可変戦闘機 (マクロスシリーズ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
可変戦闘機(かへんせんとうき、Variable Fighter : VF)はSFアニメ『超時空要塞マクロス』および関連作品(マクロスシリーズ)に登場する架空の兵器の分類のひとつ。三段階の変形機構を有する機動兵器群を指す。
代表的な機体VF-1の愛称にちなみ、作中ではその他も総称として「バルキリー」と呼ばれることが多い。「○○バルキリー」という別名で呼ばれる場合もある。
目次 |
[編集] 概要
可変戦闘機はリアルロボットアニメ史上初の本格的な完全変形ロボットである。米軍で使用されるF-14 トムキャットに酷似した、極めて現実的なデザインの戦闘機が一瞬にして複雑に変形、人型になるという今までに無かった驚異のメカニック設定で、後の変形リアルロボットすべてに影響を与え、1980年代アニメに変形ロボが乱立した原因となった。番組の制作発表当初、アニメ誌ではファイター形態とバトロイド形態が変形する設定を伏せて掲載され、放送直前に中間形態であるガウォークが公表され、これが可変メカであることを知ったアニメファンを驚かせた。
戦闘シーンでは無数のミサイルが乱舞する中、「板野サーカス」という俗称がつくほど激しく空間を飛び回る演出が評判となり、後のSFアニメの演出に多大な影響を与えた。
後にマクロスがシリーズ化していく中、F-117ステルス攻撃機に酷似した物や、YF-23試作戦闘機、Su-27戦闘機などに似たシルエットを持つ物など、現実世界の航空機開発史を反映したようなバトロイドが随時登場し、バリエーションを増やしていく。しかし「マクロスプラス」のYF-19エクスカリバーに限っては、現実世界での類似形であるSu-47(S-37)の公表より先にデザインされている。
なお「VF-1バルキリー」は、スポンサーであったタカトクトイスの倒産などの諸々の複雑な理由で、名称を変更して「THE TRANSFORMERS」という米国製スーパーロボットアニメのサイバトロン戦士ジェットファイヤー(日本名:スカイファイアー)として出演している。(この時、アメリカでの玩具安全基準に従って、尖った機首が丸く金型修正されてしまう。)そして、これによって日本語版「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー」の放映に問題が発生することとなる。
[編集] 解説
可変戦闘機は異星人の超科学技術(オーバー・テクノロジー)を応用して、航空機の機動力・展開力とロボット兵器の格闘能力を兼ね備えるべく開発された機動兵器である。戦術戦闘手段として以下の3形態間を数秒内に高速変形する。
- ファイター(Fighter)
- 戦闘機形態。
- ガウォーク(Gerwalk)
- 中間形態。
- バトロイド(Battroid)
- 人型ロボット形態。
パイロットは任意で3形態間を高速変形し、地上から空中(宇宙)まで全領域で作戦行動をとることができる。
[編集] 開発と運用
可変戦闘機は地球統合軍の主力兵器、或いは異星人の謎の兵器として様々なバリエーションの機体が存在する。偶然の発見や見込み違い、現場(実戦)の要請や政治的背景など、幾多の要因により独自の進化系統を成している。
(注)以下の記事中の年月は作中における架空の表記である。
[編集] 誕生期 (西暦2001~2008年)
1999年、地球に墜落した異星人の戦艦(後のSDF-1マクロス)から得られたオーバー・テクノロジーにより、巨大異星人との格闘戦用巨大歩行兵器の研究が始まった。ロボット研究で実績のある陸軍は、陸戦兵器をベースに重装型のデストロイド開発を提案。これに対し、海軍・空軍・海兵隊は航空機とロボットを融合させた、機動力・展開力に優れる全領域可変戦闘システムという驚くべきプランで対抗した。ただし、初期の発想はあくまで「飛行形態をとれるロボット兵器」であり、飛行能力は移動手段という副次的なものであった。航空エンジンの大出力を活かしたバトロイドモードの格闘能力が期待され、早くからオプションの強化外装甲(アーマードパーツ)も検討されていた。
基礎研究は2001年2月に始動し、制式採用機VF-1バルキリーのロールアウトは2008年11月(その間に試作型VF-0フェニックスとSV-51が存在した)。実用化の難航と共に、開発コンセプトも予定されたロボット兵器とは違うものへ変化した。まず、異星人墜落艦の調査で高機動兵器が発見されたため、対抗して高度な空戦能力が必要と判断された。主に大気圏内での空力的要求から、現用戦闘機に近いファイターモードが生まれ、当初のロボット(バトロイド)中心から空陸両用思想へ転じた。さらに、開発上最も重要な転換点はガウォークモードの「発見」であった。VF-1の試作機VF-X-1のテスト飛行中、ファイターから両手足を伸ばした変形の途中段階が、低空低速ホバリング時に極めて有用であることが判明。操縦安定性に優れ、ファイターの機動性とバトロイドのを兼ね備えるガウォークは独立した運用形態として採用された。これらの結果、可変戦闘機は3つの形態を持つ多用途機動兵器として成功することになる。
その運用に関しては、異星人勢力の太陽系侵攻という有事において防衛ラインの惑星(衛星)上での迎撃戦闘がシミュレートされていた。「制空権の確保→地上制圧」という現代戦の展開に基づき…
- ファイターモードで敵航空兵力を退け制空権を確保。敵地上侵攻部隊へ上空から対地攻撃を行う。
- ガウォークモードに変形し、低空ホバリング飛行でより密な掃討を行う。
- バトロイドモードで着地し、接近戦にて制圧(ただし格闘戦(殴り合い)は最終手段)。巨人族兵士の拘束や交渉も行う。
また、敵宇宙艦隊に対して同様のアプローチからバトロイドモードで戦艦内に強行突入し、抵抗を排除し司令室を占拠するような海兵隊的特殊作戦も計画されていた。敵軍と同等の大型戦艦がマクロス一隻という戦力差を補うため、可変戦闘機による白兵戦術への期待も大きかったのである。
[編集] 第一次星間大戦 (西暦2009~10年)
しかし、いざゼントラーディ軍との戦闘が始まってみると地上戦を交える局面はほとんどなく、圧倒的な艦隊規模の差に白兵戦も無意味であった。VF-1部隊はおもにマクロス艦防宙迎撃機として活躍。最終決戦の「ミンメイ・アタック」では反応弾を抱え対艦攻撃機としても出撃した。本来、これらは無人戦闘機ゴーストや宇宙戦闘機ランサーIIの任務であったが、VF-1は期待以上の汎用性を発揮し、宇宙用追加装備(FASTパック)も性能向上に大きく貢献した。また、パイロット達の創意工夫により、変形を駆使した空中戦術が進化したことも注目される。撃墜王ロイ・フォッカーやマクシミリアン・ジーナスはバトロイドモードが空中戦でも有効であることを証明した。可変戦闘機は総合性能評価でデストロイドシリーズを完全に凌駕し、戦後も統合軍の主力兵器として更に開発が進められることになった。
[編集] 宇宙移民時代 (西暦2011~2040年)
戦後の2010年代から2020年代にかけては宇宙移民船団の護衛や移民星系の治安維持が主任務となった。この時代は地球復興と種の保存にテクノロジーが注がれていたため、兵器として革新的な進化は起こらず、名機VF-1の機体設計をベースにした「亜種」が生まれる状況であった。この間、開発メーカーの統合再編が進み、新星インダストリー社とゼネラル・ギャラクシー社が2大メーカーとなり、地球技術とゼントラーディ技術の融合が行われた。
その後、移民星系の拡大と共に紛争や内乱が続発し、広域治安維持活動のため使いまわしやすい万能機の価値が見直されるようになった。2030年、統合軍はVF-1の正統な後継機VF-11サンダーボルトを次期主力機として採用した。VF-11は新たなスタンダードとなり、それ以前の旧型機は退役や辺境配備などの世代交代を強いられた。
[編集] AVF (西暦2041年~)
テロリスト組織など広域で複雑化する治安問題に対処するため、2034年から統合軍はVF-11をはるかに凌駕する次世代可変戦闘機(Advanced Variable Fighter : AVF)の開発に着手した。特殊部隊として少数精鋭で敵防衛網を突破しうる高性能が要求され、単独フォールド能力、熱核バーストタービンエンジン、アクティブステルス、ピンポイントバリア(PPB)など、当時最新の技術が導入された。
2039年から惑星エデンのニューエドワース基地で行われた競争試作プロジェクト、通称「スーパーノヴァ計画」では、新星インダストリー社のYF-19 とゼネラル・ギャラクシー社のYF-21が制式採用をかけて優劣を競った。一時は無人戦闘機X-9ゴーストバードの開発により有人戦闘機不要論が強まる時もあった。しかし2040年の「シャロン・アップル事件」で人工知能の危うさが露呈し、両機は晴れて制式採用されることとなった。