八百長
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八百長(やおちょう)とは、真剣に争っているように見せながら、事前に示し合わせた通りに勝負をつけること。いんちき。
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概説
出場者に金銭などの利益を与えて行われる場合や、審判の買収によって行われる場合など、その形態はさまざまである。
勝負事においては競技の如何を問わず、常にブックメーカーや非合法の賭け事が絡んでいるという現実的側面が付きまとっている為、直接的に影響を及ぼす公営競技は勿論の事、野球やサッカーなどでも刑事告発(闇賭博が絡む場合は賭博罪)や永久追放、降格など厳しく処分されることが多い。またF1レースでは失格処分となるが、勝ちをチームメイトに譲ることは事実上許されている。
由来
八百長は、明治時代の八百屋の店主「長兵衛(ちょうべい)」に由来するといわれる。八百屋の長兵衛は通称を「八百長(やおちょう)」といい、大相撲の年寄・伊勢ノ海五太夫と囲碁仲間であった。囲碁の実力は長兵衛が勝っていたが、八百屋の商品を買ってもらう商売上の打算から、わざと負けたりして伊勢ノ海五太夫のご機嫌をとっていた。
その後、周囲のことことが知れわたり、真剣に争っているように見せながら、事前に示し合わせた通りに勝負をつけることを八百長と呼ばれるようになった。
隠語
大相撲では「注射」(真剣勝負は「がちんこ」)、格闘技では「マーマレード」(真剣勝負は「セメント」)とも言う。
対戦者の一方のみ敗退行為を行う場合は「片八百長」と呼ばれることがある。
現在では「ヤオ」と略語で言うこともある。
主な事件・疑惑
関係者が処分された例
- ブラックソックス事件(メジャーリーグ)
- 黒い霧事件(プロ野球・オートレース)
- ソルトレークシティオリンピックのフィギュアスケート(ペア)
- セリエA (サッカー)
関係者の処分はなかったが、多くの疑問がもたれた例
- 最高位戦八百長疑惑事件(麻雀)
- サルノキング事件(競馬)
- 2002 FIFAワールドカップの韓国戦
- 2006 ワールド・ベースボール・クラシック2次ラウンドの米国戦
- WBA世界ライトフライ級王座決定戦の八百長疑惑事件 亀田興毅VSファン・ランダエタ(ボクシング)
大相撲
主な疑惑
- 同年1月場所を休場した大関・前の山は、角番の3月場所も苦戦、11日目を終わって5勝6敗だった。大関同士の琴桜との対戦で前の山が勝ったが、監察委員会より無気力相撲ではないかとの注意を受け、前の山は翌日から休場、大関から陥落した。
- 史上初の兄弟力士での優勝決定戦になったが、前場所まで4連覇中だった横綱・貴乃花が四つに組んだ後これといった攻めもなく下手ひねりに敗れる。八百長とは言わないまでも、やはり勝負に徹しきれない心理もあったのではないか、という見方は当時から強かったが、貴乃花が引退後にこれをふりかえって「やりにくかった」と発言、八百長を認めたとの誤解を招いて再び問題化した。
- 元小結・板井圭介が現役時代の八百長を認め、八百長にかかわった横綱・曙太郎以下20名の力士の実名を公表した。協会は板井に謝罪を求める書面を送付したが、最終的に「板井発言に信憑性はなく、八百長は存在しない。しかし板井氏を告訴もしない。」という形でこの問題を決着させた。
諸事情
大相撲における八百長行為の歴史は深く、神事や占いとしての相撲では、「独り相撲」(力士は一人で土俵に立ち神と取り組む仕草をする。神の機嫌を取るため、わざと転がって負ける)や、凶作不漁の見込まれる土地の力士に勝ちを譲ることも普通に行われていた。江戸時代の木戸銭を取っての興行でも、力士の多くが大名のお抱えだったせいもあり、力士当人や主君の面子を傷つけないための星の譲り合いや、四つに組み合って動かず引き分けたり、物言いの末の預りの裁定なども多かった。
観客としては、大名の意地の張り合いによる八百長相撲には腹に据えかねていたが、落語の「谷風の人情相撲」など、美談としての片八百長、いわゆる「人情相撲」には寛容だった様だ。
これらが罪悪視されるようになるのは、明治に入って近代スポーツの精神が輸入されてからのことになる。昭和以降でも、玉錦が八百長を断った話が逆に美談になったり、「あれは八百長だった」とカミングアウトする力士もあるなど、その根は深い。
大相撲の八百長疑惑では、1980年から週刊ポストが元十両・四季の花範雄の八百長告発手記を初めて公開し、その後も元力士や元角界関係者による告発シリーズを約20年にわたり掲載した。中でも1996年に部屋持ち親方としては初めて11代大鳴戸(元関脇・高鐵山孝之進)の菅孝之進と元大鳴戸部屋後援会副会長の橋本成一郎が行った14回にわたる告発手記は、八百長問題・年寄株問題・暴力団との関わり・角界の乱れた女性関係などを〈暴露〉し、大きなインパクトを与えた。
この時は、協会が告訴する事態にまで発展した。それを纏めた11代大鳴戸親方の著作として、『八百長―相撲協会一刀両断』(1996年、ラインブックス)が出版された。しかし、この著書の発売直前に、告発者の菅孝之進と橋本成一郎が「同日・同時刻・同じ病院・同じ病気」で急死した。事件性も疑われたが、結局は病死ということで処理された。いまでも謎の残る「怪死」だと告発者を支持する側は主張している。
その4年後の2000年、11代大鳴戸親方の弟子だった板井圭介(元小結・板井圭介)が外国人記者クラブで、大相撲の八百長問題を語った。それまでも、週刊ポストで元力士らの証言は繰り返されていたが、元三役力士からの証言はこの時が初でしかも記者会見で当時の現役力士の実名を挙げての暴露だったこともあり、角界だけではなく世間一般にも大きな衝撃を与えた。その後板井は、『中盆―私が見続けた国技・大相撲の“深奥”』(2000年、小学館)を出版した。ここでは、中盆(板井の主張する角界隠語で、八百長を取り仕切る仲介・工作人の意)として君臨した板井の証言が著されている。菅孝之進の告発本との共通点も多く見られ、角界の八百長問題を語った著書としては信頼性の高い著書であると考えるものもいる。
板井と菅の主張
この師弟の主張は、おおむね次のようなものである。
『大相撲の八百長は完全にシステム化されており、大きく分けて星の「買取」と「貸し借り」の2つに分けられる。買取は主に常に好成績を求められる横綱・大関などが地位を守る為に使用する。貸し借りは三役以下の平幕力士同士が勝ち越すためや、十両に落ちないようにするための手段として使用する方法である。横綱・大関の買取は70万~100万円くらいが通常の相場であり、貸し借りは先に対戦相手に頼むほうが40万円を支払うということになっている。横綱大関同士などの優勝が懸かった一番や、大関、横綱昇進の懸かった取組みなどでは相場はもっと上がり、200万~300万にもなることもあるという。あと、部屋の親方が所属力士のために八百長工作に動く場合もある。八百長の代金の清算は場所後の巡業などで付け人が関取の意をうけて行うの通例。
力士はおおよそ、八百長力士(注射力士ともいう)と非八百長力士(ガチンコ力士ともいう)に判別される。大相撲の八百長は、実力に裏付けされていなければ、この八百長力士のグループには組み入れてもらえず、やはり真剣勝負(ガチンコ)で勝つ力が無ければ地位は保つことはできないとされている。横綱・大関にしても、「この横綱・大関とガチンコで勝負しても勝てない。だったら星を売ってカネにしたほうがいい」と思わせる実力が無ければ地位は保てないとされている。関脇までは、ガチンコ力士でも、やはり横綱・大関に上がると地位に見合った成績を上げなければいけないプレッシャーからか、八百長に手を染めてしまう力士もいる。大相撲では、どんな強い力士でも取りこぼしといものが存在し、とくに負ける事がニュースになってしまう横綱・大関はより確実に勝利を重ねるために八百長で白星を保障しておくという意味合いが強く、横綱・千代の富士などはその典型だったと言われている。そうすることによって強い横綱に取りこぼしが無くなりより一層確実に好成績をあげれると言うわけである。平幕力士の場合は横綱・大関陣との対戦が多い、上位(三役~前頭5枚目)で星を売ったり、貸したりして番付が下がった翌場所に平幕下位(6枚目以下)で貸している星を返してもらい勝ち越して幕内力士としての地位を保つをいう手段が多くみられた。ただし、これもガチンコでしっかり何番か勝てる力がなければ勝ち越すことはできない。ガチンコで何番か勝つ実力が無ければ、例え八百長をしていても勝ち越すことはできず地位を下げていく事になってしまう。
ただし、最近の角界は15年~20年前の千代の富士全盛時代ほど八百長の横行は減ったと言われている。それには生涯ガチンコを貫いて22回の優勝を果たした横綱・貴乃花(現貴乃花親方)の影響が大きいと言われている。最近、兄弟の確執問題で話題になった平成7年九州場所千秋楽の優勝決定戦、若乃花-貴乃花戦が八百長だったのかという議論は八百長ではなく、貴乃花親方が「やりにくかった」と回顧しているように「無気力相撲」の類に当るだろう。あの一番においてはあまりにも貴乃花のほうに「やりにくさ」「力が入っていない」というのがミエミエであり、八百長相撲の取組みというものは、一般のファンなどの素人にはわかりにくいようにする為に「熱戦」に見せかけるものであるために、ああいった一番は八百長とは言わないのである。無気力相撲と八百長相撲は意味合いが全く異なり、ガチンコ力士であっても自らの調子が悪かったり、相手に対して手心があったり、様々な状況からやりにくさがあれば無気力相撲になることもありえる。八百長相撲というのは金銭のやり取りから、あらかじめ予定調和された一番のことを意味する。こうした角界の八百長のシステム化は昭和30年代の初めから行われ始め、40年代に確立した』
日本相撲協会は週刊ポストが国民栄誉賞まで受賞している横綱・千代の富士らなどの実名をあげての告発が20年に渡ったにも関わらず、告訴は1度しかしておらず、それも元大鳴戸親方の手記の一部分を告訴するという特殊な方法でしか告訴していない(後に不起訴)。また板井の記者会見や手記に関しても何ら法的手段に訴えておらず、そこをとらえて〈角界に八百長が存在している〉ということは事実だと考える者もいる。
ただし好角家の中には、相撲は本来、五穀豊穣を願う儀式が起源になっており、歌舞伎や能楽と同じように伝統芸能でもあり、他のプロスポーツなどとは違ったものである故、八百長は角界の必要悪でもあるという意見もある。[要出典]
関連項目
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