絶対君主制
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絶対君主制(ぜったいくんしゅせい)は、君主制の一形態で、君主が国家と国民を憲法や法律によって制限されることのない自由な権力を行使して統治する政体のこと。絶対君主制においては貴族や諸侯、議会よりも君主の権限が優越するが、君主の権力はしばしば宗教的な権威によって裏付けられているために、宗教上の制約を受ける。
歴史学では絶対王政もしくは絶対主義という語が一般的に用いられる。絶対君主制という語は一般的に用いられず、政体の点での絶対王政を説明する時に用いられる。歴史学における絶対王政の説明については、その項を参照されたい。
ヨーロッパでは、16世紀後半のスペイン、イングランド、17世紀のフランス、スウェーデンなどが絶対王制の典型である。18世紀の啓蒙主義は、これを否定する形の新たなる君主制であり該当しないが、当初は啓蒙専制君主と言われた。
アジアでは中国の歴代王朝や李氏朝鮮などが代表的な絶対王制国家であった。大日本帝国時代の日本は、憲法の下で議会によって国政が運営される立憲君主制であった。その上で相当の非常時(二・二六事件や終戦時)においては、憲法に制限されない「天皇大権」が行使される場合もあった。
憲法が存在しても、君主が頻繁に強権を発動するなど形骸化している場合や、政治上の要職を君主一族で固め、自身も強大な権力を有する場合などは、実質的には絶対君主制と言える。 クウェートが好例と思われる。
現代の国々では、サウジアラビアやスワジランド、アラブ首長国連邦、オマーン、ブータンの5か国のみが絶対君主制となっている。ヨーロッパでは、リヒテンシュタイン公国が最後の絶対君主国と言われている。