大衆

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大衆（たいしゅう）とは、社会を占める「大多数の・大勢を占める」とされる人々、またはそれに属する個人を指す言葉である。類義語には民衆（みんしゅう・主に政治用語）や市民があり、揶揄を含んで否定的な意味合いの強い群衆(ぐんしゅう)、さらには烏合の衆（うごう-の-しゅう）などがある。また国家という単位に於いては、国民も同語に類される。

なお「多くの僧」を意味する場合もある。

[編集] 概要

多くの場合では、単なる「社会の大多数を占める大勢の人々」といった程度の意味で用いられる。

これに属すると考えられる人々は、しばしば没個性的である事をもって、同種の他人と混同されやすい存在であるとみなされている。ただ実際には「突出した能力」や「傑出した容姿」、または「類稀なる才能」、場合によっては「不快極まりない悪癖」や「言語道断なる害意」を、「たまたま持ち合わせていない」存在であるとも云えよう。

しばしば何等かの存在を際立たせるために対義語として同語は使用されるが、その実に於いてこれほど曖昧な未定義の存在もない。実際には未定義で在る事を持って大衆に類されているケースも見られる。その一方で、己の優位性を喧伝するために、他を貶める意図で用いられるケースが見られる事から、しばしばネガティブな意味を持つ語と認識される場合もある。

[編集] 主役としての大衆

社会の変革において、大衆は常にその圧倒的な数をもって主役となる。所謂“大勢”とされる存在である。

この大衆主導による社会変革には、往々にして切っ掛けとなる事象が存在するが、その一方で切っ掛けは単なる実史上の目印に過ぎない場合もあり、あくまでも主体は大衆に在るケースも見られる。今まで制限されていた何等かの事象が、その制限が無くなった事で一斉にその方向へと変化する傾向は、歴史上に於いて数多く見出される。

これらの例は関連項目にあるそれぞれの記事を参照されたし。

[編集] 対比する対象

対比させる対象としては、知識階級や権力階級、または生産者に対する消費者と言った意味合いで同語が用いられる。

実社会においては、そのいずれもに属する人があるのは否めないが、全ての対比に於いて「大衆」に類される人があるかは疑問である。

[編集] 知識人

知識人（もしくはインテリゲンチャ）の対義語として扱われる場合には、知識の過程に参加せず、つまり日常生活の範囲でしか思考しない（と少なくとも知識人側が見なす）圧倒的多数派を指す。

大衆は、もともと政治や哲学・文学には関心がない。しかし、生活に不満を持ったときのみ爆発的なエネルギーを示す。そうして、生活に不満がなくなれば、政治の場を去り、生活の場に戻って行く。日本では60年安保闘争のあと、主役になった大衆は街頭から消え、知識を振りかざす活動家だけが残った。

活動家は、ときとして「大衆は愚かだ」と述べる（大衆蔑視）。

[編集] 権力

権力を対比させる対象に据えた場合、大衆は権力の影響を被る側である。この場合に於いて、個々の大衆は常に無力な存在である。

なお民主主義社会に於いては、大衆こそが権力を持っているという建前だが、実質的に大衆には必ずしも適切な施政者を選択する能力が求められない・持たないという事も在って、結果的に施政者に権力が集中して大衆はその恩恵を被るか、若しくは不適切な施政者によって搾取されやすい。

この場合に於いて、大衆はしばしば納税者と同義であるが、より受動的に納税を強要される存在となり、税金は社会維持への対価というよりも、単なる搾取と受け止められがちである。他方、施政者もそのような状況下では、税金を大衆から社会維持のために預かった金銭であるという認識を欠く事と成り、無駄遣いや私費との混同を招き易いと言えよう。

専制政治が行われている地域では、大衆は施政者を選ぶ事は出来ない。だが納税という形を通して間接的に政治に関与する事ができる（良くない政治の元では生活が苦しいために多くの納税が出来ず、良い政治の元では活発に利益を上げられるため多くの納税ができる）訳だが、場合によっては施政者が無能であるばかりに、大衆がその不利益を被るケースも発生、社会不満が増大するケースも見られる。

増大した施政者への社会不満はしばしば個人のテロ行為や、一定集団による暴動という形で爆発するが、多くの場合には権力の元に個々の大衆は無力であるため、すぐさま検挙されたり鎮圧される。ただしあまりに社会不満が大きく普遍的過ぎる場合には、この暴動が権力側の手に余る事態に発展する。特に検挙する側の警察機構や、鎮圧すべき軍部が同じ社会不満を抱いている場合には、大衆の動きに呼応して、一緒になって施政者を弾圧する。このような革命ともなると、もはや権力者は大衆の力の前に成す術も無く打ち倒される。

同じ目的意識を持って活動する場合に於いて、大衆は無力ではない。民主主義社会では、暴動や革命といった暴力的な行為に拠らないでも、選挙という形で直接的または間接的に施政者を選択する事ができ、更には自ら施政者となるために立候補する事も可能である。

[編集] 生産者

生産者は消費者が求める物を生産する事が求められる。生物界では生産者は消費者よりも多数派であるが、人間社会に於いては生産者（メーカー・企業）は消費者に対して少数派である。この人間社会の生産者に対する消費者が、所謂大衆である。

大衆は常に、安価な良い物（製品）を求めるとされており、メーカーや企業は常にそのニーズに呼応する形で商品を提供、その代価を受け取ってきた。しかし一部には、粗悪な製品を安価で販売する事で、代価を受け取る企業もある。粗悪な製品であっても、それに求められる代価が適正である場合は、大衆は然程問題としない。

しかし中には一見して粗悪な製品に見えないものを高値で売りつける所もあり、これは粗悪品または不良品として問題視される。往々にして大衆は自分の購入したいと思う製品に対して、その仕組みや良し悪しまでもを熟知している事は稀（ブラックボックス）である。このため製品を利用するまでは、それに含まれる問題点や欠陥を消費者である大衆が見抜く事は難しいが、実際に使用して行く中で、支払った対価程の利便性が得られない・または何等かの損害を被るというケースも発生する。

大衆は（生産者と比較すると）無知であるために、不適切な製品を製造・販売する生産者に騙され易い。しかし騙されると、それに関連する商品にまで不信感を抱くため、他商品の売り上げにまで風評被害が波及する事もある。このため多くの社会では、消費者である大衆を保護すると共に、それに損害を与えかねない生産者は罰せられる。日本ではこの役割を国民生活センターが担っており、他の地域でも往々にして、これに類する消費者保護団体が存在する。

この場合、大衆は無知であるが故に保護されると共に、その保護を受ける事で生産者に一定の発言権を持つといえる。また大衆が求めない商品を作っても売れないだけなので、生産するメーカーや企業は、常に消費者である大衆の嗜好を知りたいと考えている。