建設業
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建設業(けんせつぎょう)とは、建設工事を請け負う営業のことをいい、日本においては、建設業法に規定する建設工事の種類にある工事の完成を請け負う営業をいう。
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[編集] 特記
特に注記がない場合、以降の記載はすべて日本の建設業についての記述である。
[編集] 許可制
- 建設工事の請負を営業とするには、原則として許可を受けなければならない。
- 発注者から直接建設工事を請け負う元請負人はもちろんのこと、下請負人の場合でも、請負として建設工事を施工する者は、個人・法人の区別なく許可を受ける必要がある。下請負人からさらに請負をする孫請(まごうけ)と呼ぶ2次下請、更に2次下請から次の下請に発注する3次下請の曾孫請(ひまごうけ)以下の場合も同様である。従業員がおらず事業主ひとりだけで作業を行う建設業者もあり、この場合は一人親方(ひとりおやかた)と呼ばれることがある。後述の軽微な工事の範囲を超えれば事業主一人の場合でも建設業許可が必要である。
- 建設業法では発注者から請け負った工事全てを下請業者に一括発注する、いわゆる丸投げは禁止されており、民間工事においては例外規定があるものの、請け負った工事を元請人の監督員等を常駐させずにそのまま下請けに出すことは法律違反である。少なくとも業を生業として営む請負人が発注者から技術力や工事経歴等を信頼されて発注を受けたのであれば、監理技術者や主任技術者を配置し技術的な管理責任を果たした上で、一部の工事を下請けに出すのが本来の姿である。
- 自社で施工能力もなく、各種資格者を有さずに、技術管理できないにもかかわらず工事を請け負う(あるいは、請け負える)ことは、トンネルあるいはペーパーと呼ぶ業者である可能性が大である。利益部分が暴力団の資金源であったり過度の政治献金の必要性が感じられ、経営の不透明や脱税として表われて社会問題になることがある。また、結果として高い費用で公共工事が発注されたとすれば、税金の適正な支出とはいえず監査請求の対象となることも考えられる。
- 談合行為、重大災害などを発生させた場合など、監督官庁による期間を定めての営業の停止・建設業許可を取り消す処分が課せられる場合がある。また、公共工事においては登録先の発注者による指名停止という形での処分もある。
- 許可不要の場合
- 軽微な建設工事のみを請け負って営業する者は、必ずしも許可を受けなくてもよい。軽微な工事とは、建築一式工事の場合には、その1件の工事請負代金の額が1,500万円未満(消費税含む)の工事、または延面積が150m2未満の木造住宅工事、建築一式工事以外の建設工事の場合には、その1件の工事の請負代金の額が500万円未満(消費税含む)の建設工事をいい、このような小規模工事のみを請負うには、必ずしも建設業許可を受ける必要はない。
- ※2003年頃から問題になっている、いわゆる住宅リフォームに関する問題は、ほとんどが建設業許可を受けていない業者が引き起こしている。
- また、下請業者に建設工事を発注する際にも、上記金額を超える請負契約を締結する場合、下請業者が建設業許可を有しているか否かの確認は発注する者にも責任は生ずるので注意が必要である。
許可を取ることで、毎年の決算の届出等が義務付けられるが、反面、法違反(無許可営業)とならないこと、また社会的信用が増すことや、経営事項審査を受け公共工事に参加できるというメリットの方が大きい。 建設業における許可申請、各種報告、届出事務については、行政官庁への手続事務の代行を主な業務にする行政書士に依頼するケースも少なくない。
建設業許可は5年更新制であり、有効期間が満了する前に更新の許可申請をする必要がある。直前の決算等において許可要件を満たしていないと、許可は下りない。
[編集] 許可の区分
- (1)「国土交通大臣許可」か「知事許可」か
- 「大臣許可」とは、2つ以上の都道府県の区域内に営業所(営業所とは、常時見積もり、契約締結、金銭の受領、支払等建設工事の請負契約に関する重要な業務を行う事務所)を設けるときにとらなくてはならない許可のこと。例えば、大阪に本店(主たる営業所)を置いて東京や福岡に支店(従たる営業所)を設けるような場合に必要となる。
- それに対して、「知事許可」とは、1つの都道府県の区域内にのみ営業所を設けるときにとる許可である。なお、「知事許可」であっても、営業所が同一都道府県に限るというだけで、営業エリアや施工エリアに制限はない。例えば大阪に営業所を置く大阪府知事の許可を受けている業者が、和歌山県での仕事を受注することも出来る。他府県に従たる営業所を置く場合は、現在有効な知事許可から、大臣許可への許可換え新規申請となる。
- (2)「特定」か「一般」か
- 「特定」とは、建設工事の最初の注文者(以下、「発注者」という)から直接請け負った建設工事について、一件あたりの合計額が3,000万円以上(但し、建築工事業に関しては4,500万円以上)となる下請契約を下請負人と締結して施工させるときに、とらなくてはならない許可のこと。外注先の下請け業者の保護を目的とする。一方、「一般」建設業者は、前述した外注総額を超えるような高額工事を受注することはできない。した場合は、外注金額を枠内に抑え、自家施工することになる。
- 「特定建設業」の申請を行うには、指定建設業の業種かそうでないかによって要件は違うが一般建設業に求められる資格要件よりは厳しいものとなっている。下請けへの支払い能力、営業所ごとに専任配置する技術者が要件を満たしていないと特定建設業許可は取れない。
従って、許可区分は、大臣特定、知事特定、大臣一般、知事一般の4種類となる。ひとつの業者が、「大臣」と「知事」もしくは複数の「知事」許可を同時に、あるいはある業種の許可を「一般」と「特定」を同時に取得することはない。ただし、業種が違えば、ある業種は特定、ある業種は一般で許可を取る場合はある。
許可年度を加えて、「特定建設業 建築工事業 国土交通大臣許可(特定-17)第○○○○号」などと表記される。これを明示した許可票を営業所および工事現場の見やすい場所に掲げなければならない。この許可票を通称「金看板」と呼ぶ。許可年度が5年以上前の広告や許可票を散見するが、この場合、更新したのか確認することも重要である。
[編集] 許可の要件
[編集] 一般建設業
- 一般の許可を受けるには次の要件を満たさなければならない。
- 経営業務の管理責任者がいること
- 営業所ごとに専任の技術者がいること(専任技術者)
- 建設工事の請負契約に関して誠実性のあること
- 財産的基礎、金銭的信用のあること
- 許可を受けようとする者が一定の欠格要件に該当しないこと
このうち、1管理責任者、2専任技術者に関しては「名義借り」でなく、本当の社員・役員や事業主であることが必須であり、これらの資格持っているものがいないのに許可を取ることはできない。許可取得時だけでなく永続的に必要であり、退職したり資格を失った場合は有資格者を補充するか、さもなくば、建設業許可を維持することはできなくなる。
[編集] 特定建設業
- 特定の許可は一般建設業の要件を満たすと共に、さらに2.の専任技術者、4.の財産的基礎に厳しい条件を定めている。
[編集] 指定建設業
- 下の業種一覧で青地の(指定)とした7業種、すなわち、土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、ほ装工事業、造園工事業の業種の特定建設業の許可を受けようとするときは、2.の専任技術者は実務経験では認められず、一定の国家資格(1級施工管理技士などの資格)相当以上を所持している事が必要となる。
[編集] 建設工事の業種一覧
建設業法上の許可には28種類の業種がある。例えばダクト工事は管工事業に含まれるなど、工事内容の例示もある。大分県による工事内容例示(外部リンクPDF)
略号 | 建設工事の種類 | 建設業の種類 |
---|---|---|
(土) | 土木一式工事 | 土木工事業(指定) |
(建) | 建築一式工事 | 建築工事業(指定) |
(大) | 大工工事 | 大工工事業 |
(左) | 左官工事 | 左官工事業 |
(と) | とび・土工・コンクリート工事 | とび・土工工事業 |
(石) | 石工事 | 石工事業 |
(屋) | 屋根工事 | 屋根工事業 |
(電) | 電気工事 | 電気工事業(指定) |
(管) | 管工事 | 管工事業(指定) |
(タ) | タイル・れんが・ブロツク工事 | タイル・れんが・ブロツク工事業 |
(鋼) | 鋼構造物工事 | 鋼構造物工事業(指定) |
(筋) | 鉄筋工事 | 鉄筋工事業 |
(ほ) | ほ装工事 | ほ装工事業(指定) (舗装工事のこと、法律では「ほ装」と表記) |
(しゅ) | しゆんせつ工事 | しゆんせつ工事業 (浚渫工事のこと、法律では「しゆんせつ」と表記) |
(板) | 板金工事 | 板金工事業 |
(ガ) | ガラス工事 | ガラス工事業 |
(塗) | 塗装工事 | 塗装工事業 |
(防) | 防水工事 | 防水工事業 |
(内) | 内装仕上工事 | 内装仕上工事業 |
(機) | 機械器具設置工事 | 機械器具設置工事業 |
(絶) | 熱絶縁工事 | 熱絶縁工事業 |
(通) | 電気通信工事 | 電気通信工事業 |
(園) | 造園工事 | 造園工事業(指定) |
(井) | さく井工事 | さく井工事業 |
(具) | 建具工事 | 建具工事業 |
(水) | 水道施設工事 | 水道施設工事業 |
(消) | 消防施設工事 | 消防施設工事業 |
(清) | 清掃施設工事 | 清掃施設工事業 |
[編集] 労働問題
法人個人を問わず、工事を請け負う実態であっても、請負契約でなければ建設業ではないので、工事内容にあわせて人数を計算し、単価かける日数で労働力を提供するのであるなら、一般的な雇用契約(従業員としての労働)、あるいは人材派遣が適用されるため、建設業の範囲からは外れ、建設業許可の対象外となる。この場合、雇用保険や厚生年金、健康保険は元の業者の従業員としての加入が必要である。
ただし、工事中における事故等で対象となる労働災害に代表される労働保険などでは、偽装的な人材派遣にあっては万一の場合に保険が適用できないなどの問題が多く、山谷・あいりん地区・寿町地区等に代表される、いわゆる「ヤマ」や「寄せ場」に集まる日雇い労働者の雇用では社会問題に発展する場合がある。仮に雇用契約が存在するとしても、日雇い労働者は「日々雇用されるもの」という区分があり、労働条件の明示もなく雇用されている実態がある。保険が適用されるような重大事故となると問題が起きることがある。
建設の事業においては、事業開始をもって労災保険関係が成立する。建設の事業においては労働保険の保険料を、元請負人において一括して申告納付することが義務付けられており(一定の要件を満たせば、手続きにより下請負人に保険関係を分割することが出来る)、事業所には労災保健関係成立票を見やすい場所に掲げることも法律により定められているので、上記の問題は「労災隠し」として厳正に処罰されることに留意されたい。
[編集] 不動産業との関連
建設業を営む企業の多くは、自ら建売住宅や分譲マンションなどを建設して販売することも多い。この場合、宅地建物取引業(不動産業)の免許も必要になる。また、系列グループに不動産会社を有することも多い。
[編集] 法律
建設業法 法令データ提供システム 総務省 行政管理局