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年金

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年金(ねんきん)とは、毎年定期的・継続的に給付される金銭のこと。また、年金を給付する制度、仕組みのこと(年金制度)も指す。

一般に「年金」という場合には、年金が保険と結びついた年金保険、または、年金保険制度を指す。年金保険とは、一定期間、一定額の保険料を納めることにより支払われる年金のこと。

制度の運営主体によって、公的年金と私的年金に分類される。

目次

[編集] 概説

年金は、もともと、中世ヨーロッパ日本において、封建諸侯貴族が、その家臣や人民に対し、武勲や技芸などの功績への恩賞として、毎年一定の金品を下賜したことに端を発する。

これが後に国家的制度として整備されるに従い、国が貧しい老人に毎年一定額を支給し、老後の安定した生活を配慮・保障する養老年金(老齢年金)へと拡大発展した。これが公的年金のはじめである。

当初の養老年金は、一定年齢に達した者に対し条件付きで、あるいは、所得のない者に限定して支給するものであった。その財源は国庫から賄われたが、このように、受給者は掛け金や保険料を負担しない、拠出を条件としない年金を無拠出制年金という。

これに対して、保険の仕組みを取る年金制度を年金保険と呼び、被保険者が掛け金や保険料を負担し、年金財政はこの収入によって確立されることになる。このような受給者にとって有償な年金を拠出制年金という。この場合には、掛け金や保険料、加入期間(保険料納付期間)、受給者の所得・資産などに応じて、支給される年金額も異なることが多い。

強制加入の年金保険は世界で初めてドイツ帝国初代首相オットー・フォン・ビスマルクが始めたとされる。

今日、多くの国の公的年金は、年金保険の形を取っている。また、民間保険会社信託銀行、その他の会社や私的団体によって運営される年金は、拠出制年金が採用される。

[編集] 年金の財政方式

年金財政は、その財源調達の方法により、積立方式、賦課方式、税方式に大別される。積立方式と賦課方式の中間となる修正積立方式がある。税方式は無拠出制年金の財政方式である。税方式も、徴収する税を年金目的税として明確に会計を分ければ、拠出制年金に近付く。

積立方式
被保険者が収入の一部を積み立てておき、引退後に積立金をその運用益とともに年金として受け取る方式。超長期の預金と考えることができる。積立金が累積していくため、積立金の運用が堅実なものであれば、支給時に年金の原資不足が発生することはありえず、また、積み立てた保険料に応じた年金の支給が保証される。しかし実際は、総年金額が積立金の運用で決まるので、景気変動の影響を直接受ける。同じ額を積み立てていても不景気時に退職するほうが好景気時に退職するときより年金額は少なくなる。不景気時にレイオフが発生しがちであることを考えると、個人の負うリスクが大きい。また、インフレによる物価上昇に追随することが難しい。低所得者は積み立てそのものができにくく、引退後の所得保障としては不十分となる。
賦課方式
積立金を作らず、現役世代から徴収した保険料で、その年の年金受給者への年金をまかなう方式。徴収する保険料そのものが景気により変動するので、インフレによる物価上昇に強い。一方で、社会の人口構造の変動に弱く、少子化高齢化によって就業人口が少なくなると現役世代の保険料の負担が大きくなりすぎる欠点がある。また、世代間の仕送りという性格を持つため、積立方式と比較し負担と給付の関係が明確でなく、保険料に見合った年金が支払われにくい仕組みである。
修正積立方式
修正賦課方式とも言う。制度上は積立方式だが、事実上賦課方式である現在の日本の方式。最初は積立方式として始めたが、年金受給額を物価上昇にあわせて増額する物価スライド制と年金受給者人口の増大によって積立金では年金支払額がまかなえなくなり、現役世代から徴収した保険料を支払いにあてたため、年々賦課方式の性格を強めた。現在でも、賦課方式ではありえない年金支払額数年分に相当する巨額の積立金を保有する。
税方式
保険料を徴収せずにすべて税でまかなう。間接税を主たる財源としている国が多い。

[編集] 日本の公的年金制度

[編集] 公的年金の種類

日本の年金制度は3階建てとなっている。

1階部分
最低限の保障を行う国民基礎年金(保険料は定額)
2階部分
現役時代の収入に比例した年金を支給する厚生年金共済年金(保険料は収入の一定割合)
3階部分
企業年金(厚生年金基金、税制適格年金。保険者ごとに保険料が異なる)

厚生年金、共済年金に加入すると、国民基礎年金にも加入したとみなされる。

公的年金制度
2階部分   厚生年金 国家公務員共済 地方公務員共済 私立学校教職員共済
1階部分 国民年金(基礎年金)
加入者 個人事業主、無職者及び
パート・アルバイト等
厚生年金加入基準を
満たさない給与所得者
第2号被保険者の
被扶養配偶者
民間サラリーマン 公務員等
  第1号被保険者 第3号被保険者 第2号被保険者
私的年金制度と退職金制度
個人年金 勤労者財産形成年金貯蓄
個人型確定拠出年金
企業年金 規約型確定給付企業年金
基金型確定給付企業年金
厚生年金基金制度
適格年金
企業型確定拠出年金
退職一時金制度 中小企業退職金共済
特定退職金共済

[編集] 年金給付の種類

  1. 老齢年金
  2. 障害年金
  3. 遺族年金

[編集] 各年金法の成立と被保険者

民間の年金法は、戦前に1939年船員保険法が、1941年労働者年金保険法が、1944年旧厚生年金保険法が成立している。戦後には1958年国会議員互助年金法、1959年国民年金法、というように職域ごとに年金制度が誕生している。なお、国家公務員関係では、明治時代から部分的に恩給令・恩給法が公布されているが、これも軍人恩給から始まる職域ごとの成立であった。また江戸時代初期会津藩の保科正之が身分を問わず、90歳以上の者に終生一人扶持(1日当たり玄米5合)を与えたのが、日本初の公的年金との説もある。

国民年金厚生年金共済組合(共済年金)などがあり、20歳以上60歳未満の日本居住者は国民年金に加入することが義務付けられている。国民年金を直接納付している人(第1号被保険者)のほか、厚生年金、共済組合等から基礎年金保険料を納付している被保険者(第2号被保険者)や第2号被保険者の配偶者(第3号被保険者)なども国民年金に加入している扱いとなる。

このように、日本では職域ごとに年金制度が発足し充実していったが、制度が複雑になりすぎ、就く仕事により保険料率や支給金額が異なり有利不利が出るなどの弊害が出ており、現在では年金を何らかの形で一元化する方向が望ましいとされている。

[編集] 公的年金の財源

財源は、保険料・国庫負担(税金)・積立金の運用利子である。一年間の実質的収入は、2002年末で厚生年金・国民年金・共済年金の合計で約38兆円である。このうち70%、約27兆円が保険料、国庫負担は約15%の5.8兆円、5.3兆円が財政投融資や債券など運用利子である。

保険料は国民年金が1万3千580円/月で、第1号被保険者の場合、扶養している配偶者の分も支払わなければならない。第2号被保険者(厚生年金共済年金)は収入の約13%を、企業・政府(雇用者)と個人(被雇用者)とで折半して負担し、そこから人数分の国民年金保険料が国民基礎年金会計へ拠出される。第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されている配偶者)は国民年金保険料を支払わなくてよい(配偶者の雇用者、高所得者、独身者等が肩代わりすることになる)。

[編集] 公的年金の収支状況

厚生年金と国民年金の実質的な収支状況
  国民年金(単位:億円) 厚生年金(単位:億円) 厚生年金積立金の推移
(単位:兆円)
年度 収入 支出 差し引き 収入 支出 差し引き
1998 36,393 31,456 4,936 290,696 239,810 50,886 130.8
1999 36,529 31,531 4,998 291,035 251,493 39,542 134.8
2000 36,187 32,596 3,591 288,137 262,320 20,817 136.9
2001 36,143 34,861 1,282 278,198 273,068 5,130 137.4
2002 36,453 35,834 382 290,775 287,686 3,089 137.7

※2003年度の厚生年金積立金は139兆4540円、国民年金9兆9588億円、合計149兆4128億円(社会保険庁)。

[編集] 日本の公的年金制度の課題

[編集] 少子・高齢社会の財源問題

高齢化による総給付額の増大、少子化による総納付額の減少により、年金制度は予定給付額を下回る納付収入しか得られないことが確実視されている。その結果、将来の年金給付が現行ほどの金額が期待できないという国民の憶測から、現在、国民年金の(第2号、第3号被保険者、保険料免除者等を除く加入対象者総数に対する)納付率は約6割となっており、このことが国民皆年金制度の根本を揺るがす状況となっている。

年金給付を保険料収入のみで賄うのは現在の急速な少子化の状況では不可能で、制度の健全な運営には税投入割合の増加や高額の未納付保険料の強制回収が必要との意見がある。近年は高齢化の進行にともなう年金財政の危機的状況が問題とされているが、福祉先進国と日本を比べた場合、将来の財源となると考えられる間接税率は非常に低い。これは1990年代以降長期の不況が続いていたため、間接税率の引き上げを世論が容認しなかったことが理由のひとつである。

解決策として、税・保険料率アップを考慮しつつ、それより先に税・保険料の無駄遣いをなくし、年金保険の所得再分配機能の強化(高所得者層の年金給付額の引き下げ)により財源を確保することが当面の世論となっている。

[編集] 所得再分配機能のあり方

現在の年金制度では、老後の生活を確保するために、支払った保険料に応じた年金が支払われる社会保険機能と、(厚生年金共済年金の2階部分に限られるが)低所得者層に対して高所得者層から所得を移転することでその格差を是正する所得再分配機能が混在している。現在は所得が100%捕捉される第2号被保険者及び正直に保険料を納めた第1号被保険者から、所得の多寡に関わらずすべての国民年金(基礎年金)受給者へ国民基礎年金会計を通じて所得が移転する結果となっており、本来の目的を果たしていない。そのため、保険料を正直に支払った者だけに負担が集中する不公平な状態となっている。

そこで、保険料で所得の再分配を行うことをやめて、所得再分配は税で行い、保険料は社会保険機能のみに使うよう両者の機能を分離することも提唱されている。つまり受給者は過去の保険料支払額に応じた年金だけを受け取り、最低額に達しない受給者には、保険料からでなく税から不足分を補填を行なおう、というものである。

[編集] 多様化するライフスタイルへの対応

日本の年金制度、特に厚生年金は家族制度を前提としており、妻が専業主婦で夫が終身雇用の場合にもっとも有利になるようになっている。そのため、妻が共働きであったり、パート勤務の場合年金が不利になる。また、転職を繰り返したり、脱サラをして自営業に転職した場合、あるいは自営業からサラリーマンに転職した場合など、現在の多様なライフスタイル・キャリア形成に対応していないばかりでなく、特定の家族制度をとるように制度が個人に圧力をかける仕組みになっている。個人のライフスタイルは、各自の自由な選択であり、年金制度は選択に対して中立でなければならない。そのためには現在の家族を単位とした年金制度を、個人単位の仕組みに変更する必要がある。また、職業により年金制度が並立する状態では転職を伴うキャリア形成に対応しにくいことも、年金制度の一元化の根拠となっている。

また、老齢年金の受給資格が発生するためには最低25年国民年金保険料を納めなければならない仕組みを改めるべきとの意見がある。

[編集] 年金の担保・差し押さえ

国民の年金収入は主に国民年金厚生年金から成り立っているが、少子高齢化に伴う現代の社会では年金を含めた金銭トラブルが少なくない。消費者金融会社とのトラブルでは年金の担保差押が起こっている。年金を当てにしてお金を借りたり、連帯保証人になるといったケースが存在している。日本の法律では受給権の保護によって、債務者・連帯保証者の生活を保護するために、このような担保・差押は制限されている(国民年金法第24条・厚生年金保険法第41条)。ただし、この法律には脱税に対する処分による差押はこの限りではないとされている。

[編集] 公的年金の損得勘定

日本政府は「公的年金は個人の積立ではなく世代間扶養の仕組みであるから、損得勘定は不要」とする立場をとっている。一方、報道機関や専門家は世代毎の公的年金の受給額と負担額を比較し、将来の受給世代では負担額に見合った受給額を得られないことを指摘している。これはスウェーデンなど北欧で既に社会問題として指摘され、それらの国の年金改革の原動力となった問題である。  これの指摘に対して、日本政府は支払額と支給額の比率を1.7倍として、国庫負担を1/2であるから平均としては得であると試算しているが、この試算には以下に示す問題がある。

国庫負担が1/2であるなら、単純計算で行くと、2倍とならなければならないがシステムの存続のためにはお金が必要ということもあり、この1.7倍という数字は妥当のようにも思われる。しかし、この1.7倍という数値は、60歳の人間の平均余命をもとに出した数値であり、年金を払い60歳まで生きることができた人間の中での平均が1.7倍ということである。 これは個人勘定で言えば、一番損をしている、老齢年金の受給年齢に達するまでに死亡してしまった人を除いた平均という試算である。この60歳までに死亡してしまう人をも考慮すると、つまり年金を払いはじめる20歳時点の平均余命をもとに、平均数値を考えないといけないことになる。すると、これは1.2倍を少し超える程度という結果となる。

[編集] 日本の公的年金制度改革

1961年の国民皆年金以来、公的年金制度は何度も改正されている。1973年の改正は最も大きく、当時の田中角栄内閣は新たに支給する年金の支給額を現役世代の男子の賃金の約60%まで大幅に引き上げ、すでに支給している年金については賃金と物価の伸びに応じて年金額を5年ごとに引き上げることとした(物価スライド制と賃金スライド制)。

1985年には国民年金と、厚生年金と共済年金の定額部分(1階部分)を一つにまとめた国民基礎年金が作られ、同時に年金の支給額を抑えるために所得代替率が引き下げられた。

1994年の改正では、年金の定額部分(1階部分)の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられ、賃金スライドを可処分所得スライド制に変更した。

1999年の改正では、年金の比例部分(2階部分)の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられ、可処分所得スライド制が廃止された。

2004年には下記のように改正されたが、1985年改正以降は主として保険料収入の不足を補うための改正であり、年金一元化など制度の根本的な見直しを行う改正にはなっていない。

[編集] 2004年度の改正

[編集] 保険料

サラリーマンが加入する厚生年金は2004年の10月から現行13.58%(労使折半)を毎年0.354%(労使折半)引き上げられるようになった。12年後の2017年度は18.30%まで引き上げられる。その後は固定される。

自営業者等が加入する国民年金は2005年の4月から現行の月額13,300円に280円増額の13,580円となり、毎年280円ずつ引き上げ、13年後の2017年度には月額16,900円まで引き上げられた後は固定される。

[編集] 年金給付

被保険者数の減少・平均寿命の伸びを反映して給付額の伸びを自動的に抑制するマクロ経済スライドが導入された。

給付の伸びが現役世代の所得の伸びに完全には追随しなくなるため、厚生年金の老後に受け取る給付水準はモデルケースでは、現行約59.4%であるのに対して、2023年以降は現役時代の年収の50.2%という低水準の給付になっている。今後新たに厚生年金を受給する人の年金給付水準は、2005年4月以降、徐々に下がっていくことになる。つまり、約20年間で10%弱ぐらい下げる計画なので、年平均1%弱ぐらいずつ受給開始時の給付水準が下がっていくというわけである。

70歳以上の給与所得者は、現行では賃金と関係なく年金を受給していたが、賃金と年金額の合計額が一定基準を上回ると減額することになった。保険料の負担は現行と同じで負担なしである。

60歳代後半の給与所得者は、現行では賃金と厚生年金の合計額が37万円を超過するとその超過分の半分が減額される。2004年4月から合計額がボーナスも含めて48万円になった。この年代は現在保険料を負担している。

まだまだ働き盛りの60歳代前半の給与所得者は、65歳以降の繰り下げ受給となった。繰り下げ受給を選択すると給付率が上がる。この年代の給与所得者は、現行では年金を一律2割削減されていたが廃止となった。

夫婦の離婚時には、厚生年金を最大半分に分割できるようになった。ただし、配偶者の同意や裁判所の決定が必要という。

育児休業中の厚生年金保険料の免除が現在の1年から3年に延長された。

パート労働者は、現行では労働時間が正社員の4分の3以上なら厚生年金に加入しなければならないが、改革案では法施行後5年をめどに厚生年金への適用拡大を検討することになった。

年金額を定期的に通知するようになった。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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