Privacy Policy Cookie Policy Terms and Conditions ミサイル - Wikipedia

ミサイル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ミサイル (missile) とは軍事用の投射体で、遠隔操作、または自律飛行によって、目標を攻撃する兵器である。日本語では誘導弾という。ロケットジェットエンジンなどを動力として飛行し、目標物に誘導する。

ミサイルの発射
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ミサイルの発射

自己の推進システムと誘導システムを備えたものだけをミサイルと言うが、推進システムを持たず、誘導システムのみを備えるスマート爆弾も技術上の共通点から同列と扱う事もある。

目次

[編集] 語源

ラテン語の動詞 "mittere"(投げる)から派生した形容詞"missile"(投げられるもの)でありローマ時代ではミッシレと呼ばれていた。原義では投射体、飛び道具、投石を指すが、現代では主に推進システムと誘導システムを持つ兵器を指す。

エグゾセミサイル発射の瞬間
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エグゾセミサイル発射の瞬間

[編集] ミサイルの種類

[編集] 対地ミサイル

地上の固定目標を攻撃するミサイル。一人で扱う小型ミサイルから巨大なICBMまで幅広い種類がある。

  • 弾道ミサイル
    • 大気圏外を弾道飛行して目標へ到達するミサイル。射程距離で分類されるが明確な基準はない。ICBMだけはSALT-IIで射程5,500km以上の弾道ミサイルと規定されている。核弾頭を積んで戦略兵器として使用される場合と通常弾頭を積んで戦術攻撃に使用される場合がある。
  • 地対地ミサイル (SSM : Surface-to-Surface Missile)
    • 地上から発射される対地ミサイル。
  • 空対地ミサイル (ASM : Air-to-Surface Missile)
    • 航空機から発射される対地ミサイル。
  • 対レーダーミサイル (ARM : Anti-Rader Missile)
    • レーダーを攻撃するミサイル。誘導装置が通常の対地ミサイルとは異なるため、専用に開発・運用される。主な目標は地上配備のレーダーであるが、巡洋艦などに搭載されている艦載レーダーも攻撃することができる。航空機である早期警戒機のレーダー波を探知するミサイルは対空ミサイルに分類される。
  • 対戦車ミサイル (ATM : Anti-Tank Missile)
    • 対戦車ミサイルは、その名の通り地上の戦車や装甲/非装甲車両を攻撃するミサイルで、目標が地上を移動している点が対地ミサイルとは異なる。歩兵、車両、ヘリコプターから運用されるが、航空機から運用される場合は空対地ミサイルとなり対戦車ミサイルとは呼ばれない事が多い。

[編集] 巡航ミサイル

巡航ミサイル(CM : Cruise Missile)は発射プラットフォームにかかわらず大気圏内を動力飛行して目標へ到達する(=弾道ミサイルを除いた)ミサイルのうち、特に射程距離が長いミサイル。長距離を飛翔する必要から、主翼とジェットエンジンを装備することが多い。破壊対象は地上目標もしくは艦船であり、長距離の対地ミサイルや対艦ミサイルの別称といえる。核弾頭を積んだ戦略ミサイルと通常弾頭を積んだ戦術ミサイルがある。

[編集] 対艦ミサイル

対艦ミサイルは洋上の艦船を攻撃するミサイル。艦船の移動速度は車両と同等のため、対艦ミサイルを対地ミサイルの一部として扱う事がある。この場合の略号はShipではなくSurfaceを用いる。洋上は彼我共に探知範囲が大きくなるため対艦ミサイルは一般的な対地ミサイルより射程距離が大きく、中には弾道ミサイルに匹敵する射程を持つミサイルもあり、これらは対艦用の巡航ミサイルとも呼べる。

地対艦ミサイル (SSM:Surface-to-Ship Missile)
陸上から発射される対艦ミサイル。沿岸防備用兵器として配備される事が多い。
艦対艦ミサイル (SSM:Ship-to-Ship Missile)
水上艦から発射される対艦ミサイル。明示的に艦対艦ミサイルとする場合は潜水艦から発射される対艦ミサイルは含まれない事が多い。
空対艦ミサイル (ASM:Air-to-Ship Missile)
航空機から発射される対艦ミサイル。航空機は機動力に優れるため、ミサイル自体の射程は他の発射プラットフォームに搭載される対艦ミサイルより短めになる。

[編集] 対潜ミサイル

対潜ミサイルは水中の潜水艦を攻撃するミサイル。対潜水艦兵器として他の兵器と一括して扱う事が多い。

[編集] 水中ミサイル

ロケット推進魚雷は水中ミサイルと呼ばれる場合がある。実用化されたものにはロシアのシクヴァルがあり、イランも開発中である。

[編集] 対空ミサイル

対空ミサイルは上空を飛行する目標を攻撃するミサイル。防空用のミサイルと空中戦用のミサイルに大きく分けられる。

地対空ミサイル (SAM:Surface-to-Air Missile)
地上から発射される対空ミサイル。拠点防空用の長射程ミサイルと野戦防空用の中短射程ミサイルに分けられる。
艦対空ミサイル (SAM:Ship-to-Air Missile)
艦船から発射される対空ミサイル。個艦防空用の短射程ミサイルと艦隊防空用の長射程ミサイルに分けられる。
空対空ミサイル (AAM:Air-to-Air Missile)
航空機から発射される対空ミサイル。航空機同士の空中戦での主戦兵器である。視程外距離戦闘で用いられる長射程ミサイルと格闘戦で使用される短射程ミサイルがある。
弾道弾迎撃ミサイル (ABM:Anti-Ballistic Missile)
弾道ミサイルに搭載されていた再突入体を落下途中の空中で地上から迎撃するミサイル。1950年代に開発された核ミサイルと、1990年代に開発された通常ミサイルに分けられる。
対衛星ミサイル (ASAT:Anti-Satellite)
衛星軌道上の人工衛星を地上から攻撃するミサイル。21世紀初頭には実戦配備されているシステムが無くなっている。

[編集] ミサイルの構造

ミサイルは概ね同じような構造を持っている。この章ではミサイルを構成する各装置を進行方向から後ろに向かって解説する。

[編集] 索敵装置

目標を捜索(search)、発見・識別するシステム。索敵装置にはレーダーソナーなどの捜索システムと発見した目標の識別を行う敵味方識別装置(Identification Friend or Foe、IFF)が含まれる。赤外線誘導ミサイルや長射程のミサイル、対地ミサイルの場合、ミサイル本体に搭載されていることも多く、英語ではこれをシーカー(seeker)と呼ぶ。

[編集] 誘導装置

誘導装置はミサイルの先端付近に取り付けられ、目標を追跡(tracking)し目標の現在位置とミサイル自身の進行方向とのずれを随時計算して操縦装置へ進路補正を指示する。英語ではガイダンス・システム(guidance system)、ホーミング・システム(homing system)と呼ぶ。ミサイルには複数種類の誘導装置が搭載される事があり、それぞれ使用される時点に応じて中間誘導装置(Intermediate Guidance system)、終末誘導装置(terminal guidance system)と呼ばれる。一種類しか搭載されていない場合は単に誘導装置と呼ばれる。

[編集] 中間誘導装置

中間誘導装置(intermediate guidance system)は長射程のミサイルに装備され、ミサイルの進行方向を一定に保つ様に誘導制御する。ミサイルが目標近辺に到達した後は索敵装置と中間誘導装置とは別の終末誘導装置によりミサイル自身が目標を捜索・識別・追跡する。中・短射程ミサイルには搭載されない。以下のような制御装置が存在する。

[編集] INS

慣性航法装置Inertial Navigation Systemは主に長射程ミサイルの中間誘導に使用され、弾道ミサイル巡航ミサイルと長射程の対艦ミサイルなどに用いられる。慣性航法装置にはジャイロを用いた加速度計が装備されミサイルに加わった加速度と方向から事前に設定された進路とのずれを計算し、ずれを補正するように制御装置に司令を出す事で進路を保つ。核弾頭を搭載する弾道ミサイルでは終末誘導装置を持たずに慣性航法装置だけを搭載するものも多い。これは大威力の核弾頭を用いれば着弾誤差がかなり大きくなっても目標を破壊することができるためである。慣性誘導は地形など外部からの信号を観測することなく飛行できるため、この誘導を妨害することは撃墜しない限りは不可能である。

[編集] GPS

GPS誘導とはGPS衛星からの電波をもとにミサイルを固定目標へ誘導する。アメリカの誘導爆弾であるJDAMや改良型トマホーク巡航ミサイルであるTACTOMで使用されている

[編集] TERCOM

地形照合による誘導は巡航ミサイルの中間誘導に使用される、トマホーク巡航ミサイルに搭載された地形照合誘導装置はテルコム(TERCOM、TERrain COntour Matching)と呼ばれ、地表へ電波によるスキャンを行い、事前にミサイルに登録したデジタルマップとの比較で進路のずれを計算、補正を行う。

[編集] 恒星天測

弾道ミサイルの中間飛翔行程で使用され、事前に設定された特定の恒星の方向からミサイルの現在位置を算出、進路を補正する。

[編集] 中間指令誘導

中間指令誘導とは、発射後、ミサイルが終末誘導シーカーの検知範囲に目標を捉える前の中間誘導段階において、飛行中のミサイルに対して、データー通信によって指令を与え、着弾点や飛行コースの設定を遠隔操作で変更して目標の新しい位置に誘導する事を言う。

そのほかに、ミサイル内のコンピュータに与えられたさまざまな設定の変更を遠隔操作で行なうことも中間指令誘導に含める場合もある。 たとえば巡航ミサイルの目標を変更する場合、ミサイルに内蔵するDASMAC目標形状データーライブラリのなかから発射時点では目標形状Aを選択設定していたのを発射後、中間誘導段階で指令電波を送って目標形状Bに設定しなおし、更に着弾点をAの位置からBの位置に設定しなおし、必要なら飛行経路を設定を変更する場合などがこれに該当する。

現代のミサイルの多くの重要な機能は中間指令誘導によって実現している。その意味で極めて重要な誘導方式と言える。

  • 1)長射程ミサイルや対高速目標ミサイルとしての必要性
    • INSとコンピューターの利用によるオートパイロットによって、弾道弾だけでなく巡航ミサイルや対艦ミサイル、(対空ミサイルでさえ)「妨害に関係なく、あらかじプログラムされた飛行経路を通って、プログラムされた着弾点に着弾する」事はできるようになったし、「INSは長距離飛ぶと着弾地点の誤差が大きくなる」というINSの欠点もGPSの併用で改善された。
    • しかし、いくらミサイルが「発射時点に狙った位置」に正確に着弾しても、ミサイルが発射されてから着弾するまでの間に、目標は動いてしまう。その誤差が「終末誘導シーカー検知範囲内」なら命中するが、終末誘導シーカーの視野の外にまで目標が外れてしまうとミサイルであっても当たらない。
    • 別の言い方をすれば検知範囲8kmの赤外線ミサイルシーカーや検知範囲20kmのARHシーカーで射程80kmの対空ミサイルを作ろうと思えば、発射してから目標近く(8km/20km)にミサイルが近づくまでは赤外線やARHではない何か別の誘導方式でミサイルを操って、(終末誘導シーカーが検知可能な距離まで)目標に近寄せてやらなければ対空ミサイルとして成立しない。対艦ミサイルなら目標が遅く、80kmの中射程なら発射から着弾までの間に目標が移動できる範囲は小さく、多少動いても終末誘導のARHシーカーの視界内に収まるが、対艦用トマホークの1000kmのような長射程だと発射から着弾まで1時間もかかるから遅い艦艇でも数十km動いてしまいミサイルの飛行中に中間指令誘導で着弾地点の設定を変えないと目標がARHシーカーの視界外に出てしまう。そのようなわけで中間指令誘導が必要とされた。
  • 2)多目標撃ち分け
    • レーダーシーカーにせよ赤外線シーカーにせよ、敵味方識別機能も目標指定機能もない。
    • たとえば、対艦ミサイルへ、中間指令誘導なしでレーダーシーカー対空ミサイル10本を撃ったところに、コントロールを失った味方戦闘機が突っ込んでくれば、対空ミサイルは10本ともレーダー反射面積の大きい味方戦闘機のほうへ飛んでゆき、敵対艦ミサイルはノーマークで突入してくると言う事が起こりうる。そうでなくても、対艦ミサイルAに複数集中して対艦ミサイルBがノーマークというのは起こりうるのである。
    • そういうわけで中間指令誘導があれば「母艦/母機の射撃指揮コンピューター」が母艦/母機(または友軍)のレーダーからの「飛行物体位置/ベクトル情報」や敵味方識別装置からの「敵味方識別情報」を元に、敵と識別した飛行物体のみを「敵Aは対空ミサイル1が担当、敵Bは対空ミサイル2が担当・・」と言う風に各ミサイルに目標として割り当てる事ができる。「中間指令誘導で敵に近寄せてから終末誘導を発動させる」のが「多目標撃ち分けや誤射回避」の原則である。
  • 3)多目標同時交戦
    • また、戦闘機には1個、艦艇には3個ほどしか照射装置がない。イージス艦においてもそれは同じで中間誘導のないSARHなら3目標しか同時交戦できないが、飛行時間の殆どを射撃指揮(戦闘指揮)システムであるイージスシステムが中間指令誘導で統制し、SARHの終末誘導の時間を少なくしたから、時間をずらして3発づつ4バースト12発発射して12目標と同時交戦ができる。F4ファントム戦闘機がAIM7を使って同時交戦できるのは1機だし、飛行機の電力ではフェーズドアレーにしても8本の照射ビームを実用的な頻度で8目標に照射するのは困難である。F14トムキャット戦闘機が扇型に6目標に6本のフェニックスミサイルを撃って6目標同時交戦できるのは中間指令誘導(6-8目標100km先まで撃ち分けでき、低消費電力だが、誘導誤差が50-100m以上はある)とARH(撃ち分け困難、検知範囲20km、低消費電力、誘導命中誤差10m内外)と近接信管(目標・20-30mで点火爆発)の組み合わせあればこそである。
  • 4)オフボアサイト(横の目標を撃つ)
    • たとえば中心線から左右15度の視界を持つ赤外線ミサイルをパイロンに積んでロックしてから撃つ場合、「前の敵」(中心線左右15度)しか撃てない
    • しかし、R73Archerのように、赤外線ミサイルに中間指令誘導を組み込み、戦闘機の中心線から左右60度の視界を持つIRSTからの敵位置情報を元に、戦闘機の射撃指揮装置がR73赤外線指令誘導ミサイルを中間指令誘導できるシステムの場合、ロックしないでミサイルを発射し、中間指令誘導によって60度右に居る目標に赤外線指令誘導ミサイルを指向させ、発射後にミサイルシーカーの狭い視界に目標を見せてロックする事ができる。つまり、赤外線ミサイルに指令誘導を組み合わせれば「横の敵」(中心線左右60度)も撃てる。これは近接戦闘での赤外線ミサイルの撃ち合いでは決定的に有利である。
    • ミサイルの近縁種の誘導魚雷について言えば、昔の潜水艦はしばしば後ろに撃てる魚雷発射管があった。船の回頭には時間がかかるから、後ろに魚雷発射できたほうが潜水艦同士の戦闘で有利だったからだが、最近の潜水艦は後ろに発射管がない。これは有線中間指令誘導+音響ホーミング終末誘導というのが最近の魚雷の主流だからで、有線中間誘導魚雷は艦首の発射管から発射して後ろの敵を撃てるからである。
  • 5)垂直発射
    • 軍用艦艇が損害を受けた場合、片側に浸水して転覆する場合が割と多いので転覆しにくい重心の低い船である事が重要である。また、対空ミサイルをシーソー型の在来ランチャーで発射する場合、同時に2発しか撃てず、次の2発を撃つのにも時間がかかる欠点があり、発射速度向上が急務であった。
    • そういう訳で最近の軍用艦は上向きに束ねられたミサイル発射管、兼、弾薬庫であるVLS(垂直発射システム)を船体に埋め込み、重心の切り下げと発射速度向上を目指している。しかし、このVLSによって上に打ち上げられたミサイルが方向を変えて、海面すれすれを迫る敵の対艦ミサイルを迎撃できるのもミサイルの中間指令誘導のおかげである。ロケットで音響ホーミング魚雷を敵潜水艦の上に投げ込むアスロックという対潜ミサイルも、VLSから発射するバージョンには中間指令誘導が追加されたのである。
    • また、高速で都市の上を飛びすぎる攻撃機はビルとビルの間が見えにくいし、森林の林道の車両も上空から見えにくい。敵機に目の仇にされる対空ミサイル車両と対艦ミサイル車両は垂直発射が可能であれば、敵機に対する生残性が非常に向上する。そういうわけで、陸上自衛隊の最新の対空ミサイル中SAMは垂直発射可能であるが、垂直に上に発射したミサイルが低空を飛ぶ巡航ミサイルを迎撃できるのも中間誘導のおかげである。
  • 6)目標の発射後指定、目標の発射後変更
    • 小さな翼しかもたない砲弾のようなミサイルを仰角45度で打ち上げるより、ミサイルに長い折畳み翼をつけて上空で展開し滑空させたほうが飛距離は伸びる。酸化剤を積む固体ロケットより、酸化剤は空気中の酸素を使うジェットのほうが燃料を2倍積めるので射程は2倍に延びる。そんなわけでトマホークのような亜音速で飛ぶ有翼ジェットエンジン巡航ミサイルと言う形式が、エネルギー効率上最善であり、1000km飛ぶ弾道弾は31tなのに1000km飛ぶトマホークがたった1tで収まり広範囲な発射母体から発射できる弾に仕上がった理由もそこにある。終末誘導においても亜音速ならGPSまたはTV誘導によって戦闘機基地の管制塔でも、フセインが昼食中のレストランでも当てたいところにピンポイントで当てられる。しかも、味方の戦闘機が撃墜される心配もないので敵防空網が生きている間は非常に重宝である。これがトマホークが極めて成功したミサイルと言われる理由だが、イラク戦争では不具合も発見された。フセインの居るところに向けてトマホークを発射したのだが、1000km飛ぶのに1時間かかったため、着弾する頃にはフセインが移動したあとだったのである。そこで新型のタクテイカルトマホークは衛星中継指令誘導を応用して、発射したあとで着弾点や目標を変更したり、先に撃って敵地上空を旋回させておき随時目標を指定して攻撃したりできるようにするという。つまり中間指令誘導が、遅いというトマホークの欠点を補うのに必要なのである。
    • ただし無線リンクは電波妨害(ECM)が可能なので、対電波妨害(ECCM)に意を払う必要がある。ただし、ラジコン飛行機や昔の無人ヘリDASHなどはGPS・INS利用のプログラム自律飛行制御がなかったので、誘導電波の中断は即、墜落につながったが、現代のミサイルはGPS/INSによるオートパイロットが組み込まれているので「中間指令誘導が妨害されても、自律飛行制御なので墜落せず、弾道弾同様、当初予定した着弾地点に向かって飛行を続ける」能力をもっている。また目標地点の修正の指令データー量はたった数字数十字のデーターであるうえ、チェックデジットの利用により不完全受信の認識と再送信依頼ができるので、中間指令誘導の妨害はレーダーホーミングの妨害の数倍難しい。(但し画像伝送や音響伝送はデーター量が大きいので、座標データーの伝送妨害よりは容易である)

[編集] 終末誘導装置

[編集] MCLOS

外部の誘導装置がミサイルに対して進路補正命令を何らかの通信主段で送信する方式。最も初期の誘導爆弾であるフリッツXやAZONでは人間が目測で進路のずれを観測し、操縦装置を操作して有線でミサイルに対して進路の補正を命令した。この方式はリモコン操縦方式とも言われている。同様に初期の対戦車ミサイルでは人間が照準装置で目標を照準し照準線とミサイルの進路とのずれを計測し、操縦装置を操作して有線でミサイルに対して進路の補正を命令した。この方式は手動指令照準線一致誘導方式(Manually Command to Line Of Sight、MCLOS)と言われる。

[編集] SACLOS

手動誘導ミサイルの命中率は操作員の技量に左右されるため、その後は自動誘導装置が開発された。西側の代表的な対戦車ミサイルであるTOWでは半自動指令照準線一致誘導方式(Semi-Automatic Command to Line Of Sight、SACLOS)が採用された。この方式では人間が照準装置で目標を照準し照準線とミサイルの進路とのずれを誘導装置が自動計測し、操縦装置が有線でミサイルに対して進路の補正を命令する。操作員はミサイルが命中するまで目標を照準しつづけなければならないため、半自動とされる。技術的に簡単、安価なので単価が安い対戦車ミサイルによく使われる

[編集] ビーム・ライディング

発射母機から目標に照射した電波等のビームをミサイル後方のセンサーで検知して、ビームに乗り続けるよう自動制御する方式。初めて出現した(機械化)自動誘導方式でMLOSの手動誘導より優れていたが、電波ビームは「目標へ楕円錐状に広がる」ので目標近くで精度が低下するのと、電波ビームを照射する追尾レーダーの追尾が遅れ、照射中心軸が後逸するとミサイルも後逸する欠点があり、目標からの反射波を追跡するSARHに取って代わられた。(この時代の対空ミサイルは核弾頭を積んで爆撃機の大群に向けて撃つような用途にしか使えない命中精度しか期待できなかった)TOWのSACLOSは目標へ照射した赤外線とのずれを計測してミサイルを誘導するのでビーム・ライディング誘導としても分類できる。

[編集] SARH

セミアクティブレーダーホーミング誘導装置(Semi-Active Rader Homing )(SARH)は発射母体が装備する追尾(射撃指揮)レーダーによって目標に電波ビームを照射し、目標からの反射波をミサイル前方の受信専用レーダーシーカーによって検知して反射波放射源(=目標)を追跡(Homing)する自動誘導方式であり、ベトナム戦争時代に実用化したスパローをはじめ多くの対空ミサイルで未だに使われている。

SARHの反射波利用方式は「目標から円錐状」に放射されるのでビーム・ライディングと反対に目標に近づくほど精度が高まる。また照射ビームの中心軸が後逸しても目標が照射ビームの楕円錐に収まっていれば反射波に悪影響はない。SARHは試験射撃では素晴らしい命中精度を示し、初めて実用的な中長距離対空ミサイルとなり、米軍部はミサイル万能論にさえ傾いた。しかし同方式は下記のように実戦で思わぬ欠点を露呈し(下記SARHの欠点参照)一転してミサイル懐疑論が起こりF15戦闘機の設計にも影響を与えた。SARHは完全なレーダーセットをミサイルに積むわけではなく、レーダー発信部(照射部)は発射母体の大型レーダーに依存し、受信部だけミサイルに積んだ方式である。当時の技術では大電力を必要とする発信部までミサイルに積むARHは余りにも大型で高価になるので小さな対空ミサイルには無理であった。SARHは従来は対空ミサイルに多用されてきたが、攻撃ヘリコプターへのミリ波レーダー搭載に伴い、対戦車ミサイルヘルファイア)等でも使用されるようになった。

  • AAMとしてのSARHの欠点
    • ミサイルには受信部のみ搭載しレーダー発信部を母機に依存しているので、母機が攻撃を受けて目標照射(発信)をやめて離脱すると、誘導を失い全く当たらなくなってしまう。この欠点は試験射撃では露呈しなかったが、実戦に投入されてみると母機がミサイルが命中するまで目標を照射し続けるのは実施困難であった。空対空ミサイルなどで攻撃されてしまい、照射放棄して回避機動しなければならない場合が多発した。しかし、近距離赤外線ミサイルしか持っていない相手を相手の射程外から攻撃するのには使えたので、機関砲世代戦闘機を第1世代、赤外線ミサイル世代を第2世代、SARH時代の戦闘機を第3世代と呼ぶことがある。
  • 艦対空ミサイル地対空ミサイルとしてのSARHの欠点1(低空死角問題)
    • 電波照射ビームは直進するために山の向こう側(山の陰)に隠れた敵のヘリコプターを照射できない。同様に地球は丸い曲面で、電波照射ビームは直進するために海面/地面上に設置された追尾ビーム照射機(射撃統制レーダー/MFCS/イルミネーター)は水平線/地平線の向こう側30km先の低空にある敵の巡航ミサイルを照射できない。そのためミサイルの射程が150kmあっても敵巡航ミサイルが低空を飛んでくる場合、30km以内に接近して水平線/地平線に顔を出すまでは照射できない=手出しができない。現代の低空飛行するミサイルはそのSARHの欠点を突いた設計思想になっている。
    • 注(追尾射撃指揮レーダー機能を持つものはMFCS、他の射撃指揮レーダーの指示通りに首を振って照射するだけの物をイルミネーターという)
    • 対空ミサイルの目標が高高度を超音速で飛ぶ爆撃機だった時代には射程150kmを超えるSARH対空ミサイルが盛んに作られ、長射程の艦隊防空SAMが重要視されたが、目標の主流が超低空で飛行する対艦ミサイル(シースキマー)や対地巡航ミサイルになってからは、(水平線/地平線の向こうは照射できないので)主流である低空目標に対しては30km以上の射程は無駄な長射程になってしまった。
    • 実際問題イージス艦が搭載する射程70kmの艦隊防空ミサイルSM2は40km先で僚艦に低空で迫る対艦ミサイルを(水平線の向こう側だから照射できないために)撃墜できない。そのため長射程艦隊防空SAMは今でも重んじられているが、実際問題としては超低空飛行をする対艦ミサイルには「長射程対空ミサイルで艦隊全体をカバーする」という概念は通用しなくなってきていると言う指摘もある。
  • 艦対空ミサイル地対空ミサイルとしてのSARHの欠点2(同時照射数問題)
    • 照射機が3つしかない艦は単純SARHだと同時3目標しか対応できない。
    • イージス艦では終末SARH+中間指令誘導としてSARH誘導を終末の短時間に限定し、時間をずらして4回に分けて3発づつ撃ち、同時3発以上終末誘導段階にならないようにして3つしかない照射機を時間差で分け合って12目標に対応できるようになっている。一方、ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦は6個もの照射機を艦上に並べている。SARHは同時照射目標数だけ照射機が必要なため50目標対応など、対応数が上がるにつれて苦しくなってゆく宿命を負っている。(ARHはミサイル自身が照射機を内蔵しているのでこの問題がない)

[編集] ARH

アクティブレーダーホーミング誘導装置(Active Rader Homing) (ARH)はミサイル自身が発信/照射装置を搭載して目標に電波ビームを照射し、目標からの反射波をミサイル前方のレーダーシーカーによって検知して反射波放射源(=目標)を追跡(Homing)する自動誘導方式であり、AMRAAMなど最新の空対空ミサイル、中SAMなど最新の地対空ミサイル、およびパトリオットPAC3のような弾道弾迎撃ミサイルに採用されている誘導方式である。

  • 対艦ミサイル用としてはTVミサイルARMのように目標の急所に精密に当たるわけではないのと、対地用に兼用できない欠点があるが、TVミサイルと違って撃ったあとの操作を必要とせず、大量に浴びせる飽和攻撃に適しているのと、ARMと違って敵がレーダー電波放射をやめても当たるのが好まれて現在においても対艦ミサイルの主力誘導方式の一つである。
  • ミサイル内蔵の照射機の電力は小さいのでARHシーカーの検知範囲は20km前後であるが(赤外線は8km)でミサイル射程は70-200kmある場合が多いので発射してから目標20kmに接近するまでは何か別の手段で誘導せねばならない。また、ミサイルに敵味方識別装置はないのでARHが味方を追い回しても困る。そういうわけで、通例 終末ARH/中間指令誘導という組み合わせで用いられて、発射後しばらくは中間指令誘導を行ってミサイルをARHシーカーの検知範囲まで「敵」に近づけ、そこでARHを覚醒させる。そしてARHが狙った目標にロックして自律的に追尾を始めたのを確認したら指令誘導母機は(敵の放ったミサイルから)退避するというのが一般的運用法である。
  • 上記のように一般的にはARHは指令誘導と組み合わせるが、距離が比較的近くて目標が移動する暇もなく目標近くにARHミサイルが到着する場合や、対艦ミサイルのように目標が低速で目標が動いてもARHの検知範囲に収まるという場合は中間指令誘導は行わず、中間誘導はINSやGPSに頼る場合もあり、この場合は発射後、即離脱できる。最も初期のARH対艦ミサイルはこのタイプで、中間指令誘導なしのINS+ARHでも艦艇は航空機より遅いため射程70km・飛行時間4分くらいの対艦ミサイルなら中間指令誘導なしでも当たった。しかし、射程1000kmのトマホーク対艦型は発射されてから1000km飛ぶのに1時間もかかる。発射時点の目標艦艇の座標A地点にトマホーク対艦型が到着した時には時速30kmの低速艦艇でも最初のA地点から30km移動しているのでARH検知範囲20kmの範囲外であって命中しない。そのため射程100km以上の長射程ARH対艦ミサイルには中間指令誘導装置がつけられて、艦載ヘリコプターを前方展開して敵艦をレーダー追尾し、目標艦の新しい位置に従って中間誘導するようになった。ただし、この方法はヘリコプターが同時中間誘導できるARH対艦ミサイルの本数に限りがあり、数十から100本以上の対艦ミサイルを同時発射する飽和攻撃がやりにくいのと、ヘリコプターを撃墜されたら終わりなので有効性に疑問が持たれている。より実用的な方法として敵艦の直前30-40kmほどで対艦ミサイルを急上昇させARHの検知視界を広く取って遠方に逃げた目標艦を捉えやすくするという方法が多くのARH対艦ミサイルで採用されている。
  • 尚、ARH検知範囲を20kmと表現したがそれは目標の大きさやステルス性で変化するので小型目標やステルスが相手の場合はARHミサイルの検知範囲は20km以下に低下してしまう。そのため最近は電波ステルスを意識した外形設計が流行している。但し電波ステルスは画像誘導やARMや赤外線誘導には有効ではない。
  • ARHと中間指令誘導が組み合わされている場合、普通、航空機/艦載射撃指揮レーダーと連動した射撃指揮コンピューターが自動的に各ミサイルに指令を送って誘導するので人間が手動で中間誘導する必要はないが、指令誘導中は航空機/艦載射撃指揮レーダーの視界に目標を捉えていないと、コンピューターは目標の座標がわからず誘導できない。そのため戦闘機でARH+指令誘導の空対空ミサイルを使う場合、AAMのARHシーカーが目標にロックさえすれば離脱してよく、SARHのように命中するまで離脱しないで照射を続けないと当たらないAAMより遥かに改善されたとはいえ、ARHであっても発射即離脱できるわけではなく、ARHシーカーが目標検知できるほどAAMが目標に近づくまでは、目標に機首を向けていなければAAMが命中しないのは注意を要する。

[編集] TVM

Track Via Missile(TVM:ミサイル経由による追跡)。パトリオット地対空ミサイルに採用された誘導方式。

  • ミサイルの先端のSARHシーカーが得た各種情報を、地上装置に伝送して処理し、誘導等の指令を行う。つまりSARHの受信専用レーダーシーカーについているノイズフィルタコンピューターを地上に移し、地上の高価高能力のコンピューターで妨害電波や、各種ノイズを除去して高い誘導能力と高い耐妨害能力を狙ったもの。たとえば低空を飛ぶ巡航ミサイルに電波を照射すると、地面や背景の山からも電波が反射してしまい(グランドクラッターという)ミサイルのシーカーが幻惑されるので、反射波の波型で動いている敵ミサイルからの反射波と動かない山からの反射波を区別して山や地面からの反射をノイズとして除去するのに地上コンピュータの力を借りたり、間欠的に感があった座標を結んで敵ミサイルの現在/未来位置を推定したり、妨害電波を除去するのに地上コンピューターの力を借りた。パトリオットが求められた高度な処理をおこなうコンピューターをミサイルに搭載して使い捨てにするのは不適切だったし、当時はまだコンピューターの小型化、高能力化、低価格化が発展途上だったこともある。
  • 但し、高性能だが余りにも複雑なシステムになりすぎ、コスト上必ずしも有利ではなかったと言われる。

[編集] 有線画像誘導

ミサイル先端のTVシーカーに経由による追跡。TVMの画像版。高価な誘導装置を使い捨てにしないという意図で始められたが、画像シーカーは視界が狭く中間誘導が技術的に困難で、ミサイル価格は別として母体の値段が高くなってしまうという問題を抱えている。

  • ドイツのポリフェム・ミサイルでは高価な誘導装置を使い捨てにしないようにミサイルには観測装置のみを搭載し、発射母機に搭載された自動誘導装置と光ファイバーを通じて観測情報と操縦情報をやりとりする指令誘導で目標へ誘導する方式が採用されている。
  • 陸上自衛隊の装備する96式多目的誘導弾システムでは、光ファイバーを利用した有線通信により飛翔体と地上装置間のデータ通信を行っており、誘導手は、飛翔体のシーカが捉えた赤外線映像をリアルタイムに確認しながら誘導を行うことができる。

[編集] パッシブレーダー誘導装置
  • 目標自身が発するレーダー波を捉え、その方向へミサイルを誘導する。対レーダーミサイルで使用されている。昔の物は目標となるレーダーの周波数に合わせて、その周波数だけを拾うシーカーに付け替えて出撃していたが、敵の対空ミサイルが偵察情報と違うミサイルで電波も違う物だった場合は、空中でシーカーを交換できず攻撃できないなどの問題があった。そこで米国のHARMはミサイルに多種にわたる敵のレーダー波のパターンを記憶させてあり、飛行中に母機が逆探知した敵のレーダー波によって敵レーダーの種類を特定してミサイルに敵レーダーの種類を伝えると、飛行中にミサイルシーカーがそのレーダー波だけを拾う設定に変更できるようになっている。
  • そのため運用の柔軟性を増したが、事前に目標のレーダーが発するレーダー波の種類をデーターベース化してミサイルに記憶させておく必要がある。 そのため近年のSEADには電子偵察が不可欠である。
  • 代表的ミサイルはHARMとKh31/YJ17である。
  • また、亜種として空中のレーダーサイトであるAWACSAEWを狙う対AWACSミサイルもパッシブレーダーホーミング誘導装置を搭載したミサイルの一種である。

[編集] GPS補正

GPS補正誘導とは短距離弾道ミサイルや誘導砲弾、誘導ロケット弾の落下終末段階でGPS衛星からの電波をもとにミサイルを固定目標へ誘導する。なお、米軍のGlobalPositioningSystam衛星以外の同機能の衛星Galileo、北斗、Glonussによる誘導もGPSと俗称する。

  • 中国の短距離弾道ミサイルDF15は終末GPS+北斗によって慣性誘導を補正しCEP30-50mを得ているという。アメリカのMLRS用ロケット弾M30や155mm誘導砲弾にGPS誘導が使われる予定。

[編集] TV誘導

TV誘導とは画像誘導とも呼ばれミサイル先端についたTVカメラで終末誘導を行う誘導装置である。

  • 長所)当てたい場所にCEP3-6mで当てられる事、GPSと違って動目標に使えること、SALA(レーザー誘導)と違って発射後離脱可能にもできること、対艦/対地両用にできること、命中の瞬間が画像に撮れるので戦果確認の手間が省ける、レーダー誘導より電波妨害に強い等。
  • 短所)GPSと違いロックに手数がかかり多数発射に向かないこと、GPS/SALAより高価な事、視野が狭くレーダー式より中間誘導に精度が求められる事、超音速ミサイルには使いにくい事等
  • 初期は可視光画像誘導だったが、夜間/悪天候に強い赤外線画像誘導が最近の主流。
  • 歴史的には命中するまで手動誘導が必要な画像誘導(ウォールアイ)に始まり、一旦画像内の目標像を人間が指示すればコンピューターが画像認識してロックし、以後目標と背景をコンピューターが自動的に識別して目標を自律追尾する画像認識誘導(マベリック)に改良されて母機はすぐ離脱可能になった。その後、発射前に目標に母機が身を晒して近づいて翼下につるしたミサイルシーカーに目標を見せて発射前画像認識ロックをしないでいいように、ロックしないで発射したミサイルがGPS+中間指令誘導で目標に近づき、画像を無線で180km後方の母機に伝送し、180km離れた母機から画像認識誘導を発射後ロックできるように改善した(SLAM)などの画像認識伝送誘導に発展し、駆逐艦から発射した低空飛行する巡航ミサイルが目標付近から地平線に邪魔されずに1000km後方の母艦に画像を送り・誘導指令を受けるため通信衛星で中継するタクテイカルトマホークの衛星画像伝送誘導(普通は衛星画像誘導とか衛星TV誘導と略称する)に発展してきている。
  • 主用途:高速目標に向かないので、対艦・対地・対戦車に使われている。対艦用途では敵の防空艦が健在なときに100発近い対艦ミサイルを浴びせるような用途には向かないが(100発の画像認識ロックは大仕事である)ARMを大量に浴びせるのにTVミサイルを少数混ぜて撃ち、敵艦がレーダーを切ってSAMを沈黙させればARMは外れるがTVミサイルが「舵機」に当たり、レーダー全開でARM/TVミサイルを迎撃すればARMがレーダーに当たって防空機能を失うように追い込んだり、ARMでレーダーの目を潰され防空能力を失った敵艦の舵機室にTVミサイルを集中して足をもぐのに使うと効果的なミサイルであり、タクテイカルトマホークがそうであるように、対艦、対地両方につかえる。すなわち敵航空基地の管制塔とレーダーを吹き飛ばし、敵戦闘機を短時間離陸困難に陥れるのにも、敵補給路の橋を落とすのにも使えるのである。また高級な対戦車ミサイルシーカーとしても使われている。すなわち、SALHは戦車のレーザー警報機を作動させ、煙幕を炊かれてしまって当たらなくなるし、ミリ波レーダーは妨害電波の問題があるが、赤外線画像誘導だと当方からはレーザーも電波も照射しないで敵車両の放射赤外線を捉えるパッシブ(受動)式なので第一撃を与えるまでは気づかれにくい長所がある。反面SALAは60mm迫撃砲弾にも載り、数百万円だし、ミリ波は81mm迫撃砲弾にも載り大量発射可能だが、赤外線画像誘導は120mmないと載らないほど大きく・重く、1000万円前後の価格で、画像ロックが必要で大量同時発射にむかない。

[編集] 赤外線誘導

InfraRedを略してIRとも言う。目標のエンジンなどの高温部から発する赤外線を捉え、その方向へミサイルを誘導する誘導方式である。

  • 赤外線ミサイルは最も早く実用的誘導精度に達したAAM誘導方式であった。レーダー装置が必要無くシステムが誘導装置単体で完結するため構造簡単で小型のミサイルに適し、母機のレーダーが貧弱でも問題なかった。目標が大きな熱源となるエンジンを持つ対空ミサイルで主用されている。またガスタービン機関の熱排気を目標とする対艦ミサイルもある。
  • 初期の1波長赤外線誘導装置では太陽と目標のエンジンを区別できなかったり、陽射しに照らされた地上の物体が発する赤外線の中から目標を判別できなかったり、対向してくる敵機に撃てなかったりと制約が多かった。また目標がフレアなどの赤外線欺瞞装備を用いると目標を誤認する事がある。また赤外線誘導装置は使用する前にシーカーを冷却し感度を向上させ必要があり、液体窒素等冷却材ボトルの取り扱いが面倒で、AAMでは冷却時間で発射タイミングを逸し、再度狙うと冷却不足でロックしないことすらあったという。しかし、いろいろ問題はありながらも、AAMとして出現した朝鮮戦争時代は機関砲しか持っていない敵に対して優位に立てたし、後方機関銃座をもつ(しばしば核搭載)大型爆撃機を後方機関銃の射程外から赤外線ミサイルで撃って一発で撃墜できるメリットは大きかった。また携帯SAMは従来5億円のレーダー機関砲戦車が果たしていた任務を300万円の携帯SAMで行える事になり、レーダー機関砲戦車を駆逐するほど普及し、ヘリコプターの天敵となった。
  • 2波長式)次に開発された2波長式は空力加熱される機体先端が放つ赤外線の波長も拾うことができ、対向して向かってくる敵機に向かって撃つことができるようになり、味方のジェット機や味方のミサイルを追いかける問題は改善した。面積の違いによって太陽を識別する誘導ソフトの改良で太陽に向かう問題も改善した。
  • 赤外線画像IIR)最近の赤外線ミサイルシーカーは常温作動フォーカルプレーンアレーを使った赤外線画像式が増えた。ImagingInfraRedを略してIIRという。感知距離が4km以下だったのが8km前後まで伸びたし、画像で目標をロックするので目標誤認の問題は劇的に改善され、フレアにも非常に欺瞞されにくくなった。また常温作動になったので発射前にいちいち冷却して発射タイミングを逃す必要がなくなりメンテナンスも楽になった。ただし、価格も高価で直径の細い携帯SAMに載せるのが技術的に難しいのか、携帯SAMではIIRの普及はやや遅れている。因みに赤外線画像誘導の基幹部品の常温作動フォーカルプレーンアレーでは日本の民生技術が大きな貢献をしているという。
  • 赤外線100kmAAM)またアメリカ人は赤外線ミサイルは発射前ロック(LOBL)の短距離用という出現時の用途から発想の転換ができなかったが、ロシアでは戦闘機の戦闘教義で「敵戦闘機を確実に撃墜するためにレーダー誘導と赤外線誘導の2種類2本のAAMで攻撃せよ」と教えていた事もあってか、中間指令誘導と組み合わせた射程100km近いAAMであるアラモにおいても中間指令誘導+終末SARH版と中間指令誘導+終末赤外線版の2種類が作られ、西側とは違う独自の発達を見せていた。
  • オフボアサイトの衝撃)また、赤外線誘導・発射前ロック(LOBL)の場合、赤外線ミサイルシーカーの視野である「前方中心線左右15度の範囲の前に居る敵」しかロックできず撃てないのが常識であったが、ロシア人は中間指令誘導と赤外線ミサイルを組み合わせて、赤外線シーカーを発射後ロック(LOAL)する技術を短距離ミサイルに応用するという発想の転換を行って、「IRSTが照準可能な前方中心線左右60度はIRSTが敵機のエンジン排気赤外線を追尾して、ロックしないで発射した赤外線画像ミサイルに敵機の座標を知らせて中間指令して近寄せて発射後ロック(LOAL)して命中させる」というオフボアサイトミサイルR73Archerを1985年頃に既に開発してMig29やSu27に搭載していた。ソ連崩壊でドイツ統合で旧東独のMig29を調査した結果、「Mig29やSu27と接近戦闘はするな」という通達が出される騒動となった。西側戦闘機のAIM9-Lは「前方中心線左右15度の前に居る敵」しか撃てないのに東側のMig29やSu27のR73は「前方中心線左右60度の横に居る敵」が撃てるのではドッグファイトで勝ち目はなかったからである。西側でもオフボアサイト赤外線ミサイルAIM9-Xが生産を始めたのは15年後の2000年になってからであった。しかしIRSTと指令誘導によるオフボアサイトは戦闘機のアビオニクス全般まで変更せねば実現できないために、多くの西側諸国で赤外線シーカーをジンバルに載せて首を振り、発射前ロックできる角度を広げた準オフボアサイト赤外線ミサイルが開発された。

[編集] レーザー誘導

セミ・アクティブレーザー誘導装置Semi-Active Lazer Homing(SALH)

  • レーザー照射装置からの反射光を捉え、その方向へミサイルを誘導する。空対地ミサイル、誘導爆弾や対戦車ミサイルで使用されている。レーザー照射は発射母機が行う事も、別の母機や地上の観測員が行う事もできる。安価(レーザー誘導爆弾キット100万円)で小型にでき、JDAMと違って低速動目標も撃てる。攻撃ヘリコプターの数が少なくても、小型輸送ヘリコプターや偵察ヘリコプターやUAVにレーザー照射装置を取り付けて敵戦車を照射し、攻撃機にレーザー誘導爆弾を落としてもらえば、ある程度攻撃ヘリコプターの不足を補えるしレーザー誘導爆弾は安価なので、GPS誘導のJDAM実用化後の現在でもレーザー誘導爆弾は主として動目標攻撃に多用されている。
  • 欠点はSARHと同じで照射機はレーザー誘導兵器が命中するまで照射せねばならないが、実際の戦場ではホバリングして照射していたら携帯SAMが飛んでくるし、照射放棄したら命中しないことと、最近の戦車はレーザー警報機を持っており、照射すると戦車のレーザー警報機を鳴らしてしまう事と、煙幕を焚かれると命中しない事である。
  • 戦車の対空装備が目視による重機関銃だけだった頃ならともかく、最近は戦車に携帯SAMを配給する例も増えており照射任務の危険度が増してきている。そういう訳でUAVの照射任務への利用やミサイル自身がアクテイブにレーザーを使って探知するLADARの開発が進められている。

レーザーレーダー誘導装置 LADAR

  • レーザー距離計のレーザービームを高速で左右に振りながら上下をスキャンして、地面との距離を計測し、地面に出っ張っている、戦車や短距離弾道弾発射車両、自走砲、榴弾砲などの画像を得て、データーベースと照合して、目標認識し、自律的に追尾命中する装置。ミリ波レーダーに比べて探知範囲は更にせまく300m弱でしかないが、ミリ波レーダーより安価にまとまる可能性があるという。米空軍で開発中のLOCAASはラジコンジェット機のような超小型の巡航ミサイルにこのLADARを装着したもので、攻撃機から投下されてから数十km進出して敵上空に到達し、30分飛行滞空して自律的に索敵追尾命中するもので、誘導部をLADARで安くまとめ、巡航ミサイルの長距離飛行能力を利用して戦場を飛行しながらスキャンする事でLADARの探知範囲の狭さを補い、1発数百万円に価格を抑える事を目標としているという。
  • もし、本当に1発数百万円でまとまれば、革新的な兵器になろう。なにしろ母機やUAVで照射する必要がないし、Fire&Foregetで安価で大量同時発射が可能で、射程が長くて、ランチャーが簡素で済むのである。それに戦争のコストの最大の部分は弾代なので安くて命中率のよい弾は戦争のコストや弾薬備蓄コストに大きな影響を与えるのである。

[編集] 弾頭

弾頭は誘導装置の直後に置かれる事が多く、ミサイルが目標を破壊するために必要な装備である。英語ではウォーヘッド(warhead)と呼ぶ。

通常弾頭
高性能火薬を搭載した弾頭で、搭載量には携帯ミサイルの数キログラムから対艦ミサイルの数百キログラムまでの幅がある。また単なる炸薬では無く対戦車ミサイルなどではモンロー/ノイマン効果を応用した成形炸薬弾や、自己鍛造弾頭(self forming warhead)となっている場合がある。
核弾頭
核弾頭は戦術兵器の威力(yield)数キロトンの原子爆弾から戦略兵器の熱核爆弾、水素爆弾の数メガトンまでの幅がある。
ディスペンサー
対人、対戦車、対滑走路用の子弾子(サブミュニション、小型爆弾)を搭載、散布を行うディスペンサー。通常弾頭の一部だが、クラスター爆弾の様に目標周辺を広範囲に制圧することができる。短距離地対地ミサイルや巡航ミサイルに搭載されている。MLRSやATACMSの対戦車子弾子BATには誘導装置が組み込まれており、小型の誘導爆弾となっている。
生物・化学弾頭
生物兵器化学兵器を搭載した弾頭。どちらも使用が国際条約で禁止されている。
その他
トマホーク巡航ミサイルには炭素繊維フィラメントを詰めた弾頭があるとされている。この弾頭を積んだミサイルは発電所、または配電所を目標に発射されて爆発し、ばら撒かれたフィラメントが送電線に絡み付くことでこれをショートさせて使用不能とする。社会の重要なインフラストラクチャーである配電システムを物理的に破壊することなく使用不能とする兵器で、湾岸戦争においてイラク国内の目標に使用されたと言われている。

[編集] 信管

弾頭を起爆するための装置で、弾頭に組み込まれて使用される。英語ではフューズ(fuse)という。以下の種類がある。

触接信管
目標へ衝突した瞬間に動作する信管。接触信管、衝撃信管とも呼ばれる。対戦車ミサイルなどで使用されるほか、大部分のミサイルでバックアップ用に装備されている。
近接信管
信管から電磁波を発し、その反射波が一定以上の強さになった時点で動作する信管である。信管から一定の距離以内に目標が侵入した時点で動作する。最初期から現在まで最も一般的な近接信管は電波を利用する物であり、信管から発する電波の反射波が一定以上の強度になると動作する。最近ではレーザー光線を利用する近接信管も開発されている。
時限信管
起動から一定時間後に動作する信管。現在では他の信管のバックアップ用に装備される。
高度信管
電波高度計によって、ミサイルが地上から一定の高度に達した際に作動する信管。主に弾道ミサイルに搭載された核弾頭に使用される。
深度信管
圧力信管とも呼ばれ、事前に調定された一定の水圧(深度)に達した際に作動する信管。対潜ミサイルの弾頭に装備される。

[編集] 燃料タンク

ミサイルを飛翔させるロケットエンジンの燃料を保管する区画である。

固体ロケット燃料
ミサイルの弾体に直接充填して使用される。またブースターとして外部装備される事も多い。
液体ロケット燃料
ミサイルの弾体に液体の酸化剤燃料のタンクを装備する。初期の対空ミサイルや弾道ミサイルで使用された。取り扱いが難しいこともあって軍用ミサイルとしては次第に使用されなくなりつつある。
ジェット燃料
エンジンとしてジェットエンジンが採用されている場合にケロシンなどの燃料がタンクに保管される。あわせて空気取り入れ口が装備される。

[編集] 姿勢制御

ミサイルの進行方向と姿勢を制御する装置には以下の方式がある。

排気ベーン
ノズルの中に排気ベーン、またはジェットベーンと呼ばれる推力偏向板を設置し、これを動かすことで推力方向を任意の方向へ向けて機体を制御する。史上最初の弾道ミサイルであるV2/A4には黒鉛でできた排気ベーンが採用されていた。V2/A4の直接の子孫であるR-17(SS-1B Scud)でも排気ベーンが採用されている。
翼による空力制御
ミサイルに取りつけた翼を動かすことでミサイルの姿勢を制御する。現状では最もポピュラーな制御方法である。宇宙空間に進出する弾道ミサイルではこの方法は使用できない。またミサイルの側面に翼が取りつけられるため体積効率が良く無い。このため保管の際には分解しておき発射直前に翼をとりつけたり、翼を機体内に格納したり機体まわりに折り畳んでおき、発射後に自動的に伸展する方法が取られる。一般には後退翼や三角翼がもちいられ、動翼と静翼の二組が取りつけられる。静翼はミサイルの方向安定を司り、大きな面積を持つ。動翼はミサイルの操縦を司り、誘導装置からの信号を元に操縦装置によって駆動される。多くは動翼を後翼とするが高機動ミサイルでは動翼を前翼とする設計もある。三角翼では翼幅が大きくなるため、スペースに制約がある艦載ミサイルではスタンダードミサイル発展型シースパロー(ESSM)艦対空ミサイルのようにミサイルの全長に渡って取り付けられた細長い翼を静翼とする設計が用いられる。ロシアでは短距離弾道ミサイルOTR-21 Tochka(SS-21)に採用された「すのこ尾翼」が空対空ミサイルのR-77でも採用された。この形式の尾翼は最小限の体積で表面積を大きく取れるため有効な操縦が可能とされる。
可動ノズルによる推力偏向制御(Vectored Thrust Control、VTC)
ロケットエンジンのノズルをジンバルやスイベルなどに載せて可動とし、ノズルの方向を変える事で推力の方向を変更しミサイルを操縦する。翼による空力制御と異なり大気圏外でも使用できるほか、翼が無くなった結果としてミサイルはコンパクトになり体積効率が良くなるため、同じ体積でたくさんのミサイルを搭載できるようになる。一方、エンジン周りの機構は複雑になる。アメリカのジュピター中距離弾道ミサイルポラリス潜水艦発射弾道ミサイルVL-ASROC等で採用されている。
バーニアノズルによる制御
主エンジンとは別に姿勢制御用の小型ノズル(バーニアノズル)を設置し、適宜噴射して姿勢を制御する。史上最初の大陸間弾道弾であるR-7のRD-107/RD-108エンジンでは合計十二基のバーニアノズルで姿勢を制御していた。バーニアノズルは独立したロケットエンジンである場合と主エンジンの排気を導く場合がある。

[編集] 操縦装置

ミサイルの姿勢制御装置を駆動する方式には以下の物がある。

気体タンクによる駆動
タンクに蓄えられた高圧ガスの圧力で制御装置を駆動する。
ホットガスによる駆動
火薬を爆発させて生じるガスの圧力で制御装置を駆動する。
電動モーターによる駆動

[編集] エンジン

ミサイルを飛翔させる主エンジンには以下の種類がある。

固体燃料ロケットエンジン
現代のミサイルは固体燃料を用いるロケットエンジンが主流となっている。これは構造が簡単なため安価であり整備が簡便である点が大きい。
液体ロケットエンジン
液体燃料を用いるロケットエンジンは固体燃料ロケットエンジンに比べておおむね比推力に優れているため、初期のミサイルや長射程を要求される弾道ミサイルで採用されていた。ただし燃料ポンプを始めとする機構的な複雑さや燃料自体の危険性により一定の整備が必要になる。
ジェットエンジン
ジェットエンジンは空気中の酸素を酸化剤として用いることで酸化剤タンクを廃しその分を燃料タンクを大きくする事で一般的なロケットエンジンより長射程を得ることができる。大気圏内を終始飛行し、長射程を要求される巡航ミサイル、対艦ミサイル等で採用されている。空気が無い宇宙空間や海中では使用できないほか、ジェットエンジンは液体ロケットエンジンと同様に機構的な複雑さを持つため、エンジンとしては高価になる。ただしジェットエンジンは航空機用エンジンとして大量生産されているため設計や生産ラインを流用する事で調達コストを削減する事ができる。
ラムジェット
ラムジェットは圧縮機とタービンが無く、超音速で飛翔する際の衝撃波をそのまま空気の圧縮に利用するジェットエンジンである。エンジンに可動部が無いため生産コストを削減する事が可能となる。ジェットエンジンと同様に空気中の酸素を酸化剤として利用できるため酸化剤を搭載しなくてもよく、その分を燃料の搭載に当てることができるためジェットエンジンに並ぶ長射程を実現できる。ラムジェットエンジンを動作させるためには飛翔体を超音速まで加速する必要があり、そのためにブースターを組み合わせて使用する。ブースターは外装とされる事が多いが、全体にかさばるためロシアやフランスのミサイルでは統合型ラムジェットエンジンが採用されている。同エンジンは固体燃料ロケットで上昇・加速し、固体燃料が燃え尽きるとその空隙に空気取り入れ口から取り入れた超音速流を導き、燃料を吹き込んで燃焼させるもので、ブースターを外装とせずラムジェットと統合・一体化させているため極めてコンパクトになるエンジンである。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

Wikimedia Commons
ウィキメディア・コモンズに、ミサイルに関連するカテゴリがあります。
  • Missile.index ミサイルのデータベース(日本語)
執筆の途中です この「ミサイル」は、武器兵器に関連した書きかけ項目です。この記事を加筆・訂正などして下さる協力者を求めています。
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