投資
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投資(とうし)とは、総じて将来的に増加して自らに返ってくることを期待して、現在自己が持つものを投じる(種をまく)行為である。
狭義では経済において、将来的に資本(生産能力)を増加させるために、現在の資本を投じる活動を指す(現代において、生産能力の増加しない商業活動はこれに含まない)。広義では、人間関係や親子関係においても使われる。積極的に事物が成長するために必要なことである。
どのような形態の投資も、現在と将来の間におけるやり取りであることから、思い通りに増えるかどうか不確実(リスク)であるので戦略(意思決定)が必要となる。農業にたとえると、どこの畑に、どのような種を、どのような方法で、どのくらい蒔くか、どのように育て、どのように観察し、いつ刈り取るかなどの、戦略である。
戦略によれば想定外の事象をある程度見込んで盛り込むことができ、リスクと常に隣り合わせである投資をコントロールできる。
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[編集] 金融における投資
金融における投資(とうし)は、投じたお金(種)が経済活動に使われることによって得られる利益を、資金提供の見返りとして受け取ること(新しい種となること)。 例えば、証券(株式、債券等)購入を通じて提供されたお金で、企業が工場を増設して利益をあげ、その利益が企業価値の増大や配当として、投資家に還元される場合が該当する。 不動産に対する投資も、売買相手の損失によって儲けるのではなく、購入資産の利用によって儲けることを期待する場合は、投資とみなすことができる。高いリターンを目的に、高いリスクを取り絶好の機会を狙って行う投資のことを、特に投機という。
一方で、売買主体のリターンの合計が必ず0かマイナスになる対象への行為はギャンブルと呼ばれる。例としては、宝くじ、公営競技、パチンコなどが挙げられる。
[編集] 投資対象
- 不動産 - 土地、マンション、アパートなど。購入した物件を賃貸にしたり、あるいは売却したりすることによって収益を得る。
- 為替・株式・債券・商品 - 将来の値上がりを期待して購入し、価格が上昇したら売却して収益を得る。
[編集] 関連
[編集] 経済学における投資
投資(とうし)は、資本(生産設備など)を増加させることを指す。
例えば、設備投資や公共投資が挙げられる。これらの投資は、民間資本や社会資本を増加させ、経済の生産力を向上させる。また同時に乗数効果による需要拡張効果も持つ。つまり、投資は供給を増加させ、同時に需要も増加させる。閉鎖経済においては、この需給が均衡するのは「ナイフの刃」(ハロッドによって提唱された)の上を歩くように厳しい条件があり困難であるが、開放経済においては、貿易がこれらの需給ギャップを吸収する。このような国では投資が盛り上がることで需給がバランスを取った黄金時代を迎えることができる。
また、貨幣経済が浸透していない封建農業経済でも、一定量の労働力を割いて灌漑設備建設や開墾をすることで、現時点での作物生産が減少しても、将来より多くの作物生産を得ることが出来る。これも投資に当たる。
[編集] 投資と消費と資本
次の場合を考える。
(消費)はじめA氏が100円を持っている。
B氏がA氏から100円を借り、B氏から受注したC氏が生産した100円分の消費財を買い消費する。一連の活動が終了した後は、A氏の100円の債権、B氏の100円の債務、C氏の100円の現金で、経済全体の純財産は債権と債務を相殺したのち差し引き100円となり、当初A氏が一人で持っていた経済の全財産100円と変わらない。
(投資)はじめA氏が100円を持っている。
B氏がA氏から100円を借り、B氏から受注したC氏が生産した100円分の投資財(工場・機械とする)を買い投資する。一連の活動が終了した後は、A氏の100円の債権、B氏の100円の債務と100円の工場・機械、C氏の100円の現金で、経済全体の純財産は債権と債務を相殺したのち差し引き200円で、当初A氏が一人で持っていた財産に投資した100円分がプラスされる。
このように、投資活動は等量の貨幣が循環する中でも、取引量を増加させるだけでなく、経済に対して資本蓄積をし財を増やす。当初原野であった土地に、耕作地が出来、都市が出来、道路が出来るのはこれらの投資活動の結果である。
また、この投資は消費を抑え貯蓄したということでもあり、経済全体の貯蓄はそういう意味で重要である。
[編集] 投資と利子率
一般には、利子率(金利)が低下すると投資は拡大する。利子率の低下により低コストで資金を調達して、収益率(投資の限界効率)が低い投資を行っても採算が合うからである。
[編集] 教育投資
投資(とうし)は、物的な資本に対してだけでなく、人的資本に対しても行われる。将来自分の利益になるようにお金をかける教育投資はその一例である。また、子への教育投資は、受益者と負担者が異なる特別な投資である。
[編集] 投資の歴史
投資の歴史は、リスクや期待の歴史である。
18世紀、江戸幕府の重臣田沼意次は新田開発投資を行い生産力を増大させた。
19世紀初頭、ロスチャイルド家はワーテルローの戦いで情報を活用し金融投資で巨利を挙げた。
19世紀半ば移行、アメリカでは躍進する国勢を背景に、大陸横断鉄道建設ブームが起きた。アメリカはこれにより経常赤字を計上するほどだった。その後、鉄道会社は再編されることになったが、東西両岸を強く結ぶ効果を発揮した。
19世紀後半、日本は学制により初等教育普及に着手。瞬く間に全国を網羅する教育網が作られ、列強へのキャッチアップに大きく貢献した。
20世紀初頭、列強各国は制海権を維持・拡大するために積極的に戦艦を建造した。
[編集] その他
アメリカでは、虚偽の情報によって投資者が損害を被ったときは証券取引委員会(SEC)が主体となって、損害を与えた企業や証券会社に対して賠償を命じる権限を持っている(投資額の少ない個人から順番に救済)が、日本では民事訴訟で勝訴するしか救済される手段がない(訴訟するにしても、弁護士費用や申立手数料など多額の費用がかかるので現実には泣き寝入りの人が多い)ので問題になっている。