日本の軍事
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日本の軍事(にほんのぐんじ)は第二次世界大戦後の日本国の国防政策とその課題を記すものである。戦後の日本の国防政策は専守防衛に徹底し、攻撃的兵器(長距離型爆撃機、(攻撃型空母、大陸間弾道ミサイル (ICBM) など)を持たない事を基本政策としている。 なお攻撃型空母の明確な定義が存在しない。
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[編集] 日本の軍事の現状
日本は昭和21年11月3日公布、昭和22年5月3日施行の日本国憲法第二章「戦争の放棄」第九条「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」との第一項目によって、国際紛争解決のための武力保持、威嚇、攻撃の権利を放棄している。また同第二項では「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」として、武力保持と交戦権を禁じている。根拠としては憲法前文の「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」からである。
これは憲法制定当時、世界で日本唯一のものであった。事実、多くの国の軍隊と違い、憲法制定以降60年余りの間、他国との交戦状態に入った事は一度も無い。一方で、第二項の「前項の目的を達するため(戦力を保持しない)」とあることから、「自衛」のためだけに設置された「自衛隊」という組織が存在する。これは1950年(昭和25年)に朝鮮戦争が勃発し、日本国内の防衛・治安維持を請け負ってきた連合国軍(米軍)が朝鮮半島へ出兵するため、軍事力の空白を埋める目的で、アメリカの要請により設置されたものである(後述)。
自衛隊は軍隊であるかどうかは長らく国内外において意見が分かれており、「侵略戦争はしない。あくまで自衛目的」という意見と、「兵力を保持しているのだから軍隊と何ら変わりがない」(自衛専用の軍を保有する国が数多く現れたこともある)という意見とに分かれ論議されているが、国際的には「Japan Self Defence Force(=日本国自衛軍)」と「軍」であるとの認識が大勢である。2001年、小泉純一郎総理大臣は、「自衛隊は軍隊である。」と明言した。また同時に「自衛隊が軍隊ではないと言う今までの政府解釈はおかしい。」とし、「憲法を改正して、国防の任に携わる人に軍隊としての正しい地位と名誉を与えるべきだ。」と述べた。
日本の軍事予算は、国内総生産に対する 1%程度である。1976年の閣議決定で、専守防衛論議とのからみで1%を超えないものとすることが決定された。1980年代には、この枠の維持が国会審議の大きな争点となったが、1982年には1%枠を超えた予算編成がなされた。なお、この比率は後に低下し、2003年の日本の軍事予算比率は 0.96% である。GNPにおける割合は世界的に見てかなり低い水準にあり、先進国の中で最低の比率であるにも関わらず、軍事予算の規模はアメリカ合衆国、ロシア連邦に次いで世界第三位であるが、大部分を人件費が占めており、装備・施設の維持管理費がこれに被さる。2004年の防衛予算は4兆8,764億円で、一般会計予算の5.94%を占める。
自衛隊の兵力は世界有数と言われることも多いが、その専守防衛という性格上空母、巡航・弾道ミサイル、長距離戦略爆撃機などといった攻撃主目的の兵器がないことから他国との比較は困難である。 また、弾薬の貯蔵量が少ないと一般に噂されているが、一方で「備蓄分の弾薬を消費した後で健在な敵軍はいない」とする意見もある。
2003年3月現在、自衛官の定員は25.5万人、実際の充足人員約24万人で、そのうち陸上自衛隊が約14.6万人、5個方面隊に編成され、10個師団と3個旅団、2個混成団、1個空挺団を管轄する。主要装備は戦車約1,000輌、装甲車約1,300輌、各種航空機約500機、各種火砲7,630門である。海上自衛隊は約4.4万人で、機動作戦を担当する自衛艦隊と近海警備を担当する5個地方隊からなる。主要装備は各種艦艇152隻、42.6万余トン、航空機212機である。航空自衛隊は約4.5万人で、主要作戦部隊は航空総隊、3個航空方面隊と1個航空混成団を管轄する。主要装備は各種航空機500余機、うち作戦機は約300機である。このほか、予備自衛官約54,000人を有する。さらに2004年の在日米軍の総兵力は約4万人であった。
その性格から海外派遣などは考慮されていなかったが、1991年の湾岸戦争以降の国際協調主義の流れの中、初めて海外派遣に踏み切った。1992年に「PKO協力法」が成立して以来、国連平和維持活動や国際緊急援助活動に積極的に参加している。2002年には東チモールに陸上自衛隊員690名を派遣した。その後は中台緊張やテポドンミサイルの打ち上げによる「周辺事態法」、アメリカ同時多発テロ発生に伴う「テロ対策特別措置法」、イラク戦争勃発による「イラク特措法」などの法整備によって、自衛隊の海外活動はより拡大される傾向にある。2004年にはイラクに自衛隊員約1,000名を人道支援の為に派遣した。
[編集] 日本に存在する軍事的機関
日本は、自国の防衛のために自衛隊を保有し、また自衛隊に防衛出動が命ぜられた場合には防衛庁長官が海上保安庁の一部又は全部を指揮しうることとなっている(自衛隊法第80条)。但し、海上保安庁は軍隊の一部ではない(海上保安庁法第25条)。
また、日米安全保障条約に基き米国は日本防衛の義務を負い(同条約第5条)、そのために米国軍隊(在日米軍)が日本に駐留している。
また、日本防衛の義務を負うものではないが、国際連合の軍隊(国連軍)も日本に駐留している。これは、朝鮮戦争における国連軍がいまだ解散していないところ、日本はこの国連軍の行動を援助しており(1951年9月8日に日本国内閣総理大臣吉田茂とアメリカ合衆国国務長官ディーン・アチソンとの間に交換された公文で確認されている。)、そのため「日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定」(国連軍地位協定)を複数の国との間で締結し、それに基いて駐留しているものである。キャンプ座間には国連軍後方司令部が置かれている。
[編集] 日本の軍事史(第二次世界大戦後)
古代~第二次世界大戦までのものは、日本の軍事史の項を参照のこと。
[編集] 強く関係した戦争
- 朝鮮戦争 - 在日米軍の出撃、掃海艇の派遣(当時は未公表)
- ベトナム戦争 - 在日米軍の出撃
- 湾岸戦争 - 自衛隊ペルシャ湾派遣による機雷の除去
- アフガニスタン戦争 - 自衛隊インド洋派遣による給油・後方支援
- イラク戦争 - 自衛隊イラク派遣による復興支援
[編集] 日本国の軍事の歴史
大日本帝国が第二次世界大戦のポツダム宣言受諾による無条件降伏後、大日本帝国陸軍、大日本帝国海軍(俗称日本軍)は解体された。更に戦争放棄を謳った日本国憲法制定により日本は事実上非武装国家となった。だがその後、朝鮮戦争が勃発しアメリカが日本に対して再軍備、再武装を命じた。それが警察予備隊である。警察予備隊は名目上、警察の支援、補佐を目的とする重武装警察であったが、国内外から再軍備の前兆だと批判された。実際に、警察予備隊はその後保安隊を経て実質的な軍隊(陸上自衛隊)となった。だが、日本政府は「攻撃能力を持たないので、軍隊ではない。」として、自衛隊は軍隊ではないと言う説明をし続けた。
- 海上自衛隊の使用する自衛艦旗は、大日本帝国海軍の軍艦旗とほぼ同じである。
- 一部の人達の間には海上保安庁の育成に尽力し、先に成立したのでたので、大日本帝国海軍の正統な後継者は海上保安庁であると言う意見もある。
[編集] 再軍備の歴史
中曽根康弘元内閣総理大臣(防衛庁長官を歴任)は、歴代総理の中でも防衛政策を明確にした総理の1人である。陸上兵力偏重再軍備を批判し、海上兵力と航空兵力の強化、偵察衛星の配備を提言した。同氏が大日本帝国海軍主計少佐であったことも影響していると一部の識者は推測する。だが、中曽根総理の時代ではそれらは政府が研究するに留まり実行に移される事は無かった。
その後の再軍備論争で陸軍偏重再軍備は焦土作戦、本土決戦に繋がると言う批判が上がった。陸上兵力偏重再軍備は本土で決戦すると言う考え方に結び付き易いので、海上兵力や航空兵力に力を入れるべきだと言うのが現在までの日本の安全保障の大きな前提となっている考え方である。 とはいえ、近代史上、明確な上陸意図をもつ敵上陸軍を海上で完全に撃破できた例は無いと言って良く、着上陸そのものを阻止することは困難であるといわざるを得ない。まず陸上兵力を維持することの意義とは、敵に相当規模の上陸軍の用意を要求し、作戦難易度を上昇せしめる事により日本侵攻を抑止することである。また専守防衛を謳う以上、敵の侵攻を予測できても先手を打って攻撃することに制約が加えられる。そもそもにおいて専守防衛とは本土防衛戦を前提とした考え方なのである。
[編集] 潜在的核保有国
2005年現在、日本は核兵器を保有していない。しかし、日本は原子力発電の開発に力を入れており、核技術においては世界の中でも先進国に分類される。また、再処理技術や高速増殖炉など、核兵器と密接に関連する分野においても、核非保有国の中ではもっとも進んでいるとされる。原料についても、国内に無数の原子力発電所を持ち、特にプルトニウムについて青森県六ヶ所村の核燃料再処理施設や、高速増殖炉もんじゅ等の関連施設を持つ。
また、これに関連して、大陸間弾道ミサイルなどの弾道弾と密接につながる宇宙ロケット開発においても、日本は有人宇宙飛行こそ行っていないものの、静止軌道に人工衛星を投射する能力を持ち、高水準の技術を保有している。ただし、打ち上げ能力のみであり、ミサイルとして重要な大気圏再突入に関しては経験が不足している。
その為、国内外から、「現状では保有していないが、必要ならば生産できる準備のある」国家と見られる向きもある。2004年、韓国の核開発問題が浮上した際、韓国はこの事実から、日本と、その核技術開発を認めているIAEAを批判している。しかしながら「核武装可能」という事実を以って、この事を外交カードとみなす政治評論家もいる。また、北朝鮮などの、アメリカのテロ支援国家にリストアップされている国家も、同様の主張を繰り返している。
2005年、経済評論家大前研一氏は、韓国メディアで「90日以内に日本は核武装可能」と発言し、物議をかもした。 後に大前研一氏は当該の発言はしていないと否定した。
[編集] 日本が軍事衝突する可能性が高い国家や地域
防衛白書によると、日本にとっての直接的な軍事的脅威の存在は北朝鮮・中国・ロシアの順番とされている。日本政府は、ロシアは10年間は急激な国防強化は無理だと判断し、北朝鮮・中国に主眼を置いた国防政策をとっている。それに伴い、日本の軍事兵器の配備も北海道(北)から九州(南)へと移っている。 また、国家同士の全面戦争の可能性より特殊部隊やテロ組織による国内撹乱、破壊工作の方が可能性が高く、大型の兵器より個人装備、軽量可搬な支援兵器の充実と組織改変が急務となっている。
[編集] 正面装備削減
MD(ミサイル防衛)導入予算捻出の為、以下のように正面装備の大幅な削減が進行中である。
[編集] 提言
以下の軍事力改革が学者・民間人によって提言されている
- 無人兵器の開発(海上保安庁は既に無人偵察機を導入している)
- インターネットを利用した高度な戦術を可能とするネットワークの構築
- 偵察衛星の打ち上げ(6機打ち上げの予定。2004年現在2機打ち上げ成功)
- ヘリ空母の配備(ヘリ空母相当の能力を持つ13500トン型護衛艦の建造が2004年度、2006年度予算で1隻ずつ承認された。)
- ICBMの保有
- 核兵器の保有
- 対中国向け巡航ミサイルの保有
一方、元自衛隊関係者による提言は以下のとおり
- 小型空母の保有
- 原子力潜水艦の保有
- 空中給油機の保有(政府に保有の承認を受ける)(2006年度より配備)
- 宇宙軍の創設(宇宙軍を創設しない代わりに、内閣府情報センターを設置する)
- 米海軍のイージス艦とのイージスシステムのリンク
[編集] 日本の軍事に対する諸外国からの要望と提言
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※政権交代で要望と提言が撤回される可能性もあり
- アメリカ合衆国は、同盟国日本がイギリスと同等の地位まで向上出来るよう軍事強化を要望している(UKUSA同盟への参加)。
- イギリスは、日本が経済的側面だけでなく軍事的な側面でも世界に貢献するよう求めている。
- オーストラリアは、オーストラリア、日本、アメリカの三国間太平洋軍事同盟を提言している。
- カナダは、カナダ、オーストラリア、日本、アメリカの四国間太平洋安全保障同盟を提言している。
- 台湾は、台湾、日本、アメリカとの軍事同盟を提言している[1]が、野党(中国国民党など)は反対している。
- タイは、勢力伸張の著しい中国への脅威から、日本との軍事的関係の緊密化を提言している。
- ロシアは、日本との軍事的関係の緊密化を提言し、特に航空自衛隊と海上自衛隊(領空侵犯と領海侵犯)について情報の共有を提言している。
- チリは、日本との軍事的関係の緊密化を提言している。
- ブラジルは、日本との軍事的関係の緊密化を提言している。
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ↑ 「陳総統:日米との準軍事同盟関係構築の必要性を強調」、台湾週報、2006年10月9日。
この「日本の軍事」は、軍事に関連した書きかけ項目です。この項目を加筆・訂正などして下さる協力者を求めています。(関連: ウィキポータル 軍事 - ウィキプロジェクト 軍事) |