玄田有史
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玄田 有史(げんだ ゆうじ、1964年10月20日 - )は、日本の労働経済学者。島根県頓原町(現飯南町)生まれ。専攻は労働経済学。学習院大学教授を経て東大助教授。
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[編集] 言論活動
2001年に出版した『仕事のなかの曖昧な不安 揺れる若年の現在』によりサントリー学芸賞及び日経・経済図書文化賞授与。同書は、中高年層の雇用(既得権益とみなす)を守るために若年層の雇用を抑制する、日本の民間企業の現状を分析した経済評論。また、2004年の曲沼美恵との共著『ニート――フリーターでもなく失業者でもなく』の出版によりニート問題の第一人者としてジャーナリスティックに知られ、メディア・講演などに出演するようになった。しかし、一方で玄田のニート論に対する批判も提出されている。東京大学社会科学研究所助教授の本田由紀は『「ニート」って言うな!』(光文社新書)の中で玄田のニート観を批判している。
また、玄田氏の若年層雇用に関する言説の特徴は、「ニートやフリーターは将来的に社会における不安定要素となり得る」ために「社会的な対策が必要である」の一言に尽きる。一般にニート・フリーター問題に関する言説は、否定・批判的であっても、個々人の性格・生活といったミクロな視点である一方、玄田氏の言説は基本的にマクロな(社会全体から)視点から論じたものであり、学術研究的な傾向が強い。
[編集] 学歴
- 1983年 島根県立松江南高等学校卒
- 1988年 東京大学経済学部卒
- 1992年 東京大学大学院経済学研究科第Ⅱ種博士課程単位取得退学
- 2002年 大阪大学経済学博士号取得
[編集] 職歴
- 1992年 学習院大学経済学部専任講師
- 1995年 学習院大学経済学部助教授
- 2000年 学習院大学経済学部教授
- 2002年 東京大学社会科学研究所助教授
[編集] 著書
[編集] 単著
- 『仕事のなかの曖昧な不安――揺れる若年の現在』(中央公論新社, 2001年/中公文庫, 2005年)
- 『ジョブ・クリエイション』(日本経済新聞社, 2004年)
- 『14歳からの仕事道』(理論社,2005年)
- 『働く過剰-大人のための若者読本-』(NTT出版,2005年)
[編集] 共著
- (本間正明・金子郁容・山内直人・大沢真知子)『コミュニティビジネスの時代――NPOが変える産業、社会、そして個人』(岩波書店, 2003年)
- (曲沼美恵)『ニート――フリーターでもなく失業者でもなく』(幻冬舎, 2004年)
- (小杉礼子, 労働政策研究・研修機構)『子どもがニートになったなら』(日本放送出版協会[生活人新書], 2005年)
[編集] 共編著
[編集] 論文
- 「資質か、訓練か:規模間賃金格差の能力差説」『日本労働研究雑誌』1996年1月号
- “Job Creation and Destruction in Japan; 1991-1995” Journal of the Japanese and International Economies 12 March 1998
- 「中小企業のグローバル化と労働市場への影響」(樋口美雄との共著)『グローバル経済時代の産業と雇用』、東洋経済新報社、1999年
- “Transition from School to Work in Japan”(with Masako Kurosawa)Journal of the Japanese and International Economies 15, 2001
- 「失業と雇用喪失に関する実証研究」(石原真三子との共著)『経済分析』内閣府経済社会総合研究所、2003年3月
- “Declining Self-employment in Japan”(with Ryo Kambayashi)Journal of the Japanese and International Economies 16, 2002
- 「賃金格差と仕事格差」 (篠崎武久との共著)宮島洋・連合総合生活開発研究書編『日本の所得分配と格差』東洋経済新報社、2002年10月
- 「見過ごされた所得格差」『季刊社会保障研究』第38号、2002年第3号
- 「パートが正社員との賃金格差に納得しない理由は何か」 (篠崎武久、石原真三子、塩川崇年との共著)『日本労働研究雑誌』第512号、2003年2・3月号
- 「構造的失業とは何か」 (近藤絢子との共著)『日本労働研究雑誌』2003年7月号
- 「自己雇用の現在と可能性」 (高橋陽子との共著)国民生活金融公庫『調査季報』第64号、2003年2月
[編集] 一般的言論活動
- 「「同質社会」の終焉」『中央公論』2002年7月
- 「うすくつながって生きる」 『文藝春秋特別版―日本人の肖像』2002年
- 「人材育成がカギを握る日本の未来」関西経営者協会編『労働力の市場価値と賃金』2003年1月
- 「20-30代社員があぶない」 『文藝春秋』2003年3月号
- 「フリーエージェントの未来」 『人材教育』Vol.15、2003年3月号
[編集] 受賞
- 第24回サントリー学芸賞(政治・経済部門)、日経・経済図書文化賞(『仕事のなかの曖昧な不安』)、2002年
[編集] 社会的活動
- 日本労働研究機構特別研究員(1996年~)
- 内閣府経済社会総合研究所客員研究員(2000年~02年)
- 女性の活躍推進協議会委員(2001年7月~)
- 労働政策審議会職業能力分科会委員(2000年~)