国際司法裁判所
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国際司法裁判所(こくさいしほうさいばんしょ、英:International Court of Justice、略称:ICJ、仏:Cour internationale de Justice)は、国際連合の主要な常設国際司法機関である。その役割は国家間の法律的紛争を裁判によって解決し、または法律的問題に意見を与えることである。国際法における権威であり、その法律的意見は国際法に多大な影響を与える。
なお、大量虐殺や人道に反する罪、戦争犯罪を犯した個人を裁く国際刑事裁判所(ICC、2003年3月発足)とは別の裁判所である。
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[編集] 概要
1946年、国際司法裁判所規程(1945年発効)に基づいて、国連の主要な司法機関として(規程1条)設立された。裁判所は原則として常に開廷されることが宣言されており(規程23条)、常設性が明言されている。
当事者となりうるのは国家のみであり(規程34条)、個人や法人はいかに強力であっても当事者とはなりえない。国際司法裁判所規程は国連憲章と不可分の一体であるため、国連加盟国は当然に当事国である。国連非加盟国も、安全保障理事会の勧告のもと国連総会でなされる決議によって当事国となることができる。
国際司法裁判所は、当事者たる国家により付託された国家間の紛争について裁判を行い、判決・命令をする権限を持つ。一審制で上訴は許されない。判決を覆す効果があるのは、再審による場合のみである。なお、判決の意義・範囲に争いがある場合にのみ当事国は解釈を求めることができる。また、国連総会および特定の国連付属機関が法的意見を求めた場合に勧告的意見(かんこくてきいけん)を出すことができる。
[編集] 国際裁判
国家裁判は、原則として両当事国の同意による付託のみによって開始される。国家間には国民に対する国家のような統一権力機構が存在しないため、国家の意思によらなければならないためである。ただし、選択条項受諾宣言(規程36条2項)をすることで、裁判への応訴を義務とすることができる。宣言をしている国家は、相手国がその国を訴えた場合には、国内裁判のように応訴せねばならない。
裁判が裁判所に係属した後は、判決や命令が出された場合には当事国を法的に拘束する。この場合、当事国のみを特定の事件においてのみ拘束する。ただし、その解釈は法的に高い権威を持って受け止められる。
判決の履行については、統一権力機構がないため、国内における強制施行のように、直接判決を執行する機関はない。
裁判の開始・判決後の履行については、このようなシステムを取らざるを得ないことから、実効性に問題がある。「問題点」の節を参照。
[編集] 裁判の準則
[編集] 勧告的意見
勧告的意見は、国連総会および特定の国連付属機関が法律的問題に対する解釈の意見を求めた場合に裁判所が示す法律的解釈である。判決は日本の国内裁判所もなす権限であるのに対し、勧告的意見は日本の国内裁判所にはない権限である。
法律的問題を直接解決するものではないため、勧告的意見によって示された解釈が直接に国際法となり法的な拘束力を有して国家を拘束するわけではないが、国際的に権威のあるものとして受け止められる。これが履行され、慣習国際法の要件を満たした場合には、慣習国際法としての法的拘束力を有する可能性もある。また、国連および付属機関においては行動の指針となる。
[編集] 機構
オランダのハーグに本部を置く。本部はオランダ政府より提供された宮殿を使用しており、その宮殿は「平和宮(Vredespareis)」と呼ばれる。
裁判官は、国籍の違う9年任期の裁判官15人で構成される(規程3条)。徳望が高く、かつ各国で最高の裁判官に任ぜられるのに必要な資格を有する者もしくは国際法に有能で名のある法律家の中から、各国が候補者を指名し、選挙によって選ばれる(規程2条)。選挙は候補者の名簿から国連総会および安全保障理事会でそれぞれ別個に選挙して行い、裁判官には双方で絶対多数を得た者が選ばれる(規程8条ほか)。
裁判官は、裁判所の事務に従事する間は、外交官としての特権免除が認められる。(外交関係に関するウィーン条約参照)
[編集] 問題点
[編集] 裁判開始の問題
武力紛争を防止することが期待されているが、開廷には当事国双方の同意が必要なこともあり、なかなか付託に結びつかない例も少なくないのも現実である。選択条項受諾宣言も、平和のために宣言がなされることが望ましいとされるものの、その負担から宣言をする国は少なく、国連加盟国の約3割に留まる。特に安全保障理事会常任理事国においてはイギリスのみしか宣言を行っていない(アメリカは当初宣言をしていたが、ニカラグア事件の敗訴により撤回した)。また、宣言をする国においても、時間的・事件的な留保が多く、特に直ちに撤回できると宣言する国が多く、宣言の意味を損なうものも多い。
- ただし、出訴された後に撤回しても訴訟が係属した以上は判決の効力が及ぶ。この場合は欠席裁判により欠席側に不利になるが、このような場合は敗訴しても履行を任意にすることは期待できない。これについては、次の節を参照。
[編集] 判決が出た後の履行の問題
もっとも、判決に従わない当事国に対しては、一方当事国が安全保障理事会に提訴することができ、その場合に安全保障理事会は勧告その他とるべき措置を決定することができる(国連憲章94条2項)。これが、強制力を担保する唯一の手段である。
国内裁判所においては、国家が強制執行するなど、国家権力により履行を直接強制する手段がある。しかし、統一権力機構がないために直接履行を強制する執行機関がない。したがって、執行力を持たないのが国際司法裁判所の判決であり、判決は尊重されよく履行されてはいるものの、しばしば判決が無視される事態が発生し裁判所の権威を傷つけている(ニカラグア事件のアメリカ、在イランアメリカ大使館占拠事件のイランなど)。
特に、拒否権を行使できる常任理事国や常任理事国の密接な同盟国に対しては安全保障理事会の勧告すらなされないので、実質的に判決の強制力はないといえる。
現状においては、各国が裁判所の権威と意見を尊重し、理性的に自ら履行することが望まれる。
[編集] 国際裁判の歴史
- 常設仲裁裁判所(ハーグ平和会議)
- 常設国際司法裁判所(国際連盟)
[編集] 裁判官
[編集] 過去の裁判官
[編集] 現在の裁判官
- ロザリン・ヒギンス(Rosalyn Higgins、イギリス、所長)
- アウン・シャウカット・アル=ハサウネ(Awn Shawkat Al-Khasawneh、ヨルダン、副所長)
- レイモンド・ランジェヴァ(Raymond Ranjeva、、マダガスカル)
- 史久鏞(Shi Jiuyong、中華人民共和国)
- アブドゥル・G・コロマ(Abdul G. Koroma、シエラ・レオネ)
- ゴンザロ・パラ=アラングレン(Gonzalo Parra-Aranguren、ベネズエラ)
- トーマス・バーゲンソール(Thomas Buergenthal、アメリカ合衆国)
- 小和田恆(Hisashi Owada、日本)
- ブルーノ・シンマ(Bruno Simma、ドイツ)
- ペーテル・トムカ(Peter Tomka、スロヴァキア)
- ロニー・アブラハム(Ronny Abraham、フランス)
- ケニス・キース(Kenneth Keith、ニュージーランド)
- ベルナルド・セプルベダ・アモール(Bernardo Sepúlveda Amor、メキシコ)
- モハメッド・ベヌーナ(Mohamed Bennouna、モロッコ)
- レオニド・スコトニコフ(Leonid Skotnikov、ロシア連邦)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
国 際 連 合 | ||
国連機関 総会 安全保障理事会 経済社会理事会 信託統治理事会 事務局(事務総長) 国際司法裁判所 |
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国連決議 総会決議 安全保障理事会決議 |
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国際連合憲章 加盟国 オブザーバー |
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