便秘
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便秘(べんぴ)とは、ヒト(または他の動物)において便の排泄が困難になっている消化器の状態である。
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[編集] 原因
便秘の原因には次のようなものがある。
- 腸の一部が締め付けられ、細くなったり遮断されたりして便が動けなくなる。
- 麻痺により腸の蠕動ができなくなった場所で便が動けなくなる。
- 過度の脱水により便が硬く大きくなり、排泄されなくなる。
- 食物や食物繊維の摂取が不十分なため、適切な咀嚼が行われなかった。
- 心配事や未知の環境などによる精神的な原因の便秘。機能性の便秘、過敏性の便秘の2つがあり、腹部の不快感や痛みによって特徴付けられる。
これらは、互いに原因となる多様性がある。
[編集] 治療
便秘は腸の運動が1週間あたり3回以下となることを意味する。大便は硬く乾燥する。排泄にはしばしば痛みを伴い、不快感と快感を覚える。 治療には、下剤の摂取により便の排泄を試みる。早期の治療には浣腸も含まれる。
生活習慣等が原因ではなく、そもそも便秘になりやすい体質の人もいる。
S状結腸の過長等により、腸内に便の通りが著しく悪い個所が存在することが便秘の原因である場合、直腸内は既に空になっている場合がある。この場合、薬局で市販されている浣腸では便まで薬が到達せず、排泄を促進することができない。こういった原因で便秘になっている場合もあるため、浣腸の効果が感じられず、またひどい腹痛を伴う場合などは、一度医師に相談してみたほうがよい。
よくある誤解は、毎日便が出なければならない、とするものである。これは実際には正しくない。排便の『正しい』回数は存在しない。各人がそれぞれ通常の排便の回数を知っておく。それは食物や運動などに依存する。
ほとんどの人が一回ないしそれ以上の回数、便秘となる。多くの場合、短時間しか続かず重症にはならない。便秘の原因を知ることがその予防の第一歩である。
[編集] 予防
食べ物、飲み物、運動の程度を変えることは、便秘を予防することになる。以下はそれらの他の方法である。
[編集] 食物繊維の摂取
食物繊維は柔らかく大きな大便を作る。それは多くの野菜、果物、穀物に見られる。一度に少しずつの食物繊維を確実に加えることにより、ゆっくりと摂取することになる。繊維をほとんど含まない食物、例えばアイスクリーム、チーズ、肉、スナック菓子、ピザ、インスタント食品などを制限する。繊維を多く含む食べ物を次に示す。
[編集] 水分の摂取
十分な量の水もしくは他の飲み物、例えば野菜や果物のジュース、スープなどを摂取する。
水分は大便を柔らかく保ち、通りを良くする。そのため十分な水分を取ることは重要である。カフェインやアルコールを含む飲料は、消化器の水分を減らす傾向があるため避ける。
[編集] 脂肪の摂取
脂肪は腸管を滑らせる働きがあるので、便の通りをよくする。よって油物を摂取するのも効果的である。
[編集] 十分な運動
規則正しい運動は消化器を活発にし、健康を保つ。運動は軽いものでも十分で、毎日20~30分の歩行でよい。また、軽い腹筋やストレッチも効果的。手を使ってお腹をさすり、腸の蠕動運動を促すだけでも効果がある。
[編集] 十分な排便の時間
あまりに急いでいるために身体の要求に注意しないことがしばしばある。便意を無視していないことを確かめる。
[編集] 医師の指示により下剤を使う
下剤は大便を通しやすくする薬である。軽い便秘の人の多くは下剤を必要としない。しかし、これらの全てを正しい方法で行い、まだ便秘であるならば、医師は限られた期間で下剤を用いることを薦めるだろう。
下剤が必要であれば、医師は何が最適なのかを教えてくれる。下剤には液体、チューインガム、丸薬、粉などいくつかの種類がある。
[編集] 飲んでいる薬の確認
いくつかの薬は便秘を引き起こす。それらはカルシウム剤、コデインなどの鎮痛剤、鎮静剤、制酸剤、鉄剤、利尿剤(水薬)、抑うつ剤などである。別の問題により薬を飲むならば、それが便秘を引き起こすかを医師に尋ねる。
[編集] 便秘と女性
便秘はとりわけ、女性に多い病気であり、たとえば日本では5人に1人が便秘の症状で悩みを持っているともいわれる。だが、これには科学的な根拠があり、それは社会的なものから、生活習慣的なもの、そして女性独特の身体構造に大きく関与する。
- 男性に比べ、排便に必要な括約筋、腹筋の力が弱い。
- 男性に比べ、外での排便を躊躇、我慢する傾向にある。そして我慢を続けることによって排泄中枢が反応しなくなってしまう。そのため、排便のサイクルに狂いが生じて、便秘になりやすい。
- 女性の方が便の嵩を増やす元になる食物繊維や炭水化物を美容、ダイエット目的などで多量に摂取する傾向にある。その割に2の理由などで便を溜めてしまい、目詰まりを起こす。
- 女性に多いダイエットも大きな原因。食べないことによって腸の蠕動運動が疎かになる。
- 女性独特の黄体ホルモン、プロジェステロンが体内に水分を蓄積しようとする。その結果、排便に十分な水分が補給されなくなってしまう(このホルモンは生理、妊娠などの時に多く分泌され、故にその時期の便秘が多くなる)。更にこのホルモンは流産を防ぐために括約筋を収縮させる働きがあるため、一層排泄が困難になる。
- 女性は胎児を育てるため、骨盤が広い。そこに腸が下垂しやすくなり、腸が不安定になる。また、下半身に脂肪が溜まりやすくなるために、血液も骨盤に滞りがちになる。故に腸の働きが活発でなくなってしまう。
- 上記の理由で腸管の形が歪になりやすく、そこに硬い便などが留まってしまう。
- 症状は7と似ているが、ストレスによる過敏性腸症候群などにより、腸が閉塞してしまい、そこに便が滞ってしまう。なお、この症状は男性にもよく見られるが、男性は腸管が太いために下痢の症状を訴えることが多い。
以上の理由が挙げられており、便秘薬の購入者は女性が圧倒的に多い(パッケージにピンクが多いのは明らかに女性をターゲットにしている証拠である)。一方、男性の方は、高齢者以外は便秘で悩まされる率は圧倒的に少ない。反面、男性は便秘より下痢に悩まされている傾向にあるが、これも同様に、食習慣(アルコール、油物、刺激物を好む傾向にある)や外的ストレスに対する脆弱性、太い腸管など身体の構造に起因しているといわれる。