ファミ通
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ファミ通(ふぁみつう)は、エンターブレインが発行している、日本最大の家庭用ゲーム専門雑誌。現在は、映画・DVD情報、TV番組情報、書籍情報等も扱っている。
『週刊ファミ通』は毎週金曜日に発売され、他のファミ通シリーズは随週発売(毎月)されている。
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沿革
- 元々は、1985年3月号(2月8日発売)のパソコン雑誌『Login(ログイン)』で、『ファミコン通信』という名でLoginの一コーナーとして誕生したのが始まり(その後Loginの「ファミコン通信」は1986年12月号(11月8日発売)をもって終了した)。
- 1986年6月6日 - Loginから独立した雑誌『ファミコン通信』として創刊(6月20日号)。当初は隔週刊であった。以降、「ファミ通」の愛称で親しまれた。
- 1991年7月12日 - この号(7月26日号)よりゲーム誌としては珍しく週刊誌化。その際のキャッチコピーは「ゲーム誌はファミコン通信でウッドボールだね」。決まり→木+鞠→ウッドボールという洒落であるが、あまりの馬鹿馬鹿しさに当時話題になった。
- 1995年12月22日 - この号(1996年1月5日・12日合併号)より正式名称を「ファミ通」に変更。
- 1996年6月7日 - 創刊10周年(6月21日号)。8月9日号(7月26日発売)及び10月25日号(10月11日発売)で10周年記念記事を掲載。
- 1998年7月3日 - 通巻500号(7月17日号)。それを記念して7月25~26日にかけて秋葉原駅電気街口前の駅前広場(現在その敷地の一部は秋葉原ダイビルになっている)で「ゲームサーカス500 in 秋葉原」なるイベントが開催され、計6万5000人もの人が訪れた。
- 2000年4月1日 - アスキーの分社化により、出版元がエンターブレインとなる。
- 2004年3月18日 - エンターブレインの持株会社メディアリーヴスが角川ホールディングスの傘下に入る。これにより同じ傘下のメディアワークスと業務が重複することになったが、角川は「『ファミ通』、『電撃』の両ブランドは当面の間継続する」とのコメントを出している。
- 2006年6月2日 - 創刊20周年(6月16日号)。この号より5号連続で20周年記念スペシャルを掲載。また、7月2日には「ファミ通20周年記念イベント」がエンターブレイン本社2階のイベントスペースで開催された。
概要
ファミ通は2006年現在ゲーム雑誌のトップの刊行部数を誇る(公称50万部、実売10万部前後か)。後述の「キヨスクで唯一販売されている」という事実からも解る通り、ゲーム専門誌の中で圧倒的な影響力を誇っており、朝日新聞や読売新聞から記事を任されたこともあるほどである。この成功の要因としては、競合他誌と異なる斬新な紙面造りを実践してきたことや、オリコンと同様の独自集計体制により、ゲームソフト等の正確な販売ランキングを掲載していることが挙げられる。但し、集計体制に関しては,任天堂等が注力しているトイザらス、amazon.co.jp、平和堂グループ、セブン&アイグループ等を外しているため、必ずしも正確とは言えない。また、シェア1位であることの宿命か、その一挙手一投足がしばしば批判の的とされることもしばしばである。また、エンターブレインはかつて、自社のゲームであるティアリングサーガ ユトナ英雄戦記が任天堂のファイアーエムブレムの類似作であるとして著作権等に関する訴訟を起こされたことがある。
クロスレビューに関する諸問題
これ自体はファミ通の実力であるが、一方で記事に公正さを欠くとの批判を受けることがある。例えば、クロスレビューが、特にSCEが販売する大作やその続編、ファイナルファンタジーシリーズなどを販売するスクウェア・エニックスやコナミ、カプコンが販売するシリーズ作などについては総じて高い評価を出すにもかかわらず、発売するとクソゲーとなるケースも見られる(当然ながら逆のパターンも見られる)。『GENJI』、『ローグギャラクシー』、『ファイナルファンタジーXII』、『ダージュ オブ ケルベロス ファイナルファンタジーVII』等はレビューの評価に対して発売後は一般的にはレビューの採点ほどの評価が得られなかったと言われている。
人の好みはそれぞれではあるものの、特に『ファイナルファンタジーXII』に関しては満点評価だったため「いくら十人十色にしても高すぎる」との声が多く挙がった。本誌に連載コラムを持つ身内の立場である伊集院光でさえ、ファイナルファンタジーXIIの満点評価に対し、ラジオ番組『深夜の馬鹿力』の中で「ストレートに『クソゲー』とは言わない」、「自分のゲーム観が古いのかもしれない」と前置きをしながらも、「どこを甘く見てもこれが全員満点のゲームであるはずがない。クロスレビューがおかしいとしか思えない。俺的には頑張って良く見てやっと8点が付けれるぐらい」という趣旨の発言をしている(ちなみに誕生から長い歴史を持つファミ通のなかで2006年6月現在ではこの2作を含めて満点評価は6作品のみと極僅かである)。しかし伊集院光自身はまた、「自分はファイナルファンタジーXIIの想定されるユーザー層ではないのだろう」「ファミ通が考える一般的なゲームユーザーからは自分は外れているのだろう」「自分が好きだ、すごいと思うソフトは、いつも売れゆきが悪い」という発言もしており、大作として大量販売をするファイナルファンタジーXIIや、その情報を掲載するファミ通という雑誌が顧客ターゲットとして向いている方向は、伊集院光のようなゲーム雑誌にコラムを載せられるほど、ゲームに詳しい人間ではないという一面を端的に表しているともいえる。
ただし過去においてこのクロスレビューによって脚光を得た無名の名作は多く、その点は評価すべきと言える。代表例として『バイオハザード』が挙げられる(今でこそ非常にメジャーなタイトルであるが、初代発売当時はまったく無名であったにもかかわらず38点という高得点を獲得、注目された)。また他にも『マリーのアトリエ』や低価格帯ソフトの一部など「無名のメーカーによる名作」がクロスレビューで高得点を獲得したケースは多い。
もっとも、たった4人のレビュアーによって行われる採点であるため、点数の不確実さが表れるのは至極当然であるとも言える。問題はその4人の主観が業界でも飛びぬけた影響力を有していることで、この点数に右往左往させられるメーカーや販売店にとってはたまらない部分もあるだろう。
特にゲームをプレイすらしていないでイメージだけで不当に低い点数を付けるという問題(それは中小メーカーにおいて特に顕著である)はレビュー以前の問題であり、最近でも2006年9月1日号のクロスレビューにおいて、プロペラから発売されたゲームソフトあやかしびと -幻妖異聞録-のレビューにおいて、ゲームのシステムに全く存在しない間違えた記述(それも『プレイしていれば』誰でも気付くもの)が気に入らないと断罪して「4点」とレビューされた。これに対し、プロペラ社からスタッフ日誌などにおいて皮肉をこめてやんわりと言及しながらも「『おもんなかった』と率直に言われた方がいい、ソフトを遊びもしないで恣意的な力で点数を付けるな」といった趣旨のコメントを残している。
また、全てのゲームを一定基準で全てのユーザーに対してレビューを行おうとするため、もともと狭い購買層を狙ったソフトは点数が低くなりがちである。キャラクターゲームや高難易度のシューティングゲームなど、該当する狭い購買層の中では非常に評価が高くても、一般性が無いと点数が伸ない。インターネットの普及などで少数意見でも声を大にして言える環境があるため、そういった評価とクロスレビューの評価があわないことも、多々ある。それを鑑み、ファミ通誌面でも「編集者○○のオススメ」といったものや、読者の投稿型レビューを掲載したりといった、少数でも熱い声のくみ上げも行っている。
なお都市伝説のように「レビューは現金で取引されている」などと囁かれることもあるが、そのようなケースは過去に存在しないと言われている。レビュー担当の編集員は通常の業務に加えてレビュー用のゲームプレイが必要となるが、当然全てをプレイすることはできないため外部モニタリング会社も利用されている。モニタリング会社のレポート+担当編集員の主観=レビューという図式になっており、比較的ユーザー視点に近い評価となっているのではないだろうか(ただし、弱小メーカーにおいてはその限りではない)。
また自社ソフトに対しては自動的に高得点が与えられるとも噂されるが、これも憶測に過ぎないとされている。エンターブレイン社製のソフトが完成すると、それは外部メーカーのソフトとまったく同様に扱われ限りなく公正な立場でレビューが下される。そのため一部のエンターブレイン社製ソフトにおいては得点の低さにソフト制作サイドが激怒したことすらあった(当然、激怒したところで得点は覆らない)。
しかしながらゲーム雑誌産業において最も利益の挙げやすい攻略本ビジネスにおいて他社よりも有利な条件(攻略内容)で内容を構成することが出来る権利を得るために、そのゲームの内容如何に関わらず、有力ソフトに対しては高位の殿堂入りを与えているとも言われている。その上、大手のメーカーのメジャーなタイトルの特集記事は雑誌売り上げ自体にも大きく関与する為、上記に上がっているファイナルファンタジーシリーズやSCEのタイトルには甘めの点数が付く事が多い(大手メーカーが情報をカットすれば、それだけ雑誌の売り上げが下がる為)。逆に攻略本が作りにくいゲームに対しては辛い点数が付けられる傾向にある。
そもそも数人のそれぞれ嗜好の違うレビュアーの点数如何で数万人単位の消費者の購買意欲や小売りの仕入れに多大な影響を与える時点で不自然である。過去ファミ通連載漫画だった「おとなのしくみ」(鈴木みそ著)内でみそ氏とゲームクリエイターである飯野賢治氏がレビューの問題点を作中にて議論した事もあり、いまだ多くの矛盾点・問題点を内包しつつファミ通の看板として運営されている。
人気コーナー
- クロスレビュー
- ゲームソフトにレビュアーと呼ばれる4人の編集者が10点満点で点数を付ける。ファミ通が始めたこの仕組みは、以降、他誌もこぞって類似コーナーを設けるようになる。ファミ通が支持される根幹のひとつでもある。
- ファミ通町内会
- 読者投稿のコーナー。1986年、ファミ通創刊と同時に開始。ネタの間口が非常に広く(ゲーム関連のネタでなくても良い)、投稿レベルの高さは他誌の追随を許さない。2001年に単行本が発売された。
ファミ通シリーズ
- 週刊ファミ通 - 「ファミ通」といえば普通これを指す。キヨスクで唯一売っているゲーム雑誌。すべてのハードについて扱う総合誌であるが、紙面の都合上その分一つ一つの記事は小さいものになりがちである。
- ファミ通PS2 - プレイステーション2とプレイステーション・ポータブル(PSP)の雑誌。以前は「Playstation 通信」というタイトルだった。近年は競合他誌に比べてギャルゲーの扱いが増加傾向にある。
- ファミ通Xbox360 - ゲーム雑誌業界唯一の、Xbox専門雑誌。ファミ通DCの元スタッフが中心になって立ち上げた。
- ファミ通DS+キューブ&アドバンス - ニンテンドーDS・ゲームキューブ・ゲームボーイアドバンスの雑誌。任天堂の新ハードウェアが出るたびにタイトルが変化している。若干量だが他ハードの情報もある。ちなみにタイトルに「DS」がつくのは2006年3月20日発売の5月号から。他の姉妹誌に比べると、表紙や内容を子供向きに描いているため、『任天堂は低年齢層のみ対象としている』と誤解される原因、と言われることも多い。
- ファミ通WaveDVD - ファミ通の番組や,エンターブレイン主催のイベントなどの映像なども収められているゲーム映像雑誌。ファミ通の人気コーナーであるやりこみ○○(時期により違う)の映像も納められていることでも有名。
休廃刊した姉妹誌・増刊など
- ファミ通ブロス - 1993年の発刊時は「別冊ファミコン通信・攻略スペシャル」。低年齢層を意識した紙面が好評を得て「月刊ファミコン通信・攻略スペシャル」へ改題し月刊化。その名称通り、月刊でゲームの攻略記事を掲載していた。1995年には「月刊ファミ通Bros.」へ改題。その後、1998年に「ファミ通ブロス」となり小・中学生向けのコミック雑誌としてリニューアル。小学生に絶大的な支持を得ていたコロコロコミックを強く意識した誌面になっており、連載作品の「ジバクくん」(柴田亜美)、「時空探偵ゲンシクン」(園田英樹)がアニメ化されたが、2002年9月号で休刊した。但し「ブロスコミックス」のレーベルは現在も残っている。
- サテラビュー通信 - サテラビュー専門誌。月刊ファミコン通信の1995年5月号増刊として創刊準備号を刊行、その後月刊誌となり1996年5月号まで全12号発売された。当時のアスキーはサテラビュー向けにゲームソフトを多数供給する、サテラビュー対応ソフトを発売するなど積極的に関与したものの、サテラビューの不振と番組内容縮小に伴い廃刊。
- ファミ通Sister. - 1995年と1997年に増刊で刊行されたギャルゲー特集誌。この路線は2000年創刊のDearMy...へ発展する。
- ファミ通DC ドリームキャスト専門誌。ゲーメスト(新声社)の元編集長・石井ぜんじが寄稿していたことでも知られる。本誌の刊行時、エンターブレインはCSK・セガの傘下企業であったため本誌がセガのオフィシャル誌であった。
- バーチャルボーイ通信 - 1995年に創刊されたバーチャルボーイ専門誌。ハード自体の不人気ぶりに伴って売り上げは低迷、廃刊となった。
歴代編集長
- 小島文隆(小島ファミ隆)- アクセラ社長(2000年解散)
- 塩崎剛三(東府屋ファミ坊)- アクセラ取締役 - 現アイスコメット社長。
- 浜村弘一(浜村通信)- 現エンターブレイン社長。
- 加藤克明(バカタール加藤)
関連項目
- 近藤るるる(天からトルテ!、たかまれ!タカマル)
- みずしな孝之(いい電子)
- 伊集院光
- 柴田亜美(ドッキンばぐばぐアニマル(ドキばぐ))
- 中川いさみ
- 鈴木みそ
- 桜玉吉
- 渡辺電機(株)
- 渡邊浩弐
- 桜井政博
- 毛利名人
- スタパ齋藤
- チャンコ増田
- 8月32日
- ゲーム帝国
- 餅月あんこ