松本電気鉄道上高地線
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上高地線(かみこうちせん)は、長野県松本市の松本駅から長野県東筑摩郡波田町の新島々駅までを結ぶ松本電気鉄道の鉄道路線である。
目次 |
[編集] 路線データ
[編集] 概要
松本市西郊を走り、通勤・通学のみならず、上高地への観光の足でもある。
終点の新島々駅にはバスターミナルが設けられ、上高地方面などへのバスが発着し観光客や登山者の拠点となっている。かつては、その先の島々駅まで線路が延びていたが、1983年の台風10号による土砂災害により新島々駅までに短縮された。 波田町龍島(現:波田町竜島)までの計画もあったが莫大な工費かかることにより断念された。
[編集] 運行形態
概ね40分間隔で全列車が松本~新島々間に運転されている。JR松本駅に到着する夜行列車に接続して早朝に臨時列車が運転されることがある。
[編集] 利用方法
ワンマン運転を実施しており、駅によって乗車するときは整理券を取り、降車駅で運賃箱に乗車券または運賃を入れる方式(無人駅)、駅改札口で整理券と運賃あるいは乗車券を引き渡す方式(有人駅)が存在するが、有人駅である松本駅においては、例外的に運転士に整理券または運賃を渡す必要がある。
なお、JR線との乗り換え駅である松本駅には乗り換えのための中間改札が存在しないため、乗り換えの場合は、それぞれ次のように取り扱われる。
- JRからの乗り換えはJR乗車券をそのまま所持し、降車駅において松本駅からの運賃を含めた金額を支払う。
- JRへの乗り換えは運転士に整理券・乗車券または松本までの運賃を渡し乗換券の交付を受け、JR車掌に当該乗換券から乗車券への交換を申し出て、松本からの運賃を支払い、JR線の乗車券を受けとる。
2006年5月20日に松本駅の改札口が自動化されたものの、松本電鉄の乗車券は自動改札非対応となっており、松本駅での乗降については、係員のいる通路を利用することとなるので注意されたい。
- 有人駅(駅員配置駅):松本駅・新村駅(朝から昼頃まで)・波田駅・新島々駅
- 無人駅:西松本駅・渚駅・信濃荒井駅・大庭駅・下新駅・北新・松本大学前駅・三溝駅・森口駅・下島駅・渕東駅
- 委託駅:大庭駅・下新駅・北新・松本大学前駅・森口駅(営業時間は駅によって違う。土日・祝日・年末年始は無人化)
[編集] 利用状況
[編集] 輸送実績
上高地線の近年の輸送実績を下表に記す。輸送量は1991年(平成3年)以降減少している。 表中、輸送人員の単位は万人。輸送人員は年度での値。表中、最高値を赤色の枠で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色の枠で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色の枠で囲んで表記している。
年 度 | 輸送実績(乗車人員):万人/年度 | 特 記 事 項 | |||
通勤定期 | 通学定期 | 定期外 | 合計 | ||
1975年(昭和50年) | 61.6 | 72.4 | 125.4 | 259.4 | |
1976年(昭和51年) | 60.1 | 75.8 | 115.0 | 250.9 | |
1977年(昭和52年) | 55.0 | 83.2 | 113.3 | 251.6 | |
1978年(昭和53年) | 53.6 | 90.3 | 118.2 | 262.2 | |
1979年(昭和54年) | 48.6 | 88.6 | 108.4 | 245.8 | |
1980年(昭和55年) | 51.3 | 91.2 | 105.1 | 247.8 | |
1981年(昭和56年) | 48.2 | 86.2 | 96.9 | 231.4 | |
1982年(昭和57年) | 47.7 | 80.7 | 89.5 | 217.9 | |
1983年(昭和58年) | 43.4 | 68.7 | 84.4 | 196.6 | 新島々~島々間が台風による土砂災害で不通となり休止 |
1984年(昭和59年) | 41.6 | 70.4 | 81.4 | 193.5 | 休止中の新島々~島々間が廃止 |
1985年(昭和60年) | 38.1 | 68.1 | 79.5 | 185.7 | |
1986年(昭和61年) | 36.7 | 67.5 | 77.5 | 181.7 | 架線電圧を1500Vに昇圧 ワンマン運転開始 |
1987年(昭和62年) | 33.9 | 66.7 | 72.8 | 173.4 | |
1988年(昭和63年) | 31.3 | 71.2 | 71.0 | 173.5 | |
1989年(平成元年) | 31.9 | 71.0 | 72.0 | 174.9 | |
1990年(平成2年) | 33.6 | 74.4 | 74.7 | 182.7 | |
1991年(平成3年) | 31.8 | 74.5 | 77.7 | 184.0 | |
1992年(平成4年) | 28.6 | 76.0 | 78.4 | 183.0 | |
1993年(平成5年) | 26.4 | 76.2 | 77.0 | 179.6 | |
1994年(平成6年) | 23.7 | 76.4 | 75.7 | 175.8 | |
1995年(平成7年) | 23.5 | 76.8 | 72.5 | 172.8 | |
1996年(平成8年) | 23.2 | 74.6 | 73.8 | 171.6 | |
1997年(平成9年) | 22.0 | 71.7 | 72.2 | 165.9 | |
1998年(平成10年) | 21.4 | 73.1 | 67.2 | 161.7 | |
1999年(平成11年) | 19.7 | 72.9 | 65.3 | 157.9 | |
2000年(平成12年) | 18.4 | 70.5 | 64.3 | 153.2 | |
2001年(平成13年) | 17.0 | 67.7 | 61.9 | 146.6 | 北新駅を北新・松本大学前駅に改称 |
2002年(平成14年) | 15.4 | 65.7 | 61.4 | 142.5 | |
2003年(平成15年) | 14.8 | 65.2 | 58.9 | 138.9 | |
2004年(平成16年) | 13.9 | 59.7 | 56.1 | 129.7 | |
2005年(平成17年) | |||||
2006年(平成18年) | |||||
2007年(平成19年) | |||||
2008年(平成20年) |
[編集] 収入実績
上高地線の近年の収入実績を下表に記す。旅客運賃収入は1992年(平成4年)以降減少している。運輸雑収については年度による変動が大きい。 表中、収入の単位は千円。数値は年度での値。表中、最高値を赤色の枠で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色の枠で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色の枠で囲んで表記している。
年 度 | 旅客運賃収入:千円/年度 | 運輸雑収 千円/年度 |
総合計 千円/年度 |
||||
通勤定期 | 通学定期 | 定期外 | 手小荷物 | 合 計 | |||
1975年(昭和50年) | 81,663 | ←←←← | 193,238 | 4,125 | 279,026 | 3,550 | 282,576 |
1976年(昭和51年) | 92,696 | ←←←← | 194,422 | 3,906 | 291,024 | 5,073 | 297,041 |
1977年(昭和52年) | 106,531 | ←←←← | 221,768 | 5,243 | 333,542 | 6,509 | 340,053 |
1978年(昭和53年) | 117,685 | ←←←← | 244,545 | 5,859 | 368,089 | 5,909 | 373,999 |
1979年(昭和54年) | 121,846 | ←←←← | 244,835 | 5,576 | 372,258 | 6,018 | 378,279 |
1980年(昭和55年) | 136,886 | ←←←← | 248,739 | 4,997 | 390,622 | 6,523 | 397,146 |
1981年(昭和56年) | 146,206 | ←←←← | 253,898 | 3,034 | 403,138 | 6,140 | 409,279 |
1982年(昭和57年) | 147,269 | ←←←← | 245,067 | 2,674 | 395,010 | 7,620 | 402,629 |
1983年(昭和58年) | 149,114 | ←←←← | 253,565 | 2,232 | 404,911 | 5,383 | 410,294 |
1984年(昭和59年) | 153,200 | ←←←← | 251,314 | 176 | 404,690 | 5,706 | 410,396 |
1985年(昭和60年) | 153,525 | ←←←← | 257,073 | 94 | 410,692 | 6,781 | 417,473 |
1986年(昭和61年) | 152,344 | ←←←← | 263,280 | 38 | 415,662 | 7,826 | 423,488 |
1987年(昭和62年) | 72,590 | 79,956 | 261,126 | 0 | 413,672 | 6,728 | 420,400 |
1988年(昭和63年) | 69,969 | 87,679 | 259,690 | 0 | 417,338 | 6,864 | 424,202 |
1989年(平成元年) | 73,522 | 92,452 | 273,473 | 0 | 439,447 | 5,390 | 444,837 |
1990年(平成2年) | 81,213 | 103,175 | 303,866 | 0 | 488,254 | 5,685 | 493,939 |
1991年(平成3年) | 79,060 | 110,606 | 325,887 | 0 | 515,553 | 6,041 | 521,594 |
1992年(平成4年) | 70,306 | 114,130 | 332,285 | 0 | 516,721 | 5,294 | 522,015 |
1993年(平成5年) | 62,732 | 113,840 | 312,863 | 0 | 489,435 | 4,332 | 493,767 |
1994年(平成6年) | 56,815 | 111,672 | 311,261 | 0 | 479,748 | 4,839 | 484,587 |
1995年(平成7年) | 57,508 | 112,144 | 299,179 | 0 | 468,831 | 4,804 | 473,635 |
1996年(平成8年) | 56,498 | 109,030 | 308,227 | 0 | 473,755 | 7,126 | 480,881 |
1997年(平成9年) | 53,839 | 101,994 | 295,216 | 0 | 451,049 | 5,126 | 456,175 |
1998年(平成10年) | 52,970 | 102,614 | 266,676 | 0 | 422,260 | 4,864 | 427,124 |
1999年(平成11年) | 48,158 | 102,745 | 258,093 | 0 | 408,996 | 5,798 | 414,794 |
2000年(平成12年) | 44,579 | 102,305 | 254,303 | 0 | 401,187 | 6,638 | 407,825 |
2001年(平成13年) | 40,648 | 96,443 | 246,391 | 0 | 383,482 | 3,641 | 387,123 |
2002年(平成14年) | 37,036 | 92,851 | 242,441 | 0 | 372,328 | 3,214 | 375,542 |
2003年(平成15年) | 36,779 | 96,899 | 243,306 | 0 | 376,984 | 2,403 | 379,387 |
2004年(平成16年) | 33,809 | 89,279 | 225,694 | 0 | 348,781 | 2,231 | 351,012 |
2005年(平成17年) | |||||||
2006年(平成18年) | |||||||
2007年(平成19年) | |||||||
2008年(平成20年) |
[編集] 施設
[編集] 軌道
[編集] 電路設備
- 架線は、シンプルカテナリー方式である。
- 電柱の木柱→コンクリート柱化工事が進行中である。
- 一部にはJR等にあるような可動ブラッケットが採用されている。
[編集] 変電
[編集] 信号・連動装置・CTC
- 常置信号機として、場内信号機、出発信号機、入換信号機等が設けられている。
- 信号機は、全区間において2位式(緑色:G、赤色:R)が採用されている。
- CTC(京三製作所製:RCH6型)が導入されており、各行き違い駅の信号制御が集中して行なわれている。
- 連動装置が、各列車行き違い駅等に設置されている。
- 松本駅では、電車がホームに入線すると西松本方面の出発信号機は青になり、この信号は電車が完全にホームから出発しなければ赤にならず停車中は青のままである。
[編集] ATS
- 全線にATSが導入されている。
[編集] 踏切
- 駅構内踏切を含め、53箇所の踏切がある。
- 上高地線の踏切警報機は電鐘式(昔ながらの『チンチン』や『コチンコチン』とか『デンデン』等の音を鳴らす)のものが多い。一部、警報音発生器(JRにあるような電子音)で鳴らしている場所もある。
- 信濃荒井駅・新村駅・波田駅では、駅構内に警報機があるが、遮断棒がないため警報機が鳴っている最中は待っていなければ危険である。森口駅は警報機がないが列車の信号機が赤のままなら渡れる。
[編集] 車両
[編集] 歴史
- 1919年(大正8年) 筑摩鉄道、松本~龍島間19kmの免許認可を受ける。
- 1921年(大正10年)1月 松本~森口を第一期線、森口~島々を第二期線として着工。
- 1921年(大正10年)10月2日 島々線 松本~新村間6.2kmが開業。
- 1922年(大正11年)5月3日 新村~波多(現在の波田)間4.9kmが開業。
- 1922年(大正11年)9月26日 波多~島々間4.6kmが開業。
- 1929年(昭和4年) 島々~龍島間の免許失効。
- 1955年(昭和30年)4月1日 島々線を上高地線に改称。
- 1956年(昭和31年)5月1日 波多駅を波田駅に改称。
- 1957年(昭和32年)11月1日 架線電圧を600Vから750Vに昇圧。
- 1966年(昭和41年)10月1日 赤松駅を新島々駅に改称。新島々駅にバスターミナル新設。島々駅は無人駅に。
- 1973年(昭和48年)12月1日 貨物営業廃止。
- 1983年(昭和58年)9月28日 新島々~島々間が台風による土砂災害で不通となり休止に。
- 1985年(昭和60年)1月1日 休止中の新島々~島々間が廃止。
- 1986年(昭和61年)12月20日 架線電圧を1500Vに昇圧。ワンマン運転開始。
- 1999年(平成11年)10月25日 ATS設置。
- 2002年(平成14年)2月2日 北新駅を北新・松本大学前駅に改称(松本大学開学のため)。
[編集] 駅一覧
[編集] 営業区間
松本駅 - 西松本駅 - 渚駅 - 信濃荒井駅 - 大庭駅 - 下新駅 - 北新・松本大学前駅 - 新村駅 - 三溝駅 - 森口駅 - 下島駅 - 波田駅 - 渕東駅 - 新島々駅
[編集] 廃止区間
新島々駅 - 島々駅
[編集] 未成区間
島々駅 - 大野田駅 - 龍島駅
[編集] 接続路線
[編集] 過去の接続路線
- 松本駅:松本電気鉄道浅間線 - 1964年4月1日廃止