排して開襟ネクタイ式を採用、生地のグレーも明るめの色にするなどしてナチス時代との差別化をはかった一方、東ドイツ(ドイツ民主共和国)の国家人民軍の軍服(1990年の東西統一まで)は、より旧来のドイツ軍の伝統を踏襲するデザインであった。
[編集] ドイツ連邦共和国(ドイツ連邦軍)の軍服
[編集] 陸軍
帽章には、X字形に交差したサーベルを柏の葉が囲む意匠が用いられ、上部には円形章が着く。
[編集] 海軍
帽章には、錨を柏の葉が囲む意匠が用いられ、上部には円形章が着く。
[編集] 空軍
帽章には、翼を柏の葉が囲む意匠が用いられ、上部には円形章が着く。
[編集] その他
[編集] ドイツ民主共和国(国家人民軍)の軍服
[編集] 陸軍(地上軍)
地上軍では戦後しばらく、ナチス時代を踏襲する5つボタンの折襟軍服が兵士・将校ともに使用されていた。1970年頃より、将校は4つボタンの開襟軍服と、親衛隊の軍服を踏襲したようなデザインとなった。兵士は、多少デザインが変更された5つボタンの折襟であったが、実際には、4つボタンでネクタイを締めることが主であった。帽章は国家章をオークの葉で囲ったもの。
[編集] 海軍
[編集] 空軍
[編集] 世界各国への影響
ドイツ帝国時代の軍服との共通性を示すスウェーデン軍の王宮衛兵 |
オスマン帝国末期の軍人イスマイル・エンヴェル・パシャ |
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イラク戦争中の第101空挺師団の兵士のフリッツヘルメット |
[編集] 概観
ドイツ軍は19世紀後半から20世紀前半までの世界の軍事・軍制に多大な影響を与えた存在であり、日本陸軍など同時期の各国の軍服にも(部分的なものも含め)少なからず影響を及ぼした。またその独特のデザインのヘルメットも1930~40年代にかけて各国で採用された。しかし、第二次大戦の敗戦とナチス・ドイツのマイナスイメージから、大半の国でデザインの変更が行われ、現在世界各国の軍服にドイツの影響をとどめる例は少ない。
これ以外にも、世界各国の軍服においてドイツの影響を判別しにくい要因として、以下のようなものがある。
- 第二次世界大戦後の世界において、旧イギリス領、旧フランス領の新興独立諸国のように、新たに編成した軍隊・警察の制服を、丸ごと旧宗主国に範をとったデザインにしている例がない。(ドイツの海外植民地は、第一次世界大戦後他国領に組み入れられた)
- 第二次世界大戦前にドイツ軍の影響を受けた諸国は、その時点で少なくとも政治的には独立を保ち、軍近代化を通じてその独立を維持・強化しようという動機と意図に基づいた国が大半である。つまり軍服の影響を「取り入れる」モチベーションがその国の側にあるわけで、どの要素をどの程度取り入れたかは国によってさまざまな様相を呈する。極論すれば、軍制面でドイツの影響(直接的な顧問の招聘も含む)を強く受けながら軍服にはほとんど影響を受けない例も、逆に、直接的な軍事関係は希薄ながら軍服は模倣する(例えば1930~40年代にナチス・ドイツと類似の政治体制であった国)例も、可能性としてはありうるわけである。
- 影響を「与える」側のドイツ軍自体、上で述べたように何度かの政治的変動と、それにともなう軍服のデザイン変更を経ているので、その国がいつ(いつから・いつまで)ドイツ軍から影響を受けたかによって、その様相も異なってくる。
[編集] 19世紀~第一次大戦まで
- トルコ(オスマン帝国末期~共和国初期)[5][6][7]
- 1880年代後半のノルウェー陸軍兵士
- 日本(明治期) 詳細は「軍服_(大日本帝国陸軍)」を参照[8][9][10]
[編集] 第一次大戦後~第二次大戦終了まで
- フィンランド[11][12]
- 中国(国民政府)[13]
- 関連:「ドイツと中国の軍事協力」・「軍服_(中華民国)」参照。
- スペインでは、ドイツ軍のヘルメットを参考にしながら独自に開発されたヘルメットが1930年ごろから軍隊に装備された(ドイツ軍のヘルメットと比較すると、頭頂部がやや丸みを帯びており、また全体のカーブが滑らかである)。1931年の第二共和国成立を経て、1936年に勃発したスペイン内戦にあたっても、双方の陣営でこのヘルメットが着用された。この時期共和国陣営で作られたポスター等では、のち第二次世界大戦中に「ドイツ兵」「ファシズム」を象徴する視覚的要素として定着したヘルメットのフォルムが、「反ファシズムの兵士」を象徴するアイテムとして用いられている(ギャラリー参照)。一方反乱軍側には、ドイツからの軍事援助にともない、ドイツ軍のヘルメットそのものが支給されるようになり、内戦終了後のフランコ政権下ではこちらがスペイン軍の標準的なヘルメットとなり、第二次大戦後、1975年のフランコの死去をはさんで、1980年代まで用いられていた。[14]
- アルゼンチン[15]
- アイルランド[16]
- ブルガリア[17][18]
- 日本(昭和期) 詳細は「軍服_(大日本帝国陸軍)」を参照[19][20][21][22]
[編集] 第二次大戦後
[編集] 直接的な影響(過去の影響の名残りを含む)
19世紀末から第二次大戦前までドイツ軍をモデルに軍近代化をはかった南アメリカ諸国のなかには、礼服や勤務服、また式典等で着用するヘルメットに、現在でもドイツ軍の影響をとどめる国がある。例:チリ[23][24][25]、 ボリビア[26][27]等
[編集] 間接的な影響(偶然の類似の可能性も含む)
- 旧ソ連軍とその影響を受けた社会主義諸国の軍服に多く見られた以下の要素はかつてのドイツ軍と類似しているが、これらが意識的な模倣か偶然の一致かは確定しがたい。
- 折襟の上着、乗馬ズボン、長靴という基本スタイル
- 将官服において、襟の赤い縁取り、赤い台布に金の刺繍(国を象徴する植物の葉など)を施した襟章、ズボンの太い赤い2本の側線
- 制帽において、円形または楕円形の帽章を囲む葉模様刺繍、将校用のモール編みのあごひも、斜めに付くひさし
- 海軍において、水兵制帽に略式の帽章(円形章等)がつく、夏服やコートに用いられる肩章に陸軍に似たパターンのものが用いられる
- 1980年代から世界各国で採用され始めたケプラー樹脂製ヘルメットが、両耳~後頭部を覆う形状から「フリッツヘルメット」(英語圏での「ドイツ兵」の俗称から)と通称されたり、同様に各国で採用されている迷彩パターンが、第二次大戦中にドイツ軍が開発・使用したものの1つに類似していたりと、現代の最新の戦闘服装が偶然にせよかつての「ドイツ軍」に似た外観を呈しているのは興味深い。
[編集] イメージへの投影(風刺・プロパガンダ・フィクション等)
※軍服_(架空世界)、軍服_(ステージ衣装)も参照。
第一次世界大戦時の戦意高揚ポスター。ドイツがピッケルハウベをかぶった類人猿として表現されている。 |
第二次世界大戦後、現実世界における各国の軍服からドイツ軍の影響が改変されていったのと同時期に(かつおそらくは同じ理由から)、主としてSF的な設定の映画、テレビ、漫画、アニメなど作品の中で、「敵役」の架空の組織や国(惑星や惑星系全体が国家に統一されているという設定もある)の構成員が着用する制服が、第二次世界大戦時までのドイツの軍服をイメージして設定されている例が頻繁に見られるようになった。
こうした「組織」や「国」は、独裁的・軍国主義的で侵略や征服のためには手段を選ばない、という設定がなされ、そこには明らかにナチス・ドイツの体制と、連合軍と対立するイメージが投影している。
- こうしたイメージのフィクションへの投影の先駆的な例としては、ファシズムが現実に台頭していた同時代に、これへの鋭い風刺メッセージをこめて喜劇王チャールズ・チャップリンによって作られた映画「独裁者」(1940年)が挙げられる。ちなみに彼が1918年に制作・主演した「担え銃」にも、茶化されるキャラクターとしてドイツ軍将校が登場し、そこには既に、第一次大戦時に蓄積された「敵」のドイツ軍イメージが反映している。
- アメリカのSF映画「スター・ウォーズ」に登場する帝国軍の将兵はグレーの立て襟の制服に長靴を着用した姿である。またその司令官ダース・ベイダーの頭部のデザインも、第二次大戦時のドイツ軍ヘルメットを連想させるものがある。
- 石森章太郎原作の特撮ヒーロー番組「仮面ライダー」では、悪の組織ショッカー日本支部の初代大幹部として「ゾル大佐」というキャラクターが登場するが、彼は当初、折り襟の国防軍将校服に酷似した制服・制帽・長靴という姿で登場した。その後彼自身の服装は途中から、青灰色の開襟ジャケットに白いスカーフを着用した姿に変更されるが、ゾル大佐が幹部として登場していた時期の本作品では、日本支部に連絡または作戦への協力のために訪れる他の幹部が同様の制服姿で登場するシーンが何度か見られ、ショッカーの幹部共通の制服という設定だったようである。だがゾル大佐が怪人「狼男」に変身してライダーに敗れ、二代目幹部「死神博士」が登場してからは、この設定は自然消滅した。
- 永井豪原作のロボットアニメ作品「マジンガーZ」では、元ドイツ軍人を改造した幹部「ブロッケン伯爵」が登場し、その配下のサイボーグ兵士「鉄十字軍団」も、第二次大戦時のドイツ軍兵士がヘルメットを着用した姿を連想させるものであった。(頭部はヘルメットとも、サイボーグ化された頭部の一部とも解釈できる)
- 石森章太郎原作の特撮ヒーロー番組「大鉄人17」には、意思を持ったコンピュータ「ブレイン」と、その開発者の一人ハスラー教授が世界各地の犯罪者を集めて作った組織「ブレイン党」が登場するが、その戦闘員はヘルメット・制服等第二次世界大戦時のドイツ軍兵士を思わせるデザインであり、また幹部もナチス親衛隊将校服をおもわせる黒生地の制服・制帽・長靴・黒ネクタイ姿であった。
- ゆでたまご原作の漫画・アニメ作品「キン肉マン」に登場する、「ドイツ出身」という設定の超人「ブロッケンマン」「ブロッケンJr.」は、第二次大戦時の国防軍将校服を基にしたキャラクターデザインである。ちなみに両者は当初「残虐超人」という設定であったが、父の復讐に燃えるJr.がラーメンマンとの死闘の末和解、以後「正義超人」の仲間入りをする。
[編集] 文献
- 陸軍
- Hans Bleckwenn(フリードリッヒ大王当時の歩兵第26連隊の軍服、後の将官の襟章となる) : Die friderizianischen Uniformen 1753-1786, Infanterie I, Harenberg, 1987, ISBN 3-88379-444-9
- Brian L.Davis, German Army Uniforms and Insignia 1933-1945, Arms and Armour, 1992, ISBN 1-85409-158-1
- John R.Angolia / Adolf Schlicht, Uniforms & Traditions of the German Army 1933-1945, Vol.1, R.James Bender Publishing, 1992, ISBN 0-912138-30-0
- John R.Angolia / Adolf Schlicht, Uniforms & Traditions of the German Army 1933-1945, Vol.2, R.James Bender Publishing, 1992, ISBN 0-912138-34-3
- John R.Angolia / Adolf Schlicht, Uniforms & Traditions of the German Army 1933-1945, Vol.3, R.James Bender Publishing, 1992, ISBN 0-912138-37-8
- マイケル・H. プルット 、 ロバート・J. エドワーズ /向井 祐子訳、『パンツァー・ユニフォーム:第二次大戦ドイツ機甲部隊の軍装』、大日本絵画、1995年、ISBN 4-499-22649-X,(戦車兵)
- Jacques SCIPION / Yves BASTIEN Afrikakorps Tropical uniforms of the German Army 1940-1945, Histoire & Collections, 1996, ISBN 2-908-182-505,(アフリカ軍団)
- 田嶋 信雄: 『ナチズム極東戦略:日独防共協定を巡る諜報戦』、講談社、1997年、ISBN 4-06-258096-9,(在華ドイツ軍事顧問団)
- 海軍
- Adolf Schlicht / John R.Angolia, Die deutsche Wehrmacht, Uniformierung und Ausrüstung 1933-1945:Band 2 die Kriegsmarine, Motorbuch Verlag, 1995, ISBN 3-613-01656-7
- 空軍
- Brian L.Davis, Uniforms and Insignia of the Luftwaffe,Volume 2:1940-1945, Arms and Armour, 1995, ISBN 1-85409-107-7
- 武装親衛隊の迷彩服
- Walther-Karl Holznann, Manual of the Waffen-SS, Badges, Uniforms, Equipment, Bellona Publications, 1976
- Andrew Steven / Peter Amodio : 『ドイツ武装親衛隊軍装ガイド』、上田 信訳、並木書房、ISBN 4-89063-050-3、1993年
- Dr.Jean F.Birsarello / Akira Kikuchi: 『第二次大戦ドイツ迷彩服』、ホビージャパン、ISBN 4-89425-040-3、1994年
- ナチ党機関の制服
- Walther-Karl Holzmann : Manual of the Waffen-SS, Badges, Uniforms, Equipment, 1976, ISBN 0-85242-487-6
- Francis CATELLIA, Le N.S.D.A.P. : Uniformologie & Organigramme, RM Publication, ISBN 2-9501712-1-4,1987
- 東ドイツ軍の軍服(東ドイツ軍建軍以前の武装警察時代から1990年の国家消滅に至るまでの陸・海・空各軍の被服類全般)
- KLAUS‐ULRICH KEUBKE / MANFRED KUNZ, Militärische Uniformen in der DDR 1949‐1990, Schriften des Ateliers für Porträt‐und Historienmalerei, ISBN 3-00-011362-2,2003
- 主権紋章の鷹章
- アラン・ブーロー: 『鷲の紋章学:カール大帝からヒトラーまで』、松村 剛訳、平凡社、1994年、ISBN 4-582-48210-4
- サユル・フリートレンダー:『ナチズムの美学』、田中正人訳、社会思想社、1990年、ISBN 4-390-60332-9
[編集] 関連項目
- 軍服
- ドイツの歴史
- ドイツ軍
- ドイツ軍戦闘服(ドイツ語版)
- NATO陸軍士官の階級と徽章
- ドイツ帝国海軍の軍服(ドイツ語版)
- ナチス突撃隊の階級章(英語版)
- ナチス親衛隊の階級章(英語版)
- ドイツ連邦軍の軍服(ドイツ語版)
- 国家人民軍(ドイツ語版 階級章の画像あり)
この「軍服 (ドイツ)」は、軍事に関連した書きかけ項目です。この項目を加筆・訂正などして下さる協力者を求めています。(関連: ウィキポータル 軍事 - ウィキプロジェクト 軍事) |
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