ひつまぶし
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主な地域 | 名古屋市周辺 |
発案時期 | 1887年頃(明治20年頃) |
発案店(発案者) | あつた蓬莱軒、いば昇 (二説あり) |
ひつまぶし(櫃まぶし)は、主に名古屋地方で食べられている鰻料理。蒲焼にしたウナギの身を細かく刻んで御飯に乗せたもの。小ぶりなお櫃(ひつ)に入れて供されるため、こう呼ばれる。
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[編集] 概要
日本のウナギ生産の4分の1を占める一色町などを抱える愛知県は、静岡県(浜名湖)を抑え、ウナギ生産高第1位を誇る。 そのウナギを名古屋では関西風の蒲焼と同様に蒸さずにそのまま焼き上げる。そのため程よく焦げた皮は香ばしく、脂ののった中の身だけがふんわりと柔らかくなる。この蒲焼のおいしさを最大限に引き出した究極のメニューがこのひつまぶしだ。
「ひつまむし」の名称もあり、地元では両方の呼び名が通用する。なお、「まむし」は関西を中心とした方言で鰻飯をいう。
料理名を「ひまつぶし(暇潰し)」と間違えるといった笑い話の種になる時もある。→暇潰し#暇つぶしと「ひつまぶし」
[編集] 食べ方
ひつまぶしの楽しみ方は、以下の手順による「1回で3度おいしい」食べ方にある。
- 1人前は小さな「お櫃」に茶碗3-4杯分入っている。ご飯の上に刻んだ鰻が載ったまま出されるのでこれを用意されている杓子でかき混ぜる
- 最初はこれをそのまま茶碗に一杯取り、そのまま食べる
- 次はおかわりの様に2杯目を取り、薬味をのせて食べる。薬味は、葱・山葵・海苔が基本で、ウナギによく合う3種である。これらの味の変化を楽しみながら味わう。
- 3杯目は2杯目の様にしたものに、お茶(煎茶)もしくはだし汁をかけ、さっぱりとお茶漬けのように食べる
(3杯目のお茶・だし汁は、その店ごとにどちらが出るかは異なる)
「あつた蓬莱軒」によれば、先ずお櫃に上から十字に四等分するようにしゃもじを入れ4杯分にわけて、上記のように3種類の食べ方を楽しみ、最後に一番好みだった食べ方をもう一度楽しむ事がお薦めのようである。
[編集] 歴史
明治時代に「あつた蓬莱軒」(名古屋市熱田区)がはじめたという説と「いば昇」(名古屋市中区)がはじめたという説とがある。 ひつまぶしが御櫃に入っているのは、当初、他の鰻専門店と同じように1人前づつ瀬戸物の御椀に盛られていたが、配達した後に回収した店の若い衆が御椀を割ることが頻繁にあったため多少乱暴に扱っても割れず、かつ、複数人分をいっぺんに用意できる容器にするためであったとされている。鰻が刻まれているのは、御櫃から取り分ける際に鰻の量を均等に分けて盛り付けるようにすることが目的であったとも、また、戦後の食糧難の時期に、うなぎの有効活用を図ったためであったとも言う。 ちなみに、あつた蓬莱軒では、だし汁を、いば昇ではお茶をかける。 どうしてお茶やだし汁をかけるかようになったかというと、質の落ちたうなぎをなんとかおいしく食べられるようにしようとした結果といわれている。