東武3000系電車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
3000系電車(とうぶ3000けいでんしゃ)は、東武鉄道に在籍していた吊り掛け駆動の通勤形電車である。1964年(昭和39年)から1975年(昭和50年)にかけて旧型電車の更新により製造された。
更新は電装部品・台車等を流用、車体のみ新造する形で行われ、合計236両が製造された。更新工事は津覇車輌が担当した。
当初は伊勢崎線・東上線などの本線系でも運用され、輸送力増強に貢献した。その後8000系の増備に伴い、野田線や小泉線などの支線に転属した。しかし老朽化し、冷房化も困難であるため、1987年(昭和62年)から廃車が始まり、1996年(平成8年)までに全車が営業運転を終了した。
目次 |
[編集] 諸元
1960年代、東武では1920年代から1950年代前半にかけて製造された様々な旧型車両が運用されていたが、アコモデーションの陳腐化・2ドア車と3ドア車の混在など様々な問題を抱えていた。そこで、仕様の統一・通勤車化による輸送力強化を目的として、旧型車両の更新が計画された。
3000系はベースとなった車両によって3系列に分けられるが、電動カム軸制御器・自動空気ブレーキを装備した車体長18m級の3扉ロングシート車である点は共通する。
台車はバリエーションに富み、多くは戦前・戦中までのイコライザー式(鉄道省式の形鋼組立台車枠ないし住友製鋼所製の鋳鋼台車枠)をローラーベアリング化したものだったが、1950年代初頭に製造された住友製のウイングバネ台車も少数あった。
新製された車体は、断面・高運転台の前面形状・内装等が1963年(昭和38年)登場の8000系に準ずるが、両開き扉を3か所に配した側面形状は、地下鉄乗り入れ用として1960年に登場した18m級の2000系の流れを汲む。
各系列ともMT比(電動車と付随車の比率)は1:1の2両ないし4両固定編成で製造された。3000系には後に組み替えにより6両固定編成も登場した。
[編集] 3000系
1964年から134両が製造された。改造の種車は「32系」と呼ばれた、イギリス・デッカー社製(および東洋電機製造によるライセンス)電装品を搭載した旧型車である。電動機出力97kW×4。弱め界磁が撤去され最高速度は80km/h程度しか出ないようになっていた。
前述の通り、登場時は伊勢崎・日光線や東上線にも配置されたが、1971年(昭和46年)には野田線に集中配置された。しかし、車両大形(20m級)化のため野田線に8000系・5000系が進出したことに伴い、1987年から廃車が始まり、1992年(平成4年)11月30日に全廃された。
一部が上毛電気鉄道に譲渡されて同社の300系となったが、350系(旧・東武3050系)に置き換えられて廃車された。
なお、前橋市内の幼稚園にモハ3505が現存する。
[編集] 3050系
1971年から68両が製造された。改造の種車は「54系」と呼ばれた、日立製作所製の電装品を搭載した旧型車である。運転台スペースなどが3000系より拡大された。電動機出力110kW×4。前出の3000系と併結は可能である。
主に野田線・伊勢崎線館林以北・佐野線・小泉線・桐生線で使用されたが、野田線では1992年までに営業運転を終了し、群馬地区でも1996年4月29日の小泉線でのさよなら運転を最後に営業運転を終了した。
一部が上毛電気鉄道に譲渡され、同社の350系となったが、1999年(平成11年)から700系(元・京王電鉄3000系)に置き換えられて廃車された。
[編集] 3070系
1975年から34両が製造された。改造の種車は戦前の日光特急車である5310系の後身である「53系」と、戦後に製造された元急行用の「58系」である。いずれも東洋電機製造製の電装品を搭載。電動機出力110kW×4。なお、前出の3000・3050系とは電装品の違いにより併結はできない。
更新当初は5000系を名乗ったが、1979年に7800系更新車に系列名を譲り、3070系に改称された。これにより18m級更新車は系列が3000代に揃えられた。
主に日光線・鬼怒川線・宇都宮線で使用された。一時期は野田線にも在籍していたが、1980年代前半頃に全車が新栃木検修区(現:南栗橋車両管理区新栃木出張所)に集中配置された。
1986年(昭和61年)の野岩鉄道会津鬼怒川線開業時には、祝賀列車に抜擢された。積雪地である鬼怒川線・野岩鉄道会津鬼怒川線での運用を配慮し、制輪子には最後まで鋳鉄が使用された。最終期には、2両編成のモハ3570形に霜取り用のパンタグラフと空転防止のための砂撒き装置が取り付けられた。
1996年4月27日に宇都宮線でのさよなら運転を最後に営業運転を終了したが、同時期に営業運転を終了した3050系と異なり、この系列は他社には譲渡されなかった。
[編集] 参考文献
- 花上嘉成「東武鉄道3000系ものがたり」
- 電気車研究会『鉄道ピクトリアル』1996年10月号 No.627 p97~p103
- 花上嘉成「東武鉄道3000系のアルバム」
- 電気車研究会『鉄道ピクトリアル』1996年10月号 No.627 p30~p31