消費
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消費(しょうひ、consumption)とは、欲求を満たすために財・サービス(商品)を消耗することを指す。交換価値を失うこと、あるいは資源を使用することでもある。生産の反意語。
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[編集] 概要
経済学では、一般的に消費から効用を得ると仮定して分析を進める。守銭奴のように貨幣そのものから効用を得るモデル(Money in the utilityであるモデル)も存在する。
人間の消費活動(経済活動)は地球環境に様々な影響を与えることから、これらの問題の解決をめざす環境経済学という分野も存在する。
[編集] マクロ経済学における消費
マクロ経済学では経済全体の消費を合算して総消費と呼ぶ。総消費は、将来の生産のための支出である投資を除いた一般的な支出を指すと考えると分かりやすい。
ケインズモデルにおいては消費はconsumptionの頭文字であるCで表される。
Cは最も簡易なモデルとして以下のように組み込まれる。
- 消費のみのモデル
国民所得(Y):Y=C
総消費 (C):C=0.8Y+10
この方程式を解くと国民所得は50となる。0.8は、消費性向を意味し、経済によって異なる。0.8Yは所得のうち消費へ80%を使うことを意味し、所得によって増減する裁量的消費支出と呼ばれる。10は最低限必要な消費支出であり、所得の増減には影響されない。
[編集] 消費性向の逓減
上記の式においては、国民所得50に対して総消費が50となるため最低消費支出を含めた消費性向は1(100%)となる。これは国民所得の構成要素が消費のみ(貯蓄・投資が存在しない)だからである。仮にこの経済のうち誰かが貯蓄をしたとするなら、他の誰かは赤字となり総貯蓄は0となる(合成の誤謬)。
- 投資と消費のモデル
国民所得(Y):Y=C+I
総消費 (C):C=0.8Y+10
総投資 (I):I=10
上記のように投資を考慮した場合、国民所得は100、総消費は90となる。この場合の消費性向は0.9(90%)となる。国民所得のうち消費されなかった総貯蓄10は総投資10と同額になる。総投資が20になった場合、国民所得は150、総消費は130となり、この場合の消費性向は0.866(87%)となる。
このように、国民所得が増大すると消費性向が逓減する。
[編集] 貯蓄と投資
上記のモデルでもあらわされるように、総貯蓄と総投資は同額になる。これは、現実の経済からすると一見誤りであるように思われる。例え100円の貯金をしたとしてもタンスにしまえば、銀行へ預金する場合と違って融資もされず、投資に向かわないはずである。
マクロ経済学においては、この貯蓄と投資の因果関係がほぼ逆になる。上記の消費のみのモデルでも表されたように、総投資が存在しない場合は総貯蓄が存在しない。逆に総投資が存在する場合は、総貯蓄は0にはならない。仮に総貯蓄を0にしようとして所得の全てを消費した場合、総貯蓄は減ることなく国民所得が無限に増大しハイパーインフレーションとなる。一個人に置き換えると、金を使えば給料が増えるという関係になるが、マクロ経済の枠組みでは正当である。このようにマクロ経済で見た場合は総投資の存在が、総貯蓄の存在理由となる。
アメリカ経済は家計による消費で貯蓄が0ないしマイナスとなっており、企業・政府の投資意欲は旺盛である。このように総投資が存在するのに総貯蓄が存在しない場合、経常収支が赤字となる(マクロバランスを参照)。ある経済の経常収支の赤字は外国経済が、その経済において貯蓄をしていると解釈される。また世界経済の枠組みにおいては、アメリカ経済も一つの国民経済に過ぎず、世界全体で見た総投資と総貯蓄は等しくなる。
[編集] 可処分所得
家計の収入から、税金や年金などの社会保険料といった非消費支出を差し引いた残額。 実際に財やサービスの購入(消費活動)に使用できる額。
[編集] 消費性向、貯蓄性向
可処分所得のうち、消費と貯蓄にそれぞれ回される割合。消費性向、貯蓄性向の和は1となる。
日本は海外の先進国に比べて、貯蓄性向が高いと言われていたが、人口構造の高齢化にともなって低下傾向をたどってきた。2000年からは貯蓄性向は急速に低下している。
[編集] 固定費、変動費
固定費は、住居費や光熱費と言った生活に伴う活動によってあまり変化しない費目を差す。一方、変動費はレジャー・娯楽や買い物など、活動によって変化する費目を差す。
ただし、報告書やレポートなどで固定費、変動費という言葉が出てきた場合、その時々によってそれぞれの範囲は大きく変わる可能性がある。例えば固定費に税金や保険年金まで含めたり、通信費を固定費にするか変動費にするかで分かれたりするため、利用時には対象範囲に注意する必要がある。
[編集] 関連項目
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