経営事項審査
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経営事項審査(けいえいじこうしんさ)とは、日本の建設業において、公共工事の入札に参加する建設業者の企業規模・経営状況などの客観事項を数値化した、建設業法に規定する審査。略して経審(けいしん)とも呼ばれる。
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[編集] 概要
- 建設業法の定めにより、公共工事を受注したい建設業者はこの経営事項審査を受けることが義務づけられている。審査基準日(通常は決算日)より1年7ヶ月有効なので毎年受ける必要がある。また有効期間内に審査事項が変更になった場合、再審査を受けないと不利益を被ることがある。
- この経審点数をもって、入札ランクを決定する官庁・地方自治体がほとんどである。
- 審査庁(国土交通大臣または都道府県知事)が定めた添付書類(裏付け資料)をもとに審査され、ペーパーカンパニーや暴力団関連の建設業者いわゆる不良不適格業者を排除する仕組みを取り入れている。
- 審査は審査基準日における下記に列挙する項目を評価する。審査を申請する日に審査事項が改善していても、審査基準日においての状況で判断する。
[編集] 審査項目
総合評定値=P点を一定の計算式によって申請業種ごとに出す。計算式と要素は下記の通り。
- P=
- 年間平均完成工事高評点 (X1)
- 申請業種ごとに算出。2年平均(激変緩和措置により3年平均を選択することも可)。ある一定の完工高範囲ごとに比例して加点。大きいほうがよい、が、赤字受注は自分の首を絞めることになり(Y)点に悪影響になる。一括下請けは建設業法違反(ただし民間工事においては例外規定あり)であるので、監理技術者・主任技術者を工事現場に配置させた上で、自ら施工するか一部を下請けに出すことで工事を進めなければならない。工事規模により配置技術者の常駐・専任義務が伴うので、技術職員数に応じた完成工事高しか上がらないのが普通である。完工高の裏付けの一つとして経審用の工事経歴書を添付する。一括で元請の場合、材料費や空調機エレベーターなどの機器類の代金も完成工事高に含まれるので一括で元請するほうが完成工事高が高い傾向になる。労務のみを提供する建設業者は、材料ともで受注するより金額が少ないのが普通である。この材料を元請が有償支給した場合、下請け業者の見た目の完成工事高が多くなる(ただし、利益率は低くなる)
- 自己資本額および職員数評点 (X2)
- 総年間平均完成工事高と比較して自己資本は大きいほうがよい、建設業従事職員数も多いほうがよい。上記X1を補完する関係にあるが、寄与率は低い。利益・完成工事高に比較して多すぎるのは生産性が低いとされる。増資するとか、職員を増やせばよいが、給料経費が増えるので、利益を圧迫し(Y)点に影響する。
- 技術職員数評点 (Z)
- 経営状況評点 (Y)
項目 | 指標名 | 加点要素 | 減点要素 | 意味 | 対策 |
---|---|---|---|---|---|
収益性 |
売上高営業利益率(x1) | 営業利益 | 売上高 | 売上げに対する収益 |
コスト削減 |
総資本経常利益率(x2) | 経常利益 | 総資本 | 投下した総資本からどのくらい利益を上げたか | ||
キャッシュフロー対売上高比率(x3) | 当期利益、法人税等調整額、当期減価償却実施額、引当金増加額 | 売上高、株主配当、役員賞与 | 売上げに対する正味運転資金 | ||
流動性 |
必要運転資金月商倍率(x4) | 売上高、支払手形、工事未払い金、買掛金、未成工事受入金 | 受取手形、完成工事未収入金、売掛金、未成工事支出金 | 要資金繰り状況(低い方がよい) |
工事代金・売掛金の早期回収 |
立替工事高比率(x5) | 売上高、未成工事受入金 | 受取手形、完成工事未収入金、売掛金 | 工事代金の立替状況(低い方がよい) | ||
受取勘定月商倍率(x6) | 売上高 | 受取手形、完成工事未収入金、売掛金 | 資金回収期間(短い方がよい) | ||
安定性 |
自己資本比率(x7) | 自己資本(増資、純利益確保など) | 総資本、利益配当・役員賞与金など社外流出分 | 自己資本の充実具合 | 自己資本の充実 |
有利子負債月商倍率(x8) | 売上高 | 短期借入金、長期借入金、社債、受取手形割引高等 | 有利子負債(低い方がよい) |
有利子負債の削減 |
|
純支払利息比率(x9) | 売上高、受取利息配当金 | 支払利息 | 売上げに対する支払利息(低い方がよい) | ||
健全性 |
自己資本対固定資本比率(x10) | 自己資本 | 固定資産 | 固定資産を自己資本で調達しているか |
遊休固定資産の整理 |
長期固定適合比率(x11) | 自己資本、固定負債 | 固定資産 | 固定資産を流動資産で調達していないか | ||
付加価値対固定資産比率(x12) | 売上高 | 固定資産、材料費、労務外注費、外注費 | 設備投資からどのくらい付加価値を生み出したか |
- その他の審査項目(社会性等)評点 (W)
[編集] 公表
審査を受け結果の出た建設業者すべての経営事項審査点数は、公開されている。 財団法人建設業情報管理センター
-
- 検索するには、建設業社名(会社の場合、株式が前か後ろかも必要。個人の場合屋号の場合もある)あるいは、大臣・知事許可の区別、許可番号などが必要。建設業でない兼業部分は公開対象でないが、同じ会社であれば財務内容などは公開されてしまうことになる。
[編集] 点数アップ
建設業者は点数が上がれば、受注ランクが上がるのを目指して、技術職員を多数抱えたり、完成工事高を増やすことを目論むが、無駄な経費や、無理な受注は利益を圧迫するので、良くバランスの取れた会社でないと点数が上がらない仕組みになっている。これが、トンネル会社の排除につながり、技術力のない会社の排除となっている。
[編集] 経緯
- 1949年 建設業法施行
- 1950年 経審の前身ともいうべき「工事施工能力審査」が主要発注機関によって行われる
- 1961年 建設業法改正により「経営に関する客観的事項の審査」が法制化
- 1962年 法制化をうけ総合数値の算出方法の変更
- 1973年 名称を「経営事項審査」に改める
- 1980年 年間平均完工高の細分化
- 1988年
- 現在のXYZの設定
- 建設業情報管理センターをY点の分析機関に指定
- 1994年
- 審査項目Wの追加
- 係数の変更
- 受審の義務化
- 1996年 Wのうち、工事安全成績の変更
- 1998年
- 激変緩和措置導入
- X1,Zの引き下げ
- Yの引き上げ
- 結果の公表
- 1999年 Y全面改正(12指標中9指標を入替)
- 2002年
- X1引き上げ
- Wに企業年金制度の追加
- 2003年 X1線形式化
- 2004年
- Y分析機関の民間開放(登録制へ)
- P点を総合評定値に改め、算出の任意化
- 申請様式の変更(A4サイズ)