皇帝のいない八月
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『皇帝のいない八月』(こうていのいないはちがつ)は、1978年公開の松竹製作の映画。
保革伯仲し与党内でも分裂が危ぶまれる政局不安定な暑い夏、右翼政権樹立を武力クーデターで一気に目指す自衛隊反乱分子とそれを秘密裏に鎮圧させようとする政府の攻防を描くポリティカル・サスペンス。物語の中心部分は、クーデター当日の夜に藤崎顕正元1等陸尉率いる少数精鋭の部隊に乗客乗員ともども乗っ取られたブルートレイン「さくら」の車内が舞台となり、和製『カサンドラ・クロス』の趣で作られた列車パニック映画ともなっている。
目次 |
[編集] スタッフ
[編集] 出演
- 渡瀬恒彦(藤崎顕正:元1等陸尉でクーデター計画の首謀者の一人。)
- 吉永小百合(藤崎杏子:藤崎顕正の妻。)
- 山本圭(石森宏明:藤崎杏子の元恋人。)
- 三國連太郎(江見為一郎:陸将補で陸上幕僚監部警務部長。)
- 滝沢修(佐林:首相)
- 佐分利信(大畑剛造:クーデター計画の黒幕。)
- 高橋悦史
- 渥美清
- 大滝秀治
- 丹波哲郎(三神:陸将)
[編集] あらすじ
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
アメリカに媚を売りながらも、腐敗しきっている自民党の現政権に対して、自衛隊と結んだ右派系の元首相一派が自衛隊の最高幹部とともにクーデターを計画する。
目的は自衛隊を国防軍に再編成すること。そのために軍事力で政府を制圧し、内閣総理大臣を拘束、憲法改正を断行する。ここにCIAが戦略・情報・人脈を使って介入してくる。
だが、そこで登場したのが内閣情報調査室室長。彼がすべての情報を探索し、官邸から自衛隊の統帥を指揮し、クーデターを制圧せんとする。
だが、実はとんでもない大どんでん返しが待っていた…。
[編集] エピソード
- 当初、主役の藤崎役には渡哲也のキャスティングが想定されていたが、所属の石原プロが自ら製作しているテレビドラマ中心に起用する方針を曲げず、そのスケジュールを解放しなかったために断念(同時期の角川映画『人間の証明』も同様の理由で渡の起用を断念)。そして白羽の矢が立ったのが実弟の渡瀬恒彦。それまで東映でヤクザ役やチンピラ役など粗暴な役が多かった渡瀬は、信念を持った元自衛隊エリートの反乱分子の内なる狂気を見事に演じきった。
- 松竹映画だけに、渥美清が『男はつらいよ』の車寅次郎“らしき”人物で出演。らしき、というのは、劇中でその名は名乗っていないが、ブルートレイン「さくら」の寝台車で一人旅の途中で、唯一素性を表す台詞「まだ結婚してないんですよ」というのがあるから。それは誰が見ても「寅さん」だと思わせるものの、粗野な振る舞いはなく、かなり内気で上品な言動なのは演出の違いか?
- 興行成績はそれほどではなかったものの、後にカルト的人気を博す。とくにアニメ監督として著名な押井守に多大な影響を与えた。押井が演出や脚本を手掛けた『機動警察パトレイバー』の自衛隊クーデターものエピソードには、オマージュ以上のものがこの作品から得られている。
- 上記の諸作と同様、内容が内容だけに国鉄の協力は得られず、「さくら」の車内はすべてセットで撮影された。
[編集] 自衛隊の反乱を主題とした作品
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