列車集中制御装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
列車集中制御装置(れっしゃしゅうちゅうせいぎょそうち、通称CTC:Centralized Traffic Control)とは、鉄道において路線・一定区間の単位で信号や分岐器の連動装置を一か所で遠隔操作できるようにしたシステムをいう。また、このシステムの中央装置を設置した箇所は一般的にCTCセンターとよばれ、CTCセンターで実際に指令業務を行う職員のことを一般的にCTC指令員という。
目次 |
[編集] 概要
通常は、駅構内の分岐器や信号の操作は各停車場に設置された操作設備を駅長が操作を行う(これを「駅てこ扱い」という)。しかしこのシステムでは各駅に運転要員が必要になるうえ、コンピュータが未発達だったかつての運転指令所は、列車の運転状況は駅と電話連絡を行いながら把握するという、指令所と言いながら駅のバックアップを受けなければ指令業務が出来ないという状態だった。
本装置では、各駅の信号や分岐器の操作はCTCセンターにある中央装置から各駅に設置されたCTC装置を介して行うので、運転要員はCTCセンターのみに配置すればよく、旅客の安全さえ確保できれば各駅の運転要員を無配置化することが可能となる。また、列車の運転状況はCTCセンターに設置された制御装置の画面にリアルタイムで表示させているため、指令範囲内の列車の運行状況を迅速に把握することができる。しかしこの装置だけでは、各駅で行っていた信号や分岐器の操作が一箇所で可能になっただけであって、結局は本来判断作業に専念しなければならないCTC指令員が信号や分岐器の操作を行うことになる。よって実際の信号扱いは自動進路制御装置(PRC)や列車運行管理システム(PTC)によって自動化されている場合が多い。 本装置の短所としては、列車無線の整備、分岐器の自動化、CTCセンターや各駅への装置設置など導入の際には相当の費用がかかることである。しかし導入後の人員削減の効果などは大きく、全国の多くの鉄道事業者がCTCを導入している。また近年は列車無線の整備はせず、乗務員にCTCセンターとの連絡用に携帯電話を持たせ、これに代えている鉄道事業者もある。
技術概念としては比較的簡単なため、その歴史は意外と古く、1954年に名古屋鉄道において国内で最初に導入されており、国鉄においては1958年に伊東線に初めて導入された。 高速鉄道においては東海道・山陽新幹線に初めて採用されたが、現在でも安全や異常時対応のためプラットホーム上には監視員をおくことが義務づけられている。 しかし高速かつ高密度な輸送で知られる京浜急行電鉄は、あえて列車の集中運行管理は行わず、各駅の信号扱所での個別管理方式を取っている。同社独自のこだわりの一つでもある。また、システムの都合などでCTCに移行できず、駅てこ扱いを現在でも続けている鉄道事業者・路線もある。
なお、JRにおいての駅自動放送の放送体系は東海道型が採用されている場合が多数であるが、地方のCTC導入線区では、ダイヤの乱れなどが発生した場合にはCTCセンターにいるCTC指令員や路線を維持管轄する駅や事業所が各駅に設置された一斉放送設備を介して肉声放送する場合もある。
[編集] 導入例
日本ではかなりの割合の路線で採用されている。非自動閉塞方式から自動閉塞方式への更新とともにCTC化された路線も多い。私鉄や第三セクター鉄道においては、ほとんどの事業者がCTCを導入している。ここではJRにおいての例をいくつか述べる。
[編集] 現在使用中の主な路線
- 横浜線-電光掲示板はATOS型のものが使用されている(八王子駅など一部駅を除く)。CTCセンターは橋本駅[橋本指令]。
- 相模線-橋本駅~茅ヶ崎駅間。CTCセンターは橋本駅[相模指令]。
- 横須賀線-北鎌倉駅~久里浜駅間。CTCセンターは逗子駅。
- 京葉線-PRCを併用。
- 武蔵野線-PRCを併用。
- 八高線-八王子駅~高麗川駅間の南線区間。CTCセンターは拝島駅[八高指令]。
- 北陸本線
- 山陽本線-糸崎駅~下関駅間。1984年に使用開始。
- 加古川線-CTCセンターは厄神駅。
- JR西日本福知山支社、米子支社管内の全線。
- JR四国管内の全線。1991年11月にCTC移行完了。
- JR九州管内の全線。
[編集] 過去に使用されていた路線
- 埼京線-老朽化したPRCの更新措置として例外的にATOS導入計画路線に含まれ、2005年7月30日に使用停止された。PRCをいち早く導入した路線でもあり、開通当時は最先端のシステムを誇った。
- 南武線-指令所はATOS導入路線と同じ田端の指令であるが、当時は南武線のみATOSではなく、指令設備の近代化措置としてATOS導入計画路線に含まれ、2005年度中(2006年3月下旬)に置き換えられた。
カテゴリ: 鉄道関連のスタブ項目 | 鉄道の保安設備 | 鉄道運転業務