拒否権
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拒否権(きょひけん)とは、ある事柄について拒否する権利を言う。この意味での用例としては供述拒否権がある。
政治の世界で拒否権と言う場合には、さらに意味が限定され、政策決定の際に、決議された法律、提案された決議、締結された条約その他を一方的に拒否できる特権を意味することが多い。
拒否権は、共和政ローマ時代に護民官が保持していた権限(ラテン語 veto)に由来する。ローマ帝国が成立すると、拒否権は皇帝の特権となった。
ヨーロッパの多くの言語では、ラテン語のvetoの綴りをもって拒否権をあらわす。
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[編集] 国連安全保障理事会における拒否権
国際連合の国連安全保障理事会では、実質事項について決議が有効となるには、理事国15ヶ国のうち、常任理事国全てを含む過半数の賛成を要する。大国の反対により理事会決定の実効性が失われることを防ぐ事(大国一致の原則)を趣旨とするものであるが、逆に常任理事国一国の反対で理事会において決議案が否決される事も多々あるため、大国のエゴ(同盟国擁護の為のものを含む)を通すためだけの規定との批判もある。2006年4月現在アメリカ合衆国、イギリス、中国、フランス、ロシアの5ヶ国に与えられている。冷戦期にはアメリカ・ソ連がたびたび拒否権を行使し、国際政治の停滞を招いたとの批判も根強い
[編集] 常任理事国の拒否権発動回数(2006年11月現在)
常任理事国 | 回数 |
---|---|
ソ連・ロシア | 122回(ロシアとしては2回) |
アメリカ | 82回(うち、対イスラエル非難決議に対しては37回) |
イギリス | 32回 |
フランス | 18回 |
中華民國・中国 | 5回(中国としては4回) |
[編集] 古代ローマの拒否権
古代ローマの政務官は護民官に限定されず全ての政務官が拒否権を保有していた。基本的に複数人制の各政務官は同僚の決定に対して拒否権を行使することができ、上位の政務官は下位の政務官の決定を拒否することもできた。同僚を持たない独裁官は下位の全ての政務官に拒否権を使用できる強力な官職であり、それゆえ半年と任期が制限されていた。護民官はその設立経緯からも特殊な官職であり独裁官を除く全ての政務官に拒否権を行使することが可能であった。それだけではなく護民官の主要任務はこうした拒否権を使用した「否定」の作用でありそれゆえ拒否権は護民官の名と共に語られることが多い。クァエストルは最も下位の官職であり他の政務官への拒否権は持たなかった。
[編集] 米国大統領の拒否権
- ※アメリカ合衆国の政治およびアメリカ合衆国大統領も参照のこと。
アメリカ合衆国(米国)大統領には、議会から送付されてきた法案に署名を拒否する権利がアメリカ合衆国憲法によって認められている。しかし議会は再度3分の2の特別多数決により大統領の拒否権を覆すことができる。
史上最も多くの拒否権を行使したのはフランクリン・ルーズベルトで635回行使している。反対に最も少ないのはトーマス・ジェファーソンで2期8年の任期中一度も行使しなかった。現職のジョージ・ウォーカー・ブッシュも2006年3月23日現在、拒否権を行使したことはなく、歴代2位の記録を持っている。
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