ニンジン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ニンジン | ||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]() ニンジンの花 |
||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||
|
||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||
Daucus carota L. | ||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||
ニンジン | ||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||
carrot |
ニンジン(人参、英名:carrot、学名:Daucus carota L.)はアフガニスタンが原産のセリ科ニンジン属の野菜。細長い東洋系品種と、太く短い西洋系品種の2種類に大別され、ともに古くから薬や食用としての栽培が行われてきた。日本では江戸時代に栽培されていた品種は東洋系が主流だったが、栽培の難しさから生産量が減少し、西洋系品種が主流になっている。なお、一般に薬草として用いられているオタネニンジン(朝鮮人参・高麗人参とも)はウコギ科の植物であり、生物学的にニンジンとは異なる植物である。
ニンジンは1、2年草で、原産地のアフガニスタン周辺で東西に分岐し、世界各地に伝播した。オランダを通りイギリスへと西方へ伝来しながら改良が行われていったニンジンを主に西洋系と分類し、中国を経て東方へと伝わってきたのを東洋系と分類すると、ニンジンはこの2種類に大別できる。
日本への伝来は16世紀で、この頃は葉も根と同様に食用としていたが、明治以降では根のみを食べるようになった。
目次 |
[編集] 植物としての特徴
栽培には涼しい気候が適しているが、苗の段階では比較的高い温度にも耐えられる。そのため夏に種を撒いて秋から冬に収穫する方法が最も容易である。しかしニンジンは発芽率が低く、種の吸水力が弱いため種撒き後に土が乾燥すると極端に発芽が悪化するため、雨後を狙って種を撒くのが好ましい。また乾燥を防ぐために潅水したり、新聞紙やワラ・モミガラなどで被覆すると効果的である。
短根ニンジンは多くの土質で栽培が可能なためあまり考慮する必要はないが、有機質に富んだ砂質土壌が最適とされる。しかし過湿に弱く、水はけが悪いと根腐れを起こしてしまう。土壌酸度は弱酸性から中性が適し、酸性ほど生育が遅れ、裂根が多くなる。また線虫(ネコブセンチュウ類、ネグサレセンチュウ類)の被害を受けやすいので、前作に被害にあったところは避ける。また、日陰では茎葉ばかりが茂り、根の肥大が悪くなるためなるべく日陰になりやすい場所は避けたほうが良い。
長根種は一部の地域で栽培されているだけで、現在は五寸ニンジンと呼ばれる長さ15cm内外の品種が多く栽培されている。これは品種も肉質や外皮の色、形状と揃い、カロチンの含有量、作りやすさなどを目的にして改良が進んでいるものである。このほかプランターでの栽培が容易な長形や丸形のミニニンジンもある。
ニンジンは種を撒いて発芽するまでに7~10日ほどかかり、その後の生育も遅いペースで進む。新聞紙などを掛けて乾かないように管理していると、雑草が一斉に生えてきてどれがニンジンかわからないくらいになる。また生えてきたニンジンは生育が遅いので、除草作業を怠ると、雑草に負けてしまい枯れてしまうので、生えてきた雑草に注意して、小さいうちに早く抜き取ることが大切である。
[編集] 東洋系ニンジン
中国で改良された東洋系のニンジンは、16世紀に日本に伝えられ、全国各地で作られるようになった。赤色の金時ニンジンを筆頭に、甘味が強くてニンジン特有の臭みが少なく、煮ても形が崩れにくいので和風の料理に重宝される。しかし、栽培しにくいことがネックとなり、第二次世界大戦後西洋系ニンジンが主流となってきている。正月料理用などとして、現在でも晩秋から冬にかけて市場に出回るが、栽培量が少ないためこの季節以外では入手が難しい。
[編集] 西洋系ニンジン
西洋系ニンジンは、オランダやフランスで改良がすすみ、江戸時代末期に日本に伝来した。主にオレンジ色をしており、甘味もカロチンも豊富に含んでいる。五寸ニンジンが一般的な品種で、ちょうど五寸(15cm~20cm)ぐらいの長さで、金時ニンジンなどと比べて太めなのが特徴。
カロチンのニンジン臭が強かったが、品種改良により最近では臭いも薄くなった。全国の気候に応じた品種が栽培されていて、一年中市場に出回っているが、ニンジン本来の旬は9月頃から12月頃である。
[編集] 栄養・調理
根が可食部である。カロテノイドを含む黄色や橙色のものや、アントシアニンを含む濃紫色や紅紫色のものがある。
玉葱・じゃがいも・人参を家庭常用3野菜という人もいる。生食、炒める、煮るなど、多くの方法で調理が可能。ビタミンA カロテンが豊富で、緑黄色野菜に分類される。カロテンを多く含むため、リコピンを多く含むトマトといっしょに食べると癌予防によい、と言われている。
2004年8月の国際家政学会での発表によると、油を使うなら、200度もの高温は避け、短時間での調理にとどめる方が、カロテンの消化・吸収が良くなる。人参の皮は、白っぽく非常に薄いもので、機械により、出荷地で既に剥かれている。多くの人が皮だと思い捨てている部分に、実はグルタミン酸やカロテンなどの栄養が豊富に含まれている。
カロチンの呼称がニンジンの英語名である「キャロット」に由来するように、ニンジンのカロチン量はずば抜けて多く、中くらいの半本で、1日必要量がとれるほどである。カロチンを多く含む緑黄色野菜の代表種のニンジンは、長さ15cm内外の短根ニンジンが周年店頭に並び、さまざまな料理に広く利用される。ビタミンB・C、カルシウム、鉄も多く、栄養的価値が高い。しかしニンジンはビタミンC酸化酵素を含んでいる為に、他の野菜と合わせてジュースにすると、ビタミンCの効果を弱めてしまう。そのためジュースにする場合はあらかじめミキサーの中にレモン汁や酢を少し加えて、酵素の働きを止めると良い。
ニンジンは、生で食べるときには注意が必要である。生のニンジンにはビタミンCを破壊する酵素が含まれているので、サラダにした他の材料のビタミンCも壊してしまう。またこの酵素は酢に弱いため生のニンジンは酢の物にするか、酸味のきいたドレッシングをかけて食べる必要がある。また、甘みやカロチンは皮の部分に豊富に含まれているので、皮の部分も食べてよい。