SBD (爆撃機)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
SBDはダグラス社が第二次世界大戦の前に開発した艦上偵察爆撃機。名前のSBは偵察爆撃機(ScoutBomber)を意味し、Dはダグラス社を意味する。 日本における零戦、英国におけるスピットファイアと同様、第二次世界大戦の殊勲機としてアメリカ海軍の最も愛されている機体の一つで、急降下爆撃機や偵察機として運用された。アメリカ海軍だけでなく陸軍や海兵隊でも運用された他、少数がイギリス海軍に供与されている。
目次 |
[編集] 愛称
愛称は形容詞で「恐れを知らない、勇敢な、不敵な、がまん強い、不曉不屈の」などを意味するドーントレス(Dauntless, ド にアクセント)。結果的に命名法が一般的が軍艦向けのものでイギリス海軍にフリゲートドーントレスから襲名したダナエ級軽巡洋艦ドーントレスがある。
同様の関係はアメリカ海軍艦艇のヨークタウン級空母ホーネット、エセックス級空母ホーネットと戦闘機F/A-18 ホーネットがある。
[編集] 開発・配備
当初基本設計はノースロップ社でXBT-2の名称で行われていたが、ダグラス社が設計を引き継ぐこととなり、XSBD-1と名称が変更された。当初から引き込み脚を採用するなど、当時の急降下爆撃としては画期的なスペックであった。
1939年4月に初期型の海兵隊用SBD-1が57機、海軍用SBD-2が87機量産された。しかし、欧州を席巻したドイツ陸軍の急降下爆撃機Ju 87 スツーカに衝撃を受けた米軍は性能が不十分であると判断し、エンジン・防弾性能・機銃攻撃力などに大幅な改良を加えた中期型のSBD-3を584機生産した。このSBD-3は同時期に使用された九九式艦上爆撃機と比較して速度、航続距離、操縦性、搭載量などはるかに凌ぐ性能であった。
新型艦上爆撃機SB2C ヘルダイバーが登場したが、SB2C ヘルダイバーは海軍側の無茶な要求によって若干安定性に難のある機体になっており、操縦性に難点があった。そのため、引渡し後の部隊配備は遅々たるものだった。一方でドーントレスは無線航法装置や空中レーダーを装備した、後期型のSBD-4が780機生産され、その後もSBD-5、SBD-6と改良が加えられた。
母艦搭載の必要がない海兵隊は終戦間際まで本機を運用し、SBD-6はほとんどが海兵隊向けであった。その後、SB2C ヘルダイバーの高性能化で母艦部隊は機種交換が進められ、ようやくSB2C ヘルダイバーに道を譲り、終戦間際に生産が始まったA-1 スカイレイダー汎用攻撃機の登場でドーントレスはその姿を消す。しかし、SBD ドーントレスは太平洋戦争中の全期間、現役状態であったと言える。
[編集] 戦歴
最初にドーントレスを実戦使用したのは、海軍ではなく陸軍であった。スツーカの活躍に衝撃を受けた陸軍がSBDから空母用装備を取り外し、A-24 バンシー(Banshee)として採用し、フィリピン・オーストラリア・ニューギニアの航空基地に配備され、南進する日本軍と戦闘を繰り広げた。総計953機のA-24が生産され、海軍でSBDが引退した後も使用され続けた。
太平洋戦争(大東亜戦争)開戦時におけるパイロットの練度は低かったが、海軍のSBD-3は珊瑚海海戦でデビューし、コンビを組むはずの雷撃機TBD デバステイターの性能が貧弱で日本軍艦艇に有効な打撃を与えられない中、軽空母祥鳳を撃沈し、空母翔鶴を中破させた。
ミッドウェー海戦では日本機動部隊の4空母赤城、加賀、蒼龍、飛龍の撃沈に貢献した。その後、一連のソロモン諸島での海戦でも、配備が始まった画期的な新型雷撃機TBF アベンジャーと共に活躍した。TBFの不具合が解消されるまでSBDは艦艇攻撃の主役を担い、多数の日本軍艦艇を撃沈した。
[編集] 性能諸元
- 出典
- Barrett Tillman. The Dauntless Dive Bomber of World War II. Naval Institute Press, Annapolis, MD, 1976 (softcover 2006.)
- The Boeing Company History / Products / Douglas SBD Dauntless Dive Bomber
- 要目 : SBD-5
- 乗員:2名
- 全長:10.08m(33ft 1in)
- 全幅:12.65メートル(41ft 6in)
- 全高:4.14メートル(13ft 7in)
- 翼面積:30.19m²(325ft²)
- 自重:2,905kg(6,404lb)
- 全備重量:4,843kg(10,676lb)
- 最大離陸重量:4,853kg(10,700 lb)
- エンジン:ライト R-1820-60 サイクロン星型エンジン1基、1,200hp(895 kW)
- 速力:410.38km(255mph)
- 航続距離:1243.8km(773 mi)
- 上昇限度:7,780m(25,530ft)
- 固定武装:前方固定 12.7mm機関銃2門、背面 7.62mm機関銃1門