ウナギ
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ウナギ | |||||||||||||||||||||||||||
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ヨーロッパ産 Anguilla anguilla |
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Anguilla japonica Temminck & Schlegel, 1847 |
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英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Japanese eel |
ウナギ(鰻、うなぎ)は、ウナギ目ウナギ科 Anguillidae に属する魚の総称。しかし日本でウナギといえば普通、その内の一種 Anguilla japonica (英名:Japanese eel)を指し、これをウナギ属 Anguilla に属する他の魚と区別してニホンウナギと呼ぶこともある。
蒲焼やひつまぶしなどの調理方法が考案され、古くから日本の食文化に深い関わりを持つ魚である。しかし川と海を行き来(回遊)し、ある程度地上を這って移動するなど、その生態は意外と知られていない。また研究者の間でも、近年まで産卵場すら正確には把握されておらず(2006年にスルガ海山と判明)、ウナギの詳しい生態に関してはまだ謎の部分が多い。
目次 |
[編集] 形態
成魚は全長1m、最大で1.3 m ほどになる。ヘビに似た細長い体形で、体の断面は円形である。眼は丸く、口は大きい。体表は粘膜に覆われぬるぬるしているが、皮下に小さな鱗をもつ。腹鰭はなく、背鰭、尾鰭、臀鰭がつながって体の後半部に位置している。体色は背中側が黒く、腹側は白いが、野生個体には背中側が青緑色や灰褐色、腹側が黄色の個体もいる。また、産卵のため海に下った成魚は背中側が黒色、腹側が銀白色になる婚姻色を生じ、胸鰭が大きくなる。
[編集] 分布・生態
日本全国に分布するが、日本以外にも朝鮮半島からベトナムまで東アジアに広く分布する。成魚が生息するのは川の中流から下流、河口、湖などだが、内湾にも生息している。
えらの他に皮膚でも呼吸できるため、体と周囲が濡れてさえいれば陸上でも生きられる。雨の日には生息域を抜け出て他の離れた水場へ移動することもあり、路上に出現して人々を驚かせることもある。濡れていれば切り立った絶壁でも体をくねらせて這い登るため、「うなぎのぼり」という比喩の語源となっている。
細長い体を隠すことができる砂の中や岩の割れ目などを好み、日中はそこに潜んでじっとしている。夜行性で、夜になると餌を求めて活発に動き出し、甲殻類や水生昆虫、カエル、小魚などいろいろな小動物を捕食する。
泳ぎはさほど上手くなく、遊泳速度は遅い。他の魚と異なり、ヘビのように体を横にくねらせて波打たせることで推進力を得る。このような遊泳方法はウナギ型と呼ばれ、ウツボやハモ、アナゴなどウナギと似た体型の魚に見られる。
[編集] 生活史
ウナギは淡水魚として知られているが、海で産卵・孵化を行い、淡水にさかのぼってくる「降河回遊(こうかかいゆう)」という生活形態をとる。
従来ウナギの産卵場所はフィリピン海溝付近の海域とされたが、外洋域の深海ということもあり長年にわたる謎であった。しかし2006年2月、東京大学海洋研究所の塚本勝巳教授が、ニホンウナギの産卵場所がグアム島沖のスルガ海山付近であることをほぼ突き止めた。5 ~6 月の新月の夜、一斉に産卵が行われると考えられている。
卵から2 ~3 日で孵化した仔魚はレプトケファルス(葉形幼生、Leptocephalus)と呼ばれ、親とは似つかない柳の葉のような形をしている。この体型はまだ遊泳力のない仔魚が、海流に乗って移動するための浮遊適応であると考えられている。レプトケファルスは成長して稚魚になる段階で変態を行い、扁平な体から円筒形の体へと形を変え「シラスウナギ」となる。シラスウナギは体型こそ成魚に近くなっているが体はほぼ透明で、全長もまだ5 cm ほどしかない。
シラスウナギは黒潮に乗って生息域の東南アジア沿岸にたどり着き、川をさかのぼる。流れの激しいところは川岸に上陸し、水際を這ってさかのぼる。川で小動物を捕食して成長し、5 年から十数年ほどかけて成熟する。その後ウナギは川を下り、産卵場へと向かうが、その経路に関してはまだよく分かっていない。海に注ぐ河口付近に棲息するものは、淡水・汽水・海水に常時適応できるため、自由に行き来して生活するが、琵琶湖や猪苗代湖等の大型湖沼では、産卵期に降海するまで棲息湖沼と周辺の河川の淡水域のみで生活することが多い。また、近年の琵琶湖等、いくつかの湖沼では外洋へ注ぐ河川に堰が造られたり、大規模な河川改修によって外洋とを往来できなくなり、湖内のウナギが激減したため、稚魚の放流が行われている。
[編集] 分類
ウナギ科 Anguillidae はウナギ属 Anguilla のみからなり、世界中の熱帯から温帯にかけて18 種ほどが生息する。
- オオウナギ Anguilla marmorata
- ヨーロッパウナギ Anguilla anguilla
- アメリカウナギ Anguilla rostrata
- アメリカに分布。
- 名前のとおり細長い体型をしていて外見はウナギに似ているが、別の仲間に分類される。
- フウセンウナギ目という分類で、ウナギ目と比較的近い。
- デンキウナギ
- デンキウナギ目という分類群で、ウナギよりもナマズやカラシンに近縁である。
- タウナギ
- タウナギ目に分類される。
- ヤツメウナギ、メクラウナギ
- 魚類よりもさらに原始的な無顎類という分類群である。
[編集] 文化
[編集] 名前
日本では12世紀ころまで、ウナギのことを「ムナギ」と呼んでおり、これが「ウナキ」となり、17世紀頃には「ウナギ」として定着したといわれる。そもそものムナギの語源には
- 家屋の「棟木(むなぎ)」のように丸くて細長いから
- 料理の際に胸を開く「むなびらき」から
- 胸が黄色い「むなぎ」から
など、いろいろな説がある。
なお、近畿地方ではウナギのことを「マムシ」と呼ぶが、これはヘビのマムシとは関係なく、鰻飯(まんめし)が『まむし』と訛り、それが材料のウナギに転用されたものである。他に、関西での調理法の特色である、蒸さずに蒲焼にして、飯の上に乗せた上に更に飯を乗せて蒸らす「飯蒸し」(ままむし)から来たという説、飯の上にウナギやたれをまぶすものとして「まぶし」が転じたとの説もある。
また語源的には、ウナギ(Unagi)、アナゴ(Anago)など、nagとつく生物は「水中の長細い生き物(長魚)」を差す意味合いを持つとも言われている。イカナゴ(Ikanago)なども、水中を長細く群れをなしているのでnagと付くという説もある。
[編集] 漁法
日本ではウナギは重要な食用魚の一つで、年間11万トンものウナギが消費されている。20世紀後半ごろには養殖技術が確立され、輸入も行われるようになったとはいえ、野生のウナギ(天然もの)の人気は根強く、釣りや延縄などで漁獲されている。 さらにウナギにターゲットを絞った伝統漁法も各地にある。
- うなぎ掻き - 棒の先に鉤をつけたものを巧みに操り、ウナギを引っ掛ける
- うなぎ塚 - ウナギの生息域に石を積み上げておき、石の隙間に潜んだウナギを捕る
- うなぎ筒 - 竹筒などをウナギの生息域に仕掛けておき、ウナギが筒の中で休んでいる時に筒を引き揚げて捕る
[編集] 陸揚げ漁港
[編集] 養殖
日本のウナギ養殖(養鰻)は、江戸時代に東京深川で始まり、のちに浜名湖へ移った。現在、国内での養殖ウナギ収穫量は鹿児島県がもっとも多く、次いで愛知県、宮崎県、静岡県、高知県の順となっている。日本全体の活鰻は2005年度で約2万トン養殖されている。
輸入品は台湾が二十年以上の歴史をもっているが、現在は中国が主流である。台湾の活鰻は2005年度で約2万トン、中国は約5万トンと言われる。種類は、日本と台湾ではニホンウナギ Anguilla japonica のみで、中国ではニホンウナギ Anguilla japonica とヨーロッパウナギ Anguilla anguilla が8 : 2くらいである。博多税関支署によると土用の丑の日がある7月が、年間を通して輸入量はピークになる。2005年は6月の輸入量に比べて、7月は2倍近くの139トンに増加していた。2006年は検査の強化や中国側が輸入を控えているため、台湾産が増えている。
ウナギの養殖はまず、天然のシラスウナギを捕ることから始まる。黒潮に乗って日本沿岸にたどり着いたウナギの子ども、シラスウナギを大量に漁獲してこれを育てるのである。養殖方法は、台湾と中国南部の広東省では池を掘っただけの露地養殖、日本と中国の福建省はハウス養殖が主流である。ハウス養殖は、ボイラーをたいて水温を約30℃に保っており、成長を早めることができる。
なお、ウナギの人工孵化は1973年に北海道大学において初めて成功し、2003年には三重県の水産総合研究センター養殖研究所が完全養殖に世界で初めて成功したと発表した。しかし人工孵化と養殖技術はいまだ研究中で、養殖種苗となるシラスウナギを海岸で捕獲し、成魚になるまで養殖する方法がいまだ主流となっている。自然界における個体数の減少、稚魚の減少にも直接つながっており、養殖産業自身も打撃を受けつつある。
[編集] 食材
ウナギは高タンパクで消化もよく、日本料理の食材としても重要で、鰻屋と呼ばれるウナギ料理の専門店も多い。皮に生息地の水の臭いやエサの臭いが残ってるため、天然もの、養殖もの、問わずきれいな水に1日~2日いれて、臭みを抜いたものを料理する。
夏バテを防ぐためにウナギを食べる習慣は、日本では大変古く、万葉集にまでその痕跡をさかのぼる。以下の歌は大伴家持による(「むなぎ」はウナギの古形。括弧内は国歌大観番号)。
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- 痩人(やせひと)をあざける歌二首
- 石麻呂に吾(あれ)もの申す夏やせによしといふ物そむなぎ取り食せ(めせ)(3853)
- 痩す痩すも生けらば在らむをはたやはたむなぎを捕ると川に流るな(3854)
鰻が現在のようなかたちで一般に食べられるようになったのは江戸後期からで、特に蒲焼は江戸発祥の料理であることから、江戸の代表的食物とされる。蕎麦ほど徹底した美学はないものの、「鰻屋でせかすのは野暮」(注文があってから一つひとつ裂いて焼くために時間がかかる)、「蒲焼が出てくるまでは新香で酒を飲む」(白焼きなどを取って間をつなぐのは邪道。したがって鰻屋は新香に気をつかうものとされた)など、江戸っ子にとっては一家言ある食べものである。
なおウナギの血液にはイクシオトキシンという毒が含まれるため、生で食べることはできない。ただし熱を加えると変性し毒性が消えるので、加熱調理した分には危険はない。生でも血液を完全に抜いて酢でしめれば刺身で食べることもできる。
ちなみに土用の丑の日や夏バテ予防に食べられるが実際はウナギの旬は冬で、秋から春に比べても夏のものは味がおちる。
また、古くから日本固有の俗信として、鰻と梅干は食いあわせとされる。
ウナギを食材とする料理には次のようなものがある。
- 白焼 - たれをつけずに炭火で焼く。ワサビ、卸大根またはショウガ醤油などをつけて食べる。
- う巻き - 鰻巻き。ウナギの白焼きまたは蒲焼を芯にして巻いた卵焼きのこと。とき卵に出汁を入れ、出汁巻き卵をつくる要領でウナギを巻く。小口切りにして切り口が見えるように器に盛り、木の芽などを添えて供する。「う巻き卵」とも。稀に「ウナギのゴボウ巻き」をう巻きと呼ぶこともある。
- 蒲焼 - 日本で最もポピュラーな料理法。開いて頭と骨を取り去った身に串を打ち、たれをつけて焼く。関東では背開きにしていったん蒸し上げたものを焼くが(腹開きのうなぎを蒸すと串から身がはずれてしまうため背開きとなる)関西では腹開きにし、蒸さずに焼く。当初は筒切りにしたウナギに縦に串を打ち、焼いたものに山椒味噌などを塗って屋台などで供されていた。その形が「蒲の穂」に似ていたことから蒲焼の名がついた。油が強い為、労働者などには喜ばれたが下賎な食べ物とみなされていた。一般に広まったのは開いて焼いたり蒸したりして油を落とすようになってからである。
日本で土用の丑の日にウナギの蒲焼を食べる習慣は江戸時代に平賀源内によって広まったという説が伝わっているが定かではない(夏にうなぎが売れない事をうなぎ屋が源内に相談したら、表にはるように土用の丑と書き渡されたところ売れるようになったとのこと)。近年では寒の土用の丑の日も広まりつつある。
ひつまぶしは名古屋名物のうなぎ飯の一種でうなぎの蒲焼を5ミリ~8ミリ幅に細切りにしたものをおひつのご飯の上に載せて供される。食べ方は(1)おひつのご飯とうなぎをまぜて食べる。(2)それにわけぎと海苔の薬味をいれて食べる。(3)さらに出汁とわさびでウナ茶づけで食べる(この食べ方では、うなぎは蒸していない関西風を使う)。
- うざく - 焼いたウナギの切り身とキュウリ、ミョウガを使った酢の物
- 肝吸い - 肝臓を吸い物にする
- うなぎの握り - うなぎの握り寿司。
- うなぎボーン - うなぎの骨を揚げた菓子。
- 半助(はんすけ) - うなぎの頭部のことで、つまみにしたり豆腐と一緒に煮込んだりする。
- うなぎパイ - 「ウナギパウダー」入りのパイ。浜松市名産の菓子(「夜のお菓子」というキャッチフレーズがある)。イギリスでは料理としてパイ生地にウナギのぶつ切りを入れて焼き上げる、料理としてのウナギパイが親しまれている。
ウナギは中国の広東料理、福建料理、上海料理などでも使われ、韓国でも食べる。ヨーロッパウナギやアメリカウナギなどの他のウナギもイタリア、スペイン、フランスなど南欧を中心に各地で食用にされている。
[編集] ウナギに纏わる伝説
日野市の住民はウナギを食べない。これは昔、村を多摩川の洪水から守ってくれたためといわれている。その話は、多摩川で洪水が起き堤防が決壊してもうだめかと思われたときに、どこからともなくウナギの大群がやってきて堤防に空いた穴をふさいだため、地元の住民がウナギを神として祭ったとされている。それは地元、日野宮神社に祭られているとされている。そのため地元住民は親子三代にわたってウナギを食べないという例もある。
[編集] 慣用句
- うなぎの寝床
- うなぎのぼり