産業技術総合研究所
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産業技術総合研究所(さんぎょうぎじゅつそうごうけんきゅうじょ)は、日本の独立行政法人。略称産総研(さんそうけん)、英語表記AIST(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology)。経済産業省に属する研究所であったが、2001年(平成13年)4月1日より独立行政法人に改組。
元来は通産省工業技術院の傘下にあった、つくば地区に置かれていた研究分野ごとの8つの研究所群、全国各地に置かれていた7つの地域ごとの工業技術研究所群だったものを単一の組織に統合したものであり、中央省庁再編による工業技術院の廃止期日と独立行政法人化の期日とに時間的ずれがあったため、2001年1月6日から同年3月31日までは、経済産業省に附属する単一の研究所という暫定的な形態になっていた。
産業技術総合研究所の英文名称は、工業技術院の英文名称(Agency of Industrial Science and Technology)の略称AISTをそのまま引き継ぐことができるように考案されたものである。
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[編集] ミッションと構成
「世界の持続的発展への貢献」「日本の経済社会の明日に向けて、常に新たな可能性を切り開き、新しい技術を提案していく」を使命として、産業技術の非常に広い分野におけるさまざまな技術開発を総合的に行っている研究組織である。主に「ライフサイエンス」「情報・通信」「環境・エネルギー」「ナノテク・材料・製造」「地質・海洋」「標準・計測」という6分野を主軸に、産業のほぼ全分野を網羅している。
霞ヶ関の経済産業省内に本部を置く。茨城県つくば市の「つくばセンター」をはじめ、「北海道センター」(北海道札幌市)、「東北センター」(宮城県仙台市)、「臨海副都心センター」(東京都江東区)、「中部センター」(愛知県名古屋市)、「関西センター」(大阪府池田市)、「中国センター」(広島県呉市)、「四国センター」(香川県高松市)、「九州センター」(佐賀県鳥栖市)など、日本全国に研究拠点を構える。最大の研究拠点であるつくばセンターは筑波研究学園都市(首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス線で秋葉原から45分)に位置し、産総研の約70%の施設や研究者が集積する。秋葉原クロスフィールドによって新設された秋葉原サイトには、グリッド研究センター・情報技術研究部門等の一部が置かれ、企業・大学等と連携した研究活動を行っている。
陣容は研究職を中心とする常勤職員約2500名、事務系職員約700名に加え、企業・大学・外部研究機間等から約5200人(平成17年度受入延べ数)の外来研究者を受け入れていることが特徴である。
研究組織としては、活断層研究センターや情報セキュリティ研究センターなどミッション志向の研究センターが約30組織、センターを目指す研究ラボが5組織、情報技術研究部門や知能システム研究部門など基礎よりの研究を行う研究部門が20組織ある。
[編集] 研究成果と技術移転
これまでヒューマノイド・ロボット、次世代半導体技術開発、グリッド、ナノテク、環境技術等で顕著な成果が上がっている。また、産総研は旧電子技術総合研究所の流れを汲むことから、オープンソース・ソフトウェア開発の拠点として知られており、Mule、DeleGate、HORB、Knoppixといったソフトウェアが公開されている。
研究成果は特許や著作権等の知的財産権として社会や企業に技術移転される。技術移転は技術移転機関(TLO)である産総研イノベーションズが担っている。更に、産総研の研究成果を元にする商品化の支援のために共同研究、技術指導、技術相談、技術者が産総研に一時滞在する技術研修、ベンチャー設立支援、技術開発資金援助等の各種制度を有する。
地質に関する研究成果は地質図・活断層図として公布されているほか、地震予知に役立てられており生活への関連が深い。標準に関する研究は、シリコンボールによる新しいキログラム原器の提案や、産業界における各種の計量標準として供給されている。
一般向けの展示室としては、つくばセンターに「サイエンス・スクエアつくば」「地質標本館」「JISパビリオン」があり、常設展示を行っている。また、毎年7、8月を中心に全国各地の研究センターで一般公開を行っており、多数の見学者でにぎわっている。
[編集] 就職
産総研の人材採用は、常勤職員と契約職員の2種類がある。常勤職員は試験採用と公募選考採用があり、試験採用は事務系と研究系の職員を、公募選考採用は研究系の職員を採用する。2005年度から事務系・研究系共に独自の採用試験を行っているが、2006年度までは研究系は国家公務員試験合格者を採用する。契約職員は博士研究員(ポスドク)の第1号契約職員、技術者・技能者の第2号契約職員、秘書・事務アシスタントの第3号契約職員がある。
[編集] 人物
- 吉川弘之 初代理事長、元東京大学総長。
- 中西準子 環境リスク学の提唱。
- 飯島澄男 カーボンナノチューブの発見者。
- 近藤淳 近藤効果で有名。
- 多比良和誠 RNA工学研究者。前ジーンファンクション研究センター長。
- 中島秀之 人工知能研究者。現公立はこだて未来大学学長。
- 平野聡 ソフトウェア作家。HORB、htermの開発、Ring Serverの創設。
- 関口智嗣 並列処理研究者。
- 高木浩光 セキュリティ研究者。
- 柴田崇徳 ロボット工学研究者。アザラシ型ロボット「パロ」の開発。
- 池上徹彦 元NTTアドバンステクノロジ(株)代表取締役社長。会津大学学長。産総研理事。
- 半田剣一 多国語対応エディタMuleの開発。
- 松本元 脳科学者。ヤリイカの飼育法の開発、神経細胞の研究。脳型コンピュータの開発。
- 片浦弘道 ナノテクノロジー研究者。片浦プロットで知られる。
- 梶田秀司 現在主流の2足歩行ロボットの制御技術であるZMP理論の発明者。
- 鵜沢浩隆 ボツリヌス毒素を早期発見できる技術開発に携わる。